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THE試験
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開始一分と経たずに一次試験を通過した怜奈は試験の役員によって控え室へと案内された
「ターゲットを外すキーがこちらになります。外したらボールバックと一緒に返却棚へお戻し下さい」
「ありがとうございます」
指示されたとおりにそれらを外し返却棚へ戻すとどうぞごゆっくりお休み下さいと言われたが、休むも何もそういった疲労はまったくもって感じてはいないので思わず乾いたような笑いが零れてしまう
「あの……」
「はい?」
「ここ、試験中の様子を見れるモニターとかはありませんか?みんなの様子が気になってしまって…」
A組の彼らのことは信じてはいるが、それと心配はやはり別物でなにか試験の状況を確認するものは無いかと尋ねる
「すみません、そういったものは残念ながら……」
「いえ!ごめんなさい、わがままを言ってしまって…」
「あっ…………」
頭を掻きながら申し訳なさそうに言う役員に慌てて無理を言ってしまってすみませんと謝るがやはり彼らの様子が気になってしまいしゅん、と不安顔で手を握る怜奈の姿に、実は彼女の隠れファンである役員達は心が痛み少しの間考えてからポンッと両手を合わせた
「あの、もし宜しければ────」
「さっきの動き見えたか?」
「いや、まったく……瞬きした時にはもう…」
「開始から1分も経っていないのに…」
「フェアルズの血を引き英雄に育てられたとなると…その実力は未知数だぞ」
「そんなの体育祭や神野の時でみんな分かってることだろ」
「実は俺ファンなんだよな…」
「私も」
ところ変わって試験会場の観覧席では先程の怜奈が脅威のスピードで一次試験を合格した事についてでざわめいていた
「さっすが……真堂達が完全に威圧されてた」
「……ああ」
「あれでまだ1年だって言うんだからな……」
末恐ろしいよ、と冷や汗を流しながら続けたジョークに相澤は何も返すことは無かったが時にはプロすらも怖気させる程のオーラを放つ怜奈に、素直に成長したなと実感が沸き上がった
数年前までは戦うことなど欠片も知らない少女だったのに、何時しか自分の体術や操縛術を習いに来たりマイクやミッドナイトなどにも敵との立ち回りではどう動くべきかなどを研究していたりと、唯一の肉親が死んだ時もしっかりと現実に向き合い己を成長させて行った
聞こうとしなくても賞賛の声が自然と耳に入ってきて、思わず当然だろうと鼻を鳴らしてしまう
「(まあ……俺にとっては守るべき存在なのは変わりない)」
真堂が地面を割ったことにより見にくくなってしまった試験の様子を見ながらふっ、と微笑を漏らすと後ろから足音とともに話し声が近付いてくる
「他の合格者が出るまでここで観覧していて大丈夫ですよ」
「すいません、ここまでしていただいて…」
「い、いえ!お役に立てて光栄です」
「(目が幸せ…………)」
「本当にありがとうございます!戻る時は自分で戻りますね、お仕事頑張ってください!」
「「はいっ!!」」
「(この声は………)」
聞き覚えのありすぎる声に相澤が勢いよく後ろを振り向くと二人の役員らしき人物に頭を下げている怜奈の姿があった
「怜奈!なんでここに……」
「!消太先生っ」
思わず立ち上がり彼女の名前を呼ぶと怜奈は相澤の姿を目に映しパァっと顔を輝かせて駆け寄ってくる
「モニターで試験の様子を確認できないかどうか聞いたら、次の通過者が出るまではここで観覧していても大丈夫だって試験官の人達が案内してくれたの」
「そうか……なら、」
「じゃあ、私はあっちの方で観てくるね」
ならば自分の隣で、と相澤が言おうとしたところで怜奈は反対側の席を指差し移動しようとするのに相澤は思わず身を乗り出しオイと言いながら彼女の細い手首をガシリと掴んだ
「待て待て待て何でそうなる?俺の隣で観ればいいだろ」
「でも、Ms.ジョークさんもいらっしゃるし…」
「間違ってもあいつとは何もないって言っただろうが、まさかまだ勘違いしてんじゃねえだろうな?」
「そ、そうじゃなくて、久しぶりに会ったのなら消太先生も積もる話もあるだろうし…」
「ンなもん微塵もない」
「相変わらずひどいなイレイザー!!ていうか凄い目立ってるぜ!」
怜奈の登場に同じように観覧していた人達の視線が一気に集まっていることに対し、相澤はちゃんと試験見ろよと自分のことを棚に上げて周りをギロリと睨みつけるとその隙をついてジョークが怜奈の前に移動し相澤の手を彼女から引き剥がしその手を両手で握りしめた
「こんにちは!会えて嬉しいよ怜奈ちゃん!!」
「えと、こんにちは!Ms.ジョークさん」
「オイ離せジョーク。怜奈に触るな名前で呼ぶな」
「はぁ〜…やっぱり近くで見るとさらに可愛いなあ!実は私体育祭見に行ってたんだよね!そこで君のこと見てさ、天使みたいに超絶可愛い子いるなーって思ったらめちゃくちゃ強くてびっくりしたよ!!」
「聞けこら」
「神野の時も凄かった…ヒーローとして尊敬したよホントに!」
「そんな…もったいないお言葉です」
相澤の言葉をガン無視してマシンガントークを続けるジョークに彼の額に青筋が浮かぶが、怜奈はジョークの言葉に頬を薄い桃色に染めはにかんだような笑みを向けると、彼女は一時停止したかと思えばガバッと怜奈の身体を勢いよく抱き締めた
「きゃっ?」
「ああーーーーーーーーー!!可愛いーーーーー!やっぱ超可愛いな怜奈ちゃん!!そういう訳でイレイザー、怜奈ちゃんうちにくれ!!!」
「寝言は寝て死ね」
「消太先生それ勝己くんのだよ?」
「怜奈ちゃんは世間じゃエンジェルヒーローやら生きる宝石って呼ばれてるんだぜ?うちの生徒だって怜奈ちゃんが来たら嬉しすぎて死んじゃうぐらいだ!って言う訳で、な!イレイザー!!」
「お前ほんと死ね。いい加減怜奈離せ汚れる」
「あだだだだだだだだだだだだだだっ!!」
「ジョークさん!!!?」
ぐりぐりと怜奈を撫で回すジョークの顔面を相澤はなんの躊躇もなくガッ!と掴みあげると(アイアンクロー)その勢いのまま戸惑う怜奈を彼女から引き剥がしその身体を抱えジョークから離れた場所に一緒に腰を下ろした
「ダメだよ消太先生!女の子に乱暴しちゃ!謝って!」
「あいつはアホだからいいの」
「容赦ねえなイレイザー!!普通に痛い!!」
見事なアイアンクローをかまされたジョークだったが、彼女は気にしていない様子で豪快に笑うとよっこいせと自然に移動して怜奈の隣に腰を下ろした
「おいどっか行けよ」
「やだね、怜奈ちゃんの隣だもん」
「こいつ……」
「もうっ!消太先生!」
喧嘩はダメです!と怜奈に諌めるように言われてしまえばそれ以上言えず相澤がグッと口を噤めば、ジョークがニヤニヤとした顔を彼女の後ろから覗かせるため、長いため息を吐き出してぷりぷりとする怜奈の頭を撫でながら視線を前に向け直した
「………怜奈、あいつらのこと見えるか?」
「待ってね………
相澤の言葉に怜奈も前に向き直ると一度目を閉じてから
「…………元々集まっていたみんなは地面が割られてしまったことによってそれぞれに散らばってますね……けど何人かは固まって動けてるみたいです。」
「そうか……」
「固まって動いている…百ちゃんと梅雨ちゃん、それと響香ちゃん、目蔵くんがビルの中へ……勝己くん、切島くん、上鳴くんは反対側の橋の上にいます。その他の子達はバラバラに…」
「そこまで見えるのか」
「力の解放で見える範囲が広がったみたいです」
偉いな、と優しく頭を撫でる相澤の手に怜奈は嬉しそうにわらうが、その隣でジョークは彼女の個性を目の当たりにして静かに冷や汗を流した
「(力の解放とかはよくわかんないけど……真堂達が真っ向から彼女に挑んでいたら…確実にやられてた…)」
本当に凄いな、と改めて彼女の力を実感してからジョークも試験に目を向けた