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神野の悪夢
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「怜奈と爆豪少年を取り返す!そして貴様は今度こそ刑務所にぶち込む!貴様の操る敵連合もろとも!!」
「それは…やる事が多くて大変だな……お互いに」
「!!避けてオールマイト!!!」
オールマイトが飛びかかった際にオール・フォー・ワンの腕が膨れ上がる動きを見て怜奈が"
とてつもない勢いで何棟ものビルを貫通していくオールマイトに、その威力の恐ろしさを知る。
「〈空気を押し出す〉+〈筋骨発条化〉〈瞬発力〉×4〈膂力増強〉×3。この組み合わせは楽しいな…。増強系をもう少し足すか…」
まるで実験のように楽しげに声を上げる彼は先程から全くと言っていいほど調子を崩さない。
これが何年も死を抗ってきた故の余裕であるかどうなのかは定かではないが、その様子は異常という言葉しかあてはまらない。
「オールマイトォ!!!」
「心配しなくともあの程度じゃ死なないよ。だから…ここは逃げろ弔。その子と怜奈くんを連れて」
オールマイトが飛ばされたことにより声を上げた爆豪と口許に手を当てている怜奈を尻目にオール・フォー・ワンは指先を変形させ、少し遠くで気絶したまま横たわっている黒霧に突き立てると彼の個性を強制発動させた。
「さあ行け」
「先生は…、!」
「逃がさん!!」
「常に考えろ弔。君はまだまだ成長できるんだ」
「行こう死柄木!あのパイプ仮面がオールマイトを止めてくれてる間に!我が君とコマ持ってよ」
瓦礫の山から抜け出したオールマイトが向かってくるのをオール・フォー・ワンが抑えているのを見てコンプレスが同じく気絶させられている荼毘を回収しながら言うと、連合はザッと怜奈達を囲むようにして戦闘態勢に入る。
さっきとは違い説得ではなく無理矢理にでも連れていこうという考えを瞬時に読み取り、爆豪は思わず顔を歪め怜奈は思い通りに動かせない体に鞭を打ち、"
「めんっ…ドクセー……!」
「怜奈っ!爆豪少年!!」
オールマイトがオール・フォー・ワンと戦闘していながらもこちらに視線を向けているのに、怜奈は完全に自分達が邪魔になってしまっていると爆豪に視線を向けると、彼もそう思っているのか小さく頷きを返す。
「大丈夫だよ、オールマイト」
「!!!」
「絶対…大丈夫だよ」
オールマイトに対し怜奈がいつもの笑顔で、いつもの言葉をかけながら後ろを振り返れば彼はハッとしながら目を見開いた。
それを見て再び視線を連合に向け爆豪と背中を合わせる。
「2対6…勝己くんとなら、大丈夫だね」
「怜奈お前っ体が…!」
「やだな…今動かなきゃ、いつ動くの?」
にっと怜奈がこちらを苦しげに見つめる爆豪に笑みを向ければ、彼は一瞬目を丸くしたあとハッ!と口角を上げてから再び視線を元に戻した。
襲いかかってくる敵を翻し爆豪と怜奈が戦闘していた時、頭上から誰かが現れる気配に上を見上げた後目を見開く。
見上げた先にいたのは、緑谷、飯田、切島。
何故ここにいるのかと疑問が浮かぶよりも先に切島が手を伸ばして叫んだ
「来い!!!!!」
そう言った切島に、爆豪は一瞬戸惑った。
怜奈はああ言っても、彼女は恐らくまだ体をまともに動かせない。
先程戦闘していた時も、"
抱えあげて飛ぶのが一番だがそれは近くにいたらの話だ。今二人の間には10m程の距離が空いてしまっているため彼女に駆け寄り飛ぶには切島達はそこから既に離れてしまっているかもしれない
そう考える中で、ぶわりと風が意識外から爆豪の体を勢いよく切島達に向かって持ち上げた。
「は」
随分と間抜けな声が自分の口から漏れるのを気にもとめないで、爆豪は唖然と自身よりもはるか下にいる怜奈を見下ろすと、彼女は遠目の暗がりの中でも輝きながら満足そうに微笑みを返していた。
「怜奈――――――――――!!!!」
爆豪が叫び爆破を起こそうと手を伸ばすのも構わず、そのまま今出せる最大限の爆風で彼を切島達のもとに向かわせれば、飛んできた爆豪の手を切島はがっしりと掴んだ。
だが切島達の顔もハッキリと絶望の色に染められているのを見て、ごめんね、と怜奈は微笑みながら静かに瞳を伏せた。
今の怜奈の体力では、"
爆豪とも違い体も満足に動かせない状態ではあるが、彼をここで捕まらせる訳にもいかない。
そう思った怜奈は爆豪を逃がすことを迷わず選択した。
勢いに逆らえず飛んでいく彼らが遠くで着地しているのを見送っていると、死柄木はその場に佇む怜奈に近づき寂しさと安堵と歓喜が複雑に絡み合ったかのような声音で静かに声をかける
「怜奈は、残ってくれたんだな…」
「…………死柄木さん…」
「怜奈は優しいから、俺のそばにいてくれるよな…?俺にもあんなふうに笑いかけてくれるよな?
───今度は絶対に、渡すもんか……!!!」
狂気を秘めた瞳がこちらを縋るように見つめてくるのに、怜奈は悲しげに表情を歪ませる。
今の彼はまるで玩具を取られまいと必死に抵抗する子供のような、繊細なガラス玉のような、壊れやすい人なのだろうと思う。
だが怜奈には本来帰る場所がある。
例え相手に対してそう思ったりはしても、屈してはいけないと痺れる手足を見ながら怜奈は死柄木とは対照的な瞳を彼へと向けた。
死柄木と見つめあっていると、彼の後ろでは連合がまだそれ程遠くにはいない爆豪を取り返そうとマグネの個性を使いコンプレスが彼らに向かって飛んだ
「!!だめっ…」
急いで個性を発動させようとしたが、それよりも先に巨大化したMt.レディが現れ弾丸となって飛んでいくコンプレスの前に立ちはだかり彼を顔面で受け止めた
「っだ!?」
「Mt.レディ!」
「救出…優先…行って…!バカガキ…」
顔面で防いだことにより額から大きな音を出しながらぶつかり合いながらもそう言って倒れたMt.レディ。
が、もう一度…!と連合はさらに第2撃を喰らわせようと再び立ち並んだ時、風が通り過ぎ一瞬で彼らを気絶させた。
いつか見た見覚えのある光景に怜奈は思わず声をもらした
「おじいちゃん……?」
「大丈夫か怜奈!!」
「遅いですよ!」
「お前が速すぎんだ。なァあいつ緑谷!!っとに益々お前に似てきとる!!悪い方向に!!」
「保須の経験を経てまさか来ているとは…。10代…!!」
「しかも怜奈を置いていきおってからに!!帰ったらシバキ倒すぞ!」
恐らく全員でこちらに移動はしているだろうが、脳無の牽制と距離の関係でグラントリノしか来れなかったのだろう
それでも援護が来てくれたのに怜奈が少しだけ安堵するが、彼女の体を見たグラントリノは安心した表情から一変目を見開く。
未だ収まっていない怜奈の手足の小さな震えを見て、動かせんのか?!と聞いてくるグラントリノに怜奈が静かに頷きを返せばオールマイトもギリリッ……と手を握った
「絶対に許さん…!!!」
「わしの孫娘に手を出したことを後悔しろ…!!連合もあと2人!!終わらせる!怜奈はそこを動くな!!」
「はい…!」
そしてグラントリノは残りの連合のうちの一人である死柄木に向かって足を振り、死柄木も応戦しようと手を伸ばしたがそれよりも先にオール・フォー・ワンが今度はマグネの個性を強制発動させたことによりその手はグラントリノに触れることなく、死柄木の身体は後ろに傾きグラントリノの攻撃も彼に当たることは無かった。
必然的に磁気によってN極になったトガへと気絶した敵連合の男達が集まって行き、背後にいる黒霧の未だ発動されたままのワープへと吸い込まれて行き姿を消した。
死柄木だけは磁気に逆らいオール・フォー・ワンに向かって手を伸ばし何かを伝えようと言葉を繋げる
「待て…ダメだ、先生!!」
「?!きゃっ…………!」
「ッ!!怜奈!!!」
怜奈の体にも磁気が宿らされ、S極になっている死柄木の元へ引き寄せられ身体が宙に浮いてしまう。
それを見たグラントリノはジェットを発動させ手を伸ばすが、オール・フォー・ワンによって横から吹っ飛ばされる。
「怜奈!!!!!」
「その身体じゃあんた…ダメだ…俺まだ──」
「弔。君は戦い続けろ…怜奈くんが必ず、君を導いてくれる。彼女は君の光だから」
オールマイトがハッと意識を怜奈に向け叫ぶ中、彼女の体は死柄木の胸元へとまるで抱きつくかのようにくっついてしまった。
死柄木はオール・フォー・ワンに視線を向け、それでも怜奈の存在を確認するかのようにその体をしっかりと抱きしめようとしたその時
ぐいっ!!!
「「?!!!」」
誰もそこにはいない筈であるのに、磁気に逆らって怜奈の身体は何者かに引っ張られるかのように後ろへと離れていく。
それに怜奈が驚くが、死柄木も目を見開き必死に離れていく彼女に手を伸ばす。
「嫌だ!!!怜奈!!!っ行かないで!!!!」
顔についている掌から覗く死柄木の瞳は確かな絶望と悲しみ、寂しさが入り混じったかのようだった。
必死にすがろうとするその姿はまるで大きな子供のようで、自身を必要とし手を伸ばしている彼を助けたいと……怜奈は思ってしまった。
……でも、今は救えない。
彼の闇は、簡単には解けない。
「ごめん、ね………」
「!!!」
「あなたも……必ず…救けるから……」
「っあ………」
今は例え敵でも、いつか必ず彼が光を見れるようにと怜奈が己の力のなさを悔やみながらも微笑みそう言えば、死柄木は目を見開き何かを言いかけたが彼を最後に敵達を飲み込んだゲートは、そのまま音を立てることなく消えてしまった。
「「怜奈ッ!!!!」」
「っ、その人に背中を見せちゃだめ!!!」
磁気がきれたことによりドサリ、と重力に従いその場に倒れる怜奈にオールマイトとグラントリノが叫びながらこちらに駆け寄ってこようとするのに、戦闘中だということを忘れずに大丈夫だからと次いで言葉を繋ぎ、怜奈は彼から視線を逸らさないでと彼らに声を上げた。
「くそっ怜奈……!!」
「おやおや、あの磁気からどうやって抜け出したのか…驚いたな!そしてその冷静な判断力!やはり是非ともこちらに迎え入れたいねぇ!」
「そんなこと、させてたまるかああああ!!!」
「ほざくなよ!!!」
オールマイト達は駆け寄りたいができない状況に悔しさで頭が割れそうになるが、怜奈の言葉通り彼女に向かって賞賛の声を上げるオール・フォー・ワンから視線を逸らさず飛びかかる。
「何せ僕はお前が憎い。かつてその拳で僕の仲間を次々と潰し回り、お前は平和の象徴と謳われた。僕らの犠牲の上に立つその景色、さぞや良い眺めだろう」
激しくぶつかり合う戦闘の中で、オール・フォー・ワンは変わらず重厚感のある声でオールマイトに語りかける。
「ヒーローは多いよなぁ。守るものが。」
「黙れッ!貴様はそうやって人を弄ぶ!壊し!奪い!つけ入り支配する!日々暮らす方々を!理不尽が嘲り笑う!私はそれが!許せない!!!」
オールマイトの拳がついにオール・フォー・ワンの顔面に入り、彼の付けていた仮面が割れた。いつしかオールマイトの顔半分もトゥルーフォームになりつつあり、活動限界によりその呼吸も随分と荒い。
「いやに感情的じゃないかオールマイト。同じような台詞前にも聞いたな」
オールマイトの拳の下から先ほどと同じように聞こえてきた声に、ゾッとその場にいた3人に悪寒に似たようなものが走る。
確かに攻撃は顔に入ったはずだった。
それなのに流暢に喋り始めるオール・フォー・ワンにオールマイトは目を見開き自身の下にある顔を見つめた。
仮面が割れた先にあったのは、目も鼻もなく、ただ皮膚で覆われただけの、肉塊だった。