MHA中心
林間合宿
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
"
"
その中で、怜奈は前方に二つの影を見つけた。
「百ちゃん、泡瀬くん……!」
「!!怜奈さん…!」
「!よかった!!大丈夫かか…っ!お前、ボロボロじゃねえか!!」
頭から出血している八百万と彼女の身体を支える泡瀬に怜奈が駆け寄れば、八百万は目を見開き涙目になりながら怜奈の手を握り、泡瀬は一瞬安堵の表情を浮かべるも怜奈の所々ボロボロになっている服と腕や足の傷を見て顔を歪めた。
「さっきまで、みっちゃんと一緒に敵と戦ってたから…」
「戦ってたって…お前、そんな身体であんなことして…!!」
怜奈のその言葉に泡瀬は唖然と、八百万は言葉を失う
そんなふたりに対し怜奈はするりと八百万の手を外し彼女の頬を優しく撫でた。
「ごめんね、一気に治してあげられなくて…」
「怜奈さん……?」
「…私、行かなくちゃ」
「?!だ、ダメですわ怜奈さん!!そんな身体で…!」
ふわりと再び浮かび上がる怜奈に対し八百万は手を伸ばし泡瀬も戻れと声を荒らげる。
今狙われている怜奈を行かせるわけにはいかない
一緒に施設まで戻ろう
そう呼びかけるも怜奈の瞳は、変わらず前を向く。
「いやっ…………っ、行かないで!!怜奈さん!!!」
八百万の悲痛な叫びに、怜奈はピクリと反応し浮かび上がったまま振り返ると、両手を彼女の頬に添えその額に自身の額を重ねた。
「──大丈夫」
「「!!」」
「絶対、大丈夫だよ。みんなを必ず…守ってみせるからね」
そう言っていつもの様に微笑んだ怜奈は、彼女の笑顔を見て唖然とする二人を見て再び飛び立って行った。
「怜奈…さん…………」
二人に背を向けた怜奈が八百万の両目から滴る涙に気付くことは無かった。
────────
───────────
その頃、常闇と爆豪をMr.コンプレスによって奪われてしまった緑谷達は麗日と蛙吹によって敵の回収地点と呼ばれる場所に降り立っていた。
降り立つや否や襲いかかってくる荼毘達の攻撃を避け、障子は緑谷を襲っていた渡我を退かしMr.コンプレスが持っていたであろう二つの玉を握りながら逃避しようと轟と緑谷に呼びかける。
しかしそれらは偽物で、中から出てきたのは先程Mr.コンプレスと対峙した時に出した轟の氷だった。
本物はMr.コンプレスの舌の上で、球を舌に乗せたまま彼は残念だったなと言うかのように無慈悲に言い放つ
「あれ?怜奈ちゃんはいいんですか?」
「絶対連れて帰れって言われてたろ?言われてねぇよ!!」
「気安く名前で呼ぶな。我が君はさっきあいつから連絡がきたから大丈夫だ。……チッ…俺が迎えに行くはずだったのに…」
「そんじゃーお後がよろしいようで…。」
それと同時に彼らの後ろから黒霧のゲートが出現し、その中に入っていく連合に緑谷達が手を伸ばした瞬間
THOOOOM
青山の出した光線が、Mr.コンプレスの顔面に放たれ仮面が割れると同時にその口から常闇と爆豪を閉じ込めている本物の球が零れ落ちた。
緑谷、轟、障子は迷わずその球に向かって手を伸ばす。
「確認だ、"解除"しろ。」
「っだよあのレーザー、俺のショウが台無しだ!」
パシリと音を立て球を掴んだのは障子と──荼毘だった。
荼毘は回収した球を見遣りMr.コンプレスに指示すると彼は苛立ちながらも解除し、彼らの目的であった爆豪の首が荼毘によって掴まれる
そのまま闇へと引きずり込まれていく爆豪に、全員が最悪を察したその時
ゴウッッ!!!!
バチィッ
間一髪間に合った怜奈が上空から"
「「「怜奈/ちゃん!!!!」」」
「施設に走って!!早く!!!」
「っ怜奈!!」
「怜奈ちゃんも…!!」
更に指示を飛ばす怜奈に爆豪が目を見開き、緑谷達は最悪を一気に逆転してくれた怜奈に歓喜の表情を浮かべながらも共に行こうと彼女に手を伸ばすと、怜奈も彼らに向かって手を伸ばす。
この時、ほんの一瞬。
地面に足が着く直前、スピードを殺すために体勢を立て直すほんの僅かの静止の瞬間、怜奈が黒い靄の前に立った
その時
トス
グシャリ
「ッ、ハ…………」
「あぁ、やっと会えたな…」
いつか見た白い手が伸び、怜奈の白い首筋に針が突き立てられた。
さらにもう一本の腕が怜奈の体にするりと絡みつき、拘束する。
その際無遠慮に翼をも巻き込んだために白銀のそれは嫌な音を立て変形し宙に舞った。
「「「!!!!」」」
「怜奈ちゃん!!!!!」
その間にも首に突き立てられた注射器の中の透明な液体は彼女の体の中に吸い込まれてその姿を消していく
突然の事に怜奈は咄嗟に注射器を持つ腕を掴むが、何故か手に力が入らずただ服のシワを握るだけだった
「大丈夫、すぐに良くなるから」
体に絡みついている──死柄木弔はなんてことは無いと怜奈に擦り寄り、彼女の頭を抱き込むようにして安心させるようにゆっくりとした口調で彼女に呼びかけているが、怜奈の瞳は焦点が定まっておらず小刻みにブレていた
「何………してんだ?」
「おい、あいつ早く回収しろ」
「何してんだって…聞いてんだろォがァァァ!!!」
歓喜から一変、絶望を映し出す光景に唖然としていた緑谷達だったが、だらりと腕が下がる怜奈の状態を見ていち早く状況を理解した爆豪はただ怒りのままに爆破を起こし、死柄木に最大威力の爆撃を食らわそうと彼に向かって手を伸ばしたが、その腕は死柄木を掠めることなくさらに奥から伸びてきた手によって瞬く間に拘束された
「わざわざ来てくれたのか。アホだなぁ、お前」
「っ、怜奈…!!!」
爆豪は荼毘に腕を捕まれぐるりと身体を緑谷達に向かい合う形になるように引っ張られ、更に首を拘束される。
首に手をかけられ完全に動きを封じられた爆豪は横目でぐったりとしている怜奈を視界に入れるとそのまま靄の中に引きずり込まれていく。
「かっちゃん!!!!」
「来んな、デク」
身体が固まっていた緑谷が意識を覚醒させ足を縺れさせながらも駆け出し爆豪に呼びかけるも、彼は短くそう言い残しズプン…と闇の中に飲み込まれていった。
「ちょっと血が出ちゃったな……さぁ、俺達も行こうか」
爆豪の回収を見届けた死柄木はとっくの昔に空になった注射器を摘み適当に投げ捨てると、こちらに向かってくる緑谷達をなんとも思っていないようにただ愛おしげに、確かめるように怜奈の顎に手をかけ頬へと滑らせプツリと浮かび上がる首筋の鮮血を目に映した
「離せっっ!!!離せエェエエ!!!!」
「返せええぇぇえええええ!!!」
「怜奈っ!!!!」
3人は一斉に手を伸ばすが、後一歩のところで届かないことを本能で感じ取った。
その事実に背後から明確に感じた絶望の最中、この場には似つかわしくないほど温かく穏やかな声が彼らの耳に谺響した
────絶対、大丈夫、だよ
暗闇の中、翼をもがれても尚健気に光り輝く彼女はこの世の何よりも美しく微笑むと、いつもの言葉を音に乗せた。
あまりにも美しい光景に3人が息を呑むと怜奈の微笑みはいくつかの羽根が舞った後
闇の中へと吸い込まれていった。
3人にとってスローモーションの如く感じた光景は彼女が"いた"空間に漸く手が届いたところで再生され、白く輝く羽根が舞う中で力の行き場を失ったそれぞれの体が勢いよく投げ出されるが、それすらも関係ないとすぐ様体を起こし辺りを見渡す
しかしいくら目を凝らしたところで、そこには虚無しか漂ってなかった。
あぁぁああああああああ!!!!!
怜奈は最後の最後まで、彼らを安心させるために全力を注いだのだ。
最後まで守られ続けたと理解し、緑谷はその場に膝をつき怒りとも悲しみともつかないぐちゃぐちゃになった思いを空に向かって吼える。
あの時、彼女が来てくれた時、情けない事に緑谷は安心した。
───────怜奈が来てくれた、と
自身の治りかけの両腕が緑谷を激しく責めたてた。
そんな緑谷に唯一解放された常闇が駆け寄るも、同じく手の届かなかった障子は普段の彼からは想像もつかないほどの激情をマスクの下で暴れさせていた。
自身の腕は、人を……彼女を助ける為に存在することで意味があると自身に問いかけ、失敗に終わった事実にただ打ちひしがれた。
一方で轟はフラフラと先程まで怜奈がいた場所に近寄ると、辺りには白銀の羽根が散らばっていた。
バッと縋るように飛びつき改めて全体を確認すれば、羽根をもがれた鳥が頭の中で連想された。
残されたそれらがまるで怜奈の遺留品のように感じて、拾い上げた優しい手の方とは逆にダァンッ!と力任せに地面を殴りつけた。
血が滲むのも構わない。痛みなんて感じない。
ただ、悔しくて、虚しくて、情けなくて
響き渡る慟哭に同調するように轟は再び地面に拳を突き立てる
役目を終えハラハラと散る橙色が、虚しく夜に広がり消えていった。
完・全・敗・北
生徒41名のうち
行方不明者3名(内1名プロヒーロー)
ガスによる中毒軽傷者15名
軽傷者11名
無傷13名
確保したヴィラン4名
雄英高校の林間合宿は、残酷なシナリオで幕を閉じた。
Fin
16/16ページ