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林間合宿
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時刻 PM/4:00
その後、怜奈は資料を読み込むように相澤から言われ一つ一つの項目にひたすら目を通し、あとは負傷者の治療にあたったりをして今日の特訓は終わりを告げた。
「さァ昨日言ったね"世話焼くのは今日だけ"って!」
「己で食う飯くらい己でつくれ!!カレー!!」
「「「「「イエッサ………」」」」」
そして今の状況は、外に設置されている調理場に、大量に用意されたカレーの材料…そう、夕食の準備の時間だ。
ただ、A組・B組共にその表情と体は重く明らかに今日の疲れが蓄積されている
「アハハハハ!全員全身ブッチブチ。だからって雑なネコマンマは作っちゃダメね?!」
「確かに……災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすものも救助の一環……。さすが雄英無駄がない!!世界一旨いカレーを作ろうみんな!!」
「おー!」
「(飯田便利。)」
またしてもいいように解釈をしている飯田の言葉に相澤は内心飯田を便利だと比喩しているとも知らずに怜奈けが笑顔で腕を上げるが、みんなそんな元気はないのか掠れた声で反応するだけだ。
「あはは、みんな先に着替えてきて?私先にやってるから」
「え、でも……」
「私、皆みたいに激しく動いてないからあんまり疲れてないんだ」
「いやしかし、それでは怜奈くんに負担が……」
「フッフッフッ……そこは私の新技にお任せあれだよ!」
「「「し、新技……??」」」
ピースサインをしながらこちらを見る怜奈に首を傾げながらも、ね?と薦めてくれるのは正直ありがたいのでお礼を言いながら着替えるために施設に足を進めた。
「怜奈、新技ってなんだ?」
「ふふふ…前から考えてたのが、できるレベルにまでなったの」
「……?」
暫くして、着替え終わった人から調理場へと姿を見せる。
「怜奈ちゃーん!ありがとう!」
「何やればい………」
「あ、おかえり〜」
笑顔で振り返ってくれた怜奈だが、全員はその後ろを見て思わず固まった
「「「「う、動いてるーー?!!」」」」
そう、彼女の背後ではいくつもの包丁がひとりでに動き次々と野菜や肉を切って行っているのだ。
「も、もしかしてこれが…」
「そう!これが魔法の新技、"
聞くと"
更には発動者の望み通りに操ることもできるので材料を切るのを任せているらしい。
「すごーい!不思議!」
「便利やねー!」
「材料はもう少しで切り終わるから、みんなは炒めたりする準備をお願い」
「「「イエッサー!」」」
怜奈に指示をされたとおりにそれぞれが鍋や米を準備する為に移動を始める。
「轟ー!こっちも火ィちょーだい!」
「爆豪、爆発で火ィつけれね?」
「つけれるわクソがッ!!(ボンっ)」
「えぇ…」
「皆さん!人の手ばかり煩わせてばかりでは火の起こし方も学べませんよ」
「いや、いいよ」
「わー!ありがとう!!」
「怜奈ちゃん!鍋準備OKだよ!」
「よーしじゃあ材料入れてこー!」
そうしていくうちに完成したカレーはこの状況も相まってとても美味しく感じ、疲労した体に染み渡らせるかのように吸収させていった。
怜奈はみんなのカレーをよそっていっていたのだが、緑谷が自身のカレーを片手にどこかに向かうのが見え、更にはまだ洸汰がご飯を取りに来ていないのに気づく。
もしかしたら緑谷が持って行ってくれているのかと予想し、自身の分をよそいその後に続く。
「怜奈?どこ行くんだ?」
「ちょっとね。気になることがあって」
声をかけてきた轟に一言言ってから、更に怜奈は足を進めた。
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─────────
言った先で聞いたのは、洸汰の両親が殉職して、この世を去ったということ。
はじめ何故従甥を預かっているのかということに疑問を抱いていたが…彼もまた自分と同じような境遇にいたのだ。
陰から話を聞き、緑谷がカレーを置いてこちらに来た時、肩を叩くと驚いたような顔をされたが後は私が、と口パクで伝えれば彼はコクリと頷きを返した。そのまま緑谷が立ち去った後静かに洸汰の前に姿を現す。
「どいつも……こいつも………。」
「洸汰くん」
「!!」
「隣、いいかな?」
緑谷が置いていったカレーも持ちながら問いかけると、洸汰は一瞬ビクリと反応したあと直ぐに怜奈だとわかり、少し間を空けてから静かにうなづいた。
それにお礼を言ってから隣に腰を下ろすと、その上の星を見上げる。
「わあ…すごいね…見晴らしも良くて、星もたくさん見える」
「……秘密基地、だから…」
「素敵な場所だね!」
ポツリと呟いた洸汰に笑いながら返せば、彼の雰囲気が少しだけ和らいだように思えた。
それを見計らい緑谷が持ってきた方のカレーを差し出す。
「これ、洸汰くんの分のカレーだよ。よかったら食べて?」
「………これ、あいつらが作ったんだろ」
「私も一緒に作ったよ!」
「……」
差し出されたカレーに洸汰は顔を顰めるが、怜奈も一緒に作ったと言うとピクリと反応し静かに皿を受け取る。
それを見て自身のカレーを口に運ぶと同じように洸汰もカレーを食べ始める。
「おいしい?」
「…まぁまぁ」
「ふふ、そっかあ」
そう言いながらも食べ進められるスプーンに笑いながらポツポツと小さく会話を繋げながら食べていくと、皿は2つとも綺麗に空になった。
まぁまぁ…と言いつつも綺麗に完食してくれた洸汰の頭を優しく撫でながら話しかける。
「…ごめんね洸汰君。さっきの話、聞いちゃったんだ」
「!!」
正直に言えば、洸汰は目を見開きながらこちらを見るが、頭を撫でる手はそのままに続ける
「……一緒の境遇にいたのに、気付けなくてごめんね…」
「いっ…しょって?」
「………私の両親も、もうこの世にはいないの」
「え………、」
「私のお父さんもヒーローだった。けど、民間人を庇って…命を落とした」
「!」
「それが10歳の時。お母さんは、私が3歳の時に病気で死んじゃったの。」
唖然とこちらを見る洸汰に、こんなことを伝えても意味は無いのではないかとも思ったが、世界には自分だけしかいないと殻を作っているようにも見える彼を、放ってはおけなかった。
加えて、彼はまだ5歳だ。自分だってはじめ父が死んでしまった時はとてつもなく落ち込んだし、立ち直るにも時間を費やした。
「なら…………」
「ん?」
「っならなんで!!ヒーローになろうとすんだよ!?……死ぬんだぞ!!?」
怜奈の手を払い立ち上がりながらこちらを涙目で睨んでくる洸汰は、混乱しているようだった。
自分と同じ境遇にいながら、何故ヒーローを目指すことなどできるのだと
それに対して、怖がらないでと優しく微笑みながら、怜奈は小さな体を抱きしめた。
洸汰は一瞬抜け出そうとも考えたが、柔らかく自身を包み込む温かさにいつかの温もりを感じ、いつの間にか自らもその背中を握っていた。
「洸汰くんは………パパとママが好き?」
返事の代わりにぎゅっと更に彼の手に力が篭もったのを見て肯定と受け取り、抱き締めたまま安心させるように頭をゆっくりと撫でる。
「私もね、今でも2人が大好き……だから、好きな人のやっていたことを否定したくなかったの………」
「!!」
「私にとってパパは、いつになっても最高なヒーローで……ママはそんなパパを心から愛していた」
洸汰がハッと息を詰まらせたのを感じ、自分の中で過去の"ヒーロー"であった両親のことが思い浮かんだろうと察する。先程よりも湿ってきた肩口にぽんぽんと小さな背中を撫でる。
「確かに私たちの両親は死んでしまったけど、彼らが遺してくれたものが…確かにある。」
「の、こしてくれた…もの………?」
小さく嗚咽をもらしながら洸汰が赤くなった瞳でこちらを見上げてくるのに、優しく笑いながら背中にまわっていた片手をすくいあげる。
「…2人の"個性"だよ」
「!!」
「さっき、岩のところ見たよ…洸汰君も両親と"同じ個性"を持ってるんだよね?」
「っ……」
洸汰は自分の掌を見つめ、再び涙を溢れさせる。
「…彼らにはもう会えないかもしれないけど、確かに私たちは…今でも繋がっているんだよ……まだ立ち止まっていたっていい、ヒーローが嫌いでもいい…ただ…"好きな人"のことは、否定しないであげて?」
「うっ……ひっ、うぁ、あ………!!」
どこまでも慈しみの篭もった怜奈の声と表情に、泣きながら抱きついてきた洸汰を抱きしめながら、怜奈は彼の涙が枯れるまで優しく頭を撫で続けた。
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泣き疲れて眠ってしまった洸汰を抱えて施設に戻るとみんな食べ終わったようで後片付けに移っていた。
「!怜奈ちゃん、洸汰くんは…」
「泣き疲れて寝ちゃったみたい。マンダレイさんに預けてくるね」
「そっか…ありがとう怜奈ちゃん…僕じゃダメだったから…」
「ううん。みっちゃんの言葉も、きっと届いてたと思うよ」
静かに寝息をこぼす洸汰に、2人で顔を見合わせて小さく笑った。
(あ!怜奈ちゃんどこ行ってたの?)
(洸汰君とご飯食べてたの!片付け手伝うね)
(でた!不思議現象!)
(ネーミングダサいかよ)
(そうだったの…明日は一緒に食べようね!)