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神野の悪夢
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合宿の敵連合襲撃を受けた翌日の雄英ではイレイザーとプラドを抜いた教員たちと根津による会議が行われていた。
「ヴィランとの戦闘に備えるための合宿で襲来…。恥を承知でのたまおう。"敵活性化の恐れ"…という我々の認識が甘すぎた。奴らは既に戦争を始めていた。ヒーロー社会を壊す戦争をさ」
冷静に状況を分析した根津の言葉にミッドナイトが意見を述べる。
「認識していたとしても防げていたかどうか…。これ程執拗で矢継ぎ早な展開……。"オールマイト"以降組織立った犯罪はほぼ淘汰されてしまったからね…」
「用は知らず知らずの内に平和ボケしてたんだ俺ら。"備える時間がある"っつー認識だった時点で」
ミッドナイトに続きマイクがその意見に言葉を続ける。改めて自分たちの失態を確認してかその顔はいつもの彼からは想像出来ないほどピリピリとしている。
「己の不甲斐なさに心底腹が立つ…。彼らが必死で戦っていた頃私は…半身浴に興じていたっ…!」
両手を組み自分の額に押し付ながら言ったオールマイトの顔は誰よりも暗く沈んでいる。
「それに、怜奈が前々から狙われていたことはUSJでも、この前死柄木と遭遇した緑谷少年からも聞いて知っていたというのに…!!」
「襲撃直後に体育祭を行う等…今までの"屈さぬ姿勢"はもう取れません。生徒の拉致、雄英最大の失態だ。奴らは爆豪と怜奈、そして同時に我々ヒーローへの信頼も奪ったんだ」
そう言い放ったスナイプの手は何も出来なかった悔しさからか固く握られていた。
「現にメディアは雄英の非難で持ちきりさ。爆豪君を狙ったのは恐らく体育祭で彼の粗暴な面が少なからず周知されていたからだね。もし彼がヴィランに懐柔されでもしたら教育機関としての雄英はお終いだ。
怜奈君に関してはUSJ事件の時から死柄木に固執されていた。…彼女のステインの時のあの姿勢が、彼は脳内で自身に重ねてそばに置いておきたい欲が更に膨張したんだろう。」
そう言った根津に間髪おかずにオールマイトはそれなら大丈夫なはずです。と顔を上げて言いきった。
怜奈は確かに優しいが、悪に対して己を曲げることは絶対に無い。
もし爆豪が何か言われようとも、共にいる限り怜奈がきっと彼を導いてくれる。
それに爆豪も粗暴ではあるが誰よりも上を目指し、また怜奈の為にヒーローになると掲げている彼はいつだって彼女に追いつこうと必死になってもがいている。
そんな彼らがヴィランに落ちるわけがない。
怜奈と爆豪は簡単に敵に堕ちてしまうほど弱くはないのだと、改めてオールマイトは彼らの強さを信じましょうと呼びかけた。
「信頼云々ってことでこの際言わせてもらうがよ…。今回ので決定的になったぜ。いるだろ、内通者。」
オールマイトが言った後、マイクはおもむろに真剣な表情を見せ自分中で芽生えていた思いと疑惑をぶちまける
「合宿先は教師陣とプッシーキャッツしか知らなかった!怪しいのはこれだけじゃねぇ。ケータイの位置情報なり使えば生徒だって…」
「マイクやめてよ」
立ち上がりヒートアップしてくるマイクの言葉に慌ててミッドナイトが制止の声をかける。
「やめてたまるか!洗おうぜこの際てってー的に!!」
「お前は自分が100%シロという証拠を出せるのか?ここの者をシロだと断言できるか?」
スナイプの最もな発言にマイクは一度グッと言葉に詰まった後、自身のスマホを握りしめながらあの日交わした彼女の声と言葉を消えないように再び再生させる。
「……………約束、したんだよ……!」
「マイク……?」
「合宿中に、誠さんの技を覚えるんだって……っ必ず継いでみせるって……完成したら…俺に見てほしいって…!…っ約束、したんだよっ…!!!」
畜生……と怒りと不甲斐なさで震える拳を握り力なく椅子へと座り直すマイクに、周りの教員達もその心中を察し奥歯を噛み締める。
マイクは未だかつて無い程の怒りをコントロール出来ずに困惑していた。
はじめ怜奈が攫われたと聞いたとき、彼は手掛かりも何も無いのに飛び出して助けに行こうとして止められていた。
それほどまでに、その報告を初めて聞いた時の彼には冷静さが欠けていたのだ。
マイクにとって怜奈は生涯をかけて護ることを誓った、かけがえのない存在。
そんな彼女が攫われて苛立ちや困惑、悲しさや怒りが複雑に絡み合い自身の感情が制御できない事が隠せていないのだ。
だがそれは、ミッドナイトやスナイプ達も同じこと。
本当はすぐに助けに行きたい。会って怖かったねと、もう大丈夫だと声をかけて力いっぱい抱きしめたいと思ってはいるが…今は無理だと、全員がわかっている
今は自分達の記憶の中の天使がどうか無事であることを、彼らは願うことしか出来ないのだ。
重い空気を纏ったまま話が進んでいく中、会議室内に
"でーんーわーがーー、来た!"
という独特のスマホの着信音が響いた。
「すみません電話が」
「会議中っすよ!伝言切っときましょーよ!」
「(着信音ダサ……)」
マイクの注意とミッドナイトが心で毒付く中、オールマイトは携帯を片手に会議室を出てため息をつく。
1人になった途端に自分への不甲斐なさ、苛立ちがどんどん溢れて手元のスマホに思わず力が入ってしまうもその思考に一旦区切りをつけ、握っていたスマホからいくらか力を抜き着信ボタンを押してから耳に当てる
「すまん、なんだい。塚内くん」
『今2人から調書を取っていたんだが、思わぬ進展があったぞ!敵連合の居場所、突き止められるかもしれない!!』
思わず体を乗り出す勢いで本当かい?!とオールマイトが聞けば、聞き込み調査の結果生徒を攫った人物とヴィランの1人の特徴が合致し、裏が取れ次第すぐにカチ込むと塚内も興奮を隠しきれない様子で内容を伝える。
『今回の救出・掃討作戦、君の力も貸してくれ!』
「……………」
『オールマイト?』
「──私は…素晴らしい友を持った…………」
彼の中で灯った"希望"の二文字が、遠くにいた彼女を照らし出すかの如くじわじわと広がっていく。
高揚感と怒りからか、嬉しさからか…どちらとも言えないまま姿を変えていく彼の姿は、平和の象徴。
それはこれから始まる、闘いに向けて
己の光を取り戻すために、彼は唱えるのだ
「奴らにあったら、こう言ってやるぜ……
私が、反撃に来たってね」
────パーパ────
最も愛すべき存在を奪ったことを後悔させてやると、オールマイトは宿敵との戦いを想像してどこに向けていいかわからない感情をぶつけるかの如く強く空を睨みつけた。
待っててくれ、必ず、救い出すから
胸の中の天使に、誓を立てて
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