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THE試験
名前変換
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それから夜嵐と話している内に通過者がだんだんと増え始めてきた
「あの、神風さ…」
「(ギンッ!!!)」
「ヒィッッ!!?」
「サイン頂いても、」
「(グワッ!!!)」
「うお!?」
通過者達は皆夜嵐と話している怜奈へと目を向けその中でも勇敢な者は彼女に話しかけようと試みるも、怜奈がそちらに気付く前に夜嵐が彼らのことをすごい勢いで睨みつけ威嚇するのでどれも失敗に終わっている
「夜嵐くん?どうかした?」
「いえ!なんでもないっス!!」
そう?と怜奈が返したところで再び扉が開く音がする
反射的に視線を向ければ、キョロキョロと視線を動かしている轟の姿を見つけた
「焦ちゃん!」
「!怜奈っ」
座っていた椅子から立ち上がり手を振りながら彼の名前を呼んだ怜奈に、轟も色違いの瞳の焦点を入口よりもだいぶ奥にいる彼女に合わせ向かってくる
それに怜奈も進もうと1歩足を踏み出したところでパシリ、と自身の手首が掴まれる感触を感じ自然と目線を移す
「…………」
「夜嵐、くん…………?」
「っ!!す、すいません!!!」
「ううん、大丈夫だよ…どうかした?」
「え、」
「何だが…怒ったような目をしてたよ」
彼の黒に混じる濁りに怜奈は心配そうにその顔を覗き込むが、夜嵐は一瞬目を見開いた後握っていた手を離し何でもないっス!!とぶんぶんと首を横に振って見せた
「なら、いいんだけど……」
「はい!!大丈夫っス!」
「次の試験も、お互い頑張ろうねっ!」
「はいっス!!!」
自身に向けられる目に先程感じた濁りはなくキラキラとした輝きを放っていて、気の所為だったのかな…と少し気にかけながらも怜奈はそう言葉をかけた後に手を振り、轟の元へ小走りで駆け寄る
「焦ちゃん!お疲れさまっ」
「…ああ、怜奈もお疲れ。やっぱ一番初めに通過したの怜奈だったんだな」
「うんっ」
「あいつと話してたのか?」
「2番目に通過したのが夜嵐くんだったから、焦ちゃんが来るまで話し相手になってくれたの」
「…………そうか」
「…焦ちゃん?」
轟は怜奈の背後から夜嵐に視線を向けてその瞳からどこか敵意を感じるも、怜奈が自身の名前を呼ぶのになんでもないという意味を込めてさらさらの髪に指をからませた
「他の奴とかに声掛けられなかったか?」
「うん、大丈夫だったよー」
「俺のそばから離れるなよ」
「もうっまた子ども扱いして…あ、焦ちゃんまだターゲット外してないね。あっちに外せるキーがあるから、一緒に行こう?」
「おう」
自身の手を握り無邪気に笑う怜奈の姿に頬を緩ませつつ、全身に突き刺さる羨望と嫉妬に自分からも小さな手を握り返した
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その頃他エリアでは爆豪、上鳴が肉塊に変えられてしまった切島を手にした肉倉と対峙していた
半泣きになっている上鳴を他所に肉倉は切島を無造作に地面に落とすと小難しい言葉を並べていく
「嫌いなタイプだ」
「何つったあの人!?頭に入ってこねー!」
「目が細すぎて相手の実力見えませんだとよ」
爆豪の独自の解釈(悪意有り)に肉倉はカッ!!と目を見開き大声でそれを否定し、上鳴はそんな彼の様子にフォローではないフォロー(?)を飛ばす
「雄英高校…私は尊敬している。御校と伍する事に誇りすら感じていたのだ…それを
話している最中にも彼の背後からは指の形をした塊が浮かび上がっている
それに上鳴が叫ぶ横で爆豪は"彼女"というワードにピクリと反応する
「責務?矜恃ィ?ペラペラペラペラと…口じゃなくって行動で示して下さいヨ先パイ!
────何も見えてねえくせに、一丁前に怜奈のことを語んじゃねェよクソ糸目野郎」
その直後、彼らに向かって"肉"が襲いかかった
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またその一方では、観覧席で相澤にガムをあげようとして断られるジョークの姿があった
観覧、といっても誰が通ったのか落ちたのかわからない状況にやきもきしている様子の相澤に、おもちゃではなく本物のガムを1枚取り出し咀嚼するジョークは心配なのかと彼に問いかければ、相澤は少しの間を開けてからA組についてわかっていることがある。とジョークに顔は向けずに話し始める
「連中は気付いていないがA組はその実、
そしていつの間にか、そんな三人の熱はクラスに伝播していく。妙な事だが、大事な渦中に必ずこの三人のうち誰かが必ずいるんだ…ジョーク、俺は心配じゃない、期待してるんだ。奴らの存在が、クラスを底上げしてくれている」
凸凹ながらもお互いを気にし合い、彼女によってまとまっている3人の姿を思い浮かべながら試験を見つめる相澤に
十分お前も感化されているではないかと、彼が以前とは全く違う人物になっていることを感じて、ジョークはガムを膨らませつつ気持ち悪いと珍しく不機嫌そうに一刀両断して見せた
視点は再び肉倉と対峙している上鳴達へと移るが、爆豪も肉倉の"個性"によって肉塊とされ、彼と向き合っているのは上鳴だけだった
肉倉は爆豪を丸めた後残っている上鳴に視線を向け再び自身の持論を騙り始める
本来であればヒーローを増員すべきところを今試験では合格率の低さから、彼はより質の高いヒーローを生み出し、選別するためのものだと解釈し上鳴達をこうして排しているのだという
あまりにも勝手で中傷を含んだ内容に上鳴の額から汗が流れ落ちる
「試験そっちのけでやることスか…!?おかしーよなんかそれ…」
「徒者が世に憚かる方がおかしい。…その点神風 怜奈、彼女は選ばれし方だ。真の英雄達の元で育ち、彼女自身の精神と強さはこれからのヒーロー社会を牽引していくのに相応しい。そんな彼女は、貴様らのように弱い姿などないのだ」
そして肉倉は容赦なく肉塊となった切島を踏みつけ、放電はここにいる人達全てを傷つけることになると突きつける
切島を踏みつける彼の姿に、上鳴の目にピリ、と感情が走る
しかし、肉倉はハッキリいえば視野が狭まっていた
だからこそ、彼の中で上鳴は体育祭の時の上鳴電気の印象が強く残っていた
予め爆豪から受け取っていた装備で肉倉を威嚇した後、よろけた彼に向かって上鳴の指が向く
「ところで先輩…良い位置によろけましたね」
「む!?」
その瞬間、肉倉の直線上に稲妻がその刃を向けた
モロに電撃をくらった肉倉に、上鳴は時を経て共に過ごしてきたからこそわかる彼らの姿を語り出す
「ソヤで下水道みてーな奴だけど、割とマジメにヒーローやろうとしてますよ。咄嗟に手榴弾くれたのも打開の為の冷静な判断じゃないスか?それに切島だって…友だちの為に敵地乗り込むような、バカがつくくらい良い奴なんスよ。」
語る中で、肉倉が彼らを中傷している内容が蘇ってきて感情が高まってくる
「怜奈ちゃんは……確かに俺達の誰よりも強くて、優しくて…いつだって俺たちを引っ張ってくれてる……だけど、」
─────みんなと一緒に、頑張りたいよ…!!
「ヒーローとか以前に……っ怜奈ちゃんだって、一人の女の子なんスよ!!!」
初めて見た彼女の胸の奥の小さな怯えは、どこから見てもか弱い女の子でただただ守ってあげたいと思った
圧倒的な強さを持っている彼女の弱さを見た時に感じたのは、泣かないで欲しいと思いつつも息が詰まるほど嬉しいと言う感情だった
彼女の全てを見れたような気がしたから
「断片的な情報だけで知った気んなって…こいつらをディスってんじゃねぇよ!!」