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林間合宿
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「すいません、いきなり誘ってしまって…」
「えっ…と、そんな…こと、は…」
「怜奈ちゃん、いつものレモンティーでいい?」
「はい!それと苺のイスパハンを…」
シズクを見届けてから怜奈が青年を誘い行きつけの喫茶店へと行けば、2人を見たマスターは「怜奈ちゃんもついに…」とどこか嬉しそうに笑いながら言ったのに、青年は慌て怜奈本人は首を傾げた
そのまま奥の二人席に座り注文を済ませると、未だどこを見ていいか分からないように視線を彷徨わせる青年に怜奈は優しく声をかける。
「えっと、天喰環先輩、ですよね?」
「!!な、んで……?」
「ふふ、3年ヒーロー科担任のスナイプ先生から聞いていたんです。」
驚いたように目を見開いた天喰に怜奈が悪戯が成功した子供のように笑いながら理由を話す。
先日スナイプにお手製のスイーツを差し入れした際に丁度彼が自身のクラスの名簿を見ていた時に後々知ることになるだろうからとビック3について教えて貰っていたのだ。
「天喰先輩は現雄英高校トップの実力者・通称ビック3の内の一人で、食べた物を再現出来る個性を持ってるんですよね?」
「う、うん……」
「性格に少し問題はあるけど将来有望な生徒だって、嬉しそうに教えてくれたんです。」
「…え、っと…でも…………」
「…その通りだって、思いました。」
天喰からでた気の抜けた声は、レモンティーとアイスコーヒーを持ってきたマスターの声によって静かに消えていった。
お礼を言ってから受け取り、怜奈は爽やかなレモンが香る紅茶を流し込む。
それに倣い頼んだアイスコーヒーを天喰も口に含むと、おいしい…と小さく呟いたのに怜奈は嬉しそうに笑う。
「ここ、コーヒーもですがスイーツも絶品なんですよ!」
「そ、なんだ……」
「…さっき、シズクくんが迷子になったのは10分前だって先輩は言ってましたよね?」
その笑顔に熱くなった顔を冷ますようにまた一口天喰がコーヒーを口に運ぶと、怜奈は持っていたアイスティーのグラスを置き途中で切れてしまった会話を再び続ける。
「周りの人達は見ているだけで、誰も声をかけようとはしなかった。けど先輩は、"10分"もの間シズクくんのそばにいてあげたんですよね」
「!」
「泣いてはいてもシズクくんがそれ以上不安にならないように、先輩はずっとそばにいてあげた…とても優しい人だと思いました。シズクくんも先輩にありがとうって言っていたのが証拠です。」
そんな優しい人がヒーローに向いてないなんてことはありませんから。と、ダイヤモンドの瞳がこちらを見るのに天喰はぎゅっと膝の上に置いてある拳を握った。
…自分に自信を持てと親友からも言われるが、やはり自分は親友のように頼もしい声をかけることも出来ず、今回迷子に遭遇した時も彼女がいなければあんな風に笑顔にしてあげることは出来なかっただろう。
インターン先では問題無く活動はしているがやはりコミュニケーションは苦手で、自身の緊張しいな性格はコンプレックスとして自身の中で根を張っていた。
が、目の前の天使のような少女は自分のことを優しいと真正面からそう評価してくれた。
こんな風に真っ向から…しかも初対面の人に言われたことは未だかつて天喰にはなかった。
思わずポカンとしてしまった天喰に、慌てたように怜奈が声をかける。
「あっ…すいません、自己紹介もせずにベラベラと…1年の神風怜奈と言います。」
「あ、知ってる…よ…君、有名人だし…」
「へ?」
「雄英高校初のスカウト枠入学に、1年の部の体育祭優勝者…それに、よくスナイプ先生が自慢気に話してたし……」
職員室でのことを思い出しながら先生と仲良いんだね、と言う天喰に、怜奈はその様子を想像して困ったように笑った。
「えっと、あはは…よかったら私のことは名前で呼んでください。」
「え………じ、じゃあ……怜奈、さん?」
「さん付けはなくていいですよ」
「……なら俺も、環でいいよ………」
「はい!環先輩!」
ふわりと微笑みながら自身の名前を呼ぶ怜奈に、天喰はドキリと音を立てる心臓を誤魔化すように視線を逸らすとマスターがケーキを運んできてくれる。
「お待たせ。苺のイスパハンと、桃のムースケーキ、ストロベリーミルフィーユとチョコレートタルトね」
マスターによって運ばれてきたケーキは、少し小さめのテーブルを埋めつくしキラキラとその存在を主張させている。
「わぁ…環先輩、いっぱい食べるんですね」
「個性上ね…」
「でも私、いっぱい食べる人好きです!」
「!」
「さっそく食べましょう!」
何気なく言い放った怜奈に天喰が固まるも、キラキラと瞳を輝かせながらケーキを見つめケーキ用のフォークを渡してくれる怜奈に慌てて受け取り、天喰も注文したケーキに視線を移す。
「!おいしいっ」
「これも…」
食べた瞬間広がる果実の甘さに、怜奈が幸せそうに声を上げると天喰も小さく瞳を輝かせた。彼お手製だというケーキは細やかな細工が施されていて、もしかして彼は元パティシエだったのではないかと天喰はその味に感動しながら思った。
「環先輩、よかったら一口どうぞ」
「あ、じゃあ俺のも……」
「わあ、いいんですか?」
差し出された怜奈のケーキに、天喰も嫌がられたらどうしようと内心で思いながら自身のケーキを差し出すと、怜奈は嬉しそうにそれを受け取るのでよかったとほっと息を吐き、仲良く交換しながら食べ終えた。
こうして女子とケーキを交換し合うなど一生ないだろうなと思っていた天喰は、今の状況に対して驚くと同時に楽しいという感情がじんわりと胸の内に広がっていくのを感じていた。
「マスター、ケーキとっても美味しかったです!」
「いやぁ、怜奈ちゃんも君も凄く美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ!作りがいがあるねぇ…」
皿を片しに来たマスターに怜奈が感想を言い天喰もこくこくと同意を示せば彼はにこにことそう言うとこれ、よかったらオマケね。とお茶目にもウインク付きで苺と桃をスライスしてくれたのを差し出してくれた。
いいんですか?と2人で再びキラキラと瞳を輝かせながら聞くともちろんだよ。と返した彼は他の客に呼ばれ、ゆっくりしていってね〜と声をかけながらカウンターへと戻って行った。
「環先輩の個性は、食べるほどに強力になるんですか?」
「そうだね。違う種類を食べることで色々再現出来るから…特にアサリは攻防共に使えるから毎日食べるようにしてるんだ。」
「すごい…」
「怜奈の個性も凄いと思うけど…」
「魔法の個性は便利ではありますが、状況把握能力と咄嗟のイメージが必要で…今は、この個性に見合えるように頑張らないとって思ってます!」
「へぇ…髪とかも、個性の影響?」
「はい!宝石の個性で、母と同じで髪と瞳はダイヤモンドの色彩に…」
それから個性についての話や怜奈が演習試験で4人を相手にしたということに驚かれたりと、怜奈の柔らかい雰囲気にいつしか天喰が吃ることも無くなり和やかな時間が流れて行った。
また来てね~と手を振るマスターに、怜奈がはい!と手を振り返して天喰も軽く頭を下げてから店を後にする。
思ったよりも過ぎていた時間に、怜奈がハッとして天喰を眉を下げながら下から見上げる。
「環先輩、もしかして誰かと用事とかありませんでしたか?私が誘っちゃったから…」
「ううん。用事もすんでたし、暇してたから…」
「そうですか…」
大丈夫だよ。と天喰がぶんぶんと首を振るとよかったーと安心したように肩を撫で下ろす怜奈に、天喰は言おうかどうか迷った末に一度きゅっと唇を噤んでから自身より下にある怜奈の姿を見下ろした。
「……今日は………あ…ありがとう…!」
「え?」
「…俺一人じゃ、不安になっているあの子をあんな風に笑顔にしてあげることはきっと出来なかった……」
「環先輩…」
「優しいって言って貰えたのも凄く嬉しかった…初対面の人とかすごい苦手だけど…怜奈は平気だった」
突然のお礼の言葉に怜奈は一瞬ポカンとしたが、あまりにも真剣な表情の天喰にどういたしまして、と優しく微笑みかける。
「これからも、こうしてお話してくれますか?」
「!…う、うんっ…」
「じゃあ、またここでお茶しましょう」
微笑みながら約束ですよ?と小指を立てる怜奈に天喰は触ってもいいのだろうかと少し考えた後、遠慮がちに白いそれに自身の小指を絡めた。
「学校であっても無視しないでくださいね?」
「気をつける。」
ふわふわと風にゆらされてキラキラと光によって反射するダイヤモンドが放つ淡い光に、眩しそうに目を細めた天喰がいつの間にか微笑んでいたことを彼は知らない。
「(怜奈も太陽みたいな子だけど……彼女は照らすものをもっと素敵なものに変える…魔法使いだ)」
それからクラスで出掛けていた緑谷に死柄木が接近したと怜奈が聞かされるのは、家に着いてからもう少しあとのことである。
(〜♪)
(おや、怜奈ご機嫌だね!)
(えへへ…今日ね、学校の先輩と一緒にお茶したんだあ。あの商店街のところの喫茶店!新作が出てたからパーパも今度一緒に行こう?)
(いいね!あそこ美味しいし!(先輩…女の、だよな…?))
(噂通り、天使みたいな子だったな…)
(環、すごく機嫌がいいよね!何かあった?)
(…………………………………別に)
(その間は嘘だよね!!)