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神野の悪夢
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事件から二日
病院のベッドの上で目覚めた緑谷は自分の状態を確認した。
怜奈の治療のおかげで怪我は軽いものですんだが恐らくストレスにより深い眠りについてしまっていたのだろう。
母親が剥いてくれたのであろうリンゴを見つめているとドアの方から上鳴の声が聞こえ反応すれば後ろからA組の面々が姿を見せる。
聞けば葉隠と耳郎は毒ガスによる治療は怜奈によって軽傷で済んではいるが反動からかまだ目が覚めておらず
同じく昨日目が覚めた八百万はこの時間最終になる頭の検査のため、この場には姿がない
各々が事件のことについて言葉を漏らすのに耳を傾けると常闇が迷惑をかけたと謝罪するのに自分の手を見つめる
「僕も、だよ。」
ベッドから背を起こした緑谷に全員の視線が向く
「手の届く目の前に居たのに………怜奈ちゃんはっ…誰よりも必死になって、誰よりもみんなを守ってくれて……最後まで、ずっと笑顔作って……!!」
今こうして自分が体を起こせるのも、腕の痛みがないのも全て、怜奈が自分を支えて、守ってくれたから。
「それなのに僕はっ……目の前で傷つけられて、消えていった怜奈ちゃんに、絶望して、震えが止まらなくなった……………動けなかった!!!」
それなのに自分は何も出来なかった
爆豪のように飛びかかることも出来なかった。
それが悔しくてしょうがなくて、自分の不甲斐なさに目の前のシーツが滲んでくる。
「それなら、今動けばいい。」
「「「へ?」」」
ふと言われたその言葉に、病室には気の抜けた声が谺響する。それを言った本人である切島は彼らの視線を独占しながら言葉を続ける
話の内容はこうだ。
家でじっとしていられずお見舞いにでも行くかと病院に来たところ同じ理由で病院に来た轟と会った。
なら一緒に行こうと共に歩いていると差し掛かった八百万の病室から、オールマイトと警察が八百万と話している声が聞こえたのだ。
聞き耳を立てた中に聞こえたのは、八百万が脳無に発信器を取り付けたということ
そこから轟と話し合い、受信デバイスを作ってもらえれば自分たちが彼女等を助けに行けると言うのだ
「まだ手は届くんだよ!!」
緑谷に伸ばされた切島の手に黙って聞いていた飯田が目を見開きながら声を荒らげる
何を言っているんだと、行くべきではないのだと。
熱くなってきたその場に障子の冷静な声がシンっとその場に響く
「まて、落ち着け」
切島の"何も出来なかった"悔しさも、緑谷の"眼前で奪われた"悔しさもわかると静かに語りかける。
その言葉の節節には、確かに彼の悔しさを感じた。
「俺だって悔しい。だが、これは感情で動いていい話じゃない。」
「っ!!」
「怜奈は必死になって俺らを守った。限界の狭間で、誰も傷つけるものかと、足掻いて…………それをお前は、無駄にするつもりなのか…!!」
後半からかけての言葉には少しの怒りが滲み出ている。
あの場を"最悪"から救ってくれた彼女の頑張りを、自分たちが勝手に動いて無駄にするのかと、鋭い瞳が訴えかける。
「そうじゃねぇ!!そうじゃねぇけど……。ただ待つだけなのはもう嫌なんだよ!!」
その視線を受けながらも紡がれた言葉はただただ切実で
「前だってそうだ!!俺が勝手な行動したせいで神風が目えつけられて……神風は俺達を傷付けないよう最善に動いてくれて、守ってくれた…!だから今度は俺が神風を守ってやるって思ってたけど…結局なんも出来なくて……情けなさで、おかしくなりそうだ…!!!」
過去の自分に、苛立ちが隠せていない。
「…………だから俺は、俺に出来る事をする」
「…切島ちゃん。貴方の言いたい事もわかるわ。私達も出来るなら怜奈ちゃんと爆豪ちゃんを救けたい。」
おそらくこの場で誰よりも冷静な思考を持つ蛙吹が切島を見つめ困ったように眉を下げながら諭すように語りかける
「でも冷静になりましょう。どれ程正当な感情であろうとまた戦闘を行うというのなら──ルールを破るというのなら、その行為は敵のそれと同じなのよ。」
何よりも全うで正当な言葉がズンっと重く体にのしかかる。
どんな言葉よりも正論な彼女の言葉は、確かに彼らの心に突き刺さった。
それが事実なのだ。本来なら蛙吹もこんな言葉を友に投げかけることなんてないだろう。
だがそれでも、わかって欲しかった。
感情だけで走っても、良い結果は得られないことがあるのだと。
一気に重くなったその場に、コンコンとノック音が響き医者が顔を覗かせる
「お話中ごめんね、緑谷くんの診察時間なんだが。」
それを聞いた瀬呂が葉隠と耳郎の見舞いにも行くかと全員を病室から出るように促せば、彼らもそうだなと移動する
「八百万には昨日話をした、行くなら即行……今晩だ。」
最後、切島が出ていく時に緑谷にそう残したあと彼も出ていった。
君に、会いたいよ
その思いが、彼の中で木霊した。