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幼少期 運命
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病室から出た怜奈は談笑スペースのような場所に腰を下ろした。
オールマイト達もその後に続き、相澤とマイクは座っている彼女の後ろに立ち、オールマイトは怜奈の隣に腰を下ろした。
「怜奈…」
「消太お兄ちゃん…」
相も変わらず純粋な瞳で自分を見上げる怜奈に、相澤はぐっとたじろきそうになるのをなんとか堪え、そのまま彼女の前にしゃがみこむ。
「…誠さんが亡くなったのは、俺のせいなんだ……」
「え…?」
「っそれはちげぇだろ消太!!!」
「違わねぇよっ!!俺があそこで動いてれば、あの人は死ななかった!!俺があそこで、判断をミスらなければ、きっと…………!」
いつもの冷静さはなく、声を荒らげる相澤は、事件の場に居たという
が、それは少し離れた場所で、どんな状況かもわからなかった。
自分と相性の悪い敵だったらそれこそ足でまといになる。情報が足りないため迷ってしまったのだ
そして現場に行ってカレの目に映ったのは、民間人を守りながらも敵とともに果てる憧れの人の姿だった
すぐに周りのヒーローが戦闘不能になった敵を確保しなんとかその場は収まったが、相澤はその間1歩も動くことが出来なかった
ただ崩れ落ちていく彼を、見ていることしか出来なかった
「すまない…すまないっ……!!」
片手で目元を覆う彼の手の隙間からは、いくつもの涙が溢れ出ている。
そんな彼の姿に、怜奈はおもむろに手を伸ばすとその頭を優しく撫でた。
それに思わず相澤が濡れた顔のまま顔を上げると、怜奈は再び微笑みながら言うのだ
「パパの為に泣いてくれて、ありがとう」
「!!」
「パパが死んだのは、お兄ちゃんのせいなんかじゃない。だから、責めないで…」
誰も悪くなんてないんだよ
なんで、と思わず出てしまいそうになるが、それらは音にならず少女の砂糖菓子のような甘さに溶かされて消えていき体は目の前の少女を力いっぱい抱きしめ
そして誓う
この先、何があろうとも、自分が必ずこの子を守り抜くと
相澤がゆっくりと体を離すと、オールマイトが怜奈、と優しくその名を呼ぶ。
そして一言だけ、言った
泣いてもいいんだよ、と
「っダメだよ……私が泣いたら、パパきっと…」
「そうだね、でも大丈夫。私が君を隠すから。」
「俺たちで誠さんが来ないよう見張っといてやるからさ」
マイクがそう言い、相澤も頷く。
そして怜奈が何かを言う前に、オールマイトはその腕に少女をすっぽりと覆い隠した。
暖かいその腕に、亡き父の面影を感じて、ポロリ、ポロリと1粒ずつ涙が零れ出すとそれらは1つの道となり、しとどにオールマイトの胸元を濡らしていく
押し殺すように、噛み締めるように、声もあげずただただ小さく震えながら泣き濡れる少女に、亡き親友を思いオールマイトも涙を流し、後ろにいる二人もまた雫を零したのだった
君の娘は、とても強いよ………
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誠が死んでから一夜経ったその日、日本だけでなく海外のニュースでも彼の死で持ち切りだった
多くのファンが涙を流し、心を痛め、彼の死を嘆いた
それらはもちろん緑谷と爆豪にも知り渡り1人残された怜奈のことが心配でたまらなかった。
学校に来ない怜奈に胸がキリキリと痛み、何度か家に寄ったがいつ行っても少女の姿はなかった。
怜奈が学校を休んで1週間
夕方になり緑谷宅のチャイムが鳴り響いた。
「あらやだ、ごめんね出久代わりに出て」
「うん!」
荷物かな?と思いドアを開けた先に怜奈が立っていた。
「!!怜奈ちゃん?!」
「久しぶり、みっちゃん」
思わず驚いてコケそうになるのをなんとか踏ん張って堪えると大丈夫?もういいの?と矢継ぎ早に投げかければ落ち着いてと怜奈が笑いながら声をかけるのに緑谷は久しぶりに見れた彼女の笑顔にパァっと自分の顔にも笑みが宿る。
「待ってね、今お母さん呼んで…」
「…違うの、みっちゃん」
途端、彼女は儚げな表情で告げる。
お別れを、言いに来たのだと。
瞬間、ひゅっと喉から変な音が出る。
無個性と診断された時と全く同じ衝撃がズガンっと脳天に打ち込まれた
ようやく絞り出せた声は、なんで?どうして?と未だに状況が判断出来ていないから出る言葉だった
「…あの事件から、パパの親友の所でお世話になるの。だから、もうここには戻れない…」
「そ、んな………」
「みっちゃんに黙ってお別れなんて、できないから…言いに来たの…」
「やだ、やだよ……行っちゃやだ…!」
いやだいやだと子供ゆえの我儘に首をふり彼女の手を握り離すものかとさらに力を込める。既に涙腺は崩壊しまるでこの世の終わりかのようにただ涙をこぼす。
「みっちゃん」
ぎゅっと手を握り返される感触に緑谷がハッと前を向けば、彼女は大丈夫だよといつものように優しく声を掛ける。
「約束しよう、みっちゃん。そうすればきっと会えるから」
「っ約束…?」
「必ず、2人でヒーローになろう」
「!!」
曇りない瞳で言い切った怜奈に緑谷は無理だと視線をしたに向ける。
自分は無個性で、ヒーローなんかになれっこないと
「私は、信じてる。あなたが誰よりもヒーローになれる可能性があるって!」
「!!」
「だから約束しよう!2人でヒーローを目指そう!そうしたらきっと、また会えるから…」
みっちゃんのノートは、無駄なんかじゃない……あなたは、ヒーローになれる。
そう言って微笑みながら一筋の光を流す彼女の姿が、今でも脳裏に残っている。
誰からも無理だと言われてきたことを、心の底で一番欲しいと思っていた言葉を
何よりも大切な人に言ってもらえたのだから
それからどうやって別れたのかは覚えてはいないが、玄関から帰ってきた自分の涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て母親が大変驚いていたのは覚えている。
そして彼は再び誓ったのだ。
必ず彼女の隣に立てるような
相応しい者になってみせる
彼女と、再び会うために