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林間合宿
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「お便りも出せたし、お買い物もすんで家に送って貰ったし…」
うん、大丈夫だ。とうなづいて折角だし近くの喫茶店にでも寄っていこうかなと知り合いのマスターを思い出しながら小さく笑みをこぼす。
が、やはりみんなと一緒に行けなかったのは残念だったなぁ…と昨日の会話を思い出す。
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相澤からの合理的虚偽を発表されて、無事その日一日の授業を終えたところであとは帰るだけとなった教室にわいわいと楽しげな会話が広がる。
「まぁ何はともあれ、全員で行けて良かったね」
「一週間の強化合宿か!」
「けっこうな大荷物になるね」
「暗視ゴーグル」
「水着とか持ってねーや。色々買わねえとなあ」
怜奈もファイルの中から配られたプリントを取り出し持ち物欄を改めて確認する。見たところ今自分が用意すべきなのは何も無いし、恐らく家にあるもので十分だろう。
「明日休みだしテスト明けだし…ってことでA組みんなで買い物行こうよ!」
プリントを再びファイルにしまった所で葉隠が言った台詞に、A組の面々は賛成の意を唱え集合場所、時刻までサクサクと決めていってしまう。
みんな元気だなぁとその様子を見守っていると、そのテンションのまま麗日、芦戸、葉隠がこちらに体を向けた。
「ね、怜奈ちゃんも行くよね!」
「何買う何買うー?」
「お出かけだよー!!」
彼女らの台詞に周りの者達も期待の篭もった瞳で見つめてくるが、恐らくこのお出かけで最も大切なキーパーソンとして当てはまっていた怜奈は眉を下げながら申し訳なさそうに両手を合わせた。
「ごめんね!明日はちょっと用事があって…」
「「「えぇーーー!!!?」」」
「そんなぁ!」
「なんで?!」
一斉に飛ぶブーイングの嵐に怜奈は困り顔のまま家にあったお皿が割れてしまったので買ってきて欲しいと頼まれているのだと口にした。
─結局昨日家に来て限界まで怜奈のアフターケアを受けた相澤とマイクが帰った後、オールマイトはぷんぷんと効果音をつけながら皿を洗い、その隣で怜奈は皿を拭いていた。
「もう!あの二人全然離れないんだから!」
「でも私も悪いことしちゃったし…」
苦笑しながら言った怜奈に、確かにいつも可愛がっている彼女に試験とはいえ攻撃を与え、加えて攻撃されてしかもわざとではないにしろ撫でようとした手を避けられたともなればトリプルでキツかったのだろうとオールマイトも考える。
自身も怜奈と対戦したことはあるが、あくまで手合わせの域だったのでそこまでダメージはなかった。しかし今回の試験は敵として対戦してしているため桁違いの緊迫感だっただろう。
「Umm……しかし…………」
「あ!タオル干したままだった…ごめんねパーパちょっと取り込んでくる」
「んん、わかったよ!」
エプロンを着けたままパタパタとベランダにかけていく姿を見送った後、オールマイトはそれでもやっぱりくっつきすぎだった!と2人の様子を思い出し自分も後で抱っこしたりするもん!と対抗心を燃やしているとカチャンと箸を落としてしまった
「おっと、いけない」
慌てて拾おうとシンクに手を置いて拾いあげようとしたその時
つるんっ
「へっ?」
手を置いた場所が悪かった。
オールマイトが手を置いた場所は怜奈が食器を拭くために使っていた布巾の上で、多く水分を含んだそれはつるりと滑りオールマイトの手とシンクを離してしまった。
それに慌てて思わず置いた手の先は、洗った食器を置いておく籠で……
「あ"」
時すでに遅し。
オールマイトは勢いを殺すことも出来ず、そのまま籠を床の上にぶちまけてしまった。
ガッチャーーーーン!!!
パリンッ!パリンッ!パリンッ!
「あ"ぁ"ーーーーーーー!!!」
「?!パーパ!!どうしたのっ!?」
─という訳で、来客用の皿は何枚かはあるが二人暮らしに使う食器などたかがしれている。割れてしまった皿の代わりを買いに行くために明日は買い出しに行くのだ。
それにグラントリノと、ある人への便りを出すためにもいい機会だと思ったのだ。
周りは余程ショックなのかえー…やそんなぁと嘆いている
「みんな、怜奈くんが困っているぞ。用事なら仕方ないだろう」
「ほんとにごめんね?次に機会があったら絶対行くから。」
「約束ね!!」
「絶対だよ!」
「爆豪は行かねーの?」
「行くわけねーだろカス」
「怜奈ちゃんが行かなかったら行かねーだろ爆豪は」
「うるせーぞしょうゆ顔がァ!!」
「轟くんは?」
「日曜は見舞いだ」
「合宿が終わったらお見舞い一緒に行くね」
「おう、お母さんも楽しみにしてる。」
……と、以上が昨日の出来事である。
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いつも食器を買っている店で割れた分の枚数と増やそうと思っていた来客用の食器も何枚かまとめて購入すると体育祭を優勝したお祝いにと値段を6割も割引してもらえた。
郵便局のポストにも書いておいた便りをだし冒頭の行動へと戻る。人通りがまばらな道を歩きながら行きつけの喫茶店は今はいちごと桃のデザートが出ていたはずだ、とこの前くれたチラシを思い出していると前方に小さな男の子(恐らく3〜4歳)とその傍でオロオロとしている青年が目に入った
男の子は泣いているのか、ふえぇ…と両手で目を擦りながら小さく声を上げそのそばにいる青年はどうしたらいいのかわからずしゃがみこみ困ったように男の子を見つめている。辺りを見回すと親らしき姿は無く、またその2人が知り合いとも思えない。
その様子におそらく迷子かな?と思いそっと近付く。
「大丈夫ですか?」
「ッ!!!え、えっと………!」
「(あ…この人………)」
声をかけると大袈裟に肩を跳ねさせこちらを見て目を見開く青年の顔は見覚えのあるものだった。それに一瞬目を丸くするが、未だに泣いている男の子の方が先かと視線を向ける。
「ふぇ、え……」
「こんにちは」
「っ、?おねちゃ…は…」
「えっと、私はね神風 怜奈 って言います」
「し、知ってる……テレビでみた、から……」
「わあほんと?ふふ、嬉しいなあ」
目線を合わせるためにしゃがみこみ話しかけると小さな両手を目元からどかし赤くなった瞳でこちらを見上げてくる。
どうやら体育祭で怜奈のことを知っているらしく、すんすんと鼻を鳴らしながらも泣くのをやめてきゅっと手を握ってくる。
「あのね、すごいつおかった!ビューンてねキラキラしてたのしゅごいの!」
「もしかして全部見てくれたの?ありがとう〜」
泣くことよりもテレビで見た人物に会えたことが嬉しいのか、完全に涙は引っ込み握る手とは逆の手でぶんぶんと興奮を語っている。
「君のお名前聞かせてくれるかな?」
「ぼくね、シズクっていうの!よんさい!」
「シズクくんかぁ、お名前言えてえらいね。今日は誰とお出かけしてたの?」
「んとね、パパとね、きてね、でもどこかいっちゃったの……」
「そっか…」
迷子になった理由を聞くとしょぼんとしながら答えてくれるので、優しく頭を撫で青年に声をかける。
「シズクくんとは何時頃に?」
「あ、えっと……10分ぐらい前に…俺のこと、親と間違えたみたいで…」
恐らくはぐれたことに気づかずに親だと思った青年の服を握り、違ったので親がいないのだと気づき泣き出してしまったのだろう。
「とりあえず、むやみに動かずここで待っていた方がいいですね」
「そ、そう…だね」
青年は目線をどこに向けていいのかわからないのか、顔を赤く染め激しく目を泳がせながら俯いてしまった。
それに首を傾げどうしたのかと声をかけようとした時、くんっと肩あたりの布が引っ張られる。
「おねちゃ…ぼく、パパと会えるかな……?」
不安の色で満たされたその表情に、怜奈はふわりと微笑みながら小さな手を握る。
「シズクくんは、何しにパパとお出かけしてたの?」
「えっと、えっとね!ママが誕生日だからね、プレゼントかいにきたのっ」
「そっか…シズクくんは、ママが好き?」
「うん!ママもパパも、いっ〜ぱいすき!!」
キラキラと瞳を輝かせながら言ったその言葉に、怜奈も笑い返しながら再び頭を撫でる。
「じゃあ、大丈夫。それだけパパとママが大好きなんだもん。必ず会えるよ。」
「ほんと……?」
「うん!だから、会えた時に僕は平気だったって言えるように…」
フワッ………
「!!」
「わぁっ!!」
「笑っていなきゃね」
パチンッと怜奈が指を鳴らすとその場で花弁が旋回し、止まった頃に彼女の手元には大輪の向日葵の花束が握られていた。
一瞬の出来事に青年が息を飲み、シズクもより一層瞳を輝かせた。
「きれいっ」
「これは、シズクくんからママへのプレゼントにしてあげて?」
「うん!」
「それと………」
両腕で花束を受け取ったのを確認して"
「これは、私からシズクくんへのプレゼントだよ」
「いいのっ?」
「うん!……これからも、パパとママを大事にしてね?」
さ、お迎えだよ。
そう言って後ろを振り向かせると、シズクー!と名前を呼びながら走ってくる男性の姿があった。
「!パパ!!」
「シズク!!ああ、よかった…」
「あのね、あのね!おねちゃたちがいっしょにいてくれたのっ」
「!き、君は体育祭の…?」
「シズクくん、もうはぐれちゃダメだよ?」
「うん!あのね、おねちゃがねママのお花と、ぼくに飴くれたの!!」
「えっ?!すいません!こんなにやって頂いて…お支払いを…」
「いえ、いいんです!…今度は、はぐれないようにしていただくだけで…」
「おねちゃ、おにちゃもありがとう!」
「!えっ………」
父親は何度も頭を下げながら、シズクは姿が見えなくなるまでずっと2人に手を振り続けた。
親子の姿が完全に見えなくなったところで隣の青年に視線を向けると、俯きがちながらもどこか柔らかい雰囲気を纏っているのにふふ、と笑い声をこぼす。
「え、あ……じ、じゃあ俺はこれで……」
「あ、待ってください!」
こちらを見て再び顔を真っ赤に染めあげた青年は、そそくさとその場を立ち去ろうとしたのに怜奈は声をかけ引き止める。
それから恐る恐るな、何…?とこちらを振り向く彼に微笑みかけながら言う。
「もしよろしければ、一緒にお茶しませんか?」
「………………………………へ?」
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