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ステインの事件から数日
その後緑谷達も無事退院し、職場先へと戻り1週間の職場体験が終了した。
「本当に、お世話になりました!」
「いやいや、逆に俺たちの方が良くしてもらっちゃって…」
「ほんと、ありがとね!」
「いえ、皆さんのお役に立てたのなら何よりですっ」
「「「うわびっくりした天使がいる」」」
保須から帰ってきて、再び本拠地に戻った先のサイドキックの人達に帰り際怜奈が挨拶をして回れば、彼らは揃ってこちらこそありがとうと笑顔で言ってくれた。
ここにいる間事務所の掃除や今までの食事を作っていたりしていたこともあるが、何より怜奈が常ににこにこと甲斐甲斐しく身の回りのことをやってくれた事が大きいだろう。
「エンデヴァーさん、お世話になりました。」
「卒業したら俺の事務所に来るといい!!待っているぞ!!」
「黙れクソ親父」
「何故だ焦凍ォオオオ!!!」
「どうどうどう」
「じゃあねー!」
「気をつけてね!」
早く帰るぞと轟が荷物片手にぐいぐいと怜奈の背中を押すのに苦笑しながらも再び頭を下げると、荒ぶるエンデヴァーを抑えながらサイドキックは皆手を振ってその姿を見送った。
それから無事新幹線に乗り込み家までの帰路を辿る
「ったく…ほんと懲りねぇな、アイツ」
「焦ちゃん!お菓子いっぱい貰ったから食べよ!」
「…………すげえ量だな…」
轟が先程のエンデヴァーを思い出し吐き捨てるが、怜奈は大量に持たされたお土産という名のお菓子の一部を手に取り、顔のそばまで掲げて一緒に食べようと言ってくるのに、その量に驚きながらも轟の頬が自然と上がる。
「にしてもの多すぎねぇか?これ」
そう言いながら自分達の前の席に置いてある菓子の山を見て、どう持って帰るんだ…と思っていると怜奈はふふっと笑った
「でも嬉しいね!お菓子いっぱい!」
お菓子山分けだね〜と無邪気に言いながら手に取ったお菓子の袋を開けて自分に差し出してくれる怜奈に、この菓子の半分以上を用意したであろう父に甘いのは得意ではないが少しだけ感謝したのは秘密だ。
(わ、このお餅色んな味がある!焦ちゃん何味?)
(これは…林檎だな)
(私蜜柑!半分こしよう?)
(ふ…いいぞ)
──────────────
───────────
それから駅のホームで轟と別れ、家への道をゆっくりと歩く。
この一週間、ステインに出くわしたり、警察署長と直々に話をしたりと職場体験の内容から少しズレてしまったが
その後はプロの現場を間近で見たりアドバイスも沢山貰えたりと有意義な時間を過ごし、この期間随分と濃かったがいい経験にもなったな、と前向きに考える。
…が、やはり気になるのは今後ステインの思想に感化される人達の出現
理由はどうであれ、ヒーローに対する彼の信念は本物
動画からも感じる恐ろしいほどの気迫………あのカリスマ性にあてられる者は少なくはないだろう
社会全体に大きな疑惑という名の歪みを残した後…その綻びは、いつしか大きな溝となり影響を及ぼしていく。
自分が今できることは何も無いが、せめて自分の言った言葉が、誰かの胸に届いていることを願うばかりだ
そこまで考えていると、もう家のすぐ側まで来ていた。
ちょっと考え込みすぎたかと思いつつも、マンションのエントランスをぬけ自分の部屋まで上がっていく。
ゆっくりとスライドし開けられたエレベーターの扉に、お菓子の入った袋をよいしょっとという掛け声とともに肩に掛け直し、玄関の扉に手をかけると鍵のかかっていない様子にオールマイトがいるんだと理解し、そのまま扉を開ける。
「ただいま〜」
ドサッとお菓子の袋と荷物を置き、靴を脱ごうと足元を見ると、オールマイトの靴の他にもう二足靴が置かれている。
見覚えのあるそれに首をかしげながら、靴を揃えてスリッパを履こうと手にかけた瞬間
バアァアアンッッ
けたたましい音とともに扉が開けられ、反射的にそちらに視線を向けると2つの影がズドドドドドッとこちらに向かってかけてくるのが見えた。
「「怜奈ッッ/ちゃんンンン!!!」」
「え、パーパとマイクお兄ちゃん…?わ、ま、待って危ない…!」
その勢いの良さに慌てて待ったをかけるも、2人は聞こえていないのか顔から色々と出しながらその勢いのまま突っ込んでくる。
それを受け止めようと両腕を広げた時、自身の腰あたりにシュルシュルッと布が巻き付けられる。
それに声を上げるまもなく、布がしっかりと自身に巻かれたかと思うと、突撃してくる2人の頭上を飛び越えその布を巻いたであろう本人の腕の中にぽすんっと綺麗に収まった。
どんがらガッシャーン!!!
「「ぶっへッ!!!」」
結果、突っ込んでいったオールマイトとプレゼントマイクは置いてあったお菓子の袋に顔からダイブし、玄関一面にお菓子が散らばった。
「ったく…そんな勢いで突っ込んで、怜奈が怪我したらどうするんですか」
「消太お兄ちゃん!」
怜奈に布を巻き付け、避難させた彼女を姫抱きにしている相澤に、怜奈が目を瞬かせながら名前を呼べば、相澤は巻き付けていた布を外し大丈夫か?と聞いてくるので何ともないと答えればほっと息を吐きだし、優しく怜奈の身体を床につけさしてくれる。
「職場体験での怪我は?ないのか?」
「うん、大丈夫」
「ほんとか?痛いとことかは?」
「ほんとだよ、擦り傷ももう治ったし…」
じろりと視線を向けてくる相澤に両腕を左右に広げくるりと回りね?と笑えば、彼は両手でわしゃわしゃと頭を撫でてくる。
「わっ!ぐしゃぐしゃだ〜っ」
「心配したんだぞ、ほんとに…」
それに笑い声をあげれば、相澤も口元に小さく笑みを浮かべながら最後にぽんぽんと頭を撫でる。
…と、廊下から2つの影がゆらりと揺れた
「オイイイイイイイ!消太テメェェ!!1人だけおいしいところ掻っ攫いやがって!!!」
「ひどいじゃないか相澤くん!!私が1番初めにハグするって決めてたのに!!!」
2人は血涙を流す勢いでそう言ってくるのに、相澤は心底うっとおしそうに遇う。
ギャーギャーと騒ぐオールマイトとマイクに、1週間という期間も離れていなかったこともあり、久しぶりだという感覚が湧いてきて思わずぎゅうっと飛びついた
「「!!」」
「ただいまっ!」
2人の腕に抱きつき思いっきり笑えば、彼らは1度顔を見合わせ、それから破顔して勢いよく小さな体を抱きしめ返した。
「「おかえり!!」」
───
────────────
─────────
リビングに入り、お土産のお菓子の量に驚かれつつ着替えのために1度部屋に戻りTシャツと短パンに履き替え再びリビングに行くと、何やらマイクがチラシを片手に電話をしている
「どこに電話してるの?」
「ありゃ多分ピザ屋だな」
「怜奈も疲れているだろう?たまにはデリバリーなんかもいいかなって」
つまり疲れている怜奈にご飯を作らせるのはまず有り得ないし、かと言って食べに行くために連れ回すのも…と言うことで、結果デリバリーというのに落ち着いたらしい。
「ごめんね、気を遣わせちゃって…」
「そんなこと気にするな。」
「そうだよ」
「おーい、飲み物何にするー?」
注文がし終わり、およそ30分ほどかかると言いながらマイクが椅子に腰を落ち着かせるのにお礼を言うと、さて…と相澤が口を開く。
「今回の職場体験…話は一度聞いているが、大変だったみたいだな…」
あの事件が起こったその日、オールマイトと相澤には内容をメールで告げており、また詳細も既に電話で連絡済みだ。
聞けばオールマイトはグラントリノからも話を聞いているらしい。
「うん……」
「動画が既に出回ってしまっているのはあれだが、本当に無事でよかった。」
「っとに!ヒーローの指示も聞かず避難しないで、俺の許可無く怜奈ちゃんを撮影するたァとんでもない馬鹿がいたもんだぜまったく!!」
「ステインの怜奈に対するあの忠誠心…わからなくはないが、どんな輩が出てくるかわからないからね、しっかり目を光らせておかないと」
「ええ」
「……あの、……」
そう話す3人に、怜奈が遠慮がちに声をかけ彼らの視線を集める。
どうしたのかと視線を向けてくれたのに、一瞬たじろきそうになるが若干俯きながら声を出す
「私……あの人を…救えたかな………」
あの人、というのは恐らくステインだろう
その言葉に、彼らの間に少しの"間"が広がる
怜奈は封が切れたように、あの時の光景を思い出しながら、自分は正しかったのだろうか、あの行動はあれで良かったのかと疑問に思っていると素直に言葉にした。
「あの時、この人をこのままにしちゃダメだって思って行動したけど…かけた言葉が、ステインを救えたかどうかは、分からなくて……もし、まだ苦しんでたら…どうしよう……」
両手を膝の上で握りながら言った怜奈の顔には、少しの後悔と悔しさが滲んでいて、ただ思うままに言った自分の言葉が、彼を救えたかどうかは分からないという
僅かに肩をふるわせる怜奈に、正面に座っているオールマイトが顔を上げさせる。
オールマイトの声におずおずと顔を上げた怜奈に、二本の長い腕が伸びその頬をフニっと上に上げさせた
「ふにっ」
突然のことに思わず怜奈が目を白黒させていると、オールマイトは頬に添えている手はそのままに話し出す
「確かに、心を救うことは簡単な事じゃない。特に今回のステインは、並大抵のことでは動かすことは出来ない。」
「ッ………」
平和の象徴から聞く言葉に、たくさんの人々を救ってきたからこその言葉に、ぐっと唇を噛み締める。
「……………だが、その言葉が届いていない奴に、あんな行動はさせられない」
「え………?」
やはり自分では…と思っていたら繋がれた言葉に、弾かれたかのように視線を向ければ、サファイヤとダイヤモンドがぶつかる
「…ステインの信念は正直グサリとくるものがあった。だがそれ以上に、私は怜奈の言葉と思いに心が震えたよ」
─────その代価に自分の未来を賭ける!!!
「っ……パーパ……」
「悪をも救おうとするその姿……かっこよかったぜ」
最後、悪戯に片方の口角を上げながら頬に添えていた片手でグッと親指を立てるオールマイトに、心の中にあった引っ掛かりがぽろりと落ちていくのを感じた。
「ほんと、怜奈ちゃんってば真っ直ぐで優しいんだもんな…」
「少し優しすぎる気もするけどな」
やれやれと言った風に相澤とマイクは肩を下ろしているが、どこまでも優しいその表情にもう片方の手で頭を撫でてくるオールマイトの手をぎゅっと握り、ありがとう、と花を咲かせた。
救えるかじゃない、救うんだ
自分の中のヒーローに、そう語りかけて
(てか1週間も怜奈ちゃん不足でもう限界!!はいっギューーー!!!)
(ぎゅーっ)
(お前さっきしてただろうが、代われ)
(わぁBODY!!暴力反対!!!!)
(あーー!!ずるい!!私も私も!!!)
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