MHA中心
期末試験
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
試験が始まって数秒後、取り敢えず怜奈は相澤達から距離を置き作戦を立てようと物陰に身を隠す。
始め4対1という試験に驚きはしたものの、酷いとは怜奈本人は思わなかった。寧ろ自分に対しての課題を的確に当ててくれたのだろうと納得した。
前にも言った通り、自身の個性はなかなかに万能だがその都度相手により判断が出来なければただの宝の持ち腐れ。
よって、今回の試験は予め相手が知らされていない+複数人である所が彼女の実践面に陥った時の課題となるのだ。
恐らく相澤が近距離、その他の人達が中・遠距離タイプという形の敵だと想定し来ると予想し、まとめてこられたらそれこそ勝率はぐんと下がる。
加えて自分にはゲートから外へ出る、ということはクリアにはならない。あくまで拘束のみを達成条件として掲げられている今、ベストはなるべく個人戦に持ち込むこと。
「"
今の状況を見るためその場で"目"を発動させ辺りを見回すとどうやら2人1組で行動しているらしい。
相澤とマイク、セメントスとスナイプのペアがそれぞれ逆の方向からあたりを見回しているのを見て個人戦に持ち込むことは無理そうではあるが、それでも2チームの間にはかなりの距離が出来ているため、どちらかを攻めてももう片方が応援に来るまでに時間がかかるだろう。
─どちらを先に攻めるのか、それは既に決まっていた。
「…完全に気配を消しているな」
「向こうの方が手数は多いですからね、警戒は続けておかないと」
双方ははいつでも奇襲に備えられるようにスナイプは銃を構え、セメントスは壁に手をつたい歩を進めている。
そしてその時は訪れた。
「"
「「!!!」」
ゴゥッッ!!!
「ッ、セメントス!!!」
「はいッ!!」
突如彼らを襲った突風に視線を背後に向ければ、そこには背後に女性を従わせた怜奈が立っており、自分達の体が浮き上がりそのまま飛ばされていくのにスナイプが咄嗟にセメントスに指示を出せば、言わんとしていることを理解した彼は飛ばされていく中何とか壁に触れ飛ばされていく方向に壁を創りその場を凌いだ。
「いくぞ」
「はい」
側面の壁から足をつけ地面に降り立つと短く交わされた会話の後スナイプの銃弾が怜奈へと向かっていく。
「"
キンッキンッ
それに対し怜奈が"
その隙にスナイプが塀の上へと怜奈の背後を取ろうと移動し再び素早く銃弾を何発か撃ち込む。
が、それより先に怜奈は"
「甘い!!!」
それを狙っていたスナイプは顔を顰めつつ右手に持っていた銃口を逸らしその手に向かって発砲した。
これにはこの場面を見ていた全ての者がやられた、と思っただろう
しかし……
キィンッ!!!
「!!なっ…」
「跳ね返した…!まさか?!」
弾は甲高い音と共に白い手から跳ね返された。
そしてそれに驚く暇もなく、身体を翡翠へと変幻させていた怜奈が飛び出し正面にいたセメントスに拳を撃ち込む。
「グッ…!!?」
「セメントス!!大丈夫か?!!」
「っ……すいませんっ…すぐには立てません…………!!」
吹っ飛ばされたセメントスは転がりながら再び壁を自身の背後に創りそれ以上の距離を空くことを防いだが、撃ち込まれた腹に胃液が込み上げすぐには立てそうにない
怜奈はスナイプがセメントスに顔を向けたその隙に彼の懐に瞬時に移動するもスナイプはなんとか反応し後ろに体を反らし威嚇するように銃弾を撃ち込んでくるので、それらを腕で弾きながら身体をくるりと空中で一回転させるとその体勢のまま叫ぶ。
「"
その言葉に赤髪の少年が現れたかと思うと、それは一瞬で姿を変形させて彼女の両手に二丁の拳銃として収まる。
魔法の合わせ技?!と驚くのも束の間、空中で逆さまになった状態のまま怜奈はスナイプに向かって弾を連射する
「くっ…!!」
「スナイプ先生!ッ」
スナイプはそれを自身も弾を撃つことで相殺しようとするが、弾は普通のものと違い生き物ののような動きをしてこちらを狙ってくるので何発かは防げたがまた何発かは体を掠めてしまった。
セメントスも向かってきた弾に壁を創り防ぐ
怜奈は体勢の整っていない二人に対し小刻みに移動して四方八方から弾を何発か撃ち込むが、何かを感じとったのかその場から瞬時に後ろへと飛ぶ
と、彼女が居た場所に捕縛武器の切れ端が飛んできた。
それにスナイプ達が視線を向けると、戦闘中の音を聞きつけ駆けつけた相澤とマイクの姿があった
「イレイザー!マイク!」
「大丈夫か」
「何とか…」
思ったよりも到着が速い
流石プロヒーロー、迅速な対応だ。と怜奈が予想していた1番最悪な形となってしまったところで、今1番防ぎたい攻撃は
《見つけたぜ怜奈ちゃああああああああああん!!!!》
広範囲にまで及ぶプレゼントマイクの声だ
瞬間ビリビリと空気が振動し鼓膜が高速で震える
何とか正面から聴くことを防いだがやはりその威力は凄まじく近距離に持ち込ませないつもりだろう
そう考える中で今度は相澤が捕縛武器を構えながらこちらに向かってくる
「いくぞッ!」
「ふっ!!」
振り上げられる拳をスレスレで避け下に回り込み足払いを仕掛けるが、やはり体術は彼の得意分野
動きを読んでいた彼は後ろに飛び上がり回避するとその姿勢のまま捕縛武器を巻つけようとしてくるので、身体を捻り避けると死角に入り持ったままの"
《させねぇぜエエェエェエエエエエエエ!!!》
「っ!!!」
それをすかさずマイクの声が向かってくるのでその軌道から逃れようと飛び退くと今度はスナイプの銃弾とセメントスのコンクリートが同時に襲ってくる。
弾は相殺しコンクリートはそのまま垂直に登ることで回避する。
ここはやはり、遠距離攻撃を仕掛けるマイクからどうにかしなければならない。
セメントスの壁を利用し相澤から姿を隠すと真正面にいるマイクに向き直る
「─────"
怜奈が右手の人差し指を口元に当て、静かにというポーズをとると、一瞬にしてマイクの声
音を奪い取った
「?!!!」
「"
「?!マイク!」
自身の喉元に手を当て困惑するマイクに怜奈が"
異変に気付いた相澤がこちらに移動してくるも、その前に"
「しまっ…」
「"
スナイプもマイクと同じように拘束すると再び捕縛武器が飛んでくるのをバク転で避ける。
「やっぱ速いな…んじゃま、手数勝負しようかっ!!」
「ふッ!」
向かってくる相澤に怜奈は彼の真正面から身体を横にずらしその腕に手刀を振り上げたが、落とす前に相澤が個性を発動させ怜奈の変幻を解いてしまった
これでは威力が足りなくなるため手を取られる前にと上体を後ろに反らし相澤の肘から逃げると、反らした際に掴んでおいた捕縛武器の切れ端をグッと引き遠心力を利用してするりと彼の股の間の隙間から身体を滑り込ませる
「何っ…グッ?!」
「ハァッ!!」
予想外な対応に一瞬動揺を表した相澤に怜奈は捕縛武器を引いて彼の身体を引き寄せると腰目がけて後ろから回し蹴りをキメる
素手の攻撃では男女差等などもありパワーでは敵わないため威力の強い足技の方が効く
ふらついた相澤に怜奈は
すると上から抜け出すことを予想していたのだろうか、出てきた怜奈のさらに頭上に相澤は捕縛武器を使い電線からぶらさがっており、出てきた怜奈の姿を目に映す
咄嗟に個性を発動させようとしたがそれよりも前に相澤が個性を発動させた
相澤は個性を発動させたまま足を振り上げ怜奈はその早さに反応して両腕をクロスしてその蹴りを受け止めるが、彼は一度足を離しぐっと電線に引っ掛けたままの捕縛武器を引っ張りその反動を利用して今度は二撃連続で足を振り落とす
「っ!!!!」
そのあまりの威力にバチィッとクロスしていた腕が弾かれ肩に勢いよく相澤の踵がヒットする
電流が走るかのような痛みに肩に思わず手を当てるが相澤は構わず何度も攻撃を打ち込んでくるのに、怜奈は軽い身のこなしでそれらをひらりと躱すが避けているだけでは戦況は改善されない
「怜奈、お前は確かに強力な個性を持ち素の身体能力も高い…が、やはり個性を発揮できないのは致命傷だ」
「っ!!」
「セメントス!!」
「はい!!」
痛む肩を抑え相澤に見られているため個性を発動できない状態で彼の体術を躱し足技等で応戦していた怜奈だったが、一瞬の隙を取られ相澤の捕縛武器によって縛り上げられてしまう
それに相澤がセメントスに指示を出すと、彼は怜奈の背後に支柱を伸ばしその身体にセメントを巻き付けることで動きを封じた
「ッ…」
「マイク………抑え目にな」
「…………ごめんな……怜奈ちゃん」
それでも抜け出そうとした怜奈に、先程移動した時に解放しておいたマイクに相澤が声をかけると、彼は辛そうに小さく一言そう言ってから声を真正面から怜奈にぶつけた。
それに怜奈の瞳が見開かれるが、直ぐに瞳は閉じられがくりと首が落ちるのに伴い少量の血が彼女の耳から流れ落ちた
完全に気絶した様子に相澤とマイクがぐったりとしている怜奈に真っ先に駆けつけ、スナイプの捕縛を解いたセメントスも彼と一緒に駆け寄る
「チッ…!!おいマイク!!手加減しろって言っただろうが!」
「わ、悪ぃ…怜奈ちゃんに向けて使うなんて考えたこともなかったから、加減が難しくってよォ…!!」
「直ぐに保健室に運びましょう!」
「ああ、取り敢えず捕縛を解いて…」
相澤がマイクに向かって怒鳴り、マイクは真っ青に顔を染めながら泣きそうになっていて嫌われる……やばい……と嘆いている横でスナイプとセメントスが捕縛から解こうと手を伸ばす
「ああっ!惜しい…!!」
「やっぱ、4対1は……」
「怜奈ちゃんでも無理だよな…」
控え室でも彼女の猛追に興奮したように声援を送っていたが、どこか分かっていた結果にそれぞれが顔を俯かせる
「かの者達の身体を沈めよ "
瞬間ズンッと苦しいぐらいの重力が四人に襲いかかり、彼らの膝が地面に縫い付けられたかと思うと数秒で身体全体が上からの重力に押さえつけられた
「え、何?先生達どうしたの……?」
「わかんねえ…いきなり地面に倒れたぞ?!」
「いえ…あの動きは倒れたと言うよりも地面に"縫い付けられている"と言った方が正しいですわ…!」
「そんな、なんで急に?」
「怜奈ちゃん、は気絶してるっぽいし…」
視線を動かすことも出来ないほどの圧力に、地面に沈められた四人だけでなくモニターを見ていた者達もいきなり地面に縫い付けられた彼らの姿に何が起こっているのか全くと言っていいほど分からない
確かに怜奈は支柱に縛り付けられ気絶しているが、四人が聞いた鈴のような声はたしかに彼女のもので…
「な、んだ……これは……!!」
「!!イレイザーっ…お前、影、がっ……!!」
相澤がそう零したところで、ズッ………と彼の影が動き出す
もちろん相澤本体は動ける状態ではない。影は独りでに動き、遂には完全にその体から離れた
それを顔を横に固定されているマイクが小さく声を上げて反応すると、ぶわりと影が広がり、その正体が姿を現す
「良かった……上手くいって…」
ガチャンッ
影から抜け出した人物──怜奈が相澤の手にカフスを付けると、その他の三人にも影によってカフスがかけられた
それと同時に響き渡るは、条件達成のアナウンス
残り時間は5分19秒
条件達成のアナウンスが流れたところで、怜奈は乱暴にしてごめんねと声をかけながら重力から四人を解放するが、彼らは一体何が何だか…と言ったふうに半ば放心状態だった
「え?え?じゃ、じゃあこの怜奈ちゃんは…?」
頭の上に幾つもの疑問符を浮かべたマイクが支柱に縛り付けられたままの怜奈と影から現れた怜奈を交互に指さし混乱気味にそう問いかけてきたのに、怜奈はにこりと笑いかける
「"
その瞬間、縛り付けられ気絶していた怜奈はしゅるりと捕縛されていた中から煙のように抜け出し、怜奈の手元までくると何回か旋回した後一枚の鏡となった
「え…ぇぇぇぇええぇぇぇぇ?!!」
「つ、つまり……今まで俺達が闘ってたのは…」
「か、がみ…?」
「うん」
今回の試験での怜奈の最大の課題は相澤だった
自身の個性を制御されてしまえばまず勝ち目はないし、かと言って真正面から切りこもうものならあのようにしてやられていたのは明白
そこで怜奈は"
「私の姿が見えない限り、消太先生は私の個性を消すことは出来ない。だから私は"
「…それなら何も奇襲をかけずにそのまま"
「でも消太先生が個性をかけているのに消えない、とわかったら戦っている私が偽物だとわかっちゃうでしょう?それなら一度油断させて奇襲を仕掛けた方がスムーズにいけると思ったの」
「なるほど……」
「つまり自分達は、まんまと術中に嵌ってたって訳ですね」
怜奈からの種明かしに四人はカフスを解いてもらいながらはぁ…と息を吐き出す
「でも怜奈、血を流すのはやりすぎだ…」
「ほんとそれ!!!もう俺死のう…ってなったからね!!?」
「けど偽物だってわかってホッとしましたよ」
「怜奈に対して攻撃はしていないからな…」
「完全に一本取られたよ。短時間であれだけ高精度の策を練った上にあの戦況の先読みは十分実践で活用できるぐらい見事なものだった。また個性を合わせて使ってたり能力の幅が広がってたしな…今回の試験文句なしだ」
それぞれが安心した様子で、最後相澤が講評を述べ怜奈の頭へいつものように手を伸ばしたのでマイク達も同じように頭を撫でようと手を伸ばした
が、
スカッ
「「「「…………………え?」」」」
「…………あっ」
その手は見事に空振り思わず目を見開けば、避けた本人である怜奈も目を瞬かせる
数拍置いてから状況を理解した怜奈が手を振りながらあわあわと避けてしまった理由を説明する
「あ、え、えっと、さっきまで闘ってたから条件反射というかなんというか…ご、ごめんね?わざとじゃないの!!」
が、わざとではないにしろ彼女からの初めての"拒絶"とも言える動きに、四人にその声が聞こえているはずもなく
バターーーーーーーーーンッッ!!!!
彼らは一様に顔を真っ青に染め上げ、その場に勢いよく直立のまま後ろに倒れ込んだ
「えっ?!せ、先生!!?」
「もうダメだ……嫌われた…GAME OVERだ…」
「…………死のう」
「あそこで撃たなければ…あそこで……」
「溶けてなくなりたい………」
「し、しっかりして!!誰かーー!!」
その後教師達が駆けつけ倒れてしまった四人を運んだが、その間にも彼らはブツブツと絶望を唱え続けまた暫くの間この時のことを思い出し顔を青褪めさせるのだった
(うっ、うっ……怜奈ちゃ〜ん……)
(うんうん、ここに居るからねマイクお兄ちゃん)
(怜奈…嫌いにならないでくれ…)
(大丈夫だよ消太お兄ちゃん、私お兄ちゃん達のこと大好きだから、ね?)
(ちょっと!!私の怜奈にくっつきすぎだよ!!マイクは背中から離れて!相澤くんは膝から頭どかして!!)
((嫌です))