MHA中心
林間合宿
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《合宿二日目》
時刻/AM5:30
「怜奈ちゃん………眠いよぉ…」
「わぁ、お茶子ちゃん寝癖すごい…」
身を寄せてきた麗日に顔を向ければ、彼女の頭の反対側が物凄いことになっている。
それを撫でつけながら周りを見れば、みんなほぼ意識がふわふわと定まっていないように見える。が、慣れている人は慣れているのかしっかりと瞳が開いている。
「おはよう諸君」
全員が揃っていることを確認した相澤が声を上げるのに、今まで微睡みの中にいた者達も、次の言葉でパチリと瞼が上がる。
「本日から本格的に強化合宿を始める。今回の合宿の目的は、全員の強化および仮免の取得」
そうして説明されるのは、資格がどれだけ大切になってくるか。
ヒーローとして世間で活躍するためには、個性の使用を許可する資格がある事が絶対条件
が、学生のうちに取得できるのはあくまで制限は付きの"仮免"というもの
通常であれば訓練、経験値を重ねた上級生が取る資格だが、敵連合の脅威が拡大されていっている、ましてや直接的な被害を受けている1年生にも自衛のために、と学校側からの意向らしい。
また仮面=即戦力にも繋がるのもあるだろう
「というわけで爆豪、こいつを投げてみろ」
「これ、体力テストの…」
そこで相澤から爆豪に渡されたのは、1番初めの体力テストで使用した専用のボール
「前回の入学直後の記録は…705.2メートル。どんだけ伸びてるかな」
「んじゃよっこら…くたばれ!!!!」
相澤に促され、ニヒルな笑みを浮かべた爆豪によって勢いよく投げられたボール
結果・709.6メートル。
その結果に、本人だけでなく周りからも困惑気な雰囲気が漂うが相澤だけはどこか当然だな、と言う顔をしている
短い時間の中でUSJ事件、体育祭…恐らくどの1年よりも濃密な時間を過ごしてきたと自負しているぐらいには自分の成長を全員が感じていたはずだった
「約3ヶ月間、様々な経験を経て確かに君らは成長している。だがそれはあくまでも精神面や技術面。あとは多少の体力的な成長がメインで、個性そのものは今見た通りでそこまで成長していない」
そう言われてから、全員の背筋に悪寒に似たものが走る。つまり今から行うのは…個性の可能性を極限まで引き出す……限界突破
「だから、今日から君らの個性を伸ばす。死ぬほどきついがくれぐれも死なないように」
にやりとした笑みを浮かべ、本気の目でこちらを見てくる相澤を背景に
地獄の特訓が幕を開けた
─────────────
───────
特訓を始めてから暫くしてA組の特訓場所にB組も合同したが、あまりの惨状に言葉が出ないと言った感じだった
早く混ざれという台詞に40人以上いて管理できるのか?と疑問に思ったが、だからこの人らだとプッシーキャッツがあらためて登場して自身の個性を紹介する。
「それと、特訓中に怪我があった場合…怜奈!」
「はーい」
「今回はリカバリーガールがいないので、代わりに治療は怜奈が担当する。」
「よろしくね」
「「「「(あ、ラッキー)」」」」
相澤が近くで新しい魔法を作るため資料を読んでいた怜奈を呼ぶと、彼女は一時作業を中断させ怪我をしたら遠慮せず言ってほしいと言ったのに、B組はその笑顔とリカバリーガールの治療法を思い出し瞬時にそう思ったという
「治療をすることは怜奈の特訓にもなる、が…A組にも言ったがかすり傷程度のもので何度も呼び出したりして彼女の邪魔をしないように」
そう言って相澤は主に男子に向かって鋭い視線を送ると、何人かの浮ついた心が一気に引き締まったのは言うまでもない
───────────
───────────────
B組も混じっての特訓が始まり少ししてから、怜奈は資料から顔を上げ近くにいる相澤を呼びながら駆け寄る。
「消太先生、今時間大丈夫?」
「ああ、どうした?」
それに相澤も体を怜奈の方に向け、なにか質問でもあるのか?と声をかける。
「……これ、家から持ってきたパパの魔法に関する資料なの」
「!」
伏せ目でゆっくりと本の表紙を指でなぞる怜奈に相澤は目を見開いて厚みのあるそれを凝視する。
彼女が言うには今ここにあるのは彼が最も得意としていた"換装"魔法に関するものだという。
「"換装"は、自身で考えた鎧や武器を瞬時に纏わせる魔法で…一度作ったものはストックしておけるんだ」
「それを持ってきたってことは…やるのか」
「…うん」
が、怜奈が今までこれを実践しようとしなかったのにはわけがあった。
「この魔法は、使いこなせれば凄い威力を発揮するけど…自身のエネルギーを多く消耗しちゃうから私には手が出せなかった」
「……つまり、誠さんにはそれほどのエネルギーが備わっていたということか…」
「今の私の力だと、武器を"換装"するのが限界かな…」
「今、出せるか?」
「…やってみる…」
相澤が少し離れたのを確認して意識を集中させ、イメージを固めていく。
瞳を閉じて片手を前に出すようにかまえると怜奈を囲むように静かに風が旋回をする。
「何……?」
「風…」
「………怜奈?」
その気配を感じてか周りの生徒達も手を止め怜奈へと視線を送る。
光の粒子がゆっくりと手に集まっていく光景に全員の目が釘付けになるが、次の瞬間、その光は一層輝きを増した。
「…日本刀────"鶴丸国永"!!」
閉じていた瞳を開き叫んだ瞬間、手に集まっていた光が一気に解き放たれ次に目を開けた時には一本の刀が息を乱している怜奈の手中に収まっていた
「そ、の刀は……!」
その刀を目に映した相澤は驚きからか目を見開き、緑谷も次いで声を上げる
「嘘…………あ、あれって…もしかして……」
「どうした?緑谷くん」
「あの日本刀、"鶴丸国永"は怜奈ちゃんのお父さん…フェアルズが最も愛用していた武器の一つなんだよ!」
「「「!!」」」
「フェアルズが使っていた武器の種類の中には、日本刀をモチーフとしたやつが多くあるんだ…凄い、本物だ………!!」
それを聞いてあらためて確認すると、全体が白で装飾されている刀は遠目から見てもその美しさがわかる。
白く美しい刀は、ダイヤモンドを連想させる彼女に相応しい輝きを放っている。
「怜奈…それ………」
「………ここには、パパが今まで考えた日本刀とその鎧の換装が記されてる」
誠はいざと言う時は必ずと言っていいほど日本刀を換装させていた、言わば彼の一番の得意武器
スラリと刀身を鞘から抜き、太陽によって一層輝きを増す父の愛した刀をその瞳に閉じ込める彼女は、普段からは想像も出来ないほどの凛々しさを纏っている。
「…あの人が遺したものを伝えられるのは、私しかいない」
「!」
「だから、やるんだ。」
真っ直ぐと自分を射貫く怜奈に、相澤は込み上げる何かをぐっと堪えると、くしゃりとその頭を撫でた。
「わっ?」
「…できるよ、お前なら」
「消太先生…」
「……ありがとう」
泣きそうな目で笑う相澤に、彼の先にいる父の姿を思い浮かべあらためて強くうなづいた。
「怜奈ちゃーん!!」
「三奈ちゃん!」
「凄いや怜奈ちゃん!!見てみてもいい?!」
「みっちゃん!いいよ!」
「まじコミックかよー!凄すぎだぜほんとに!!」
「かっこいいー!」
相澤の手が怜奈から離れたところでA組がどわっと彼女の周りを取り囲む。
わちゃわちゃと渦の中心で揉みくちゃにされている本人は、亡き父が遺してくれた刀を見て、再び笑みを浮かべた。
「…………お前ら、随分余裕そうだな…?」
「「「「あ………」」」」
その後、無事全員地獄の特訓へと戻るのだった。