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神野の悪夢
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「ワン・フォー・オール、先代継承者。志村菜奈から」
「貴様の汚れた口で…お師匠の名を出すな…!!」
志村菜奈とは、オール・フォー・ワンの先代でありオールマイトの師匠だった人物である。
彼女の名前に思わず動揺し力が緩んだオールマイトの隙を逃すはずもなく、オール・フォー・ワンは戦いの中継を行っているヘリコプターに向かって彼を吹っ飛ばした。そのまま突っ込んでいきそうになるオールマイトを寸での所でグラントリノが受け止め衝突を回避した。
それに怜奈がほっと息を吐いたのも束の間、彼女の身体は再び磁気が宿ったかのようにオール・フォー・ワンの元へ引き寄せられ、そのまま手元に納まった怜奈の細い首をオール・フォー・ワンは自身の大きな掌によって包み掴みあげた。
「怜奈ッッ!!!!」
「カッ……は…………」
「ああその声すらも…本当に君は美しい…」
ギリギリと容赦無く締め付けられる首に苦しげに怜奈の顔が歪み、オールマイトを支えているグラントリノが声を荒らげる。
「きっ…貴様ああああああああぁぁぁッッ!!!!」
オールマイトはパンッと一瞬目の前が弾けコンマ数秒後に大事な愛娘が最も憎むべき敵に傷つけられていることを理解して、激情を抑えることなく叫び頭の血管がブチブチと切れるのを感じながら、衝動のままにグラントリノの手を振り切り向かっていこうとするが、おっと、と軽く言いながらオール・フォー・ワンは怜奈の首を掴んでいる掌にさらに力を込めた。
「待て俊典!!!!」
「あ"ぁあ"、あ"……!!!」
「まったく…びっくりして力を込めてしまったじゃないか。痛いかい?その顔もいいねぇ」
「おのれ……!!私の娘を離せえ!!!」
「そうはいかない。この子はこちら側に来てもらうんだよ。弔もそれを望んでいるし、彼女はきっとあの子を成長させるトリガーとなってくれる」
「黙れ!!怜奈は貴様らのようにはならない!!貴様らが触れていいような子じゃないんだ!!!!」
ふーっふーっと怒りによって酸欠になりそうなほど息を荒らげているオールマイトを、彼は嬉しそうに、愉快そうに眺めたあと首を掴んでいる方とは逆の掌をオールマイトに向ける。
それにグラントリノが馬鹿でかい威力のものがくるとオールマイトに声をかけ共に避けようとした時、オール・フォー・ワンがゆったりとした口調で問いかける
「避けていいのか?」
彼の視線とオールマイトの視線が、ひとつの所に向けられる
向けた先には、瓦礫の中奥で倒れる一般人
瞬間巻き起こる爆風
「まずは怪我を治して通し続けたその矜持。惨めな姿を世間に晒せ。平和の象徴」
「パー…パ…………」
そこに居たのは、背後にいる一般人を庇い攻撃を真正面から受けたことによりトゥルーフォームで血だらけのオールマイトが、拳を前に突き出している。
彼の隠し通してきた、本来の姿が上空で撮影されている電波によって瞬く間に全国へと知れ渡っていく
彼の本来を晒した張本人であるオール・フォー・ワンは愉快そうに怜奈を掴んでいる方とは逆の腕を広げ演説するかのように少々興奮したかのように声高らかに述べる
「頬はこけ目は窪み!貧相なトップヒーローだ。恥じるなよ、それがトゥルーフォームなんだろう!?」
その言葉にオールマイトは視線をギンッとオール・フォー・ワンに向けると、その視線の強さにオール・フォー・ワンは少しガッカリしたようにあげていた手を下ろす。
それと同時にオールマイトは言葉を紡ぐ
「身体は朽ち衰えようとも…その姿を晒されようとも…私の心は依然平和の象徴!!一欠片とて奪えるものじゃあない!!
さぁ!!!私の娘を返してもらうぞ!!!」
平和の象徴として力強く言い切ったオールマイトに、オール・フォー・ワンは賞賛の言葉を投げかけマスクの下でシュコーと呼吸音を立てながら再び語りかける。
「素晴らしい!まいった、強情で聞かん坊なことを忘れてた。じゃあ、これも君の心には支障ないかな…あのね………」
そして史上最悪の悪は、至極楽しそうな声色で言葉を紡ぐのだ
「死柄木弔は、志村菜奈の孫だよ」
「───────」
瞬間オールマイトの瞳がゆっくりと開かれていき、その言葉の意味をゆっくりと時間をかけて咀嚼する。
そして浮かぶは、絶望の色
「君が嫌がることをずぅっと考えてた。君と弔が会う機会をつくった。君は弔を下したね。何も知らず。勝ち誇った笑顔で」
「ウソを……」
「事実さ、わかってるだろ?僕のやりそうなことだ。あれ…おかしいな。オールマイト──
笑顔はどうした?」
───────────
──────────
───────────────
「き…さッま…!!」
「やはり…楽しいな!一欠片でも奪えただろうか」
「─────ぉおおおお──…!!」
恐らくこれが初めてだろう。
オールマイト─平和の象徴が自ら両膝をついたのは。
「や………めて………」
今のオールマイトは、おそらく正常じゃない。尊敬する人の家族を下した事実はたしかに彼の中を蝕み冷静な判断をすることを許さない。彼のその姿に怜奈がか細く漏らした言葉に、後ろの女性も震えながら言った
「負けないで…オールマイト、お願い…救けて」
その人の言葉にオールマイトが目を見開くが、オール・フォー・ワンは再び掌をオールマイト達に向ける。
「傷心の最中に悪いが、もう一発いこうか」
(やめて)
「さぁ、さらに惨めな姿を晒すがいいさ!!!」
(私は、なんのために力を使うの)
「平和の象徴オールマイトォ!!!」
(私は、私の力は……………)
両膝をついた平和の象徴
傷つき動けない一般人達
倒れこむヒーロー達
勝利を望む、国民達の声
「──もうこれ以上…誰も傷つけないで!!!」
心の中の思いと共に怜奈が叫んだ瞬間、カッと辺り一面が光で覆われバチィッとオール・フォー・ワンの手が弾かれるように怜奈の首から手が離れる。
一面に散らばった光が粒子となり、それらは次第に集まり球体の膜へと変化し怜奈の身体を覆ってしまう。
まるで神が生誕するかのような光景にオール・フォー・ワンは唖然とし、またオールマイトも理解出来ずにただただ目を見開く。
一方で怜奈は、自分の中から光の素が出てくるのをどこか他人事のように感じていた。
幾つもの色彩を持って放出される光は形を形成していき、数秒の後硝子のように光り輝く─────一本の鍵となった。
自身の放つ光りに反射して輝く鍵にそっと触れた瞬間に、何故か言葉が怜奈の頭に浮かび上がる。
初めて手にしたはずなのに
何故か自分はこれを知っている
ただ感じるままに、言葉を紡ぐ
────星の力を秘めし鍵よ──
────真の姿を我の前に示せ──
────契約の下、我が命じる──
「───