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THE試験
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朝、一番初めに怜奈からのLINYを確認した飯田が飛び起きA組に声をかけ全員揃って(爆豪は何度か先に行こうとしたが)教室に行こうと早足で廊下を進む
「昨日の今日だが体調は大丈夫なのだろうか?」
「心配やね」
「チンたらしてんじゃねえ!!はよ行くぞ!!」
「ああ、怜奈が寂しくて泣いてるかもしれねえ」
「轟は怜奈ちゃんのこと何歳だと思ってんの?」
「急がなければいけませんわね!」
「ヤオモモそのガラガラまさか怜奈ちゃんに使うわけじゃないよね?」
話しながら早足…というかそのスピードは最早走っているに近いが、20人の生徒がそのような速さで一斉に移動している様は少し異様であった
あっという間に教室に辿り着くと、誰ともなく緊張が走り視線を交換しあった後に代表で飯田が扉を開ける
「みんな、おはよう」
扉が開く音に反応した怜奈がくるりと後ろを振り向くと、艶やかに伸びた銀の糸のような髪がふわりと彼女の周りで舞い、キラキラとした輝きで彼女の笑顔を彩った
「「「女神かなーーーーー?!!」」」
以前よりもより一層輝きが増している怜奈の姿に、彼らは目を両手で覆いその場で膝から崩れ落ちた
その光景に怜奈は悲鳴をげたがとりあえず何とかしなければと近くまで行って同じように膝をつくと何人かは顔を覆ったままああ、とかうぅと声にならない声を上げて悶えていた
「だ、大丈夫…?」
「ありがとうございます」
「天使から女神にジョブチェンジィ〜?」
「ハァーーーーー(呼吸音)」
「Plus ultra!!」
「ありがとう魔力様」
「世界救える」
「ふざけんなもう救っとるわ」
「目"線"頂"い"て"も"い"い"です"か"」
「みっちゃん鼻水出てるよ…?」
「誰かこのレフ板を持ってくださいませんか?」
「任せろ」
最終的に泣きながら写真を連写し出す彼らが落ち着いたのは約5分後のことであった
全員立ち上がりスマホを下ろしてくれたことを確認すると怜奈は改めてA組と向き直る
「昨日は色々お騒がせしました…力の説明もケロちゃんにしてもらっちゃって………」
「いやいや、怜奈ちゃんのせいじゃねーよ」
「僕達もびっくりしたけど、怜奈ちゃんが無事でよかったよ」
「それなんだけど…昨日みんな私が苦しんでる時、助けようとしてくれたよね」
そうして思い出されるのは、怜奈が悶え苦しんでいた場面
その時の光景を思い出し体を固くした後に、彼らは何も出来なかったことも思い出し思わず唇を噛み締め痛いぐらいに手を握る
「それがね、あの、不謹慎だとは思うんだけど…すっごく嬉しかった」
その言葉に全員が思わず彼女の顔を凝視すると、怜奈は申し訳なさそうに眉を下げながら口元には小さな笑みを浮かべていた
朝の準備をしている際にケルベロスから怜奈の意識が無くなってからの彼らの行動と、ケルベロスの脅しにも近い言葉にも屈せず自分と共にいたい!と言っていたということを聞いて、とてつもなく嬉しく思ったのだと怜奈は伏し目がちに心情を語る
「助けようとしてくれたのも、みんなと同じ気持ちだったのも、ほんとうにすごく嬉しくて…だから、ちゃんとみんなに伝えなきゃって思ったの」
ありがとう
これ以上無いぐらいの輝きをめいいっぱい詰め込んだ表情に、今まで全員の胸の中で燻っていたぐちゃぐちゃな気持ちが全て消え去っていく
気付いた頃には目の前の彼女を抱き締めていて、いつの日かと変わらぬ日常が戻ってきたのを誰ともなく感じ取った瞬間だった
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「昨日話した通り、まずは"仮免"取得が当面の目標だ」
「「「はい!」」」
暫くして相澤が教室に入ってきて、今後の目標について短く述べると全員が背筋を伸ばし返事を返す。仮免について怜奈もA組が揃う前に話は聞いていた
ヒーロー免許はヒーロー活動を行う上で必ず必要となる資格であり、また人命に直接係わる責任重大な資格でもある
「当然取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」
半端な覚悟を持って得られる資格ではないため、適正等を見る上でもその厳しさはやはり尋常ではない
5割を切る、と言った相澤の言葉に峰田がそんなキツイのかよと漏らすが、教室にはその狭き門に対する緊張が走る
「そこで今日から君らには一人最低でも二つ……」
そこまで言って相澤がクイッと扉に向かって指で引きつけるように合図を送ると勢いよく扉が開いた
「「「必殺技を作ってもらう!!」」」
「「「必殺技!!!」」」
「「「学校ぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァァ!!!」」」
扉が開くと同時に言われた台詞に、何人かは立ち上がりテンション高く反応を示す
必殺技、個性が発現した者ならばまず考えつくであろうそれを本格的に形として作るということは、誰であっても胸踊るものがある
「必殺!コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」
「その身にしみつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押しつけるか!」
「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」
生徒達の興奮の空気を浴びながらエクトプラズム、セメントス、ミッドナイトが順に必殺技とは何かを端的に改めて説明する
相澤はワクワクとした表情を浮かべる彼らを一瞥するとそれを作るにあたって実演を交えて合理的に行いたい。とコスチュームに着替え移動をするぞと行動を促した
そして向かったのは体育館γ…通称
「トレーニング(T)の台所(D)ランド(L)、略してTDL!!!」
無理矢理感が拭えない上にその名前はほんとうにやばいのではないかと思われるものであるため、生徒達の顔にも若干冷や汗が滲む
ここはセメントスが考案した施設で、彼の個性により生徒一人一人に合わせた地形を用意することで必殺技を編んでいくことが出来るのだという
台所とはそういう意味だよ。と言うセメントスに全員が納得すると、飯田が手を挙げて何故仮免許取得の際に必殺技が必要になってくるのかを質問をする
その勢いの良さに相澤は落ち着けと声をかけてから順を追って話を進める
かつて憧れ現実となったヒーロー。その内容は事件・事故・天災・人災といったあらゆるトラブルから人々を救い出すことを生業としている
それにあたって取得試験では当然ヒーローとしての適正を審査されることとなるのだ
「情報力、判断力、機動力、戦闘力、他にもコミュニケーション能力、魅力、統率力など多くの適性を毎年違う試験内容で試される」
「その中でも戦闘力はこれからのヒーローにとって極めて重視される項目となります」
そこで怜奈の頭に思い浮かんだのは、死柄木弔率いる敵連合
死柄木弔を実質指揮していた大元であるオール・フォー・ワンが捕まったとはいえ、依然脅威としては変わらないし今後どう動くのかも予測が出来ない
何よりも表立って彼らの組織が浮き彫りになった今、それに感化されてくるものも出てくる上で確かに戦闘力は重視されるべき項目である
備えあれば憂いなしとはよく言ったもので、技の有無は合否にも大きく影響するのだとミッドナイトは語る
「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ」
「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ…飯田クンノ"レシプロバースト"。一時的ナ超速移動ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル」
「サポート系で言えば、怜奈の"
つまりは必殺技を作るにおいて、それらは何も破壊力や攻撃力があるものではなくても自分の中にこれさえやれば有利・勝てるという型や救助をする際などに必要となる役割に応じた型等を作れればいいのだ
中断されてしまった合宿で行っていた"個性"伸ばし…限界突破はその能力を広げることでより多くの可能性を生み出し、この必殺技を作り上げる為のプロセスだった
「残り十日余りの夏休みは、"個性"を伸ばしつつ必殺技を編み出す──…圧縮訓練となる!」
何も無かった更地には、いつの間にか山のような大規模な空間が作り出され、所々にエクトプラズムの分身が配置されている
「プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」
かくして、仮免取得に向けての必殺技訓練が始まった