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神野の悪夢
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「早速だが…ヒーロー志望の爆豪勝己くん。俺の仲間にならないか?」
「寝言は寝て死ね」
人で賑わう繁華街の片隅でひっそりと佇む仄暗いバー…敵連合の本拠地で敵連合は拘束具で固定された爆豪を取り囲むようにして見つめながら死柄木が代表でそう言葉を投げかけるが、爆豪は死柄木を睨みつけながら地を這うような低い声で返す
「てめぇ…怜奈離せやくそが!!」
「?だって怜奈はこっちに来るんだから、問題ないだろ?」
軽く首を傾げながら言って死柄木は所々に包帯が巻かれた怜奈を膝に乗せたまま白く柔らかな頬を愛おしげに撫でる。
怜奈本人は意識がなくされるがままだ。
加えて何故か彼女は白いドレスを着せられている。
純白のシルクで出来た薄いベールが何重にも重なっているマーメイドドレスは彼女の色彩と重なり合い、その美しさに爆豪は思わず見惚れそうになるが、今は好き勝手にさせられている怜奈の状態に対する怒りの方が勝っている。
「とっ〜ても可愛いですよね?!私がお着替えさせたんですよ!怜奈ちゃんは白が似合いますねぇ。でもきっと血に染まった姿もすっごく可愛いと思います!!」
「させねえぞこのイカレ女」
「我が君はステインが忠誠をお誓いになり、また悪をも救わんとする崇高なる精神をお持ちであらせられる!ので、あのような一般的なお召し物は相応しくない!!」
「やっぱり私の目に狂いはなかっわあ」
「あ"ぁ"?!ふざけてんじゃね…」
好き勝手に喋り出す彼らにそんなことはどうでもいいと口を開いた時にふと爆豪の目線が怜奈の腕に移った。
何気なく視界に入った彼女の投げたされた白く細い腕には、明らかに注射をしたあとの処置が施されている。
あれだけでは飽き足りずまたしても彼女を傷つけたというのか…
そう理解すると爆豪は全身の血が沸騰している感覚を頭の片隅でどこか冷静に理解したが、例えようの出来ない怒りによって身体は無意識に動き拘束具によって固められた腕を伸ばすがそれも空を切りガチャガチャと音が鳴るだけ
それでもギリギリと目を釣り上げこれ以上ないほどの殺意の篭もった視線をその場に撒き散らす。
「おいッ…!!こいつに何打った………!!!」
「は?」
「怜奈に何したんだって聞いてんだよあ"あ"?!!答えろやクソがァ!!!」
拘束されながらも爆豪は限界まで首を伸ばし再び首を傾げる死柄木に向かって瞳孔を開き怒りのまま言えば死柄木は何拍か間を置いてからああ、と呑気な声を出し処置跡をすりすりと触る。
「そう怒るなよ…首のやつと合わせて2回だけさ、体に害はない。怜奈は大事なヒロインだからな…….今回はちょっと手荒だったけどそうでもしないとあいつらから引き離せなかったんだよ。」
「今は怜奈さんが起きていると少々厄介なので、眠っていただいています」
「……っ舐めた真似しやがって…!!」
その勝手さに怒りと興奮から息荒く胸の内に広がる感情をどうしたらいいのか分からず吐き出すように言えば、死柄木はまぁとりあえずこれを見ろと怜奈の頭を自身の首元に置くようにして支え直すと、爆豪の視線を設置されている小さな液晶へと誘導する。
《この度我々の不備からヒーロー科1年生28名に被害が及んでしまったことヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り社会に不安を与えた事、謹んでお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした》
そこに居たのは雄英高校の代表である根津と今回の合宿の責任者である相澤、ブラドが並んで記者会見を行っていた。
相澤がそう言って頭を下げる姿に爆豪は目を見開く。彼のメディア嫌いはクラスでは承知の事実、そんな彼がテレビに出てしかも頭を下げさせられている状況に爆豪も驚きを表す。
そしてその記者会見では雄英、並びにヒーローが完全に悪いと言っている内容だった。
メディアたちの質問は、雄英高校の基本理念とその前の事件によってどのような対策が取られてきたのかと、既に知っている情報を改めて言わせまるで袋叩きの如く責め、彼らを悪者に仕立て上げるかのような映像が流れ続ける。
「不思議なもんだよなぁ……」
そんなテレビの中の様子にポツリと死柄木が呟く
「何故奴らが責められてる!?」
怜奈を優しく抱いている方とは逆の手を横に広げ、何故かヒーローを擁護するかのような言葉を爆豪に投げかける。
「奴らは少ーし対応がズレてただけだ!守るのが仕事だから?誰にだってミスの1つや2つある!"お前らは完璧でいろ"って!?現代ヒーローってのは堅っ苦しいなァ。爆豪くんよ!」
「守るという行為に対価が発生した時点でヒーローはヒーローでなくなった。これがステインのご教示!」
つまり彼らの狙いはヒーロー社会への疑問や戸惑いを生むことにある。
ヒーロー社会にハッキリと対価が生じていることを記者たちは遠回りながらも述べている事実に、本来のヒーローとはどのようなものであったのだろうかと言う疑問とステインの思想とが混ざり合い、それらをヒーローを育成する最高峰である雄英高校から怜奈達を攫うことで、プロヒーロー達への姿勢を崩しに拍車をかけに来た。
「俺たちの戦いは〈問い〉。ヒーローとは、正義とは何か。この社会が本当に正しいのか。1人ひとりに考えてもらう!俺たちは勝つつもりだ──君も勝つのは好きだろ」
爆豪はただ顔を俯いているのでその表情までは読めない。その様子に死柄木は静かにほくそ笑むと荼毘に視線を向ける。
「荼毘、拘束外せ」
「は?暴れるぞこいつ。俺が我が君預かるからお前がやればいいだろ。」
「駄目に決まってんだろ。こいつは対等に扱わなきゃな。スカウトだもの。それに、この状況で暴れて勝てるかどうか、わからないような男じゃないだろ?雄英生」
「はぁ…トゥワイスやれ」
「はァ俺!?嫌だし!!」
怜奈をさらに抱き込み渡すのを却下した死柄木はいいから外せと視線を向けると、荼毘はその様子にイラつきながらトゥワイスにパスすると彼はもう嫌だ〜と言いながらもしぶしぶ爆豪の拘束を外し始める。
「強引な手段だったのは謝るよ。…けどな我々は悪事と呼ばれる行為にいそしむ、ただの暴徒じゃねぇのをわかってくれ。我が君と君を攫ったのは偶々じゃねぇ」
次いでMr.コンプレスも語りかけるのに本気で爆豪をこちら側に引き込むために説き伏せようとしてきている事がわかる
「ここにいる者事情は違えど人に、ルールに、ヒーローに縛られ…苦しんだ。君もそれを──」
死柄木は名残惜しそうに怜奈の頭を撫でてから優しく椅子に座らせると、拘束が解かれた爆豪に近づいてさらに言葉を繋げようとした時
ボォォォォォン!!
爆豪は目の前にいたトゥワイスと近づいてきた死柄木を爆破した。
辺りに煙幕が立ち込める中瞬時に移動して片腕に怜奈を抱きしめた爆豪は彼らから距離を置き低い姿勢のまま射殺すように睨みつけた
「黙って聞いてりゃダラッダラよォ…!馬鹿は要約できねーから話が長ぇ!」
「死柄木……!」
「要は"嫌がらせをしてぇから仲間になってください"だろ!?無駄だよ」
「俺は"オールマイト"が勝つ姿に憧れた!
"怜奈を護る為に"ヒーローになると決めた!!
誰が何言ってこようがそこァもう曲がらねぇ!!!」
初めから爆豪は誰かのつぶやきによって己の掲げたものを折ってしまうほど弱い精神の持ち主ではなかったのだ。
爆豪がハッキリとそう断言したあとに聞こえるのは、未だにつけたままの会見の声
《不幸中の幸いとでも?》
《未来を侵されることが"最悪"だと考えております》
《攫われた爆豪くんや神風さんについても同じことが言えますか?》
記者はそのまま続ける
《爆豪くんは体育祭3位。ヘドロ事件では強力な敵に単身抵抗を続け経歴こそタフなヒーロー性を感じさせますが、反面、競技後の粗暴さ、表彰式に至るまでの態度など精神面の不安定さも散見されています。もしそこに目をつけた上での拉致だとしたら?言葉巧みに彼を勾引かし、悪の道に染まってしまったら?》
《神風さんは雄英高校初のスカウト枠入学に体育祭優勝。体育祭ではこれ以上ないほどの戦闘センスと判断力を発揮し、また周りを傷つけまいとする崇高なる精神も垣間見えました。
そして今回の事件による被害者の生徒達が軽傷で済んだのも全て彼女の治療のおかげだとか…その優しさをもし敵が利用し付け入ろうとしてしまったら?もしその手を彼女が取ってしまったら?》
《彼らに未来があると言い切れる根拠を、お聞かせください》
まるで爆豪を愚弄し、怜奈のことを甘いと評価されているような言葉の数々を浴びせられた相澤は、おもむろに席を立つとそのまま頭を下げる
《行動については私の不徳の致すところです。…ただ、爆豪くんのソレらは彼の"理想の強さ"に起因しています。誰よりも"トップヒーロー"を追い求め…もがいている。あれを見て"隙"と捉えたのなら敵は浅はかであると私は考えております》
そこで一旦言葉を止めると相澤は再び真っ直ぐと前を向き曇のない口調で言い放つ
《そして神風さんが優しいのもまた事実です。…ですが、彼女の優しさは心の強さに比例しているからです。あの子は、己の中の信念を曲げることは絶対にありません。ヒーローになると決めたその時から、彼女の道は決まっているんです。…彼女は優しいだけじゃない、誰よりも真っ直ぐで強いんです。》
次いで必ず生徒を救い出すと言った根津に爆豪は不敵に口角を吊り上げる
「ハッ…言ってくれるな雄英も先生も…。そういうこった、クソカス連合!!言っとくが俺ァまだ戦闘許可解けてねぇぞ」
そこまで言って爆豪は思考を巡らせる。恐らくさっきの説得を試みたところを見ると、彼らは見る限り今爆豪を傷つけたり殺してしまおうと考えてはいないだろう。
「自分の立場よく分かってるわね…!小賢しい子!」
「刺しましょう!」
「いや…馬鹿だろ」
「その気がねぇなら懐柔されたフリでもしときゃいいものを…。やっちまったな」
「したくねーモンは嘘でもしたくねんだよ俺ァ。いい加減こんな辛気くせーとこに怜奈を置いておく訳にもいかねぇ」
彼女が起きていればまだ逃げられるだろうが薬で眠らされてしまっているためそれが出来ないのは爆豪も分かっている。
それでも自分は彼女を護ると誓っている。
こんなヤツらにもうこれ以上傷つけさせてたまるかと視線を首元と腕に移しさらに怜奈を抱く腕に力を込めた
「手を出すなよ……お前ら。こいつは…大切なコマだ。できれば、少し耳を傾けて欲しかったな…。君とは分かり合えると思ってた」
「ねぇわ」
「仕方がない。ヒーロー達も調査を進めてると言っていた…。悠長に説得してられない。先生……力を貸せ」
《………良い、判断だよ死柄木弔》
「先生ぇ…?てめぇがボスじゃねぇのかよ…!白けんな」
言葉では強気でいても、爆豪は脳内で思考を張り巡らせる。
どうする
考えろ
今この場を切り抜ける最良な策
引くな その瞬間やられる
怜奈を護るためにできることは
まさに一触即発。誰かが1歩でも動けば、その場は即座に戦場と化すだろう
爆豪からぐるぐると考える中で、思考の外から音が響き渡る
コンコン
「どーもォ、ピザーラ神野店です~」
気の抜けた声に全員の時が止まった瞬間、脇の壁が吹っ飛ぶ
「なんだぁ!!?」
「黒霧!ゲート…」
「先制必縛、ウルシ鎖牢!!」
吹き飛んだ壁に爆豪と共に敵連合も目を見開くが、死柄木が黒霧に指示を出すその前にシンリンカムイによって中にいる彼らは瞬時に取り押さえられる
「木ィ!?んなもん…」
「逸んなよ」
すぐ様個性を発動させようとした荼毘に向かって一陣の風が通り過ぎ、それに伴い彼の頭が揺れ焦点がズレた後意識が無くなりガクンと頭は力なく垂れ下がった。
「大人しくしていた方が…身の為だぜ」
「さすが若手実力派シンリンカムイ!!そして目にも留まらぬ古豪グラントリノ!!もう逃げられんぞ敵連合…何故って!?我々が、来たッ!!」
ヒーローたちの、登場だ