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林間合宿
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「5割の力を武器に、残り5割で鎧を形成する…この力は、個性のことかな…?」
《合宿三日目》
怜奈はみんながいる訓練所から少し離れた森の中で資料を読み込みながら考えをめぐらせていた。
換装をする際に使う力のことが資料に書いてあるのだが、これが個性の力のことを言っているのだろうかはハッキリとわからなかった。
魔法の個性を使うにしても、その力を二等分にわけること自体がよく理解できないのだ。
「(それにもし力を二つ分けるにしても、今の私じゃ力をわけてしまったらどちらも完全なものは作れない…)」
問題はそれだ。
恐らく力をわけることは出来るが、如何せんそれでは完全な武器にはならない。今の怜奈の力の大きさだと換装したとしても不完全なものが出来上がるだけなのだ。
「…この力は…」
「怜奈」
「ひゃっ」
資料に書いてある項を指でなぞりながら小さく呟くと、ぽんと肩が叩かれるのに完全に自分の世界に入っていた怜奈は思わず肩を跳ねさせ前のめりになった所で腹部に腕が回されがっしりとその身体が支えられた。
「っと…大丈夫か?」
「し、消太先生…」
肩を叩いた本人である相澤が怜奈を支えながらそう声を掛けてくるのに怜奈は目をぱちぱちとさせながら彼を見上げる。
驚かせて悪かった。と相澤は再び話しかけながらゆっくりと身体を離し怜奈と向き合うような形で姿勢を正す。
「ううん、ごめんね消太先生…ちょっと集中しすぎちゃってたみたい」
「そうか…今どんな感じだ?」
「んと…取り敢えず、武器の"短刀"の換装は一通りできるようになったよ」
資料の項目を指差しながら言った怜奈に、相澤はもうそこまで行ったのか…?と少し驚いた表情を見せる。
短刀は威力では少し弱いが、機動力と隠密に関しては恐ろしいほどの威力を発揮することが出来るとある。更に力の消耗も一番小さく、慣れさせる為にも最初にマスターした方がいいと怜奈は判断した。
「……でも、やっぱりまだ武器の換装しかできなくて…」
顔を俯かせながら資料を持つ手に力が入っている怜奈を見て、相澤は一度ぎゅっと唇をかみ締めた後徐に手を伸ばし目の前の頭を優しく撫でる。
「消太先生?」
「…悪かった………」
「え…………?」
突然の相澤からの謝罪に、怜奈が弾かれたかのように顔を上げると彼はらしくもなく眉を下げて瞳を伏せていた。
「なんで…」
「…怜奈がこんなにも頑張ってたのに……俺は何も……見えていなかった………」
怜奈の頭を撫でる手とは逆の手で相澤は自身の片目に手を添えると込み上げてくる何かを堪えるかのように再び唇を噛み締めた。
相澤は怜奈には傷ついてほしくない思いからか彼女が日に日に強くなっていくことに、心のどこかでそれ以上強くなってくれるなと気付かないうちに彼は思っていた。
しかし、こうして彼女が誠が遺したものを受け継ごうとしている姿を見て相澤は自分の奥底にあったそれに目を見開いたのは記憶に新しい。
「お前が前に進もうとしているのに、俺は………それを………」
内にあった思いを話し終わった後グッと自身の額に当てている手に力を込める相澤に、怜奈は頭に乗せられたまま少し震えている彼の手を優しく握りその手を自身の頬に添える
「………ごめんね、消太お兄ちゃん…」
「!なんで……俺はッ…」
「違うの…私…気付けた……のに……」
ポタリと手に雫が触れる感触に相澤がハッと顔を怜奈に向けると、彼女はホロホロとまるで宝石のような、キラキラと輝く金平糖のような泪を静かに溢れさせていた。
「っ怜奈…泣くな……」
それを見た相澤は頬に添えていた手で怜奈の涙を拭うと、光で輝く髪を指に絡ませ彼女の頭をゆっくりと自身の胸に押し付けた。
怜奈は相澤の胸に額を押し付けると目の前の服を控えめに握る
「USJ事件の後……護りたいものを護るためにヒーローになるって言ったけど…それがお兄ちゃんを無意識のうちに傷つけることになるの…気付けたはずなのに、私…」
小さく震える怜奈に相澤はぽんぽんと落ち着かせるように頭を撫で低音で優しく鼓膜を刺激した。
「…悪い。まだ話には続きがある」
「つ、づき…?」
「確かに、俺は心のどこかでは怜奈に傷ついて欲しくない思いからそう思っていたが…今は違う。」
おずおずと顔を上げた怜奈の赤くなってしまっている目元を指先で撫でると相澤は真っ直ぐにその瞳に自身の黒を映しこませた。
「今は敵も力をつけてきている。そいつらに対抗するには……怜奈の力が必要だ。」
「!」
「"ヒーロー"としてのお前の力がな。…だから俺はもうそんなことは思わない。お前はきっと…光になると信じている」
ふ、と柔らかく目元を緩ませる相澤に、怜奈は目を見開かせたあとふにゃりと顔を崩した。
「だが、それは護らないって意味じゃない。心配だってするし、俺はお前を護るからな」
相澤はそう言って息を吐き出すと何かを誤魔化すようにわしゃわしゃと怜奈の頭を撫で回した。
(あははっ!擽ったいっ)
(………必ず、護ってみせる……)
─────────
─────────────
その日の訓練を終え、全員で肉じゃがを作り怜奈は昨日の約束通りA組の面々と夕食を食べた。
無事男子達の肉じゃがにも肉が投入されていることに男子達は怜奈に拝み、怜奈は慌て女子達は首を傾げていた(その間相澤は男子達を睨みつけていた)
そして腹も満たされ日も落ちた頃、生徒達の待ちに待った時間がやってきた
「肝を試す時間だー!!」
「………えっ?!」
待ってましたとばかりに声を上げ片手を掲げた芦戸を筆頭に上鳴達も声を上げたが、怜奈は肝試しという言葉にわかりやすく身体が固まった。
「き、肝試し……するの?」
「あれ?怜奈ちゃん知らなかったの?」
「そういや、怜奈はずっと離れにいたもんな」
顔を青褪めさせる彼女の様子に緑谷がオロオロとしながら声をかけると轟が肝試しをすると告げられた広場には怜奈がいなかったことを思い出す。
「その前に大変心苦しいが補習組は…これから俺の補習授業だ」
「ウソだろ!!!!!」
相澤は補修組にそう無慈悲に声をかけるとそのまま彼らの身体を捕縛布でぐるぐるに巻き付けた。
「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたのでこっちを削る」
「うわぁああああああ!!!!堪忍してくれぇ試させてくれぇ!!」
ズルズルと引き摺られて行く芦戸、上鳴、切島、砂藤、瀬呂に全員が哀れみの目を向けているとハッ!と怜奈は小走りで相澤に駆け寄る。
「し、消太先生…肝試し、しなきゃダメ…?」
「うっ…」
うるうると瞳を潤ませ可哀想なぐらい顔を真っ青にしている怜奈に相澤は息を詰まらせ、胸が抉られるような感覚に陥り助けてやりたいと思ったが
「ふっふっふー!もちろん強制参加だニャン!!」
「そ、そんなぁ……」
「(すまん怜奈…)」
キラリと目を光らせがっしりと怜奈の肩を掴んだピクシーボブが弱々しく声を上げる彼女を引きずっていく様子に相澤は心の中で謝ると、未だ未練タラタラに地面に足をつける彼らを再び引き摺って施設まで歩いていく
この行動を後悔するとも知らずに…
─────────
────────────
「うぅ………ど、どうしよう………」
頼りの相澤が消えてしまったことに怜奈は泣きそうになりながらオロオロとその場を右往左往する。
「怜奈、大丈夫か?」
「焦ちゃん…」
「怖がらなくていい。俺が側にいるから安心しろ」
轟は怜奈の隣に移動するとそう声をかけながらするりとその手を彼女の手に絡ませる。
所謂恋人繋ぎで怜奈を安心させるかのように身を寄せる轟に怜奈が涙目のまま轟を見上げるが、それと同時にドスの効いた声が二人の背後から響き渡る。
「おい…手ぇ離せや半分野郎」
ドンッと後ろから轟の肩を押し、次いでバチィンッと今度は怜奈の手と繋がれている轟の掌を声の主である爆豪が弾き二人の手を引き裂くとそのまま彼女を自身に引き寄せるように肩に腕を回す。
「怜奈、お前が怖いなら俺が守ってやる」
「勝己くん…?」
「何すんだ爆豪」
「あ"?こいつを守んのは俺だ。わかったらとっとと引っ込めカス」
「…それは譲れねぇ」
「あ"あ"?!」
「え、え?な、何で喧嘩してるの…?」
自身を挟んで睨み合いだした二人に怜奈が疑問符たっぷりに双方を見遣るが、二人は顔に不満を貼り付けたまま彼女の様子には一切気付かず火花を飛ばしている。
がしかし、もちろんそんな様子を見て周りが黙っているはずもなく、いつの間にかA組全体で怜奈達の周りを取り囲むようにして口論が始まった。
「ふざけんなこの半分野郎!!怜奈を守んのは俺なんだよ!!!」
「俺が怜奈の側に居ることは爆豪には関係ねえだろ。あと腕外せ」
「お前今側に居ることは関係ねぇっつったろうが!矛盾してんじゃねぇよ!!」
「だ、大丈夫だよ怜奈ちゃん!僕がいるからね!」
「いいえ!ここは私がっ」
「いや、俺の方が索敵に優れているから怜奈を安全に移動させてやれる」
「ここは譲れんよ!!」
「闇なら俺が…」
「あ、あの、みんな………」
全員がいかに自分が彼女を安心させられるかのプレゼンが始まったところで、始めこそ青春だ…と見ていたマンダレイだったが全員に囲まれオロオロとする怜奈を不憫に思いクジで決めると何とかその場は鎮められた。