MHA中心
神野の悪夢
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
オールマイトが放つ気迫に唖然と佇む爆豪と敵連合。
「攻勢時ほど守りが疎かになるものだが…ピザーラ神野店は俺たちだけじゃない」
ドアの微かな隙間から薄く身体を変化させて現れたのはNo.5ヒーロー・エッジジョット
彼は個性を使い薄い紙状になり部屋に入室しそう言うと、オールマイトを見たまま拘束されている敵連合を見ながらドアの鍵を内側から開けた。
するとドドド、と言う音とともに武装をした特攻隊が雪崩れ込み拘束されている敵連合の周りを取り囲む。
「外はあのエンデヴァーを始め手練れのヒーローと警察が包囲している」
完全に包囲された状態に連合の顔が悔しげに歪む。その様子を見ながらオールマイトがあらためて爆豪達の近くに駆け寄る。
「怖かったろうに…よく耐えた!ごめんな…もう大丈夫だ少年少女!」
「こっ…怖くねぇよヨユーだクソッ!!」
オールマイトの言葉に爆豪は思わず緊張が解け顔が歪んでしまったが、ハッと怜奈が!とオールマイトの視線を向けさせれば彼も慌てたようにその顔を覗き込む。
「あれからまた…今度は腕に薬打たれた…意識がねぇ…!」
「!なんだって…」
自分の大事な娘に、なんて酷いことを…とオールマイトはあらためてふつふつと怒りが湧き上がり瞳に鋭さを宿らせる。
それに気づいているのかいないのか、苛立ちを隠すことなく死柄木がわなわなと震えながら言葉をもらす。
「せっかく色々こねくり回してたのに……。何そっちから来てくれてんだよラスボス……仕方がない…俺たちだけじゃない。…そりゃあこっちもだ。黒霧。持ってこれるだけ持ってこい!」
…しかし、彼の言葉は部屋の中で1度響いたあと静かに静寂へと消えていく。
彼の望むべきものは、現れなかった。
「すみません死柄木弔。所定の位置にあるハズの脳無が…ない……!!」
「!?」
「やはり君はまだまだ青二才だ。死柄木!」
「あ?」
「敵連合よ、君らは舐めすぎた。少年少女の魂を。警察のたゆまぬ捜査を。そして、我々の怒りを!」
死柄木が何をしてるんだと視線を寄越すも黒霧自身も混乱し静かに冷や汗を流す。
その裏では既にベストジーニスト、虎、Mt.レディ達のプロヒーローによって脳無を製造していた倉庫が完全に制圧されていたのだ。
「おいたが過ぎたな。ここで終わりだ死柄木弔!!」
オールマイトの地の底から這うような声と彼らを射貫く視線に、その存在感と威圧がビリビリと連合に襲いかかり言い様のない絶望と悪寒が背中に汗となって流れ落ちた。
「オールマイト…これがステインの求めた…ヒーロー…」
「終わりだと…?ふざけるな…始まったばかりだ。正義だの…平和だの…あやふやなもんで蓋されたこの掃き溜めをぶっ壊す…。その為にオールマイトを取り除く仲間も集まり始めた。怜奈だって手に入るはずだった。ふざけるな…ここからなんだよ……」
ぶつぶつと独り言のように呟く死柄木の口調には嫌悪と憎悪が混じりあいそれらは膨れ上がり今にも爆発してしまいそうだ。
「黒ぎっ…」
瞬間、黒霧の体に細い紙状となったエッジジョットが貫通し、彼の中をいじりそのまま気絶させた。唯一の脱出経路が絶たれたことにより死柄木の目がいっそう見開かれる。
「君が過去に暴いた弱点を参考にしたよ」
「あ?あー……」
「さっき言ったろ。大人しくしていた方が身の為だって」
ここを潰すために集まったヒーロー達によって、連合に逃げ場はない。そんな彼らに畳み掛けるようにグラントリノによって彼らのの本名が明かされた。
「少ない情報と時間の中おまわりさんが夜なべして素姓をつきとめたそうだ。わかるかね?もう逃げ場ァねぇってことよ。なァ死柄木。聞きてェんだが…おまえさんのボスはどこにいる?」
「………………ふざけるな、こんな…こんなァ…こんな…あっけなく…ふざけるな…失せろ………消えろ……俺の怜奈を…返せ………」
「奴は今どこにいる、死柄木!!」
「おまえが!!!!嫌いだ!!!!」
オールマイトの怒りとついに爆発した死柄木の本心がぶつかりあったその時、死柄木の背後の両脇から黒い謎の液体が空中で湧き出した。
そしてそこから出てきたのは、制圧されたはずの脳無だった。
出てきた脳無に対し死柄木も驚いた様子で唖然とそれらを見遣るのに、彼の仕業ではないのかと反応を見てオールマイト達も困惑の表情を浮かべる。
「脳無!?何もないところから…!あの黒い液体はなんだ!」
「エッジジョット!黒霧は」
「気絶している!こいつの仕業ではないぞ!」
「どんどん出てくるぞ!!」
「シンリンカムイ絶対に離すんじゃないぞ!!」
オールマイトが今の状況に戸惑いながらも指示をシンリンカムイに飛ばしたその瞬間
「お"ッ!!?」
「あぐっ…………」
「!!!爆豪少年!!怜奈!!No!」
同じく唖然とその光景を見ていた爆豪と彼に抱えられたままの怜奈の口から、脳無が出てきたのと同じ黒い液体が溢れ出した。
ありえない事態にオールマイトは爆豪の前にも関わらず思わず怜奈を呼び捨てでで呼んでしまうが、それにも気づかず目を見開く。
「っだこれッ体が…飲まっれ…怜奈っ…」
「あ、…うっ………」
怜奈を離すまいと両腕で彼女を抱き締める爆豪と苦しげに声を漏らす怜奈にオールマイトが行かすものかと手を伸ばし両腕を広げたが
バシャン!!
腕は彼らを掠めることは無く、液体音だけがその場に虚しく響き渡った。
「Noooooo!!!」
再び奪われてしまった事実にオールマイトは普段の彼では絶対にあげないであろう叫び声をその場に響かせた。
「エンデヴァー!!応援を…っ!」
と、シンリンカムイが後ろから外を見て唖然と表情を固めた。
そこには、脳無が広がっていたのだ。
「塚内!避難区域広げろ!!」
「アジトは二カ所と…捜査結果が出たはずだ。ジーニスト!そっち制圧したんじゃないのか!?………ジーニスト!?」
「俊典こいつぁ…」
「ワープなど…持ってはないなかったハズ……!!対応も…早すぎる…!」
塚内がもう一方のアジトを責めているリーダーであるベストジーニストを無線で呼びかけるも応答はない。ヒーローと警察が混乱する中、この状況を作り出したことを誰よりも早く理解した死柄木がポロリとこぼした。
「先……生」
虚を見つめる彼の瞳には、何が映っているのか。
───────────
───────────────
バシャバシャッ
「ゲッホ!!くっせぇぇ……! 」
「ケホッ、か、つき、くん………?」
「!!怜奈っ!!!」
「、か、らだが…………」
悪態をつきながらも爆豪は飛ばされた場所に両膝をつき怜奈を横に抱えたままここはどこだと辺りを見回していると、苦しさからか意識が戻った怜奈が爆豪の姿をうっすらと開けられた瞳で認識する。
意識が戻った怜奈に爆豪が大丈夫かと顔を覗き込みながら声を上げたが、怜奈本人は体が動かないと目を見開く。
その事実に爆豪も唖然とする中、正面から声をかけられる。
「悪いね、爆豪くん。怜奈くん」
「あ!!?」
「!あ、なたは…」
目の前の存在を理解する前にバシャバシャと液体音が聞こえるのに従い辺りを見回せば、現れたのは拘束されていたはずの敵連合。
ヒーローと警察による完全包囲状態であった彼らを全てこちらに移動させたことに爆豪が驚きに顔を染めるが、声をかけてきた男は柔らかく重厚感のある声で死柄木に諭すように言う。
「また、失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。この子もね…君が"大切なコマ"だと考え判断したからだ」
普通にそこに存在するだけで、まるで重りがのしかかってくるかのような威圧感を纏うこの男を、怜奈は知っていた。
オール・フォー・ワン
第二の父親、オールマイトの腹に穴を開け、彼の限界を作った宿敵。
人としての寿命に抗う化け物だと、グラントリノは語っていた。
「いくらでもやり直せ。そのために僕がいるんだよ。全ては君の為にある」
爆豪は彼の放つ異質さに怜奈を支えている腕が僅かに震えているが、それを感じた怜奈は思い通りに動かせない体をなんとか動かし、彼の腕にそっと手を添えた。
その感触に爆豪がハッと意識を遠い思考から呼び起こすのに伴い、怜奈は強い視線で死柄木から視線を離しこちらに顔を向けたオール・フォー・ワンを射貫く。
「ああ…とてもいい瞳だ怜奈くん。君に会える日をどれだけ心待ちにしていたことか!体育祭でも活躍は目にしていたけどねぇ」
「なぜ、あなたが……」
「ああ、喋るのも少ししんどいかい?すまないね、少し強めの薬を打ったからかな…だけど、どうしても君を手に入れたかったんだ。わかって欲しい」
「何を、言って…るんです………」
怜奈が苦しげに言葉を返すのに爆豪も何を抜かしているのだといつもの様に声を荒らげたかったが、それが出来ない。
それほどまでに目の前の男はやばいのだと、彼の本能が叫んでいるからだろう。
ダイヤモンドが視線を逸らすことなく真っ直ぐに自分を強く射貫いてくるのに、オール・フォー・ワンは心なしか嬉しそうな雰囲気を出していたがふと空を見上げ聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさで呟いた
「………やはり…来てるな……」
刹那、月をバックに現れたオールマイトがオールフォーワンに拳を向け飛びかかった
それに怜奈達と連合が目を向けるも、目を向けたその時には二人は対峙していた。
「全て返してもらうぞ、オール・フォー・ワン!!」
「また僕を殺すか、オールマイト」
正と悪それぞれの英雄が衝突した途端、そこを中心に地面がえぐれ爆風が辺り一帯に円を描くように吹き荒れた。
連合がその衝撃波に吹き飛ばされる中、怜奈は少ない体力でなんとか"
「衰えたね、オールマイト」
「貴様こそなんだその工業地帯のようなマスクは!?だいぶ無理してるんじゃあないか!?」
そこまで言うとオールマイトは後ろを振り返り、怜奈達が居ることと"盾"が張られているのを視界に入れ少し安心したように息を漏らす。
「ごめんよ、少しの間我慢してくれ…!!」
「っオールマイト……」
「大丈夫、だから………」
「おやおや、あれだけ強い薬を打ったのに出せたんだねぇ。凄いじゃないか!」
「っ貴様………!!!」
オールマイトと同じように怜奈の様子を見て両腕を広げながら悪びれることも無く逆に彼女に対して賞賛をするように親しげに声をかけるオール・フォー・ワンにオールマイトが視線を戻しギリギリと怒りからか歯を鳴らす。
「5年前と同じ過ちは犯さん。オール・フォー・ワン」
オールマイトはうちから溢れる怒りを吐き出すように決意を表明すると、トン、トンとウォーミングアップかのような動きで軽くジャンプをした後、再びオール・フォー・ワン飛びかかった。