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懺悔と再会と
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オールマイトはその上に優しく怜奈をおろすと、先程放り投げてしまった荷物と花束を回収してから簡易椅子を引き寄せてにこにこと隠しきれない笑みを浮かべながらきょろきょろと忙しなく視線をさ迷わせ、なにかしてほしいことは無いかい?と怜奈の足元に布団をかけて問いかける。
「何か欲しいものとか…そうだ!怜奈、お腹すいてないかい?苺のゼリーがあるんだよ!君が好きそうだなと思って買っておいたんだ」
「ほんとっ?」
苺と言う言葉に瞳を輝かせる怜奈にオールマイトは備え付けの冷蔵庫に手を突っ込み目的のものを取り出した。
冷蔵庫の中にはゼリーの他に何種類かのアイスなどもあって、取り敢えず後で処理しなければなとオールマイトは思考をめぐらせた。
プラスチック製のスプーンも取り出しゼリーの蓋を開けると、怜奈は受け取ろうと手を伸ばしたがオールマイトはゼリーを高く掲げ受け取りを拒否するという動きを見せた。
その様子に怜奈はきょとりと首を傾げたが、オールマイトがせんとしていることを察して困ったように笑い返した。
「…パーパ、私自分で食べれるよ?」
「もう!そんなのダメダメ!!怜奈は起きたばかりなんだから、甘えてくれなきゃ!」
やんわりと言った台詞は容赦なく跳ね返され、オールマイトは頑なにスプーンとゼリーを渡すものかとぷんぷんと効果音がつきそうな勢いで食べさせてあげるから!と言ってくる
こうなっては彼は譲らないからなぁと怜奈は少し申し訳ないと思いながらもここは甘えようとその好意を受け取ることにする。
「じゃあ…お願いしようかなぁ」
「任せてくれ!さ、アーンしてごらん?」
「あー…」
「グハッ!!」
「?パーパ…?」
「ハッ!な、なんでもないよ!!」
雛鳥のように可愛らしく小さな口を開ける怜奈にオールマイトは暫く見ていなかったのもありモロにダメージを食らう。
その様子に怜奈は心配そうにオールマイトを見るので、誤魔化すように慌てて頭を振り止まってしまった手を動かしゼリーを与えていく。
しかしこんな感覚も何時ぶりだろうかと、オールマイトはまた涙が出そうになるが美味しいとゼリーを食べる怜奈の姿に胸の内には温かなものが拡がっていき、頬は勝手に緩んでいった
話しながら数分かけてひとつを食べ終わり、もうひとつ食べる?とオールマイトが空になった容器を一旦置いてから聞けば、口にゼリーを含んでいるためこくこくと首を上下に振り怜奈が返事を返すと、その様子に笑いながら今度はさくらんぼ味のゼリーを取り出す。
2個目からは自分で…と手を伸ばす彼女にオールマイトが再びNO!と言って食べさせようと口元にゼリーの乗ったスプーンを運んだ次の瞬間
─────ガラッ
「すみませんオールマイトさん。遅くなりまし…」
「「…あ」」
開けられた扉の先にいたのは、見舞いの品を取りに行った際に着替えたのだろうか、私服に身を包んだ相澤を筆頭にその後にはマイク、ミッドナイト、13号の姿があった。
彼らはオールマイトが怜奈にゼリーを食べさせようとしている姿と、元の体に戻りベットから身体を起こしている怜奈の姿を見て双方の動きが一時停止する。
目を見開いて唖然と怜奈の姿を映す相澤達に、オールマイトは頭の片隅でそう言えば嬉しさのあまり彼らに連絡するの忘れてたなぁと今更他人事のように思い出す。
「な………ん……」
「…みんな…っ…」
困惑から言葉が出ない相澤達に怜奈が再び光の膜を瞳に纏わせた瞬間
オールマイトの体が瞬く間に簀巻きにされた
「「……え」」
捕縛布を巻かれたオールマイトとそれを見た怜奈の声が合わさると同時に、彼の体が簀巻きにされたままベットの上にあるカーテンレールの上に捕縛布がかけられ、ズアッと2m超の身体が一気に吊し上げられた。
「うえええぇえぇえっ?!」
「ぱっ…パーパ!?消太お兄ちゃんなにを…!!」
声を上げ慌てる二人の後ろで、相澤達は言葉の節々に地を這うような怒りを込めて容赦無くオールマイトにぶつける
「おい…オールマイトさんあんた…!!いつも報告しろって言ってるでしょう!!?
何なんですかこの状況は!!」
「何呑気にアーンしてんだよっ!!!」
「もしかしなくても連絡忘れてましたよね?!!!」
「私達がどんな思いでここに向かってたと思ってるんですか!!!」
「しかもよくよく見たらゼリー2個目かよ?!」
「言うまでもなく……」
「死刑よ!!!」
「「イエッサアアアアアア!!!」」
「ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙待ってくれぇぇえええっ」
「「問答無用!!!!」」
ベットの足元の方で吊し上げられたオールマイトの周りで、血眼になりながら戦闘態勢に入る相澤達に怜奈が慌ててそれを止めに入ろうとベットから抜け出し床に足をつける
「ま、待って!喧嘩はだめ…あっ」
のはいいのだが、やはり数日間体を動かしていないのもあってか手を伸ばした瞬間ぐらりと身体の重心が傾き足が縺れる
床にぶつかる…!とぎゅっと怜奈が目を瞑った時、ゴスッ!という音とオールマイトの呻き声が響いたと思ったら傾いた身体がふわりと抱きとめられる。
それと同時に鼻腔に通った香りと低めの体温に、怜奈は自分を抱きとめているのが誰なのかを瞬時に理解した
「消太、お兄ちゃん……?」
「………怜奈っ…」
しかし怜奈が彼の名前を呼ぶも相澤は彼女の頭を抱え込むように抱きしめたまま動こうとはしない。
黙って自身を抱きしめる相澤を不思議に思い怜奈が腕を動かすと、さらに彼の腕に力がこもった。
その強さに一瞬息が詰まり、どうしたのかと声を上げた
「っお兄ちゃ…?」
「…よかった…生きてる…!!」
「っ……!」
小さく肩口で呟かれた言葉と共に自分の肩が湿っていくのに、相澤が自分の前で泣くのは何時ぶりだろうかと怜奈は引っ込んでしまった涙を再び光に纏わせ目を細める。
自身も彼の存在を確認するように細い腕を小さく震える見かけよりもずっと広い背に絡ませると、相澤はさらに抱き込む力を強くした
「よく、頑張ったな…怖かっただろう…?っ助けに行けなくて、悪かった…!」
「…消太お兄ちゃん…ごめんねっ…いっぱい、心配かけちゃった…」
「そんなのはいいっ…ただ、お前がいてくれるだけで…俺は…それだけで…!」
そう言ってようやく顔を上げた相澤の瞳には、怜奈と同じように涙が溜まっていて、それを拭うように掌を頬に這わせれば相澤は柔らかく微笑んでから怜奈の瞳の縁にも指を這わせた。
それに擽ったそうに怜奈が目を細めた瞬間、ぐっと相澤の背に回っていた腕を掴まれて彼と引き離されると今度は別の香りが鼻腔を勢い良く刺激した。
突然の視界の反転に目をぱちぱちとさせていると聞こえてくる鼻をすする音に、無遠慮に自分を掻き抱く背に腕を回す
「…泣かないで?マイクお兄ちゃん…」
「っ怜奈、ちゃん…!おれっ、俺…なんも…出来なくて…!!ごめん…!!ごめんな…っ」
「…ありがとう、マイクお兄ちゃん…待っててくれて」
涙でぐしゃぐしゃな顔を上げて額と額を合わせるようにして涙を零しながら怜奈が笑いかければ、マイクは一瞬息を呑んでから同じように笑い返そうと口許を弓形にしてみせた。
「っ怜奈ちゃん…おかえ」
「いい加減代わりなさいよマイク!!!」
「ゲホォッッ!?」
「ああ、怜奈…!!本当に…貴女なのねっ……!」
「どこも痛くありませんかっ?」
「睡お姉ちゃん、亜南さん…!」
再び声をかけようとしたマイクに待ちきれなくなったのか、ミッドナイトは彼の脇腹を蹴り飛ばし怜奈から強制的に引き剥がした。
倒れ込むマイクには目もくれず怜奈の両頬に手を添え確認するように泣きながら顔を覗き込むミッドナイトと、頭を撫でながら心配そうに顔を歪め聞いてくる13号
そんな二人に怜奈が自分から抱きつけば、彼女らは嬉しそうに涙を零しながら小さな身体を抱き締め返した
───────────
──────
「…で、いつ意識が戻ったんだ?」
「えっとね、少し前…パーパが来る前に目が覚めたの」
「怜奈ちゃんの目が覚めた時に連絡くれればいいのに……」
「バカ」
「金髪」
「それ俺もじゃね?」
「ほ、本当に申し訳ないと思っているよ………」
床に放置されていたオールマイトの捕縛を解いて、怜奈の身体をベットへと移してから会話を再開させる。
「……もう、身体は大丈夫なんだよな?」
「うん、そう教えてもらったから」
「…待て、今……………"教えて貰った"って言ったか?」
立ったままのマイクが容態はどうなのか改めて聞いて怜奈が首を縦に振ったと同時に言った台詞を相澤が眉を寄せながら拾い上げた。
「誰に……」
「────ママに、教えてもらったの」
その瞬間、一瞬だけ時が止まった後言いようのない緊張感がその場に走りオールマイト達の背を形容し難い汗が伝い落ちていった。
鋭敏に空気の振動を感じながらも、怜奈は胸元の鍵を見ながらさらに言葉を続けた
「…砕けた身体が元通りになることも、この鍵の使い方も…全部、パパとママが私に教えてくれた」
どこか遠くを見るようにして話す怜奈に、ついには額にまで汗が伝った所で恐怖がオールマイト達の全身をゆっくりと侵食していく。
既に他界している2人に会ったということは、彼女がこの数日さ迷った場所のことを考えただけで恐ろしく、恐怖は震えとなりゴクリと生唾を飲み込んだ
顔を真っ青に染め上げ小さく身体を震わせる彼らに、怜奈は鍵から視線を上げ横にいるオールマイトの手をふわりと包み込んだ。
怜奈から感じる体温にオールマイトが顔を上げると、彼女は瞳を伏せて包み込むような声音を病室に響かせた。
「──────大丈夫」
「「「!!」」」
「大丈夫だからね」
それと同時に顔を上げ至極美しい顔で微笑む少女に、いつしか身体の震えは収まり心地よい温かさが全身に巡っていく。
オールマイトの手から震えが無くなったことを確認すると、握った手はそのままに怜奈はむこうの世界で両親に会いなぜ身体が砕けてしまったのか、あの時開放された力について、鍵の存在についてをゆっくりとした口調で話す。
向こうで話されたことを全て伝え終わると、彼らはそれぞれ少しの不思議さを感じながらも納得したように頷きを返した。
「…つまり、今までの魔法の個性の力は50%しかなかったが、今回の事件で内に眠っている力が引き出された。」
「その力を最大限引き出す鍵を、誠くんは君の中に眠らせていたのか…」
「うん。それに宝石の変幻で身体が砕けたとしても元に戻るから、また砕けちゃっても心配しないでね」
ガシィッ
「…ほえ?」
「それだけはっ…!!それだけは勘弁してくれ…!!!」
「お願いだ怜奈っ!あれだけはもう耐えられない…!!」
「う、うん…気をつけるね!だから泣かないで?…ね?」
自身の手を握り顔を青褪めさせ首をぶんぶんと横に振るオールマイト達に、怜奈は宥めるように声をかけてからもう片方の手で鍵を握る
「……それにね、2人と約束したの。これからはこの力でもっとたくさんの人を救けるって…傍で見てるからねって、言ってもらったの…」
鍵を握る手はそのままに一粒虹を瞳から流し、その姿に見惚れるオールマイト達を怜奈は真っ直ぐに見つめてからふわりと光を咲かせた。
「だから…大丈夫。絶対、大丈夫だよ」
必ずヒーローになってみせると美しく笑うその姿に、彼らは眩しさに目を細めてからこの世で最も愛おしい存在を抱き締めた。
(君はもう、私たちのヒーローだよ)
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暫くしてから医師が検査の結果を報告しに病室へと訪れ、途中でリカバリーガールも合流し彼女による検診も終えたところで身体的な異常も何も見られないとのこと。
念の為もう一日入院してから退院しても良いという言葉に、オールマイト達はようやくほっと息を吐き出した。
──人々を救った天使は、再び地上へと降り立ちまた新たな命を救うために飛び立つ準備をする
Fin
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