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THE試験
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「…っと、奴さんのお出ましか」
視線を外し、金色が桜を射貫く
───────キィイイイイイインッ
天に放たれた音波と、姿を現したヴィランの姿にも焦る様子はなく、彼女は勝気に微笑むだけ
「あらあら…随分と男前になったじゃないか」
「ハア…言ってくれる…!」
先程よりもダメージを負った様子のギャングオルカは額に走る傷口に乱暴に指を滑らせるも、その動作もどこかぎこちないものだった
「(想定よりも時間がかかり結局強行突破をせざるを得なかった…傷も思ったよりダメージが大きい)」
────美しいものは、その身を汚されぬよう様々なもので自身を守るという
美しさに"
「さあ、第二ラウンドといこうじゃないか」
刀身が現れることを知らせる涼しげな音が響く頃、白くしなやかな肢体はギャングオルカの鼻先に迫る
ヒュンッ
上体を逸らすことにより切っ先からコンマ数秒の差で避ければまるで待ち構えていたかのように、その巨漢に踵落としが決まり地を割る凄まじい音と共に身体が沈む
「終わりだ」
「っなめるなよ小娘が!!」
向けられる切っ先に音波を放つも、引き裂かれる
「二度は撃たせないっ!!」
その時
────────熱が、飛ぶ
「!?」
目を見開き、第三者の関与源に視線を向けるより先に、苦渋を塗した女神の声が悲痛に叫ぶ
「落ち着けショート!!っ夜嵐!!」
演技とは思えぬ表情に、引き寄せられるように彼女の先にあるものに無意識に目が奪われる
「「ああああああああっ!!!」」
倒れながらも自身の個性を放出する、愚か者に
自暴自棄になっているのか、理性が失われているのかどちらかは判断しかねるが彼女の様子を見るにあれは
「個性の暴走か…!」
「元気なこって…」
口では軽口を叩きつつもその表情に先程までの余裕は窺えないところから、この事態は彼女でも想定できていなかったのだろう
荒れる火の粉に構うことなく、怜奈は一つ悪態を溢すと後方に下がり足元に金色の陣を召喚する
「悪いな2人とも…少し手荒にはなるが、我慢してく」
瞬間
化学反応が起きたかのように、炎が爆風と共に巻き上がり
───────白の使いを飲み込んだ
「怜奈…!?」
「おい…!嘘だろ…!」
女神を飲み込む不測の事態に観客席にも困惑と焦燥が走る
しかし現場では炎が収まることはなく、風によって巻き上がった炎の檻の威力は増すばかり
「おっおい…!あの子達、混乱して周りが見えていないんじゃないのか?!」
「個性の暴走?」
「ショックで理性が外れたんじゃ…!」
これは事故だろう、と高い声がいたるところで囁かれる中で初めは自身も焦燥が走ったものの相澤は妙な違和感を抱えていた
「(…例え不測の事態であれ、怜奈なら炎の渦に飲み込まれたとしても対処する技をいくつもの持ち合わせているはず…それなのに長時間も留まっているということは…)」
「なあおいイレイザー!止めたほうがいいんじゃねえか!?」
「…必要ない」
「はあっ?!お前何言って、」
「………流石だな…」
「へ…?」
ものの数秒で激変した状況に唖然としていたギャングオルカだったが、数秒後に腹の底から出た悪態を荒々しく吐き出すとビキビキと眉間に苛立ちを浮かび上がらせる
「何たる醜態…何たる愚行!!!ついに理性まで失ったか、愚か者共っ…!!」
視界の端に舞う火の粉に思わず本来の自分が姿を覗かせようとするが、今の自分はあくまでヴィラン
仲間割れ、ミスは、喜ぶべき環境
「(やめろ。雑念はいらない)」
あの日感じた光が
「(今の彼女は、敵だろう?)」
己の中で、ざわついて
「(今の俺は、ヒーローではないんだ)」
彼女の元へと飛び出しそうな体を、怒りで自制する
「────指導の時間だ…愚か者共っ!!!」
震える腕を向けた先で、頭上に指した影に一瞬だけ安堵する
可能性と期待を込めて視線を僅かに逸らした瞬間に走るは、緑の風
「2人から離れてくださいっ!!」
振り落とされた足先を残りのプロテクターで受け止めるが、中々のウエイトに目を細める
「ほう…戻ってきたか」
「!!怜奈ちゃんはッ…?!」
「ああ、確かめておくか…貴様等を潰した後にでもッ」
亀裂が走る表面に焦る胸を誤魔化しながら狙いを定める
「緑谷アッ!!!」
「「離れろっ!!!」」
「「────?!!」」
突如叫ぶ2人の瞳にある光にギャングオルカが目を見開くよりも先に
「─────上出来だ」
─────ゴゥッ!!
炎を纏い姿を現すその姿は、己に降りかかる火の粉さえも愛しむかのように共に髪をかきあげると、ついで握る太刀で円を描く
キュイイィィイイイッ
炎と風の渦は瞬く間にその刀身に吸収され、姿をくらませる
「───
【
「───合技・風林火山」
火花が、輝る
────ゴオオオオオオッ!!
刹那、振りかざされた刀身から炎が湧き正面にいたギャングオルカの巨体を瞬く間に覆い隠す
柱のごとく舞い上がったそれは、風と炎が絡み合い先程のものよりも倍以上の威力と激しさを覗かせる
「雨降って地固まるってな。驚いたか?」
威力、精度は減退しているものの麻痺の効きが充分ではなかった夜嵐は辛うじて個性のコントロールが可能であった為、完全に動くことが出来ない轟が彼の威力の半減をカバー
危険分子から一時的にでも意識を逸らすためにわざと自身を閉じ込めさせ、"
「え?!れ、怜奈ちゃん?!!」
「デク。私は2人を回収する、後ろの制圧と誘導は任せた」
「はっはい!!」
炎の渦で閉じ込められたギャングオルカに気付き残りのサイドキック達が戻ってくることを察し緑谷に指示を出せば、彼は一瞬困惑しつつも制圧へと駆け出していく
「大丈夫か?」
「っぐ…… 怜奈……」
「怜奈、さん……お、俺ッ…」
「反省は後だ。今は休め」
2人の元へ駆け寄れば、形容し難い幼子の様な表情をうかべる彼らの心情を汲み取りつつもクリスタルでその身を包みこむ
「頑張ったな」
「「…ッ…」」
「そこで見てろ。すぐに迎えに行く」
心からの賞賛と労いの言葉と共に美しく歪ませた瞳を向ければ、彼らは息を飲むと同時に眩しすぎる存在に、目の前の景色が歪む
ああ、本当に……
「…………最高にかっこいいな…くそ…」
「さて、と…」
周りに負傷者がいなくなったことを確認し、炎の渦を横目で流し口角を歪ませた
「並のヴィランなら、絶望的な状況だが…」
「─────そうでなかった場合、撃った時には既に…次の手を講じておくものだ」
僅かに聞こえる水音に答えれば、強者は静かに先を促し
キン
炎が弾け飛ぶ
「で、次は?」
「──────上等」
揺れる空気に身を投じるかのように、白い肢体が靄のように歪む
「!!」
「蜃気楼って………知ってるか?」
直後耳元から聞こえる艶めいた声音に、背筋に一筋の焦りが滲む
「っ!」
パキィンッ
金属が、屑となり鈍い光を反射させると同時に腕の解放感を感じた
そして次にとらえた映像は太陽を背に輝く、いつの日かの消えてしまいそうな微笑みでなく
勝利をもたらす、勝気な瞳が身体を射貫く瞬間
「四ノ舞」
景色が、揺れ
光が霞む
「─────"風花睡蓮"」
大地に突き立てられた刃に気付いたのは、空から舞う結晶が己の腕に触れた時
次いで感じる、おぞましいほどの冷気
パキッパキパキパキ………
「な、に………」
「─────咲け、狂気なほど………美しく」
何が起こったのか、わからなかった
自身の足元から咲く巨大な睡蓮は光の屈折により虹色に輝き、辺り一体に光を乱射させている
まるで他人事かのように、その光景はただただ美しく壮大で自身の体が動かせる状態にないことも静かに悟る
光り輝く水の女神の頂上でいっそう強い光を放つ刀を掲げるその人を、生涯忘れるものはいなかった
「「うッ……」」
うおおおおおおおおおおおおッ!!!
試験終了の合図が鳴った後も、湧き上がる高揚感と興奮を抑えきれぬ者達の声はなかなか引くことは無かった
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