番外編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
・未来のはなし
目を開けると目の前には解せぬ……と言いたげな表情でこちらを見ている恋人がいた。相変わらず寝起きはいいらしい。機嫌がいいかは微妙なところだが。
「……………おはよう」
少しかすれた声で挨拶をすると「なんかCM観てる気分。おはよう」とハキハキとした声が返ってくる。寝起きの頭に直ぐに理解出来ないことを言わないでほしい。CMとは何のことだ。気になる、気になるが眠い。とんでもなく眠い。欲求にそのまま従おうと空いていた二人の隙間を埋めて目を閉じる。ぬくい。柔らかい。ポカポカする。人カイロ最高。意識をそのまま温かい方へ飛ばそうとしたが「てやっ」という気の抜けたかけ声と共に背中に走った冷たい感触。呻き声を上げて身体を捩るが密着した状態では何の抵抗にもなっていない。人カイロの逆襲だった。「ちこうよれ、ちこうよれ~」と人カイロは楽しげだ。
「おきる、おきるから」
「うわ、背中スベスベだ」
「セクハラはやめてくれ」
背中に突っ込まれた手を無理やり抜く。もう少しだらだらしたかったと目で訴える。「早く覚醒しないと私の頭が火を吹くよ」想像したらなかなか愉快な光景だったが、前に頭をぶつけ合ったときナマエは割とけろっとしていて自分だけがダメージを受けたことを思い出したのでしぶしぶ身体を起こした。続いてナマエが起き上がる。
「おはよう。京介」
二度目の朝の挨拶は柔らかく甘い響きが乗っていて、再びそれごと包み込んで眠りたい衝動に駆られたがぐっと抑えた。
「おはよう、ナマエ」
***
「しょくぱんまんってドキンちゃんのことどう思ってるんだろうね」
カリッと焼けた食パンを頬張りながら自由に会話を繰り広げるナマエ。一瞬口に運ぶのをためらった烏丸だが「妹とかそんな感じじゃないのか」と返して端っこからかじる。気にしていたらきりがない。因みに烏丸はしょくぱんまんとドキンちゃんの関係性など全く知らない。
「妹かぁ。それは切ないねえ」
牛乳をぐびっと飲む姿は切ないなんて感情とは程遠かった。多分適当なことを言っている。「食パンってあんこもマヨネーズも合うから凄いよね。和洋折衷の権化だよ」食パンに関心を寄せ過ぎだ。そう思いつつ烏丸も牛乳を口にする。
カリカリに焼いた食パンに牛乳、スクラブルエッグにレタスといった定番の朝食メニュー。「京介卵焼いて! 私が食パン焼くから! レタスも千切るから! トマトなんかないよ! 高かった!」と楽な方を取られ、眠気半分で作ったスクラブルエッグは少し卵が固い。ちらりとナマエに視線を向けるが、全く気にしていない様子で美味しそうにもりもり食べていた。作りがいのある人間である。ふ、と口角を緩めて再び牛乳を口にした。
「……うわぁ、またCMやってる」
「さっきも思ったがCMって何だ」
「なんてない仕草が絵になってますね色男って意味」
「褒められている気がしないんだが」
周りからイケメンやら男前やら言われるがナマエには見た目関連でプラスに働いたことはほぼない。「モテすぎでしょ……イケメン凄いな……女の子ほいほいだ……」と付き合い初めの頃は引かれたぐらいだ。付き合う前からネタ感覚でイケメンだ何だと言われていたが、それが全く通じなかった相手に言われても気分は上がらない。
「褒めてるわ。寝てるときも格好良くて一人で起きてるの辛かったし。ドキドキするからちょうど起きてくれてよかった」
「…………」
無言でマグカップに手を伸ばすが先ほど飲み干したので中身は空だった。ああ、やっと、目が覚めた。突拍子のない言動に慣れたつもりだったがそんな事はなかった。朝一番で目にした怪訝な表情にそんな意味が隠されていたなんて気づけるはずがない。前言撤回する。好きな相手に格好良いと言われて気分が上がらない男はいない。
「京介足りた? パン焼こうか?」
「いや、大丈夫だ。朝はこのくらいでちょうどいい」
むしろ今は胸がいっぱいで入らない。その言葉は飲み込んで烏丸はフォークでレタスを刺した。
目を開けると目の前には解せぬ……と言いたげな表情でこちらを見ている恋人がいた。相変わらず寝起きはいいらしい。機嫌がいいかは微妙なところだが。
「……………おはよう」
少しかすれた声で挨拶をすると「なんかCM観てる気分。おはよう」とハキハキとした声が返ってくる。寝起きの頭に直ぐに理解出来ないことを言わないでほしい。CMとは何のことだ。気になる、気になるが眠い。とんでもなく眠い。欲求にそのまま従おうと空いていた二人の隙間を埋めて目を閉じる。ぬくい。柔らかい。ポカポカする。人カイロ最高。意識をそのまま温かい方へ飛ばそうとしたが「てやっ」という気の抜けたかけ声と共に背中に走った冷たい感触。呻き声を上げて身体を捩るが密着した状態では何の抵抗にもなっていない。人カイロの逆襲だった。「ちこうよれ、ちこうよれ~」と人カイロは楽しげだ。
「おきる、おきるから」
「うわ、背中スベスベだ」
「セクハラはやめてくれ」
背中に突っ込まれた手を無理やり抜く。もう少しだらだらしたかったと目で訴える。「早く覚醒しないと私の頭が火を吹くよ」想像したらなかなか愉快な光景だったが、前に頭をぶつけ合ったときナマエは割とけろっとしていて自分だけがダメージを受けたことを思い出したのでしぶしぶ身体を起こした。続いてナマエが起き上がる。
「おはよう。京介」
二度目の朝の挨拶は柔らかく甘い響きが乗っていて、再びそれごと包み込んで眠りたい衝動に駆られたがぐっと抑えた。
「おはよう、ナマエ」
***
「しょくぱんまんってドキンちゃんのことどう思ってるんだろうね」
カリッと焼けた食パンを頬張りながら自由に会話を繰り広げるナマエ。一瞬口に運ぶのをためらった烏丸だが「妹とかそんな感じじゃないのか」と返して端っこからかじる。気にしていたらきりがない。因みに烏丸はしょくぱんまんとドキンちゃんの関係性など全く知らない。
「妹かぁ。それは切ないねえ」
牛乳をぐびっと飲む姿は切ないなんて感情とは程遠かった。多分適当なことを言っている。「食パンってあんこもマヨネーズも合うから凄いよね。和洋折衷の権化だよ」食パンに関心を寄せ過ぎだ。そう思いつつ烏丸も牛乳を口にする。
カリカリに焼いた食パンに牛乳、スクラブルエッグにレタスといった定番の朝食メニュー。「京介卵焼いて! 私が食パン焼くから! レタスも千切るから! トマトなんかないよ! 高かった!」と楽な方を取られ、眠気半分で作ったスクラブルエッグは少し卵が固い。ちらりとナマエに視線を向けるが、全く気にしていない様子で美味しそうにもりもり食べていた。作りがいのある人間である。ふ、と口角を緩めて再び牛乳を口にした。
「……うわぁ、またCMやってる」
「さっきも思ったがCMって何だ」
「なんてない仕草が絵になってますね色男って意味」
「褒められている気がしないんだが」
周りからイケメンやら男前やら言われるがナマエには見た目関連でプラスに働いたことはほぼない。「モテすぎでしょ……イケメン凄いな……女の子ほいほいだ……」と付き合い初めの頃は引かれたぐらいだ。付き合う前からネタ感覚でイケメンだ何だと言われていたが、それが全く通じなかった相手に言われても気分は上がらない。
「褒めてるわ。寝てるときも格好良くて一人で起きてるの辛かったし。ドキドキするからちょうど起きてくれてよかった」
「…………」
無言でマグカップに手を伸ばすが先ほど飲み干したので中身は空だった。ああ、やっと、目が覚めた。突拍子のない言動に慣れたつもりだったがそんな事はなかった。朝一番で目にした怪訝な表情にそんな意味が隠されていたなんて気づけるはずがない。前言撤回する。好きな相手に格好良いと言われて気分が上がらない男はいない。
「京介足りた? パン焼こうか?」
「いや、大丈夫だ。朝はこのくらいでちょうどいい」
むしろ今は胸がいっぱいで入らない。その言葉は飲み込んで烏丸はフォークでレタスを刺した。