番外編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「きどさん本よんでー」
人の腹の上に乗って図々しくそう言ってのけた人物。それを城戸は無言でベッドの下に落とした。ぶーぶー文句を垂れていたが布団を被り直して無視をしていた城戸。……が、「これがうわさのDVか……きどさんはDV男だね」と言い残して去ろうとしたので起きざるを得なかった。これを見逃したらボーダー内であらぬ事を噂されるに違いない。この子供には意味を理解していないくせに何でも人に伝え回るという特徴がある。悪癖ともいう。
部屋で寝ていた城戸を起こしたナマエ。その首根っこを掴んで渋々ベッドに乗せる。時刻は18時過ぎ。寝るには早い時間だったが城戸には夜に大事な用事がある。そのための仮眠だったのだが目の前の人物のせいで崩れ去った。低い声で「何の用だ」と質問する城戸に対しナマエは「あんねー」と能天気に話し出す。強面のせいで新人に怖がられがちの城戸だがこの子供には一切通じたことがない。それが良かったのか悪かったのかの判断は難しいところだ。
「読書かんそう文の宿題わすれてたの。だからきどさん読んで」
「自分の宿題は自分でやれ。そもそも夏休みは今日までだろう。なぜ終わらせていない」
「そんざいを知らなかったから」
「…………」
堂々と言ってのけるナマエに城戸は軽く頭を抑える。ナマエの担任の苦労が手に取るように分かった。ナマエが持ってきた通信簿に『元気があって素直な子です。いつも自信があることはいいことですが、少し考えて行動してみることも大事です。これでいいのか、これをしたらどうなるのか一度、いや三度ほど考えてみてください。そしてお友達には倍返しではなく優しい言葉をかけてあげましょう』と苦悩に満ち溢れた文章が書かれていた。こんな我の強すぎる子供の教育をするなんてさすが教育者だと感動すら覚える。中途半端に寝たせいで城戸の脳みそは微妙に働いていなかった。
「……忘れていたことは言及しない。だが読書感想文なら自分で本を読め」
「おとうさんに読んでもらえって宿題だからムリだよ」
「…………最上はどうした」
「酔っ払ってねてる」
あいつ……と同期の男に静かに怒りを燃やす城戸。18時を過ぎたばかりなのに既に酔っ払っているなんて何時から飲んでいたのだ。保護者の教育から見直す必要がありそうだと頭の隅で考えつつ、ナマエが持っていた本を手に取った。自分はともかくこの子供は21時までにはいつも寝かしている。早く終わらせないと明日に響くだろう。息をひとつ付いて城戸は本を開いた。
本と言うよりも絵本に近いそれを感情の起伏もない、淡々とした口調で読む城戸。本の内容はネズミの大家族が父親の誕生日を祝う話。アットホームかつ心休まる話なのだが城戸の事務的口調のせいで台無しだった。人選ミスとしか言いようがないのだが「ほうほう」「なんだって!」という素直な反応をみる限り、ナマエは楽しんでいるらしい。ここに林藤あたりがいたら異様な光景に笑うなり突っ込むなりしただろうが、残念なことに部屋にいるのはナマエと城戸の二人だけだった。
「終わりだ。早く宿題を終わらせて寝ろ」
「ケーキいいなー。わたしも食べたい」
「聞いているのか」
「あ! きどさん明日誕生日だ!」
「聞け」
城戸がそう言うも「きどさん何のケーキがいいの? わたしチーズがいいな」と全く通じていない。既にケーキのことしか頭にない。そしてさり気なく催促するなんて厚かましい。
「大人になったら誕生日は祝わない。ケーキもない。分かったら宿題をしろ」
「ええー大人ってシビアだね」
わたし大人にならなくていいや……と苦い顔で言うナマエ。論点が違う。宿題をやる様子がないナマエに城戸が睨みを強くし、注意しようとしたときだった。本から顔を上げたナマエが口を開く。
「でもネズミたちもおとうさんの誕生日お祝いしてたから、わたしもきどさんの誕生日お祝いするね」
へらりと笑うナマエに開きかけていた口を閉ざす城戸。「なにがいいー?」と膝の上に乗りかかるナマエに「………何でもいい」と城戸は素っ気なく返した。
(城戸さん誕生日おめでとー。はい、ケーキ買ってきたよ)
(何故毎年チーズケーキなんだ)
(あれ、城戸さんがチーズケーキがいいって昔言わなかったっけ)
(………)
(ネクタイピンもあるよー)
人の腹の上に乗って図々しくそう言ってのけた人物。それを城戸は無言でベッドの下に落とした。ぶーぶー文句を垂れていたが布団を被り直して無視をしていた城戸。……が、「これがうわさのDVか……きどさんはDV男だね」と言い残して去ろうとしたので起きざるを得なかった。これを見逃したらボーダー内であらぬ事を噂されるに違いない。この子供には意味を理解していないくせに何でも人に伝え回るという特徴がある。悪癖ともいう。
部屋で寝ていた城戸を起こしたナマエ。その首根っこを掴んで渋々ベッドに乗せる。時刻は18時過ぎ。寝るには早い時間だったが城戸には夜に大事な用事がある。そのための仮眠だったのだが目の前の人物のせいで崩れ去った。低い声で「何の用だ」と質問する城戸に対しナマエは「あんねー」と能天気に話し出す。強面のせいで新人に怖がられがちの城戸だがこの子供には一切通じたことがない。それが良かったのか悪かったのかの判断は難しいところだ。
「読書かんそう文の宿題わすれてたの。だからきどさん読んで」
「自分の宿題は自分でやれ。そもそも夏休みは今日までだろう。なぜ終わらせていない」
「そんざいを知らなかったから」
「…………」
堂々と言ってのけるナマエに城戸は軽く頭を抑える。ナマエの担任の苦労が手に取るように分かった。ナマエが持ってきた通信簿に『元気があって素直な子です。いつも自信があることはいいことですが、少し考えて行動してみることも大事です。これでいいのか、これをしたらどうなるのか一度、いや三度ほど考えてみてください。そしてお友達には倍返しではなく優しい言葉をかけてあげましょう』と苦悩に満ち溢れた文章が書かれていた。こんな我の強すぎる子供の教育をするなんてさすが教育者だと感動すら覚える。中途半端に寝たせいで城戸の脳みそは微妙に働いていなかった。
「……忘れていたことは言及しない。だが読書感想文なら自分で本を読め」
「おとうさんに読んでもらえって宿題だからムリだよ」
「…………最上はどうした」
「酔っ払ってねてる」
あいつ……と同期の男に静かに怒りを燃やす城戸。18時を過ぎたばかりなのに既に酔っ払っているなんて何時から飲んでいたのだ。保護者の教育から見直す必要がありそうだと頭の隅で考えつつ、ナマエが持っていた本を手に取った。自分はともかくこの子供は21時までにはいつも寝かしている。早く終わらせないと明日に響くだろう。息をひとつ付いて城戸は本を開いた。
本と言うよりも絵本に近いそれを感情の起伏もない、淡々とした口調で読む城戸。本の内容はネズミの大家族が父親の誕生日を祝う話。アットホームかつ心休まる話なのだが城戸の事務的口調のせいで台無しだった。人選ミスとしか言いようがないのだが「ほうほう」「なんだって!」という素直な反応をみる限り、ナマエは楽しんでいるらしい。ここに林藤あたりがいたら異様な光景に笑うなり突っ込むなりしただろうが、残念なことに部屋にいるのはナマエと城戸の二人だけだった。
「終わりだ。早く宿題を終わらせて寝ろ」
「ケーキいいなー。わたしも食べたい」
「聞いているのか」
「あ! きどさん明日誕生日だ!」
「聞け」
城戸がそう言うも「きどさん何のケーキがいいの? わたしチーズがいいな」と全く通じていない。既にケーキのことしか頭にない。そしてさり気なく催促するなんて厚かましい。
「大人になったら誕生日は祝わない。ケーキもない。分かったら宿題をしろ」
「ええー大人ってシビアだね」
わたし大人にならなくていいや……と苦い顔で言うナマエ。論点が違う。宿題をやる様子がないナマエに城戸が睨みを強くし、注意しようとしたときだった。本から顔を上げたナマエが口を開く。
「でもネズミたちもおとうさんの誕生日お祝いしてたから、わたしもきどさんの誕生日お祝いするね」
へらりと笑うナマエに開きかけていた口を閉ざす城戸。「なにがいいー?」と膝の上に乗りかかるナマエに「………何でもいい」と城戸は素っ気なく返した。
(城戸さん誕生日おめでとー。はい、ケーキ買ってきたよ)
(何故毎年チーズケーキなんだ)
(あれ、城戸さんがチーズケーキがいいって昔言わなかったっけ)
(………)
(ネクタイピンもあるよー)