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次の日の朝
時刻が8時を回った頃に怜奈は目を覚ました。
いつもより遅い起床時間にふわぁと欠伸をもらしふわふわする思考のままベットの上で上半身を起こしぐぐっ…と伸びをする。
昨日は簡単な食事をすませ風呂に入るとすぐに眠ってしまったためオールマイトには会っていないのだが、もう出てしまっただろうかと寝巻きのままリビングの扉を開ける。
そこにオールマイトの姿はなく、やはり出てしまったかと肩を落とすとダイニングテーブルに1枚紙が置かれているのが目に映る。
手に取り文字を辿れば、オールマイトの置き手紙だった。
怜奈へ
おはよう!昨日はお疲れ様
よく眠れたかな?
すまないが今日も出勤しなければ行けなくてね、傍に居てあげられなくてごめんよ…
食事は途中で買うから、心配しないでおくれ
ゆっくり体を休めてね
パーパより
隅の方に描かれたうさぎ?らしきものにふふっとこぼれる笑み
食事のことは正直心配していたのでほっとしたが、どう過ごすかとうーんと腕を組みながら考える。
家の掃除とかをしてもいいし、今日のご飯は凝ったものにしようかな?と思ったが、あ、といつかの約束を思いだす。
(迷惑じゃなければいいんだけど…)
そう思いながらも、ある人物へとコールを鳴らした。
時刻が午前11時をまわった頃
怜奈はマンションの一室である玄関の前にいた。
暫く来ていなかったので場所を覚えているかどうか不安だったが、表札の名前を確認してほっと息を吐く。
呼び鈴を鳴らそうと指を浮かせると中からバタバタという音とともに話し声が聞こえた。
それに思わず指を止め、どうしたのだろうかと首を傾げるとだんだん声が近づいてくる。
"やっぱり僕迎えに行ってくるよ!"
"そうね、心配だわ!"
"合流できたら連絡するからっ"
そしてガチャりと玄関の扉が開かれるのに、同じ形をした四の目と視線がかち合う。
相変わらずそっくりだなぁと妙な安心感に包まれ、微笑みながら挨拶をする。
「「怜奈ちゃん!!」」
「みっちゃん、引子さん、こんにちは!」
すると緑谷と引子はあわあわと慌てながら体を後ろへと追いやりどうぞどうぞと彼女を招き入れる。
荷物持つよ!と言ってくれた緑谷の言葉に甘え先程立ち寄ったスーパーの袋の2つのうちの1つを渡すが、もう片方もひょいっと持ち上げられてしまった。
それに今度は怜奈が慌てるが緑谷は全然重くないからと言い、引子も甘えていいのよ!と怜奈の背中を押した。
そして移動したリビングでは、勧められたソファに緑谷と座ると、久しぶりねっ!とテーブルを隔て前に立った引子は瞳に涙を浮かべながら嬉しそうに笑う。
泣き虫なのもそっくりだなぁと再認識してそうですね、と肯定する
「やだわ敬語なんて!そんなの使わなくていいのよっ」
「そうだよ怜奈ちゃん」
「でも…」
「あなたは私の娘みたいなものなんだから、遠慮しなくていいのよ」
彼女もまた、辛い思いをした怜奈をずっと気にかけていたうちの1人だった。緑谷から怜奈が入学したことは彼女自身彼から聞いて知ってはいたが、こうして無事な姿が見れたことが何よりも嬉しいのだと目尻に溜まった涙を拭いながら柔らかな声音を繋いでくれる
彼らの無垢な優しさに、胸の内にほわほわとした言いようのない心地良さが広がっていく。
「それにしても怜奈ちゃんますます可愛くなって…体育祭で姿を見た時なんておばさん気絶しかけちゃったもの!」
「やだなあ大袈裟だよ〜」
「ほんとよ!!出久もよく家で可愛いって……」
「わああああ!お、お母さん!!!!」
ところ変わって、台所に怜奈は立っている。
さっきの電話は、もうお分かりだろうがもし良かったら家に行ってもいいだろうかという内容だった。
入学時また家に来てほしいと言ってくれた緑谷にもしかしたら社交辞令だったのかな?とも考えたが、電話をもらった緑谷は嬉しさと興奮のあまりベットから転げ落ちていた。
そして緑谷は良かったらお昼ご飯を一緒に食べないかとも言ってくれたので、なら材料を用意していくね!と言いスーパーによったのだった
今日怜奈ちゃんが来る…!とソワソワといきなり起きてきて落ち着きのない息子に不思議に思った引子が理由を聞くと怜奈が来るというのに、また彼女も息子同様慌てふためいた。
そして迎えた昼、台所に立つ怜奈に緑谷はもう死んでもいいかも…と落ちてしまいそうになる頬をなんとか取り繕う
怜奈ちゃんと台所に立てるなんてと引子は嬉しさからまたもや涙が出そうになるが、一緒に料理をしていく中で嬉しさの方が上回り、最初から最後までずっと笑顔のままだった
そして彼女が買ってきた材料は、カツ丼だった。
緑谷の好物に彼の瞳がわかりやすく輝くので、引子と目を合わせて笑い合う。
「わ、カツ丼だぁ…!」
「みっちゃん好きだったよね!」
「怜奈ちゃんてば料理上手ねぇ!おばさんただ材料切っただけだもの!」
「え、じゃあ味付けは怜奈ちゃんが…?」
「あはは、お口に合えばいいんだけど…」
「嬉しいよ!いただきます!」
怜奈ちゃんの手作り…!と緑谷は感動しながら1口食べれば、再びその味に感動する。
「美味しい!すごい美味しいよ!」
「ほんとっ!美味しいわ!」
2人が同時に言うのに、怜奈は照れたように笑い良かったぁと安心したようだった。彼女が作ってくれたカツ丼は本当に美味しくて、緑谷は思わずパクパクと食べ進めればあっという間に完食してしまった
「ごちそうさま!ほんとに美味しかったよ!」
「ほんとにね!また作ってほしいくらい」
「私でよかったらいつでも作るよ!」
さらに引子が買ってきたケーキを3人で仲良く食べ終われば、時刻は午後3時をゆうに超えていた
思ったよりも長居してしまったと怜奈が慌てて謝れば彼らはぶんぶんと首を勢いよく振る
「そんなこと気にしなくていいのよ!私こそごめんなさいね、すっかり楽しくなっちゃって…」
「私もすっごく楽しかった!またお邪魔してもいい…?」
「もちろんだよ!ね!お母さん」
「ええ、毎日来てもいいのよ?」
「それは来すぎかなぁ」
じゃあそろそろ帰りますと言う彼女に緑谷が慌てて送るよと財布をポケットに詰める。
彼女は大丈夫だよ?と言ってくれたがやはり心配だし、緑谷自身もう少し一緒に居たいというのが本音だったりする。
引子はそうよ!と言って後押しをしてくれたので怜奈はじゃあ、お言葉に甘えて…と引子に別れを告げてから緑谷と共に家を出た
「今日はありがとう!すごく楽しかった!」
「僕の方こそ!怜奈ちゃんが家に来てくれるの久々で、すごい嬉しかったよ!!」
「じゃあ今度はみっちゃんが家においでよ!パーパもいるし!ね?」
「…………ぇぇぇえ?!いいのっ?!!」
「もちろんだよ!」
大好きなオールマイトと大好きな怜奈ちゃんがいる空間だなんて…想像するだけでもうなんかいろいろとやばいなぁ!と緑谷が内心荒ぶっている中、コソコソと声が聞こえる。
ん?と耳を澄ませば…というか、そうしなくても異常に感じるこの視線の多さは…と何気なく周りを見渡せば視線がこちらに注がれていた。
何人かは立ち止まり、ねぇあれって…とこちらを指さしている。
それに首を傾げるが、ハッと体育祭か!と気づく。
体育祭が終わったあとは特にトーナメントに参加していた者の認知度がグンッと跳ね上がる。それ故のこの視線か…となぜだか体が見られていると意識するとどうにも恥ずかしくなってきてしまうと緑谷は途端に挙動不審になる
「みっちゃん?どうしたの?」
「へっ?いやっ!なんでもないよ!」
「そう?」
これだけの視線が集まっているというのに、彼女は一切動じていない。それは恐らく普段から見られているので慣れてしまっているんだろう。
………いや、彼女の場合は恐らく気づいていないだけか…と緑谷は思わず乾いた笑いが漏れる。
(なぁ、あの子だよな!体育祭優勝したの!)
「!」
(そうそう!)
(うわ…てかやっぱすげぇ可愛くね?)
(オーラやべえな!)
(声かけるか?)
(やめとけって!)
やはりというかなんというか、怜奈はただでさえ人目を引くというのに、体育祭によりさらに注目を浴びてしまっている。
それにもやもやとしながら歩いていると、いきなり手が握られる感触がした。
それに思わず顔を真っ赤にしながら驚けば、手を繋いだ本人である怜奈がにこにこと笑いながらこちらをのぞき込む。
「どっどうしたの?!怜奈ちゃんっ」
「なんか、小さい頃に戻ったみたいだなって!」
「え…」
「ほら、こうして手を繋いで帰ったりしたよね!」
そうだ。帰る時は緑谷が転ばないようにこうして手を繋いで帰ったのがきっかけで、それから下校時は手を繋ぐのが日課になっていた。
それを見た爆豪はデクだけなんてダメだ!!と負けじと彼女のもう片方の手を握ったため、こうして横一列に手を繋いで3人で一緒に帰っていた。
それを思い出して、緑谷は無意識のうちに笑顔がこぼれる。
「ありがとう、怜奈ちゃん」
「ん?私何かしたっけ…?」
「いいから!」
胸の中のもやもやが晴れていくのに、緑谷は赤らんだ顔のまま笑顔を浮かべるのだった。
(あ、怜奈ちゃん。家まで送るからね!)
(ええっそれは悪いよ?)
(ダメだよ!体育祭の件もあるし何があるかわかんないんだから!!)