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Take this hand and your princess
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「突然だが、ここにいる誰かに結婚式を挙げてもらう」
「「「「「……………………はい?」」」」」
自分達の担任からおそらく最も遠い台詞に思わず固まってしまったのは仕方が無いだろう
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彼の口からそのような台詞が出た原因はだいぶ前まで時は遡る
日本屈指のウエディングスタジオ
"KINOMOTO"
毎年数多くのウエディングドレスを制作し花嫁を送り出すこの企業が雄英高校に依頼したことがきっかけだった
現代の日本に於いてかつてのオリンピックに代わるビックイベントとなった雄英体育祭を見ていたKINOMOTOの社長の目に映ったのは、怒涛の戦闘ではなく見た目華やかな競技者達の姿
彼らのルックスにデザイナーとしての何かがピーン!と反応した社長はその日のうちに雄英高校の最高責任者である根津に、生徒をモデルとして撮影させてもらいたい!と直談判したところ
「面白そうだからいいよ!」
と、彼は二つ返事でOKを出しプロデュースするならばと、経営科にも実習として声をかけどうせならば一番を決めようと"ウエディングコンテスト"なるものが開催されることとなったのだ
「体育祭が終了したらヒーロー科は直ぐに職場体験があったからな、直ぐには催されなかったんだが…既に企業と経営科の生徒達によってあとは生徒を選抜するだけまで準備は進んでいる」
ったくこの忙しいのに、余計な行事を増やしてくれるよ。と不機嫌そうに眉を顰める相澤はさらに説明を重ねる
それぞれの学年、経営科を除く各クラスで代表の花嫁を決め、花嫁になった者は同じクラス、または別クラスから好きな相手をペアにしてコンテストに出場。尚花嫁に指名された者に拒否権はないという
結果、学年で優勝者を決定し三学年合計で3組を企業の宣伝にしたいとのこと
「ふざけんな!なんで拒否権がねえんだよ!!」
「そう言うなよ爆豪」
「いいじゃねーか。普通にラッキーだろ」
「んなアホなことやってたまるか!」
「まだお前って決まってねえし、まずお前は選ばれねえよ多分」
「焦ちゃんは?」
「…指名されたらしかたねえが、興味は無い」
「経営科は自分達の案が優勝したら企業との交流会が出来るという機会が設けられているからな、全員殺気立ってるから気を付けろ」
「俺達のメリットとは?!」
「まあ確かにくだらないものに思えるし実際面倒だが、優勝できれば企業のパンフレットに起用され知名度も上がる」
何もデメリットばかりではないと続けた相澤は女子達は前に出てこいと声をかけ7名を自分の横に集める
「話し合いでもいいがここは公平にクジでいく。こっちの方が早いし合理的だ」
「マジか…」
予め作っておいたであろう棒くじをカップに入れてはよ。と催促する相澤に、女子達は顔を見合わせてから各々くじを掴む
「「せーのっ!」」
一斉にひかれたクジに、見事先端が赤く染められている当たりを引いたのは
「………………あ。」
クジを目の前まで持っていき瞳をぱちぱちと瞬かせたのは、A組…いや雄英高校の天使と呼ばれている怜奈その人であった
「…………………」(ひょいっ)
「ほえ?」
「「「「ちょちょちょちょちょちょっ」」」」
当たりを引いたのが怜奈だと分かると、相澤はスっとそのクジを取り上げ自分の懐に無言でしまい出す様子に全員が立ち上がり思わずツッコミを入れる
「いやいや何やってんスか相澤先生!!」
「相澤先生!何故怜奈くんのクジを取り上げたのか意図をお聞かせください!!」
「うるせえ。くそッ…1/7の確率だと思って油断してた…!何が悲しくて怜奈の模擬結婚式何ぞ見なきゃいけねえんだよ…」
「「「驚く程に私情しかない!!!」」」
怜奈の両肩を掴みクッ……!!と悲嘆に暮れる相澤にまたもやツッコミが飛ぶが、怜奈は彼を落ち着かせるように肩に乗せられている手を握り苦笑する
「ええと、でも、消太先生がそう言うなら、誰か他の人に…」
「!!怜奈……ッ!!」
「えー!?異議あり━━━━!!!」
「そうだよ相澤先生!!怜奈ちゃんが出たら優勝間違いなしだよ!」
「まず怜奈ちゃんのドレス姿見たいし」
「え?で、でもみんなパンフレットに載れるチャンスなのに…」
「それはそうだけど、元々当たりのクジを引いたのは怜奈ちゃんだもの。それに私も耳郎ちゃんと同じで怜奈ちゃんのドレス姿見たいわ」
「そうですわ怜奈さん!!私も微力ながらお力添えさせていただきます!」
「ぜーったい可愛ええよ!!」
「ぐっ!!お前ら…!!」
他の女子達からの職権乱用反対!という言葉に相澤はギリッと歯を軋ませるも、結局A組女子の猛プッシュにより1年A組ヒーロー科からは怜奈が花嫁になることが決まったのだった
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「花嫁さんかあ…」
「一週間後に開催ってあるね」
「思わず猛プッシュしちゃったけど、怜奈ちゃん大丈夫?」
「うん、みんながせっかく言ってくれたんだもん!頑張るね!」
「「いい子」」
「経営科が演出とか考えてくれるんでしょ?」
「あとそれに合うドレスもね、楽しみだわ」
「大変だと思うけど、ウチらもサポートするからね」
渡された予定表を見てありがとう、と少しの不安に顔を染めながらも気合を入れるように笑ってみせる怜奈の周りを女子達が取り囲み、理想の式などについてキャッキャッ、と語っている
そこの空間は明るい雰囲気だが、そこ以外はどこか殺気立ったような殺伐とした空気が蔓延している
「「「「(花婿は一体誰になるんだ……!?)」」」」
彼らの心はただ一つ、我が校が誇るMs,エンジェルが一体誰を指名するかということだけ
コンテストとはいえ実際に結婚式(模擬)を彼女と行えるというチャンスに、彼らの目は爛々とした輝きを放ちその姿はまるで飢えたケモノのようだ
「怜奈ちゃん、相手は誰にするの?」
「「「「「!!!!」」」」」
「あ、そうだよね…パートナーさんを探さなきゃいけないんだった…」
「他のクラスでもいいんだよね」
「ええ、ですが別のクラスの方も込となれば…」
「うん…戦争だよね」
「?」
彼女を巡っての地獄絵図を想像し女子達は自分達が守ってやらなければと目を合し頷き合うのを横目に、そんなことは微塵も考えていない怜奈はどうしようかと腕を組み考える
「人前に出るのが嫌な人もいるもんね…」
「「「(怜奈ちゃんと並べるならそんなの関係ないでしょ)」」」
そんな彼女らを後目に男子達は否が応にも色めき立つ
「ついにオイラの時代が…!!」
「例え世界が滅びてもお前だけはねえよ」
「でも実際さぁ!怜奈ちゃんと一時的でも夫婦になれるんだろ?!」
「至福」
「おいしいどころか一生の思い出だな!!」
「(コクコク)」
「(綺麗なんだろうな…)」
「それがキッカケで…とかワンチャンあったり?!」
「お、俺はっ……その!!クッ俺を選んで欲しい!!」
「正直だな切島」
「髪と同化してんぞ」
「ハッ、お前らが選ばれる訳ねえだろ」
「お前さっきやってたまるかって言ってたじゃん」
「あ"ぁ"?俺以外の奴をあいつの隣に立たせるのがもっとねえわクソが!!」
「怜奈はなんでも似合うからな。当日隣で見るのが楽しみだ」
「何もう選ばれた気でいるのこの子!!」
「爆ぜろ色々と!!」
「…………………………」
「ずっと静かだと思ってたけど緑谷顔真っ赤にして固まってるぞ」
「妄想くそナード死ね」
ギャーギャー!と言い合う彼らの会話は見事なほど筒抜けで、まあ当然の反応かと会話を聞いていた耳郎達はため息を吐き出すが話の種である怜奈は未だ悩んでいるのかうーん、と眉間にシワがよっている
「決めるの今日までだっけ?」
「まあとりあえずまだ時間あるんだし、休み時間とかで考えてみたら?」
「うんうん!」
「あぅ……うん、そうしようかなあ」
怜奈の眉間に寄ってしまっている皺をグリグリと直しながら言った耳郎の言葉に賛同したところで
「ハーッハッハッハッ!!相変わらず騒がしいねA組ィ!!」
「そっその声は…!」
バーンッ!という音とともに登場したのは最早A組に絡むことを生き甲斐としているのではないかと思われる、1年B組ヒーロー科・物間寧人
彼は扉に凭れかかったまま、どこか見下すような視線を投げつける
「このウエディングコンテスト、優勝は我らB組が貰ったよ!!」
「また挑発に来たんだな」
「それしかやることないの?」
「なんたってウチはCMに出演した拳藤が花嫁に選ばれたんだからね!!」
冷ややかな視線をものともせず跳ね返した物間がそう声高らかに宣言したように、B組からは委員長である拳藤が出場するらしい
彼女は前の職場体験で八百万と共にウワバミ事務所でCM出演してからじわじわと人気が出ているのだと、プレゼンを始める物間だったがその背後からにゅっ、と手が伸び彼の首筋に向かって勢いよく垂直に振り落とされた
ガンッ!!
「ごフッ!!」
「まーたお前は!何ちょっかいかけてんのっ」
綺麗に落とされた手刀と共に彼を叱咤したのは、物間のストッパー役でB組の花嫁代表・拳藤一佳
「ち、違うぞ拳藤…僕は宣戦布告を告げに来ただけさ……」
「それがちょっかいかけてるって言うんだよ。毎回ごめんなA組」
「B組は拳藤くんが出場するのか」
「うん。まあ流れでね」
「ふ、ふふふ…A組は誰が出るのか知らないけど、僕らに死角はな…」
「ところがどっこい!!」
「こっちには怜奈ちゃんがおるもんね!!」
拳藤に襟元を掴まれぐったりとしながらも不敵な笑みを浮かべる物間に、これを見てまだそんなことが言えるか!という勢いで男子達がザッ、と道を開け女子がジャーンッ!と怜奈を目立たせるように彼女の周りでポーズを決めると本人はきょとり、目を丸くする
「んなっ……!!?」
「わっ?え、えっと…B組は一佳ちゃんが出るんだね!」
「うわ、A組は怜奈か…ハードルたっかいなあ…!」
怜奈が出場するという言葉に物間はガンッ!と目を見開かせ拳藤は冷や汗をかいて困ったように頬をかく
知名度・カリスマ性・容姿、全てがトップクラスにいる怜奈は校内だけでなく既に校外にもファンが数多く存在しているため、彼女が出場するとなればその反応も他の参加者たちからすれば妥当だと言える
しかしいつもなら食ってかかる物間があまりにも静かなので拳藤は不審に思い視線を下にやっている彼に声をかけてみる
「物間?どうし…」
「…………………の」
「は?」
「っパートナーは、もう決まったのかい!?」
勢いよく顔を上げどこか必死な形相を浮かべながらそう問いかける物間に、怜奈は疑問符を浮かべながら言葉を返す
「え?ううん、まだ決まってないよ」
「!!!」
まだ決まっていない、という言葉に物間の顔がわかりやすく輝く
「そっそれなら僕がパートナーになってあげてもいいんだよ?!」
「えっ?」
「か、勘違いしないでよ!?ぼ、僕はただ君にパートナーがいなかったら哀れだなと思っただけで、決して君と結婚式を挙げたいとか全然そんなんじゃないからね!!」
「「「(こいつわっかりやすっ!!!)」」」
汗をかきながら顔を真っ赤にして暴走する物間に全員の心が一致すると、彼の首筋に再び手刀が落ちる
ガンッ!!
「がふっ!!」
「ごめんな怜奈、こいつちょっとおかしいだけだから。今のは気にしないで」
「物間くん、A組のことあんまり好きじゃないもんね」
「とりあえず、当日はよろしくな?」
「うん!頑張ろうね!」
物間の襟元を掴み引き摺っていく拳藤に手を振り返し、休み時間は終わりを告げた
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