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「(あの時……貰った薬だとヴィランは言っていた………とういことは、違法薬物の流通が再び活発化してきているの…?)」
無事事件を解決した後、雄英へと戻る為に"翔"で飛行を続ける怜奈は3つ目の事件の際に犯人がこぼしていた言葉が気になっていた
「(かなり厳しく取り締まられていた筈だけど…オールマイトがいなくなってから、色んなところで綻びが出てきているのも事実…違法薬物もそのうちの一つだとしたら、今回の事件もなにか関連性があるのかもしれない)」
バサリと音を立てる羽音に目を向ければ、もう目と鼻の先まで自身の帰る場所が迫っていて時計を見れば5時間目が始まる頃であった
「(やっぱり気になる…
とにかく、今回パトロールした地域のヒーローにもその可能性があるかもしれないことを報告書にまとめて相談しなければ、と降り立った屋上から出て提出書類を手に職員室へと向かう
「(私が行える範囲内でより正確な情報や大元を探る動きができるように相談してみてもいいかもしれないな…でもそうなるとやっぱり学校側からの判断もいるだろうし…今の私の立場じゃ難しいよね…)」
とりあえず何事も相談だ!と考えながら授業が始まった人通りのない廊下を進み、職員室の扉をノックする
シーン…
「…あれ?」
いつもならすぐに返ってくる返事が訪れないことに首を傾げつつもう一度同じ音を響かせるも、やはり返答はなく少々不安に思いながらも扉に手をかける
「失礼します…あの、せんせ」
『快挙!!初パトロールで事件・要請連続スピード解決!!』
「…………い?」
かなりの音量で自身の鼓膜を刺激した言葉に固まる怜奈を置いて、職員室に設置してある大きめの液晶画面は続けて言葉を流し続ける
『仮免許取得後本日からインターンを開始しパトロールを行っていた雄英高校ヒーロー科1年の神風 怜奈さんこと、ヒーロー名
『集団窃盗犯に強盗団、人質の解放…どれも厄介なヴィラン犯罪ですね』
『連続解決…彼女は今日が初めての活動との事でしたが…』
『ええ、その他にも交通事故の回避、転落事故の救助、病院を訪問しての治療行為も行ったとか。敵退治においては初めての活動とは思えないほどの正確さとスピードだったと現地のヒーローも大絶賛でした。事件当時街にいたヒーローや住民からもインタビューを聞いています』
「いやまじほんと!めっちゃ強かったッス!!」
「いつの間にかヴィランが倒れてて…」
「目を開けた時には全員捕まえてたよな!」
「体育祭や神野でもすげえなって思ってたけど、実物はオーラめちゃくちゃすっげえの!」
「そうそう!実際初めて事件の現場見たけど、怜奈ちゃんが来てくれたら体がもう大丈夫だって思える感じ?がしたんだよね」
「カリスマってああいうのを言うんだな〜って思ったよ!」
「我々プロとも遜色のない素晴らしい動きでしたっ」
「現場を即座に理解し、到着してすぐの犯人確保の無駄のない完璧な動きは目を見張りました」
「その後の引き継ぎや被害者へのフォローも、最早学生とは思えないほどのレベルでしたよ」
「あのような若手がいるのは、同じヒーローとしてとても心強いですね!」
「それになりより…」
「「めっちゃくちゃに可愛い」」
「というか美しい」
「………んん?」
怜奈が間の抜けた声を出しても職員室にいる教師陣全員が釘付けになっている画面は止まることなく、いつの間に撮られていたのかヴィランと対峙している怜奈の姿を液晶いっぱいに映し出した
『──────怪我はない?お嬢さん』
少女の体を横抱きにして微笑む姿から毒を無効化する瞬間と映像は流れ、一度場面が切り替わり最後再び少女へと笑みを浮かべながら花を咲かせる瞬間がバッチリ撮られていた
『またね、お嬢さん』
『……………いや、これ……かっこよすぎません?』
『そう!そうなんですよ!!こんなにも可愛いのに更にこんなイケメンなことされたらもうイチコロですよっ』
『戦闘時に垣間見る表情が普段とは一変して本当に美しい…とんでもないギャップですね』
『花を受け取った少女からもインタビューを受け取ってます』
「怖かったでしょう?大丈夫だった?」
「うん、捕まった時は本当にすっごく怖くて、体も動かなくって…でもね!誰か助けてって思った時に天使のお姉ちゃんがビュッてヴィランの車を切っちゃってね、私のこともすぐに助けてくれたの!!」
「本当に感謝してもしきれません…もうこのまま娘とは会えなくなってしまうのではないかと思いました…本当に、ありがとうございました…!」
「お母さんも無事で何よりです…そのお花、ジュエルウィッチがくれたんだよね?」
「うんっ!ほんとに天使さんみたいにすっごく優しかったんだよ!頑張ったねって、頭撫でてくれてね、王子様みたいに強いのにお姫様みたいにとっても綺麗だった!!」
「ええ、そうね。お花も帰ったら生ようね」
「うん!宝物にするのっ!!」
「インタビューありがとうございました」
そして再度画面が切り替わると、今度は3つ目の事件の様子を映し出す
『この子を侮辱する資格なんてないわッ!!』
『───────爆ぜろ』
『言ったでしょう?大丈夫って』
『人のために怒るところが彼女の人柄を表してますね』
『個人的には"爆ぜろ"の瞬間めちゃくちゃ好きです…私も爆ぜて欲しい…』
『いやあ、最後の勝気な感じも捨てがたい』
『………これ、V持ち帰れます…?』
『分かりますそうなりますよね…キュンキュンが止まりません…こちらもインタビュー取ってます』
「今日は災難でしたね」
「ええ…でも、ジュエウィーに助けて貰ったことで、災難だったけれど人生で最高の日になりました」
「ジュエウィー?」
「ぼっ僕が言ったの!ジュエウィーって!」
「僕も大変だったね…そうなの?」
「本当は緊張して噛んじゃったんだ…でもねっジュエウィーがいいねって言ってくれたんだよ!!」
「本人公式で?!」
「はい、動画も撮ってしまったんですけど…」
「えっ?見せて頂いてもいいですかっ?」
何故か食い気味に反応した現場のアナウンサーは差し出された液晶に前のめりになるため、カメラも慌ててピントを合わせスマホ画面を映し込む
見せられた動画は、まるで彼女達の周りに光が舞っているかのように温かく、怜奈の言葉の一つ一つは小さな少年の瞳を何倍にも輝かせているのがよくわかる
『これから"
『えっ?!で、でも…ま、間違えて噛んじゃっただけだし、もっとかっこいい呼び方とか…』
『"ヒーロー仲間"が付けてくれた名前だもの』
『、』
『私が…そうしたいの。例え間違いからだったとしても、私はすっごく嬉しかったよ!君と出会えて授かった"特別な名前"だから』
ダメかな?
虹色を優しく歪ませる美しい魔女に魅了された少年は、全身を真っ赤に染め上げて言葉が出ない代わりに小さな頭を何度も上下に動かしてみせる
『ふふっ………またね、ヒーロー』
最後、小さなヒーローを勇気づける為のブローチを咲かせ、その場に数枚の純白を残して消えたところで動画は終了した
少しの間の後で余韻から覚めたアナウンサーがは、と我に返る
「あっありがとうございました!貴重な動画を…」
「……僕、身体もみんなと比べたら小さくて、個性だってそんなに強いわけじゃなくって…」
ギュウ、と少年の胸の内を表すかのような服のシワに母親が声をかけるよりも先に
大きな瞳が強く上をむく
「っでも!ジュエウィーが僕のこと、"最高にかっこいいね"って……っ待ってるって言ってくれたから!!」
それは、直視するにはあまりに眩しく、純粋な
「絶対にっ、ジュエウィーと一緒に戦えるヒーローになるんだ!!」
同時に光る自身で作り出した国花に、画面を見ていた怜奈の虹色に慈しみを滲ませる
「───一緒に、頑張ろうね」
噛み締めるように、優しく呟かれた声は静まり返っていた職員室にいた教師陣全員の視線を今更ながらに全て集めていた
「あっ…す、すいません!ノックはしたんですが…ただいま戻りました!」
「……じゅ、」
「…?」
「「ジュエウィイイイイイイイ!!!!」」
「…えっ?!」
勢いよく向かってくる教師陣に思わず瞳を瞬かせ次いで開いた視界は、何故か彼らのはるか頭上の景色を映し出していた
「…ほえ?」
ズシャアアアアアアアアッ
「「顔面!!」」
彼らが床へと雪崩込むのを横目に宙に浮いた天使は、己を引き寄せた人の腕の中へと危なげなく納まった
ふわっ
「───怜奈」
「消太先生!」
パァ、と明るくなる顔色のまま自身を抱く彼を見上げようとするも、虹色が映すのは彼が纏う黒色で、頭部に回された大きな掌で行動を制限される
「…先生……?」
「………すごいな、おまえは」
「、…」
「本当に、凄いよ」
なんて言葉を言えば伝わるのかも分からない胸の内から湧き上がる感情に、ただまとまらないそれらが口から溢れ出て
上手く言葉を使えない子供のようだと少し笑える
──────ただそれでも、
敵を圧倒する強さも
人々を安心させる柔らかな笑みも
全てを魅了する立ち振る舞いも
畏ろしさを含みながらも、際限なく美しく光り輝く瞳も
──────己の心を、照らしてくれるのだと
「"最高のヒーロー"の、いいスタートだったよ」
「っ…うん!」
僅かに引き攣る目元を映したダイヤが一瞬だけ細まって、すぐに輝かんばかりの歪みを作り出すのにもう一度その身を抱きしめようとしたところで少々荒く細い体が引き抜かれる
「チッ…」
「わっ」
「─────怜奈!」
己の腕が空ぶった事に相澤が悪態を零すが、興奮と歓喜を織り交ぜたような明るい声が自身を呼ぶのに怜奈が後ろを振り返ったところでその体の方向が瞬時に変わった
「、オールマイト先生っ」
「
長い腕がめいいっぱい天使の体を掲げて、時が経っても変わらない強いサファイアに雫が滲んでいることがわかったが
それ以上に、宝石が輝いているのに目を引かれて彼女も同じ輝きを纏う
「見ててくれたんだね…」
「…思わず見惚れてしまうほど、美しかったよ」
流したままのテレビから速報として上げられた見出しの文字を理解する前に、昔インタビューをしてもらったこともある有名アナウンサーが興奮気味に零した名前は、彼が遺した贈り物
輝く名が耳の中で木霊する間にも、瞳は画面を捕らえて離さなかった
───────もう、大丈夫だ
───────もう大丈夫、私がいる
確かに、重なりを見た
輝かんばかりの安堵は、あまりに強く人々の心を惹きつけるが故の"圧倒的な優しさに溢れた"支配力からなのだと気付かされる
君が……"君たち"が、次の光だと
誰よりも早く
誰よりも美しく
誰よりも優しく
──────この天使は、道を掲げてくれた
「丁度中継が流れていてね!みんなで応援していたんだよ!!」
「ほんとっ?」
「ああ!最高にcoolだったぜ!ねっみんな!!」
オールマイトの言葉に床に雪崩こんでいた教師陣はすぐに体を起き上がらせあっという間に彼らの周りを取り囲んだ
「YEAH!!!俺ほどのDJが実況もできねえほど釘付けになっちまう超━━━━━━━スペシャルでクールな初ライブだったぜ!!」
「マイクお前初め叫びやがっただろうが」
「そりゃそうだろお?!つかイレイザー!!お前はまあた抜け駆けしやがって!俺様のキュートな顔面が潰れちまうだろ!!」
「チッ浅かったか」
「シヴィ━━━━━━━━━!!!」
「凄かったですよ怜奈さん!素晴らしい初デビューでしたねっ」
「能力ノ向上ガ見テ取レタナ」
「それももちろんですが、民衆に対してのあのパフォーマンス!まさに神対応!」
「その場の雰囲気が一気に明るくなっていたのがよくわかったよ」
「初めての実戦で、よくあそこまで動けたな…」
「仮免試験でのイレイザーの報告や通形との対戦のV見てはいたが…ほんとに驚かされるよ」
「この事件のあとも色々したんだろ?ネットも色んな場所で怜奈を見たってえらいこっちゃになってるよ」
「既に聖地巡礼してるヤツいるな」
「おいおい待て待て待てこの画像は無断か?無断掲載だな!?」
「かわい、じゃない!!なにこれ沢山写真がアップされてるし!!あっ!?オレの嫁って発言してる人もなにこれ!!!?ちょっと校長━━━━━━!!!!!至急対応して頂きたいんですが━━━━━━━!!!?」
「オールマイト先生血が!!!!」
「縛る」
「殴る」
「鼓膜とサヨナラ」
「埋葬」
「地の果てへ」
「海の藻屑」
「えっじゅ、呪文……?」
その後怜奈が報告と相談、今日の授業の補習が行えたのは30分程経ってからであった
「…はい!確認終わりました、さっき聞いてくれたこと以外に何かわからない点や疑問点はありますか?」
「いえ、今は大丈夫です!お時間いただきありがとうございました、13号先生」
「ほとんど見守りだけですし、逆に雑談しちゃってごめんね…でも怜奈、本当に授業一から行わなくてもいいんですか?このやり方じゃ怜奈への負担が大きいでしょう?」
2人だけだし、という理由で上のマスクを外した13号が心配そうに聞いてくるのは怜奈のインターン中の座学の授業の補填についてだ
本来ならばインターン後に参加できなかった授業を教師達が個別で行うのだが、怜奈はその時間を貰うのが申し訳ないと先に授業内容のカリキュラムを教えてもらい、その部分を予習し既存の問題集を解き合格点を取り単位を取得する…というやり方を提案したのだった
「朝早かったり、もしかしたら夜までかかるものも今後出てくるかもしれません…色んなところを回れば報告書もいくつも書かなければならないですし、予習の時間の確保も難しくなるでしょう…僕達のことは気にしなくていいんですよ?」
「…基礎の教科はほとんど予習が済んでいますし、疑問点をお聞きできる時間も設けてくださっているので…1度これで続けさせてください」
「でも、」
「もし負担に感じた場合や、体調が思わしくないと感じたらすぐに報告しますから…」
お願いします、と頭を下げられてしまえば、13号からはもう何も言えなくなってしまう。
できれば彼女の負担を減らすため他生徒と同じような対応に変更させるよう某先輩教員達に口酸っぱく言われているのだが…日々の授業での正答率や今日の問題の進み具合から見て彼女が予習をほぼ終了させていることは間違いない
何よりこの子が望んでいるならと、13号はその希望を無下にすることなど到底できるわけもないのだ
彼女もまた、この天使に甘い一人であるのだから
「うーん…………わかりましたっ…!先輩にも僕の方から伝えておきます!」
「!ありがとうございますっ、私からも再度消太先生達にお願いします!」
「でも、少しでもしんどく思ったらすぐに教えてくださいね!体調を崩してしまったら、せっかくの怜奈の素晴らしいパフォーマンスも損なわれてしまいますから」
「はい、心得ました!皆さんにご迷惑をおかけしないようにも、体調管理はよりいっそう気をつけます」
両手を握り13号を見上げる瞳はきらきらと彼女の大好きな輝きを放っているが…言葉の羅列に少しだけ指先が力を込めて、紙面を歪ませる
「…ほんとは、ちょっと寂しいんですよ…」
「…13号先生……?」
どこか陰っているようにも見える13号の姿に、怜奈が手を伸ばすよりも先に白い体が小さなダイヤを抱き込んだ
強く、それでいて大切に抱き込んでくれる力は…同性であるがゆえか彼らよりもどこか力強く、柔らかくて…ふ、と自然とその身を預けてしまう
「…怜奈…僕達はね、怜奈にもっと甘えてほしいんですよ」
「、でも…今回のインターンも…私のわがままで許可をもらって参加させていただいています。」
胸元から顔を上げて見上げれば、困ったような瞳が映って不安になって、思わず逃げるように視線を逸らす
「今までだって、幼少期から消太先生達に体術面で指導していただいたり、スカウト入学で他の子よりも早く合格して知り合えたということで、特別に先生達にも救助等の助言をいただいていました…フェアルズの娘というだけで、同年代のヒーローを目指す子達を差し置いて、現役のプロの方達からの貴重な指導の機会を私はいくつも与えてもらいました…」
誰にでもあるコネクションではないと、それは重々承知ではあったが、まだ卵とも呼べないような自分を指導してくれた時間の価値は、自身にとってはきっと一生かかっても返しきれないもの
「私は、皆さんの大事な時間を奪って…好意に甘えてばかりでまだ何も、その恩に報いては」
「っそれは違います!」
「、」
どこか怒りを含んだような声音に思わず体が跳ねると、それに気付いた13号は大きな声を出してごめんね、と慌てて怜奈の体を抱き上げると後ろ向きに膝に乗せて怒っていないよ、と安心させるかのように頭を撫でてくれる
『怜奈は本当にいい子で、なんだか寂しいなあ』
入学前と同じ姿勢で、彼女の言った言葉は…その意味通りなんだか寂しそうだった
「ご、ごめんなさい、私…先生の気に触るようなことを、」
「いえ、ほんとに違います!つい口をついてでてしまったというか…ううん……ごめんなさい、 あんまりこういう機会がないので、やっぱり相澤先輩達みたいに上手に言えないや…」
ごめんね、と眉を下げる姿は先程と違い可愛らしくて、気にしていませんよ、と笑みとともに伝えれば安心したように強ばりを解きゆらゆらと怜奈を乗せたまま体を揺らす
「結論から言うとね、僕達は…怜奈のことが大好きなんです」
好き、という言葉に顔をあげようとすれば、照れているのか見ないでくれと言わんばかりに抱きしめる力が強まるので、されるがままの状態で声音に喜をのせて感謝を返す
「…確かに、教師としては特定の生徒だけを特別扱いなんてしてはいけないと思います…でも、僕達は…僕は一人の人間として、怜奈のことが大好きなんです」
「13号先生…」
「大好きな人には、なんだってしてあげたくなるものでしょう?それこそ、大好きな人のためなら見返りなんて何もいらないし考えもしない…その人が、笑顔になってくれるのなら…ただそれだけで、十分なんです」
君も無意識でしょうが、そんな愛をみんなに与えているんですよ、と断定するかのような言い方は、彼女が怜奈のことを理解してくれているからだ
「…私が…みんなに……?」
「それに先程言ったように、僕達は教師でもあります。伸びしろのある、素晴らしいヒーローになる素質のある子を手塩にかけて育てたいと思うのは当然です
そして君は、誰よりもヒーローに…光となれる存在だと、僕はずっと前から確信しているよ」
「っ…」
本当は、少し怖かった
彼らが己に優しいのは、フェアルズの娘でありオールマイトの庇護下にあるからなのではないのかと
彼らが父に憧れ、慕っていたのを聞いていたからこそ、自身のわがままにも応えてくれているのかもしれないと…与えられる優しさが、彼らの重りとなってしまっていたらという考えが己の片隅で拡がって
どうしても、素直に甘えきれなかった
「…いつもね、考えてしまうの……なんで皆は、こんなにも優しくしてくれるんだろうって…その優しさが…もし彼らがなにかに縛られていてのものなら……っ絶対に…迷惑なんてかけたくない…」
「怜奈…」
「……………私には────"そうなりえる理由"があるから……」
「っごめんね…君はとても聡い子だから、色々考えてしまったんだね…僕も怜奈と変わりませんよ。ただ好きだから、優しくしたいんです」
そう、あまりにも優しい声音で言われるから、前にむいていた体を横に直しておずおずと小さな手で白いヒーロースーツを握れば、息を飲むような呼吸の後で幸せを抱きしめるかのように包み込まれる
「怜奈の個性はみんなが憧れるようなとても素敵な個性です。でも……僕たちの想像を絶するほど扱いにくく、難しい力でもあるでしょう。でも君は、逃げることなく自身の個性に向き合い、"仲良くなりたい"と心の底から願いその力を愛している」
「……うん、私…この個性も、みんなのことも大好き…ずっと大切にしたい…」
「…どんなに厳しい指導も、叱責でも一切弱音を吐かず、ただ真っ直ぐに輝いて最高のヒーローになろうと努力を惜しまない…僕達は、君のその姿勢に同じ位真剣に向き合いたいと思った。それは誰に言われたのでも強制されたのでもない─────"僕たちの意志"です」
「みんなの、意志…」
「そんなに恩義を感じなくたっていいんです。僕たちの最大の報酬は、怜奈が成長してくれること!君は十分それに応えてくれている…怜奈はもっと、自分に優しくならなきゃ」
そんな頑張り屋さんを、迷惑だなんて思うわけないんだよ
金に近い瞳は、心の底からの"愛"で溢れている
「…13号先生のこと、すごく尊敬しているんです、私」
「えっ…?」
「先程13号先生は、私の個性はすごく難しいと仰りましたが─────それは、亜南さんもでしょう?」
「っ!」
「戦闘は苦手だといつも言っていましたけど…自身の強すぎる個性を…どんな力であるのか逃げずに立ち向かい、理解して、研鑽を積み重ね…"人を救える個性"にまでしてみせた貴女を…私は、なんて凄い人なんだろうって感動したんです」
人を救う術を教授するその姿は…誰よりも、救いたいという気持ちが原動力となっていると思ったから
「私も…先生達が、13号先生のことが大好きです。だから、いっぱい頑張って…もし、たくさん強くなれて大勢の人達を助けられるようになったら…今日みたいに、強くなったねって褒めてほしいです」
約束、してくれますか?
なんて、真っ赤な顔で擦り寄られてしまえば言葉にするよりも先に力強く愛おしい存在を抱きしめる
「当たり前ですよ!たとえ怜奈が一人前になったとしても、何がなんでも褒めに行きます!相澤先輩達にだって遅れをとりませんよ!!」
「えへへ…嬉しいっ」
「………あ、あの…怜奈?」
「はあーい?」
「(ご機嫌さんだ最高に可愛い)ひ、一つお願いがあるんですけど…」
「はい!なんでも言ってくださいっ」
「えっとね、ぼ、僕のことも…相澤先輩やミッドナイトさん達みたいに…プライベートの時は…"亜南お姉ちゃん"って呼んで欲しいなあ〜って…」
と、言ったところで「これ相澤先輩達にバレたらめちゃくちゃやべえのでは??」という対敵用の表情を浮かべる該当者達の顔が浮かんで、欲望と報復で天秤がかかる
「(何より怜奈にお姉ちゃん呼び拒否されたら死ぬっ!!)なっなーんて!!やっぱりだめ、」
「亜南お姉ちゃん」
「っお、」
「ふふ…亜南お姉ちゃん、大好きっ」
可愛すぎる天使からの隙間ない抱擁は、一人の人間を容易く蹂躙し、幸せをもたらした
「よしっ!じゃあ亜南お姉ちゃんからのお願いで、授業も変更しちゃおうか!」
「あ、それは一度このままでお願いします」
「んぬぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
(おい13号…変更するように言っておいただろうが)
(で、でも相澤先輩…僕からはどうにも…断れないというか………)
(お前はシールドがあるからいけると思ったんだよ。俺が怜奈に弱いの知ってんだろ)
(僕のヘルメットなんだと思ってるんですか???そもそも怜奈の可愛さは直視しなくてもどうしようもないですよ抗えない)
(それはそう)
(消太先生!私が言ったことだから、亜南お姉ちゃ…あっじゃなくて13号先生を責めないでくださいっ)
(お、お姉ちゃん…!?じゅ、13号お前…本当に何してやがった…!!2人っきりなのをいいことに怜奈を誑かしてたのかっ!!!)
(消太先生どうしたのっ!?)
(あらあ〜〜〜〜〜〜〜〜!?私を差し置いて何の話かしら!!!!!怜奈のお姉ちゃんポジションはこの私よ!!!!ちょぉっと顔がいい泥棒猫が私の宝石に手を出さないでくれる!!?)
(み、ミッドナイト先生まで…?な、なんで怒ってるの?)
(だっ大体相澤先輩もミッドナイトさんも怜奈のこと独占しすぎなんですよ!!!相澤先輩なんか特に抜け駆けするっ!!ちょーっと付き合いが長いからってプライベートまで干渉して「あいつの言うわがままとかただ可愛いだけだよな。時々入る甘えん坊スイッチもめちゃくちゃ可愛い。あ、知らないか悪い」とかって自慢して何でもかんでも俺が一番わかってるみたいな感じ出してマウント取ってくるし!!!ミッドナイトさんもすぐお揃いのものとか渡したりスキンシップだって取りすぎってくらいするし、「これ怜奈とお揃いで買ったのよ、"睡お姉ちゃんに似合うの私が選ぶ!"って頑張ってくれてね可愛いでしょ?」ってドヤ顔を何回されたことか!!怜奈にお姉ちゃんお姉ちゃんって可愛く呼ばれて懐かれて距離が近くて羨ましい!!僕だって怜奈にお姉ちゃんって呼ばれたいしもっとお話もお出かけもしたいんです!!!マイク先輩だってそうですよ!!何よりオールマイトなんか特に羨ましい筆頭なんです悔しいぃぃぃぃ!!!)
(じ、13号先生っ!?って、2人ともそんなお話してたの!?)
(爆発した)
(コンナニ喋ルノハ初メテ見ルナ)
(言いたいことは分かる)
(正論と欲望のマリアージュ)
(今マイクとオールマイトが居ないのが唯一の救いだよ)
(混沌と化すだけだよな)
(俺も反論に混ざっていいか?)
(一戦見送ってから順番にしようぜ)
(ったり前だろどんだけ怜奈と一緒にいると思ってんだこれは当然の特権だ。それに俺は嘘なんて一切ついていないから事実を述べてるだけだが?お前が悔しいと思っても埋まらない溝があるんだよ、怜奈だって俺といる時は笑顔でお兄ちゃんって呼んでお話しよって甘えてくるんだ羨ましいだろ?つかそんな可愛いことされたらでろでろに可愛がりたいに決まってんだろこのポジションは誰にも渡さんし譲る気もないたとえ後輩でも叩き潰す死にてえならかかってこい)
(や、も、しょ、消太先生やめて!なんで言うの!)
(瞳孔開きながらのガチ反撃来た)
(後輩にも容赦ねえな)
(あいつとマイクは怜奈との距離感がもうアウトなんだよなあ)
(女同士ってかけた時間の分だけ男よりも濃密にいろいろ晒け出せるのよねえ、女の子特有の悩みや疑問とか全て打ち明けられ相談され頼られたのはこの私!!!最早怜奈の初めてを奪ったと言っても過言ではないわ!!「お姉ちゃんとまだお話したい…」ってうるうるな瞳で私を見上げてお泊まりした回数は数知れず♡♡お姉ちゃん大好き♡って常日頃から言って貰えるのは積み重ねてきた実績と信頼があってこそのものよ!!そんな怜奈の好みも趣向も知り尽くした私がこの子とお揃いのものを持つことは至極当然の権利!!!)
(ねむっ、あっミッドナイト先生っ言っちゃダメ恥ずかしいっ!)
(いや過言だろ)
(勝手にハートつけんな)
(貴女が帰したくないって強引に怜奈を引き止めたんでしょうが)
(怜奈とお揃いのもの買うとすーぐ自慢するよな)
(わざわざ持ってきてな)
(ていうか顔真っ赤にして慌てる怜奈超可愛い)
((わかる体にいい〜〜〜))
(〜〜〜〜〜〜っ…!!もっもう!知らないっ!喧嘩しちゃう人とは……しばらくお話しませんっ!みんなも面白がって!し、知らないっ)
((ごめんなさい仲良くしますめちゃくちゃ仲良くしますだから殺さないで!!!!))
(え、こ、ころ…?)
((ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!))
(可愛いなって思っちゃっただけなんですほんとに!!!)
(お願いこっち見て!!!!)
(何でもするから許して!!!!)
(なんでも買ったげるから!!!!)
(お話しないのも構ってくれないのも死亡宣告と同じなんですお願いします殺さないで!!!!)
(あ、ご、ごめんね嘘だよごめんねっな、泣かないで〜〜〜〜〜!)
この後物理的に縋りつかれ大人達の圧に萎縮し涙目でおろおろしていた怜奈は、この数分後に戻ってきたオールマイトとマイクによって無事救出された
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