MHA中心
林間合宿
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「─────泣かないで」
「…………………………は?」
"
怜奈が力を抜いたことによりリキも力の行き場を失い手から刀がこぼれ落ち、重力に従いカシャンと静かに音を立てて落下した
頬に手を添えられたリキは目を見開くが、その瞳から涙などは流れていないため、怜奈の言葉の意味をゆっくりと咀嚼してから何を言っているんですか?と困惑気に眉を顰めた
「俺は泣いてなんて…」
「違う。あなたは気付いてる。」
「何に…」
「…こんな形で会うべきじゃなかったって、気付いてる」
悲しげに顔を歪める怜奈に、リキの思考が止まりその静寂の中でガンガンと警報音が頭の中で鳴り響いているのを今初めて感じ取っていた
そして自分の中に二つの感情が存在していることに対して驚愕した
リキは怜奈のどこまでも輝く瞳と柔らかな手に触れられているということに何故かとてつもない恐怖を感じ、バッと瞳と白い手から逃れるように飛び退くと心臓が耳にあるのではないかと言うぐらい心音が彼の中で嫌な音を立て思考を過去へと繋げていく
歪んだのはいつだっただろうか、最後に嘆いたのはもう遠い過去の事のようだ。
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
「違…う…俺は、」
『この女の子凄い…!』
「敵になって、貴女の瞳に…」
『行け!頑張れ!!』
「俺は、そのために…」
『絶対この子はヒーローになる』
「貴女に、見てもらいたくて!!」
『応援したい。この子が素晴らしいヒーローになれるように』
「俺は……………っ俺は!!!!」
『俺のサポートアイテムで』
ブツンッ
「アアアァァァアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」
いつから道は狂ったのか。どこから崩れていったのか。
「っリキさん!!!?」
閉じ込めていた過去を思い出したリキは瞳を見開き頭を振り乱しだした。その姿に怜奈が彼に手を伸ばすも、リキは理性のコントロールが利かずに個性を暴発させる
身体中から数多の刃が形成され、それらは不規則に四方八方に飛び散って行く
それらを怜奈は"
「俺、何で、サポート、違う、お、れは敵で、支えて、違う、あ、あ、あ………違う違う違う違うっっ!!!!」
「リキさんっ!!落ち着いて!!!」
暴走の止まらないリキに、怜奈は先程見たリキの瞳を思い出す。
人の感情に敏感な彼女だからこそ感じ取った違和感…それは彼の恐怖と悲しみ。
─本当はしたくない─
そう思うのに彼の中にあるもうひとつの感情が暴走し彼自身を呑み込んでしまっているのだと、怜奈はある種ではステインと同じようなその思いに胸を締め付けられた。
しかし虚像に取り込まれているリキを見過ごすわけにはいかない。
側にいる者は全員救い出すと、あの人と同じ誓いがあるのだから
怜奈は"
完全に武装を放棄して瞳を閉じ神経を集中させると彼の呟きの中にあるサインを必死に拾い上げる。
俺は、敵として、彼女は、触れてくれるはずで
サポート、したくて、造って、でも、足りなくて
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
ただ、俺は
「貴女を………応援したかった………」
その言葉と同時に、生成されていた刃物がピタリと止み静寂が辺りを包んだ。
────今からほんの数ヶ月前まで、リキはとある会社のヒーローコスチューム兼サポートアイテムの開発者だった。
雄英高校の体育祭は開発者からしたら取っておきの資料材料で、もちろんリキのいた会社でもその日は態々それを見るためにだけに社員達は出社し、出場者の個性を見てどのようなアイテムがよいか議論が行われた
その中でも今年の一年生──特に"神風 怜奈"という人物は別格で、社員達の注目を一身に集めリキも初めはその中の一人にしかすぎなかったのだ。
─────────憧れと狂気は紙一重
どこから想いは歪んだのだろうか。それはきっと気付かないくらい小さかった歪みで、呑み込まれるなんて彼自身思ってもみなかった。
物事に対して盲目となった時の人間は恐ろしく、たった数ヶ月で彼を立派なヴィランへと押し上げてしまった。
けれど呑み込まれたと思っていた心の根本にある想いは、変わることは無かった
それに気付いたから、リキの暴発は止んだ
リキが零した心の言葉に、怜奈は彼の側にふわりと移動すると顔を覆っていた手を退かしリキの瞳に映りこんだ。
「あっ…………」
「…やっぱり、貴方は気付いてた」
「な、!しまっ…」
怜奈の姿がリキの瞳いっぱいに広がると、彼は怯えるかのように後退り咄嗟に刃物を怜奈の腹目掛けて放ってしまう。
それに焦ったようにリキは声を上げたが、刃はするりと彼女の身体をすり抜けカランッと地面に音を立てた。
「お、れ…」
「大丈夫」
「、え?」
「絶対、大丈夫──私の魔法の言葉です」
顔を青褪めさせるリキに対し、怜奈は小さな子供に話すような柔らかさを纏って彼に言葉をかけた。
それにリキが思わずポカンと固まると、その様子に怜奈は掴んでいた手を纏めてぎゅっと強く握り全てを包み込むような笑顔を向けた。
「…駄目です、俺は、もう…もう…何も…………」
「確かに、貴方がやってきたことをなしにすることは出来ません。」
「っ、」
後悔と罪悪とで歪むリキに怜奈は徐に片手をあげると、彼の頭を優しく撫でた。
「え、」
「…さっきまでのリキさんは死にました」
「!!」
「そして貴方は"本物"のリキさんです」
「ほ、んもの………」
「絶対大丈夫です。…だって…"偽物"を倒したのは他でもない、"本物"のリキさんなんだから」
貴方は、強い人です
小さい子を褒めるように何度も上下する手の動きと温かさに、リキはその場に崩れ落ちた。
抑えきれない嗚咽を漏らす彼に怜奈はもう一度大丈夫、と言ってからふわふわとした甘い声でリキの鼓膜を震わせる。
「私の事を応援してくれて、ありがとうございます」
「っ、怜奈、さっ…」
「前に進んでください…今度はきっと、大丈夫です。次に会えたその時は…私は貴方の望んだ"ヒーロー"になっていると約束しますから」
そう言って最後に精一杯の笑顔を送れば、リキは嬉しそうに、眩しそうにくしゃりと顔を歪ませると心労からかそっと目を閉じて意識を失った。
「………おやすみなさい」
リキが眠ったのを見届け、立ち上がり零れ落ちそうになる雫を吹き飛ばすかのように怜奈は"