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懺悔と再会と
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《爆豪side》
「…………………」
爆豪は部屋で一人自分の掌を見つめた。護ると初めて誓った時よりも数倍大きくなっているそれにぐっと眉を顰める
何度も抱きしめたはずの怜奈の感触が、まるで幻のように感じてあの日の感覚を思い出そうとするも上手くいかない
結局、助けられたのは自分だった
切島達が来た時、迷わず彼女に飛びついて上に上がれば間に合ったのかもしれない
まず彼女がああなることがわかっていれば、自分は怜奈から離れたりしなかった
元より、自分が捕まってさえいなければこんなことにはならなかったのではないか
浮かんでは消え、消えては浮かんでくる"後悔"の二文字
今の自分は怜奈の居場所さえ知らないが、家庭訪問に来た彼らの様子からして状況は悪いのだろうとすぐに察しはついた。
彼らが帰った後、自分の母親もその事実を察し父親の胸に顔を埋め泣いていた。
何が護るだ
何が
何が
「"お前のためにヒーロになる"だよ………!!」
感情と比例するように思わず爆破した掌から、とろりとニトロが滴った。
ゴツゴツとした自身の手は彼女のためにヒーローになると言ったあの日から積み上げ形成してきた、言うなれば努力の証だったが
護れなくては意味が無い
結果が全てだ
その結果がこれ
彼女は代償として、その身を捧げてしまった
「んだよ………クソっ…クソっ!!!」
ぼたぼたと頬に伝い落ちる何かも、こんなにも胸が苦しいのも、掌が焼けるように痛み何かが足りないように感じるのも全部、自分が弱かったから。
「お前がいなきゃ………意味ねーだろうが…!!!」
あの日自分に微笑んだ怜奈の姿が脳裏を掠め、それをトリガーに彼女との日々が頭の中を埋め尽くす。
どの記憶にも怜奈がいて、怜奈のいない世界なんて彼にとってはなんの価値もない。
彼女がいなければ、自分の道は失ったのと同義なのだと
もう一人の自分が嫌に冷静に呟いた
(怜奈がいなきゃ、俺はどこに進めばいい?)
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《轟side》
─空はこんなにも、色が無かっただろうか
内心そんなことを考えながら轟はいつからそこに居たのか、縁側でもうすぐ緋色に変わる空を見上げながら思う。
あの事件から数日、自分は何をするにも無気力で、母のお見舞いにも行けずまるで地に足がついていないような曖昧な生活が続いていた。
そんな自分を見て、姉は至極心配そうに自分を伺っていたような気もするが、今の自分の記憶ではそれも定かではない。
「………怜奈……」
何気なくぽつりとこぼした名前に、ぶわりと心が掻き乱されどうしようもなく泣けてくる。
そして気づいた頃には遅く、ツーっと自身の片目から涙が滑り落ちてきたのに数秒経ってからこれは自分のものかと遠い思考の中で理解する。
しかしそれらを拭う気力さえ起きず、既に緋色に染った空を仰ぎ見ると生暖かい風が頬を撫でた。
そして思うのは、怜奈がいた時には世界にはもっと色がついていたような気がするということ
────いや、ついていたのだ
怜奈が砕け散ったその瞬間から、自分の世界は色をなくした。
彼女越しに映る世界は、どれもこれも全て色鮮やかに感じたのに、彼女がいなくなった途端それらはモノクロとなり何もかもをつまらないものにしてしまった。
「(あの時、怜奈が1人爆豪を逃がした時、無理矢理にでも体を動かせばよかったんだ………っ)」
自分はまだ卵だからと、ヒーローに任せるべきだと思わずに
ただ救いたいと、思ったあの時に動けていれば怜奈は今頃、自分の隣にいてくれたのではないだろうか。
「怜奈………怜奈…!」
何度呼んでも、彼女の声が聞こえてくるわけはないとわかってはいたが
こうして名前を呼んでいないと、何故か世界から怜奈が消えてしまいそうで…たまらなく、恐ろしいのだ。
(君がいないと、俺の世界に色は無い)