MHA中心
THE試験
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
相澤に言われるがまま彼と共に応接室の前へと"移"で移動したが、その扉は何故か開けられており中を確認すると人の姿は見当たらない
「誰もいない…?」
「どこ行ったんだあの人は…」
二人入口で首を傾げると、職員室の方から大きな音が聞こえるのに相澤と顔を見合わせ急いで移動する
「消太先生、一体何が…」
「会った方が早い」
相澤の顔を見あげれば、彼は心做しかげっそりとした顔で言ってくるのでますます疑問符が浮かぶが、足は緩めることなく進めると職員室前に辿り着いた
ガシャーン!やらゴス!やら様々な物音が聞こえてきて、扉に手はかけたが相澤は今はまだ入らない方がいいと待ったをかけ少しだけ扉を開け中の様子を伺う
「ちょっと!!怜奈ちゃんはどこ?!」
「お、落ち着いて大道寺くん…」
「これが落ち着いていられますか!言っときますけど私はまだ怜奈ちゃんを養子にすること諦めてませんからね!!!」
「締まってる、締まってるから…!!」
「お座り下さい大道寺さん!!」
「オールマイトの首が!!」
中を覗けば、切りそろえられたショートカットが特徴的な女性が、元とは言えど平和の象徴であったオールマイトの襟元を掴み上げぶんぶんと揺さぶっているのである
周りは何とか彼女を落ち着かせようとしているが本人は関係ないと言わんばかりに怒りを前面に押し出している
「私だって、誠さんがそんな遺言遺さなければ今頃は怜奈ちゃんにマーマって呼ばれてたのに!!悔しい!!!」
「oh…ご乱心だぜ…」
オールマイトを掴みあげるその人は、大道寺園美…"SAKURA"ブランドの創設者である
怒り心頭の彼女はガクガクとオールマイトを揺さぶっていたが、それはピタリと止み襟元は掴んだまま顔を俯かせる
「大道寺くん…?」
「怜奈ちゃんが攫われたって聞いて…不安で不安でたまらなくて…テレビで姿を確認できたと思ったら貴方と共闘して…そしたら怜奈ちゃんが粉々になって……」
「っ……」
「あまりのことに…何も手はつけられなかったわ……レイラが死んだ時と、同じ……また大切な人を失ってしまうのかと思うと、怖くてたまらなかった…!!」
弱々しく言葉を繋げる彼女の身体は小刻みに震えていて、それが怒りなのか悲しみなのかはたまた両方なのかはわからなかったが、怜奈をずっと思っていたのだということは痛いほどに感じた
「そしたら何よ、シレッといきなり全寮制に変わって…私とあの子を隔てるようなことをして!!」
「っそれは、」
「私から…今度はあの子を奪うつもりなの……?!」
キッ!と顔を上げた大道寺に、周りは何も言うことが出来ず誰ともなく目を逸らす
彼女の言うことは最もで、守るべき生徒を守れなかったこちら側に非があることは明らかだった
誰も何も言えないでいると、その光景をずっと見ていた怜奈が相澤の制止を振り切り勢いよく扉を開ける
「違うの!パーパ達は何も悪くない!」
「「「!!」」」
「怜奈、ちゃん……?」
突如姿を見せた怜奈に、全員が彼女に顔を向け大道寺はオールマイトの襟元からするりと力が抜け、唖然と怜奈に目を向ける
「ごめんなさい、園美さん…私、みんなを救けることで精一杯で、残された方がどんな気持ちになるのか考えられなくなってた…それがどれだけ悲しいことか、一番よくわかっていたのに……」
ここ数日で自分に対して流れた涙が脳裏で再生され、自身の良かれと思ってした行動がどれほど大切な人達を悲しませてしまったのかに気付き、残された者がどれ程の悲しみを背負うのかを忘れてしまっていた
「全部私が勝手にやったことなの…だからお願い、みんなを責めないで……」
自身の不甲斐なさや情けなさが次々と溢れてきて、ぽたぽたと床に水溜まりを作って行く感覚を感じると、いつの間にか視界が白で埋め尽くされていた
「ああ、怜奈ちゃんっ…!怜奈ちゃん…!やっと会えたわ…!!」
耳元で聞こえる声と温かな水滴に、この白は彼女のスーツの色だったなと思い出される
「園美さん…」
「この髪…レイラとそっくりね…よく似合ってるわ」
「あの、私……」
「ごめんなさい、怜奈ちゃんのことで頭がいっぱいになっちゃって…ついカッとなっちゃったのよ」
怜奈の髪を一撫でしてから大道寺は顔を上げ優しさで満たされた瞳を彼女に向けた
「そうやってすぐ無茶しちゃう所、ほんとレイラ達とそっくりね。心配したんだから」
「ごめんなさい…」
「ヒーローを目指すなら危険はつきものだけど、もうあんなのは懲り懲りよ?」
それにもう一度怜奈が謝罪をすれば、大道寺は柔らかく目を細めその身体を優しく包み込みもういいのよ。とぽんぽんと背中を叩くのに、周りもホッと息を吐き出した
「でも…やっぱり今からでも私の養子に…」
「ダメダメダメダメ絶対ダメ!!!!どさくさに紛れて何言ってるの大道寺くん!!」
「何よケチ!!!」
サラリと流れるように言葉を繋いだ大道寺だったが、その台詞にいち早く反応したオールマイトが彼女から怜奈の身体を剥がし逆に抱き締めると、大道寺はプンプンと効果音がつきそうな勢いでブーイングしている
空気が柔らかくなったところで、怜奈が自分に会いに来てくれたのかと問えば、彼女はもう一つ理由があると足元に置かれていたケースを持ち上げ机の上に乗せた
「怜奈ちゃんのコスチュームを持ってきたのよ」
「!私の…?」
聞けば入学当初から怜奈のコスチュームを作ろうとして彼女からの連絡を待っていたのだがまったく連絡が来ず、不思議に思い根津に電話をかければ既に別会社に発注したと聞きショックを受けたのは記憶に新しい
そして何日か前に根津からコスチュームを新しくするかもという報告を受け、先手必勝と言わんばかりのスピードでデザインを構成し国にも申請済みだという
「もう!コスチュームなら私が作ってあげるのに、怜奈ちゃん何にも言ってくれないんだもの」
「ごめんなさい、園美さんコスチュームデザインはやらないのかなって思って…」
「そんなの怜奈ちゃんは特別に決まってるでしょう?」
滅多にデザインをしないことで有名な彼女がわざわざ志願して作ってくれたことに対して、素直に嬉しくてありがとうございます!と怜奈が花を咲かせると、大道寺も嬉しそうに笑った
「それで、コスチュームの説明なんだけど─」
(ピリリリリリリリリリッ)
大道寺がそう口を開いたと同時に鳴り響く電子音はどうやら彼女のもので、ムッ!と表情を顰めながらも彼女はスマホをとり応答する
「はい、大道寺……もうそんな時間なの?……………もう、わかったわ、すぐに行きます」
通話を終了させた彼女は溜息をひとつこぼし申し訳なさそうに眉を下げる
「ごめんなさい怜奈ちゃん、私もう行かなくちゃ」
「すみません、お忙しいのにわざわざ…」
「いいのよ!私が怜奈ちゃんに会いたかっただけなんだから。中にコスチュームの説明書が入ってるから、それで確認してね?」
「っはい!ありがとうございます!」
今度一緒にケーキ食べに行きましょうねー!約束よー!と叫びながら、彼女はミッドナイトと共に去って行った(オールマイトに釘を刺すことを忘れずに)