本編
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その後、双方ともにモニタリングに戻ったがナマエは「あれほど拗ねる必要あったか?」と自問自答していた。拗ねていた自覚はあったのである。つまらない、楽しくない、面白くない。の三連発。烏丸が誰かとデートする。……もう響きがダメである。むむ、とモニターを睨む。とりあえず今は仕事だ。
諏訪隊は他チームと連携をとって情報交換しているところだ。情報共有したほうが上位チームと争えるからだ。古寺隊、歌川隊の2チームだ。互いに能力データの開示、古寺隊とはブレードの威力について。修の場合レイガストの方が防御力が上がること。最初の初撃を意識した方が良いこと。提案者発言者に適度に加点いれる。今日は演習シミュ練習をガッツリやるようだ。就寝までそれは続いた。
「おわり~レイジさん、お疲れさま~」
「お疲れ」
「ところで聞きたいことあるんですけど」
「なんだ」
「ゆりちゃんが条件つきでデートしたら気分的に面白くない?」
バギッ
手持ちのペンが粉砕された。愚問だったらしい。すまんペン。ペンに謝罪したあとレイジの顔からそっと視線を外した。顔が怖かったのである。メラメラと怒りのオーラが出ていた。
なるほど。やっぱりつまらないものなんだ。ナマエはそうやって開き直ったが、レイジがゆりに恋心を抱いているからという前提条件を忘れている。アホである。
「レイジさんナマエさんお疲れさまです」
そこでやってきたのは隣のブースの烏丸。ナマエのご機嫌とりに来たのだが何故かナマエよりレイジの方が怒り狂っていて、ナマエはけろりとしている。なんだこれは。
「京介。あの条件は絶対に守ってやれ」
「? もちろんです」
この件を自分に置き換えたらと考えると断然ナマエの味方になったレイジであった。まだ怒ってて怖い。
「ナマエさん、機嫌直りました?」
そう改めて聞かれると恥ずかしいものがある。少しもじもじして頷くと頭を撫でられた。それをそのまま享受する。ささくれ立った心がおちつく。このセラピーいいかもしれない。そもそもの原因を忘れてナマエはそう思った。それを見ていた周りの面々は「またやってるよこいつら」と思っていた。
「ナマエっ」
「どしたの小南?」
「あ、あたしのこと忘れないでね!」
「どんな心配? 忘れるわけないでしょ」
「絶対よ!」
「うん」
おかしなことを聞くなと思いつつ頷く。小南はたまに恋愛は友情を凌駕してしまうことを知っていた。その辺の情緒はナマエより大人なのである。一方で烏丸には威嚇を返した。姉のような友達を取った張本人なので。烏丸はしれっとその威嚇をスルーした。小南は怒った。このブース怒っているものばかりである。
「ナマエさん飯行きましょ」
「…………デートですか?」
「これはデートです」
「……………うん」
小さく頷いたナマエになんだクソ可愛いなと手を取った烏丸。そっと握りかえされて満足した。デート騒動も終わりよければ全てよしである。実際はまだ始まってないことには目を瞑った。
「え、あ小南たちは?」
「デートなんで」
「ええ……なんかそれ言っておけばいいと思ってない?」
「思ってないすよ」
確信をついてきたナマエを適度に流す。たまに鋭いんだよなと思いつつ小さい手をゆったり引っ張った。
三歳差。性差がつき始めたのはいつぐらいだっただろうか。出会った時点ではまだナマエの方が背が高かった。好きと気づいたときには少し抜いてたが目線は大体同じくらい。それが悔しかったのは覚えている。迅との身長差、体格差が理想にみえてヤキモキしたものだ。あと一センチ伸びれば当時の理想がやってくる。まだ高校一年。一センチくらい伸びるだろう。まあ今でも十分なのだが。支えるくらいなんてことない体格差になった。心身ともにそうありたいと烏丸は思った。
さてと。ラウンジに入る前にこの手は離さないと。まだ堂々と全面に公表できる関係性ではない。A級の面々は呆れたり興味を持ったりしてもナマエに何かするような人間は一切いない。なんならした場合の返ってくる報復も知っている。だがその他大勢はどうか分からない。ナマエの悪名や武勇伝は知れ渡っているが……そこの判断が難しい。だから手を離すのが無難だ。名残惜しくなりつつ手をするりと離すと「えっ」と返ってきた。また可愛い反応して……と言葉を返す。
「両手に料理持たなきゃいけないでしょう?」
「ああ、たしかに」
納得するのが早すぎる。もっと惜しんでいいんだぞ。離したくせにそんなことを思いつつラウンジに入って食券売り場へ向かう。ラウンジは適度に空いていた。
「マグロカツにしよ」
「決めるの早いっすね」
「こないだ生駒に一切れ貰ったときにハマった」
「へえ」
ご飯シェア。それくらい自分もやっている。特に意識せず生駒はやっているのだろうけど。なんなら誰とでもしそうだが。烏丸はトンカツにした。単純に好物だからだ。シェアは狙ってない。
食券を発券して番号のついたブザーを入れ替えに渡される。ドリンクバーからお茶を入れて人通りの少ない席を選んで真正面に座った。目が合うとふんわりと目元を緩めて笑った。それはもう嬉しそうに。またこの人は……。隣に座りたくなるようなことしないでほしい。人通りが少ない席でよかった。そんなことを思いながら「明日は演習シミュ最終日ですね」と無難な言葉を返した。
「そうだね。策を考えてたのは王子のとこと北添のとこと諏訪さんのとこか。どうなるかな?」
「上手くハマるといいんですけどね。修のところは特に」
「ね。あとは千佳ちゃんが心配かなぁ」
「能力データが開示されましたからね。どう捌くか見られるんでしょうけど」
「即席チームに甘えるのはまだ無理そうだなぁ。玉狛でだってこっちが全面に甘やかしてやっときたか? くらいだもん。もっと甘えてくれたらいいのにね」
「そうすね」
「遊真とヒュースは……まあいいか」
「急に雑」
「なんとかなるでしょあの二人は」
「若村隊最下位ですよ」
「若村……がんばれ……」
「そっちに感情移入するんすか」
まあ分からないでもないが。
「ニノさんは千佳ちゃんが気づくまで言わなさそうだしな」
「……そうすね」
「なんで今微妙な顔した?」
「二宮さん呼びにしませんか?」
「まだ言うか。しません。……………ヤキモチですか?」
「珍しく察しがいい」
少しびっくりした。鈍感を背中に背負ってると思っていたので。
「まじか…………うーん、」
どうしたらいいんだろう? と顔が言っている。こうやって悩んでくれるだけで嬉しい。それに自分の嫉妬深さに歩調を合わせるときりがないという自覚はあるのでそこまで深刻にならなくてもよいのだが。まあ口にはしないが。確信犯である。そんなことを考えていたときだった。
「……………京介?」
「っ、」
待って。待ってくれ。それはまだ駄目だろう。顔に熱がこもるのが分かる。完全に不意打ちだった。思考回路は分かる。あちらが変えられないのだからこっちを変えればいいんだろうとなったことは。でもこちらは急に殴りかかられたような勢いだ。それほどまでに衝撃的だった。
「…………やっぱ照れるからなしでいい?」
言葉の通り照れくさそうにしている。だから可愛いことをするなと言っている。返事の代わりにちょうどよくブザーが鳴った。ナマエのものだった。
「あ、とってくるね」
そう言って席を立つ姿を見送って。見えなくなった所で顔を突っ伏した。……こんなに青臭いと思わなかった。名前呼び。半端なかった。
自分のブザーが鳴るのをどこか他人事のように見ていた。
諏訪隊は他チームと連携をとって情報交換しているところだ。情報共有したほうが上位チームと争えるからだ。古寺隊、歌川隊の2チームだ。互いに能力データの開示、古寺隊とはブレードの威力について。修の場合レイガストの方が防御力が上がること。最初の初撃を意識した方が良いこと。提案者発言者に適度に加点いれる。今日は演習シミュ練習をガッツリやるようだ。就寝までそれは続いた。
「おわり~レイジさん、お疲れさま~」
「お疲れ」
「ところで聞きたいことあるんですけど」
「なんだ」
「ゆりちゃんが条件つきでデートしたら気分的に面白くない?」
バギッ
手持ちのペンが粉砕された。愚問だったらしい。すまんペン。ペンに謝罪したあとレイジの顔からそっと視線を外した。顔が怖かったのである。メラメラと怒りのオーラが出ていた。
なるほど。やっぱりつまらないものなんだ。ナマエはそうやって開き直ったが、レイジがゆりに恋心を抱いているからという前提条件を忘れている。アホである。
「レイジさんナマエさんお疲れさまです」
そこでやってきたのは隣のブースの烏丸。ナマエのご機嫌とりに来たのだが何故かナマエよりレイジの方が怒り狂っていて、ナマエはけろりとしている。なんだこれは。
「京介。あの条件は絶対に守ってやれ」
「? もちろんです」
この件を自分に置き換えたらと考えると断然ナマエの味方になったレイジであった。まだ怒ってて怖い。
「ナマエさん、機嫌直りました?」
そう改めて聞かれると恥ずかしいものがある。少しもじもじして頷くと頭を撫でられた。それをそのまま享受する。ささくれ立った心がおちつく。このセラピーいいかもしれない。そもそもの原因を忘れてナマエはそう思った。それを見ていた周りの面々は「またやってるよこいつら」と思っていた。
「ナマエっ」
「どしたの小南?」
「あ、あたしのこと忘れないでね!」
「どんな心配? 忘れるわけないでしょ」
「絶対よ!」
「うん」
おかしなことを聞くなと思いつつ頷く。小南はたまに恋愛は友情を凌駕してしまうことを知っていた。その辺の情緒はナマエより大人なのである。一方で烏丸には威嚇を返した。姉のような友達を取った張本人なので。烏丸はしれっとその威嚇をスルーした。小南は怒った。このブース怒っているものばかりである。
「ナマエさん飯行きましょ」
「…………デートですか?」
「これはデートです」
「……………うん」
小さく頷いたナマエになんだクソ可愛いなと手を取った烏丸。そっと握りかえされて満足した。デート騒動も終わりよければ全てよしである。実際はまだ始まってないことには目を瞑った。
「え、あ小南たちは?」
「デートなんで」
「ええ……なんかそれ言っておけばいいと思ってない?」
「思ってないすよ」
確信をついてきたナマエを適度に流す。たまに鋭いんだよなと思いつつ小さい手をゆったり引っ張った。
三歳差。性差がつき始めたのはいつぐらいだっただろうか。出会った時点ではまだナマエの方が背が高かった。好きと気づいたときには少し抜いてたが目線は大体同じくらい。それが悔しかったのは覚えている。迅との身長差、体格差が理想にみえてヤキモキしたものだ。あと一センチ伸びれば当時の理想がやってくる。まだ高校一年。一センチくらい伸びるだろう。まあ今でも十分なのだが。支えるくらいなんてことない体格差になった。心身ともにそうありたいと烏丸は思った。
さてと。ラウンジに入る前にこの手は離さないと。まだ堂々と全面に公表できる関係性ではない。A級の面々は呆れたり興味を持ったりしてもナマエに何かするような人間は一切いない。なんならした場合の返ってくる報復も知っている。だがその他大勢はどうか分からない。ナマエの悪名や武勇伝は知れ渡っているが……そこの判断が難しい。だから手を離すのが無難だ。名残惜しくなりつつ手をするりと離すと「えっ」と返ってきた。また可愛い反応して……と言葉を返す。
「両手に料理持たなきゃいけないでしょう?」
「ああ、たしかに」
納得するのが早すぎる。もっと惜しんでいいんだぞ。離したくせにそんなことを思いつつラウンジに入って食券売り場へ向かう。ラウンジは適度に空いていた。
「マグロカツにしよ」
「決めるの早いっすね」
「こないだ生駒に一切れ貰ったときにハマった」
「へえ」
ご飯シェア。それくらい自分もやっている。特に意識せず生駒はやっているのだろうけど。なんなら誰とでもしそうだが。烏丸はトンカツにした。単純に好物だからだ。シェアは狙ってない。
食券を発券して番号のついたブザーを入れ替えに渡される。ドリンクバーからお茶を入れて人通りの少ない席を選んで真正面に座った。目が合うとふんわりと目元を緩めて笑った。それはもう嬉しそうに。またこの人は……。隣に座りたくなるようなことしないでほしい。人通りが少ない席でよかった。そんなことを思いながら「明日は演習シミュ最終日ですね」と無難な言葉を返した。
「そうだね。策を考えてたのは王子のとこと北添のとこと諏訪さんのとこか。どうなるかな?」
「上手くハマるといいんですけどね。修のところは特に」
「ね。あとは千佳ちゃんが心配かなぁ」
「能力データが開示されましたからね。どう捌くか見られるんでしょうけど」
「即席チームに甘えるのはまだ無理そうだなぁ。玉狛でだってこっちが全面に甘やかしてやっときたか? くらいだもん。もっと甘えてくれたらいいのにね」
「そうすね」
「遊真とヒュースは……まあいいか」
「急に雑」
「なんとかなるでしょあの二人は」
「若村隊最下位ですよ」
「若村……がんばれ……」
「そっちに感情移入するんすか」
まあ分からないでもないが。
「ニノさんは千佳ちゃんが気づくまで言わなさそうだしな」
「……そうすね」
「なんで今微妙な顔した?」
「二宮さん呼びにしませんか?」
「まだ言うか。しません。……………ヤキモチですか?」
「珍しく察しがいい」
少しびっくりした。鈍感を背中に背負ってると思っていたので。
「まじか…………うーん、」
どうしたらいいんだろう? と顔が言っている。こうやって悩んでくれるだけで嬉しい。それに自分の嫉妬深さに歩調を合わせるときりがないという自覚はあるのでそこまで深刻にならなくてもよいのだが。まあ口にはしないが。確信犯である。そんなことを考えていたときだった。
「……………京介?」
「っ、」
待って。待ってくれ。それはまだ駄目だろう。顔に熱がこもるのが分かる。完全に不意打ちだった。思考回路は分かる。あちらが変えられないのだからこっちを変えればいいんだろうとなったことは。でもこちらは急に殴りかかられたような勢いだ。それほどまでに衝撃的だった。
「…………やっぱ照れるからなしでいい?」
言葉の通り照れくさそうにしている。だから可愛いことをするなと言っている。返事の代わりにちょうどよくブザーが鳴った。ナマエのものだった。
「あ、とってくるね」
そう言って席を立つ姿を見送って。見えなくなった所で顔を突っ伏した。……こんなに青臭いと思わなかった。名前呼び。半端なかった。
自分のブザーが鳴るのをどこか他人事のように見ていた。