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THE試験
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緑谷の特訓に付き合う中で爆豪や轟、結果的に全員からズルいと言う声を受けながらも時間は流れ、ついにその日はやってきた
試験会場国立多古場競技場にて、ヒーロー仮免許取得試験当日
「わあ…いっぱい人いるねえ」
「逸れるなよ怜奈、なんなら手繋いどくか?」
「もう焦ちゃん!私子どもじゃないんだよ?」
「牽制はしとくに越したことはねえだろ」
「??」
バスから降りて辺りを見回してみれば、様々な高校から試験を受けるために人が溢れかえっており、その空気感からか緊張が身体の中を走り抜ける
弱音のような台詞を小さくこぼした峰田に対し、相澤は彼の身長に合わせるようにダランと身体を折り曲げ取れるかではなく"取って来い"と断言する
この試験に合格をすることで仮免許を取得することが出来る、つまりは街中で何か事件が起きればもう見ているだけではなく自分の意思で行動することも可能になってくるというセミプロへと孵化する段階に行けるのだ
最後相澤の端的な激励の言葉に熱くなった切島は周りに呼びかけいつものを一発決めてやろうぜと拳を作る
「せーのっ、"Plus…」
「Ultra!!」
しかし、全員で復唱しようとした雄英高校の校訓は突然現れた第三者の声によって支配されてしまった
それに全員が目を見開いて突如円陣に加わってきた青年を見上げると、その姿を映した轟と爆豪は反射的に怜奈の身体を自身の影に隠す
「え、え、なあに?」
「何となく」
「いいから後ろに居ろ」
「う〜っ、なんで……」
ぴょこぴょこと怜奈がジャンプするのも構わずに逆に頭を撫で二人並んで鉄壁を貫いていると、どうやら怜奈には気付いてはいないらしい
「勝手に他所様の円陣へ加わるのは良くないよイナサ」
「ああしまった!!どうも大変、失礼、致しましたァ!!!」
ガァン
((ヒイイ!!!))
とてつもなく大きい身振り手振りをしたかと思えば、90度どころではない程のお辞儀をぶちかましたためイナサと呼ばれた青年は大きな音を立て地面と頭を衝突させた
まさにテンションの塊のような人物だと上鳴が評すと、彼と後ろに控えている人達を見て、その姿を確認した周りがざわめき始める
「アレじゃん!!西の!!!有名な!!」
「東の雄英、西の士傑」
そう爆豪が述べた通り、その制服は関西の方に位置する数あるヒーロー科の中でも雄英高校に匹敵するほどの難関校、士傑高校のもの
彼は雄英高校大好きっス!!!と何故か自分達の学校に対する好意を声高らかに述べており、頭をあげるとその額からは当たり前だがどろりと鮮血が滴った
その様子を見た相澤は一瞬目を細めると"夜嵐イナサ"と青年のフルネームらしきものを呟き、葉隠はそれに対してなぜ知っているのかを問う
「ありゃあ…強いぞ」
他人の実力に対し贔屓目などは一切しない相澤から放たれたその一言に、その場にハッとした緊張が走る
昨年度、つまり今年の推薦入試で彼はトップの成績で合格したのにも拘らずなぜか入学を辞退したという不思議な経歴を持った人物
入試トップの成績ということは、その実力は暗に轟以上だと示しているようで緑谷は思わず彼の横顔をチラ見する
怜奈は話こそは聞いているものの未だ爆豪達が壁になってしまっているため、何が起こっているのかまったくわからない
しかし何とか彼らの影からそっと顔を出して辺りを確認しようとして、真っ先に目に映った光景は、頭から血を流したまま歩いている夜嵐の姿だった
「!あの人、怪我…!」
「あっおい!怜奈!!待てっ!」
「馬っ……」
「怜奈ちゃんのエンジェルセンサーが!!」
怜奈からしたら怪我をした人物をほおっておくことなど出来るはずもなく、体は勝手に動き爆豪と轟の壁から抜け出すと爆豪が引き止めるように声を上げ、相澤が焦ったように手を伸ばすも彼女は夜嵐の背後まで駆け寄りその背中に声をかける
「待ってください!」
「ん?」
────トンっ
「血、大丈夫ですか?とりあえずこれで止血してください」
かけられた声に振り返った夜嵐の額に背伸びをして自身のハンカチを当て、眉を下げながら下から彼を覗き込むような体勢でそう言えば
怜奈の姿を目に映した夜嵐は数秒間動きを停止させると、次の瞬間顔から首をありえないほど赤くさせ何歩か怜奈から距離を置くようにして凄い勢いで後ずさった
「かっかかかかかかかかかかかか、かか………!!」
「か…?」
「かかかかかっ…神風怜奈、さん?!!」
ドゴォンッッッ!!!!!
「えと、はい…その、大丈夫ですか?」
「もっももももちろんです!!!!」
後ずさった際に躓いた彼は尻を思いっきり地面に打ち付けるも、視線だけは逸らすことなく真っ直ぐと怜奈に向けられていて、その顔は以前赤く挙動も不審でどう見ても大丈夫と言えるような状態ではなく、怜奈は心配そうに眉を下げるが相澤はやっぱりなと顔を顰める
体育祭でもそうだが、オールマイトと共闘した神野の事件で怜奈の存在はメディアによって日本だけでなく海外にまでもその名を届かせた
彼女の美しい容姿はもちろんのこと、その可愛らしさからは想像もできない程の強さのギャップと、亡き父誠、オールマイトと同等の人を惹きつける圧倒的カリスマ性にあてられた者は数しれない
そんな彼女はヒーローを目指している今の若者たちにとってNO.1ヒーローの最後に貢献した憧れの人物であるのだ。
実際そこらのヒーローよりも人気が高く非公式のファンクラブも存在し、また非公式でTシャツやらマグカップやら様々なグッズまで売られてしまってもいる
反応を見る限り、恐らく彼も怜奈に憧れているうちの一人だと推測ができる
「あの、お尻もですけど…血は止まりましたか?」
「え?血…って、ああ?!こっこれもしかして神風さんの…!!?」
「止血できたのなら治療を…」
「申し訳ありませェん!!!!!」
ガンッ!!!!
「ぇぇえええええ?!」
自身の額に当てられている白いハンカチに気付いた夜嵐はそれを手に取り真っ赤だった顔を一気に真っ青に染めると、土下座をするようにまたもや頭を打ち付けた為怜奈は慌てて彼に駆け寄り膝をつく
「なぜ土下座を?!!」
「俺のっ!俺の血なんかで神風さんのハンカチを汚してしまうなんて…!!!万死に値します!!!!」
「そ、そんな……私が勝手にしたことですから、気にしないでください!それに傷がますます広がって…」
「イナサ!」
頭を上げようとしない夜嵐に怜奈が困っていると、土下座をしている彼に向かって先程彼を嗜めたものと同じ声が夜嵐の顔を上げさせた
「肉倉先輩!!」
「彼女にいつまで膝をつかせるつもりだ!!困っていらっしゃるだろう!!早く身なりを整えろ馬鹿者!!!」
「はい!!」
肉倉と呼ばれる彼は、夜嵐から先輩と付けられていることから恐らく2年であると推測される
渋々ながらも立ち上がりビシッと姿勢を正す夜嵐に、上下関係がしっかりしているんだなあと感じつつ怜奈も立ち上がり治療をしようと夜嵐に手を伸ばすも、それは何故か肉倉に掴まれてしまい届くことは叶わなかった
「ほえ……?」
「後輩が大変失礼を致しました、士傑高校2年の肉倉精児と言います。以後お見知りおきを」
「あ、はい!雄英高校1年の神風怜奈です」
やはり2年かと肉倉の顔を見上げれば、ダイヤモンドに映された彼の顔は少し朱をおびているように見え、更には未だ手は掴まれたままでどうしたのだろうかと怜奈は首を傾げる
「あ、あの…」
「……美しい…」
「へ?」
「テレビ等でもお姿は拝見しておりましたが、やはり実物はそれ以上にお美しく気高くいらっしゃる…長い髪も素敵です」
「あ…ありがとうございます…?」
「おい!肉倉!!お前まで迷惑をかけるんじゃない!!」
いきなり褒められて何が何だかわからずにいると、先程よりも近くなっていた肉倉の首根っこが全身毛で覆われた士傑生によって掴まれ彼と引き剥がされる
「何をする!!」
「黙ってなさいよ!!すみません、うちのものが…」
「いえ!全然大丈夫です」
彼は肉倉を一喝すると後方へ移動させ怜奈に向かって頭を下げるので、怜奈は気にしていないですからと頭を上げてもらう
「ですがその…髪、とてもよく似合っています」
「え…?」
「では、失礼」
頭を上げた際にポツリと呟かれた台詞に怜奈は首を傾げたが、彼は誤魔化すように一礼をすると後ろにいた彼らを引き連れて去って行った
「あ、治りょ……う?」
ガシッ
ぶらーん
「お前もう動くの禁止」
「ええ?それじゃ試験できないよ?!」
夜嵐の治療ができていないことに気付き、怜奈が一歩踏み出そうとしたところで顔を顰めた相澤が彼女の身体を持ち上げ、スタスタとA組のもとへと回収する
「怜奈!!なんの為にお前のこと隠したと思ってんだ!」
「もう少し自覚してくれ」
「気が気じゃないよな…」
「ダメだよ怜奈ちゃんっあんな風になんの警戒心もなく近付いたら!」
「何かあってからでは遅いですわ!!」
「え、え?」
目を吊り上げる爆豪と頭を抱えるA組に怜奈が疑問符を浮かべまくっていると、相澤は大きくため息を吐き出し隣にいろとその頭を撫でる