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THE試験
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コスチュームに着替え説明会場へと集合すると、会場内は試験の参加者で溢れかえっていた
「多いな…!」
「会場いっぱいだね…」
「怜奈ちゃん、僕達から離れないでね」
「はーい…」
相も変わらず自分の周りを囲む緑谷達に怜奈が苦笑を漏らすと、前のモニターの前に並んでいるうち真ん中の教壇に肘をかけている男性が仮免の説明を始めようと口を開く
目良と名乗った男性は疲れを一切隠さない様子で紹介を済ますと、受験者1540人は勝ち抜けの演習と言うざっくりとした内容を伝える
「現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステインの逮捕以降ヒーローの在り方に疑問を呈する向きも少なくありません」
"ヒーローとは見返りを求めてはならない"
"自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない"
予想していたことではあったが、彼の思想はあれから深い根を張りじわじわとその範囲を広げて行ったのだろう
色々と濃い事態が続いていたのでかなり前の事のように感じるが、保須での事件はあれからまだ何ヶ月しか経っていないのだ
そして今、対価にしろ義勇にしろ多くのヒーローが救助・敵退治に切磋琢磨をしてきた結果、事件発生から解決に至るまでの時間は恐ろしく迅速になっているという目良の言葉に神野の事件が脳裏を掠める
事件発生から敵のアジトの捜索と、救助に至る作戦・周りへの被害の予測…イレギュラーはあったものの確かにあの時の対応は恐ろしく速かったと、実際に現場にいたからこそあとから実感した
「よって試されるのはスピード!条件達成者先着100名を通過とします」
その少なすぎる数字に周りは一気にどよめきを表す
合格者は5割だと聞いていたが、1000人以上いる中での一次試験の合格者100名ということは、更に二次で落とされることを考えるとその割合は1割にも満たないだろう
「ますます緊張してきた…!」
「頑張らなきゃ…」
一次試験達成条件のルール
まず受験者はターゲットというものを体の好きな場所、ただし常に晒されている部分に取付ける
そして専用のボールを6つ携帯しそれらを受験者のターゲットに当てるのだという
このボールが自身のついているターゲット3つに全て当たって発光しまうと、その受験者はその場で脱落する形式となる
二人倒した者から勝ち抜き、と言ったところで説明は終了
入試以上に苛烈なルールに改めて身を引き締めると、目良は展開後にターゲットとボールを配り全員に行き渡ってから1分後に始めると、後ろに控えていた人達が箱を持って受験者の元へ移動を始めた
「展開?」
「何を……」
なんの事かわからず轟と顔を見合わせたところで壁が動き出し境目から光が漏れ、大きな音とともに壁がすべて開き切りスタジアム全体が映し出された
「各々苦手な地形好きな地形あると思います。自分を活かして頑張って下さい」
スタジアムには山岳地帯、市街地、工場地帯、水場など様々な地形が作り出されており、その無駄に大掛かりなセットはどこか雄英高校のUSJを彷彿とさせる
ターゲットを身体に取り付け周りが移動を始めなるべく固まって動こうと緑谷が声をかけるが、それを異を唱えた爆豪が一人飛びだしそれを切島が追いかけ大所帯じゃ力を発揮出来ないと轟も離れていってしまう
その行動に緑谷が待ったをかけるも時間が無いため急ごうと爆豪達を抜いたまま走り出す
「単独で動くのは良くないと思うんだけど…」
「何で?」
「だってホラ…!僕らはもう手の内バレてるんだ」
緑谷のその台詞に目を見開く飯田達を尻目に怜奈も瞳を伏せ言葉を続ける
「さっきみっちゃんが言った通り、チームアップで勝ちを取りに行くなら必ず学校での対抗戦になる…そして次に考えるのはどこを狙うかということ」
「!!まさか……?!」
「全国の高校が競い合う中で…体育祭というイベントで唯一"個性"だけじゃなく弱点、スタイルまで割れているとなると──────」
START!!!
「──────
「"自らをも破壊する超パワー"、まァ…
杭が出てればそりゃ打つさ!!!」
"雄英潰し"………個性不明というアドバンテージを唯一失っているからこそ真っ先に潰されに行かれることで付けられた慣習の呼び名
しかし、そう簡単に行くほど自分たちは弱くないことを彼らは知っている
一斉に投げられたボールは、それぞれが特訓をする中で身につけた技によってその殆どをはじき返した
「締まって行こう!!」
その姿を見て、怜奈はふ、と頬を緩ませた
───────────
───────
必殺技訓練を始めようとした時、相澤はA組に改めて向き直った
「この仮免試験……お前らと怜奈は基本的に別行動をとってもらう」
「え?!」
「……」
「な、なんでですか?」
相澤からの突然の発言に緑谷達は驚きで目を見開くも、ミッドナイト達はさして驚く様子はなく怜奈は事前に聞かされていたのか顔を俯かせ、何も聞いてはいないが察したらしい爆豪も何も言わず唇を噛み締めている
「ハッキリ言えば、お前らは怜奈に頼りすぎだ」
「「「!!」」」
「無意識のうちに怜奈という存在に助けられている部分があることは、お前らもわかっているだろう」
「仮免試験ではそういったことで本来の力が出せなくならないように、なるべく別で行動した方がいいわ」
USJ事件、保須事件、林間合宿…振り返ってみればどの事件も彼女がいなければ確実に被害が拡大していたものばかり
彼女自身身体が勝手に動いてしまうのもあるが、周りは心のどこかで怜奈だからと頼ってしまっているのは事実だった
入学時から今までを思い出し誰ともなく自身の手を痛いぐらいに握る
「既にプロと同等かそれ以上の力を持つ怜奈と一緒なら合格する確率は高い…が、それでは今までと変わらない」
「救助作業等で人手がいるなどではない限り、今回の試験怜奈は協力は控えるように」
生徒達を視界に入れてからミッドナイトがそう言って彼女の頭を撫でるのに、怜奈は悲し気に眉を顰めつつこくんと頷いた
「決してお前らが弱いと言っているわけじゃない、しかしそれ以上に怜奈の力は大きい…彼女の力に追いつきたいと思っているなら…………乗り越えるべき壁だ」
「─────はっ、上等だ!!」
「ああ。怜奈の隣に立つならそれぐらいは当然だ」
「……怜奈ちゃん、今度は僕が君の力になれるよう頑張るね」
目標とともにそう強い瞳で自身を見つめてくる彼らに、怜奈は柔らかく笑い返した
────────────
────────
「………ほんとに、頼もしいなあ…」
瞳の奥に闘志を燃やすその姿に今一度微笑むと、怜奈は緑谷達よりも一歩前に出て彼らを振り返る
「怜奈ちゃん………」
「──────信じてる」
「「「「!!!」」」」
「だから、」
目を見開く緑谷達から目を逸らし、怜奈は自分の姿を見て唖然としている真堂達を視界に映す
─────────────トッ
「ぇ…………………」
「………先に、行ってるね」
ふわりと微笑んだ怜奈の先には、ターゲットの部分に矢の突き刺さったボールを当てられて唖然と立ち竦む参加者
「「「!!!!?」」」
《えー、では………うぉ?!!す、既に一名が合格してます!!脱落者は二名!まだ開始から1分も経っていません!!》
目で追うことも出来なかったその速さに脱落した二人も何が何だかわからず辺り一帯の空気が固まっていると、目良のアナウンスが入り怜奈の合格が響き渡る
そのアナウンスを聞いて怜奈がパチンと指を鳴らすと矢は一瞬で消え去った
《えーあまりの速さに一気に目が覚めましたが、無駄のない完璧な動きです!みなさんもこの調子でガンガン通過して行ってください。あ、情報が入り次第私がこちらの放送席から逐一アナウンスさせられます》
「な、に…………………」
「今……何が起こった…………?」
混乱する真堂達にスっと視線を向けると、その輝きにぶわりと冷や汗が走り彼らの身体はある種の恐怖によって動かなくなる
固まってしまった真堂達から視線を外し怜奈は緑谷達の目の前へと一瞬で降り立つ
「怜奈ちゃん…」
「…………大丈夫、絶対に…大丈夫だよ」
いつもと変わらない笑顔でその胸に拳をつき立てれば全員がまっすぐと前を向きしっかりと頷いた
「
その頷きを確認して怜奈は飛び上がり彼らが進む道とは反対の方向にある合格者の控え室へと飛行すると、暫くしてから再び激しい音が鼓膜を揺らすが彼女が振り返ることはなかった
彼らは大丈夫だと、信じているから