番外編
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東さんに頼まれてとった弟子。生意気で仕方ないクソガキだったが紛れもない天才だった。
「師匠ー」
「なに、今バーボンの正体が分かるところだから」
「そこまで読んでないから絶対言うなよ。……ってそうじゃなくて、シューターの使う弾同士を合体させたらどうなるんだ?」
なにその発想。
出水の突飛な発想で生まれた合成弾。シューターの戦略の幅が広がった瞬間だった。二人して漫画片手にゴロゴロしていただけだったのに。しかもコ○ン。こいつの頭の中はどうなっているのだろうか。
そしてとりあえずやってみよう精神でアステロイドとアステロイドを合体させて一回で成功した出水。奴は他にもいくつか組み合わせを発掘していった。本当に私って名前だけの師匠だな。東さんだから何か考えがあるのだろうが未だにその意図は理解出来ていない。
「アステロイド維持しながら、もう片方のアステロイドを……合体……あっ」
合成弾もどきはヒュルヒュルと蛇行しながら的を通り過ぎ、壁へ激突した。通算百回目の失敗だ。正の字がちょうど二十個になった。頭を掻いてその場に腰を下ろし後ろに身体を倒した。休憩だ。
「上手くいかないなぁ」
これは戦場では使い物にならないぞ。訓練室を借りて四時間。成功する兆しすら見えない。めちゃくちゃ難しいぞ合成弾。出水頭おかしい。あいつ鼻歌交じりでやってたぞ。頭おかしい。そしてその出水はと言うと私の他に合成弾の訓練をやっている人間の所へ行った。「サボるなよ師匠!」と声をかけて。この信用のなさは何なんだろう。
「合体、がったい……ガッタイ?」
合体ってなんだよ、と考え出すくらいには苦戦している。そもそも爆発物同士を合体させるなんて物騒だよね。今まで以上に爆弾魔集団って言われるようになるなシューターは。……と現実逃避を交えつつ手のひらを眺める。才能はない。トリオン量は平均より上。頭も良くはない。まさしくB級。
「…………おし、」
四時間で完成出来るくらいならとっくにソロランキングで上位に行っている。アホな事を考えるくらいならさっさとモノにしよう。
足を上げて勢いをつけて立ち上がり、お尻を叩いて汚れを落とす。息を吐いてアステロイドを作る。そして背後に撃った。
「うわっ」
「自称エリートは覗きが趣味、と」
「おまえね、何も撃つことないだろ」
半笑いで持っていた袋を掲げる自称エリートこと迅。その袋には有名な和菓子店の名前が印字されていた。
「こんにちは迅さん。よく来てくれましたね」
「うん。そういう欲に忠実で手のひら返しが得意なところ結構好きだよ」
「ありがとう。お茶買ってくる」
「いえいえ」
トリオン体を解いて訓練室の外の自販機でお茶を二本買う。うん、休憩は大事だよね。
「あなたが欲しいのは右の緑茶? それとも左の烏龍茶?」
「緑茶で」
「今日のラッキー茶は烏龍茶らしいよ」
「緑茶飲みたいなら最初から聞くなよ」
苦笑して私の左手から烏龍茶を受け取る迅。買ったあとに違うの飲みたくなることってあるよね。
「みたらし団子と塩豆大福と桜餅、ぼんちあげがあるよ」
「みたらしください。ぼんちあげは結構」
「旨いのに」
旨いけど飽きるんだよ流石に。
透明なフィルムを剥いでみたらし団子を食べる。タレがたまらん。表面を焼いた餅も最高に美味しい。ああ幸せだ。
無言で食べていると横に座った迅が声を出さずに笑ったのが分かった。
「元気そうで良かったよ」
「落ち込んでもしかたないしね」
どうやら励ましに来たらしい。ここで訓練するとは言ってなかったから多分見えたんだろう。お菓子付きとは付き合いが長いだけある。チラリと横の迅の顔を盗み見ると、分かっていたのか胡散臭い笑顔をこちらに向けていた。
「いつものことじゃん。数と時間使わないと私には無理だよ」
「うーん……まあそうなんだけど、な」
歯切れの悪い迅をほっといて二本目のみたらしに手をつける。何だろう……この迅の顔見覚えがある。なんだったっけ? ……まあいいや。
二本目を完食し、ごちそうさまでしたと迅に向かって手を合わせて再びトリガーを起動させる。
「あ、ちょうどいいから横で見といて。なんか変な癖ついてるかもだし」
「………………うん、いいよ」
「凄く嫌そうなんですけど」
迅の様子に首を傾げながらも再びアステロイドとアステロイドを作る。合体、ガッタイ、がったい。くっつければいいんだくっつければと頭をフル回転させながら二つの弾を合成させた。弾の周囲がぼんやりとうねっているが、今までで一番形になっている。
──これは、いけるぞ。
そう思い、今までかすりもしなかった的に狙いを定める。真っ直ぐ進んで行った合成弾に思わずガッツポーズをした。………ら、弾は的スレスレまで行ったもの途中で直角に曲がり、訓練部屋を半周するような形で飛んでいった。迅目掛けて。
「ちょっ、と!?」
飛んできた弾を奇声を上げてスコーピオンで二つに切る迅。分裂した弾は壁に激突してドゴゴーンッと凄い音を立てた。
「…………合成弾すげー」
「もっと他に言うことあるよね!?」
「忘れないうちにもう一回だ!」
ちょっと! と後ろから悲鳴が聞こえるが手元を集中させるの優先だ。再び両手にアステロイドを作って合体、発射させる。そしてまたしても迅へと飛んでいった。それがなんと3回も続いた。
「…………わざとやってる?」
「やって、ないと、おもう」
「もっと自信持って言って!!」
嘆く迅になぜだと首をひねる。さっきはヒョロヒョロ飛ぶだけで威力もなんもなかった。今は凄い勢いで曲がって凄い勢いで迅まで向かっていく。……何でだろう。もしかして心の中で私は迅を抹殺したいと思っているのかもしれない。
「あ、迅さん来てたんすか」
「ねえ出水、合成弾って殺意を察知してくれるのかな」
「は?」
出水に先ほどのことを話す。またややこしい事を……とボヤいた出水は「とりあえずやってみて」と自分もトリオン体になった。
「アステロイドと、アステロイドで……」
「………ん? 師匠それアステロイドか?」
「は? 何言ってんのアステロイドじゃん」
出水は私の左手に出したトリオンキューブを指をさす。何を初歩的な……と左手に出したアステロイドを壁に向かって放つ。直線を描いて飛んでいくはずだったアステロイドはカクカクと軌道を逸れながら壁へと飛んでいった。事前に設定した通りに飛ぶそれはアステロイドではない。
「バイパーでした」
「ナマエ!!!」
「ごめんなさい」
あれ、いつからバイパーとアステロイドを合成させてたんだ? てかこの合成弾なに。
「師匠、トリガーのメンテナンスいつした?」
「……………」
「うん、思い出せないくらい前か」
どうやらバクが起きたらしい。多分迅が来たときに一度トリオン体を解除したからそのときからだろう。戦闘中じゃなくて良かったと前向きに考えることにした。これからはちゃんと定期メンテ出そう。
「バイパーとアステロイドの組み合わせはまだやってなかったよな。げ、じゃあ師匠が作ったことになるのか」
「やったね。じゃあ私が名前つけていいのかな。よし【迅絶対殺す弾】にしよう」
「一ミリも反省してないよね」
「それ倫理的にアウトだろ」
そんな言葉を背後から受けつつ、次はアステロイドとバイパー(の皮をかぶったアステロイド)を出す。そして合体。今までの苦労は何だったんだというくらいにスムーズに出来た。真っ直ぐその合成弾を的目掛けて放つと余りの威力に的ごと吹っ飛んでいった。
「………できた」
「良かったな師匠。ついでにさっき名前決まったぞ。アステロイドとアステロイドでギムレットだってさ」
ギムレット。なにそれ格好いい。そして威力が壮大でスカッとする。「みてた? 迅みてた?」とそわそわしながら聞くと「見てた見てた。おめでとう」と苦笑しつつ祝ってくれた。嬉しいからもう一回しよう。もう一回見せよう。
「アステロイドとアステロイドで………よし! ギムレット」
「ちょっ師匠それバイパー!!」
「………あ、」
アステロイドとバイパーの合成弾。後にトマホークと名付けられるその弾は訓練室を縦横無尽に飛び、最終的に迅に突っ込んでいった。
………やっぱり迅絶対殺す弾だな。
「師匠ー」
「なに、今バーボンの正体が分かるところだから」
「そこまで読んでないから絶対言うなよ。……ってそうじゃなくて、シューターの使う弾同士を合体させたらどうなるんだ?」
なにその発想。
出水の突飛な発想で生まれた合成弾。シューターの戦略の幅が広がった瞬間だった。二人して漫画片手にゴロゴロしていただけだったのに。しかもコ○ン。こいつの頭の中はどうなっているのだろうか。
そしてとりあえずやってみよう精神でアステロイドとアステロイドを合体させて一回で成功した出水。奴は他にもいくつか組み合わせを発掘していった。本当に私って名前だけの師匠だな。東さんだから何か考えがあるのだろうが未だにその意図は理解出来ていない。
「アステロイド維持しながら、もう片方のアステロイドを……合体……あっ」
合成弾もどきはヒュルヒュルと蛇行しながら的を通り過ぎ、壁へ激突した。通算百回目の失敗だ。正の字がちょうど二十個になった。頭を掻いてその場に腰を下ろし後ろに身体を倒した。休憩だ。
「上手くいかないなぁ」
これは戦場では使い物にならないぞ。訓練室を借りて四時間。成功する兆しすら見えない。めちゃくちゃ難しいぞ合成弾。出水頭おかしい。あいつ鼻歌交じりでやってたぞ。頭おかしい。そしてその出水はと言うと私の他に合成弾の訓練をやっている人間の所へ行った。「サボるなよ師匠!」と声をかけて。この信用のなさは何なんだろう。
「合体、がったい……ガッタイ?」
合体ってなんだよ、と考え出すくらいには苦戦している。そもそも爆発物同士を合体させるなんて物騒だよね。今まで以上に爆弾魔集団って言われるようになるなシューターは。……と現実逃避を交えつつ手のひらを眺める。才能はない。トリオン量は平均より上。頭も良くはない。まさしくB級。
「…………おし、」
四時間で完成出来るくらいならとっくにソロランキングで上位に行っている。アホな事を考えるくらいならさっさとモノにしよう。
足を上げて勢いをつけて立ち上がり、お尻を叩いて汚れを落とす。息を吐いてアステロイドを作る。そして背後に撃った。
「うわっ」
「自称エリートは覗きが趣味、と」
「おまえね、何も撃つことないだろ」
半笑いで持っていた袋を掲げる自称エリートこと迅。その袋には有名な和菓子店の名前が印字されていた。
「こんにちは迅さん。よく来てくれましたね」
「うん。そういう欲に忠実で手のひら返しが得意なところ結構好きだよ」
「ありがとう。お茶買ってくる」
「いえいえ」
トリオン体を解いて訓練室の外の自販機でお茶を二本買う。うん、休憩は大事だよね。
「あなたが欲しいのは右の緑茶? それとも左の烏龍茶?」
「緑茶で」
「今日のラッキー茶は烏龍茶らしいよ」
「緑茶飲みたいなら最初から聞くなよ」
苦笑して私の左手から烏龍茶を受け取る迅。買ったあとに違うの飲みたくなることってあるよね。
「みたらし団子と塩豆大福と桜餅、ぼんちあげがあるよ」
「みたらしください。ぼんちあげは結構」
「旨いのに」
旨いけど飽きるんだよ流石に。
透明なフィルムを剥いでみたらし団子を食べる。タレがたまらん。表面を焼いた餅も最高に美味しい。ああ幸せだ。
無言で食べていると横に座った迅が声を出さずに笑ったのが分かった。
「元気そうで良かったよ」
「落ち込んでもしかたないしね」
どうやら励ましに来たらしい。ここで訓練するとは言ってなかったから多分見えたんだろう。お菓子付きとは付き合いが長いだけある。チラリと横の迅の顔を盗み見ると、分かっていたのか胡散臭い笑顔をこちらに向けていた。
「いつものことじゃん。数と時間使わないと私には無理だよ」
「うーん……まあそうなんだけど、な」
歯切れの悪い迅をほっといて二本目のみたらしに手をつける。何だろう……この迅の顔見覚えがある。なんだったっけ? ……まあいいや。
二本目を完食し、ごちそうさまでしたと迅に向かって手を合わせて再びトリガーを起動させる。
「あ、ちょうどいいから横で見といて。なんか変な癖ついてるかもだし」
「………………うん、いいよ」
「凄く嫌そうなんですけど」
迅の様子に首を傾げながらも再びアステロイドとアステロイドを作る。合体、ガッタイ、がったい。くっつければいいんだくっつければと頭をフル回転させながら二つの弾を合成させた。弾の周囲がぼんやりとうねっているが、今までで一番形になっている。
──これは、いけるぞ。
そう思い、今までかすりもしなかった的に狙いを定める。真っ直ぐ進んで行った合成弾に思わずガッツポーズをした。………ら、弾は的スレスレまで行ったもの途中で直角に曲がり、訓練部屋を半周するような形で飛んでいった。迅目掛けて。
「ちょっ、と!?」
飛んできた弾を奇声を上げてスコーピオンで二つに切る迅。分裂した弾は壁に激突してドゴゴーンッと凄い音を立てた。
「…………合成弾すげー」
「もっと他に言うことあるよね!?」
「忘れないうちにもう一回だ!」
ちょっと! と後ろから悲鳴が聞こえるが手元を集中させるの優先だ。再び両手にアステロイドを作って合体、発射させる。そしてまたしても迅へと飛んでいった。それがなんと3回も続いた。
「…………わざとやってる?」
「やって、ないと、おもう」
「もっと自信持って言って!!」
嘆く迅になぜだと首をひねる。さっきはヒョロヒョロ飛ぶだけで威力もなんもなかった。今は凄い勢いで曲がって凄い勢いで迅まで向かっていく。……何でだろう。もしかして心の中で私は迅を抹殺したいと思っているのかもしれない。
「あ、迅さん来てたんすか」
「ねえ出水、合成弾って殺意を察知してくれるのかな」
「は?」
出水に先ほどのことを話す。またややこしい事を……とボヤいた出水は「とりあえずやってみて」と自分もトリオン体になった。
「アステロイドと、アステロイドで……」
「………ん? 師匠それアステロイドか?」
「は? 何言ってんのアステロイドじゃん」
出水は私の左手に出したトリオンキューブを指をさす。何を初歩的な……と左手に出したアステロイドを壁に向かって放つ。直線を描いて飛んでいくはずだったアステロイドはカクカクと軌道を逸れながら壁へと飛んでいった。事前に設定した通りに飛ぶそれはアステロイドではない。
「バイパーでした」
「ナマエ!!!」
「ごめんなさい」
あれ、いつからバイパーとアステロイドを合成させてたんだ? てかこの合成弾なに。
「師匠、トリガーのメンテナンスいつした?」
「……………」
「うん、思い出せないくらい前か」
どうやらバクが起きたらしい。多分迅が来たときに一度トリオン体を解除したからそのときからだろう。戦闘中じゃなくて良かったと前向きに考えることにした。これからはちゃんと定期メンテ出そう。
「バイパーとアステロイドの組み合わせはまだやってなかったよな。げ、じゃあ師匠が作ったことになるのか」
「やったね。じゃあ私が名前つけていいのかな。よし【迅絶対殺す弾】にしよう」
「一ミリも反省してないよね」
「それ倫理的にアウトだろ」
そんな言葉を背後から受けつつ、次はアステロイドとバイパー(の皮をかぶったアステロイド)を出す。そして合体。今までの苦労は何だったんだというくらいにスムーズに出来た。真っ直ぐその合成弾を的目掛けて放つと余りの威力に的ごと吹っ飛んでいった。
「………できた」
「良かったな師匠。ついでにさっき名前決まったぞ。アステロイドとアステロイドでギムレットだってさ」
ギムレット。なにそれ格好いい。そして威力が壮大でスカッとする。「みてた? 迅みてた?」とそわそわしながら聞くと「見てた見てた。おめでとう」と苦笑しつつ祝ってくれた。嬉しいからもう一回しよう。もう一回見せよう。
「アステロイドとアステロイドで………よし! ギムレット」
「ちょっ師匠それバイパー!!」
「………あ、」
アステロイドとバイパーの合成弾。後にトマホークと名付けられるその弾は訓練室を縦横無尽に飛び、最終的に迅に突っ込んでいった。
………やっぱり迅絶対殺す弾だな。