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体育祭が終わり、最後に教室へと戻れば翌日と翌々日は休校となると説明を受ける。
今日の競技などを見たプロから指名があるので、教師達がそれらを集計するためだという。
確かにそれならば2日はないと捌けないだろうと納得する。
一言二言相澤から言葉をもらい、では解散と言われ体操服の袋を鞄の中に詰め込む。
すると八百万から声をかけられるので横に顔を向けるとA組の面々が自分の周りを取り囲んでいた。
「ほ?」
「怜奈さん!体育祭優勝おめでとうございます!!」
「!」
「怜奈ちゃんおめでとうー!!」
八百万が初めに怜奈の手を取りながら言えば、葉隠達もおめでとうと言葉を投げかける。
はじめは固まってしまったが、その言葉が脳に浸透していくと顔が緩み、ありがとうと返す。
彼らとて歯痒い気持ちや悔しい気持ちもあるだろうに、こうして賞賛の言葉をくれるのに優しい人ばかりだと改めて感じる。
「本当凄かったぜ!あの光のやつとか!!」
「砂の猛獣も!!」
「盾で会場中守るってすげぇよ!!」
「女神姿もっかい見たーい!!!」
「今度一緒に鍛錬をしないか?」
「ズリーぞ障子!!!」
「俺も俺も!」
「つか表彰台全部うちのクラスとかやばくね?」
「うちのトップスリーだな!!」
思い思いに言葉を投げかけてくる彼らに相槌や賛同、了解を返していれば轟が声を掛けてくる。
それにどうしたのかと聞けば彼は話したいことがあると言うので、わかったと言って立ち上がる。
「えー!俺も怜奈ちゃんと帰りてぇ!!」
「轟ずるーい!!!」
「ごめんね、また今度一緒にね!」
瞬間上がるブーイングに怜奈が両手を合わせ苦笑しながら次の約束を取り付ければ上鳴や芦戸達はしぶしぶその場を譲った。
轟が前に進むのに続こうとした時、緑谷に駆け寄る。
「みっちゃん、腕…おばあちゃんから聞いたよ?」
「あ、怜奈ちゃん…」
リカバリーガールのもとに行き緑谷の怪我のことを聞けば無理をしないようにと、これ以上は治療しないと言っていた。
それについて緑谷は自分への戒めだとじっと自分の手を見つめながら言った。
その表情をみて、怜奈は柔らかく目元を緩めるとふわりと緑谷の手に自分の手を被せた。
「え、怜奈ちゃんっ?!」
「あなたが最高のヒーローになった時、」
怜奈の白く柔らかい手に緑谷が顔を赤らめながら慌てたように声を上げるが、構わず言葉を重ねる
最高のヒーローと言った怜奈の言葉に緑谷が息を呑む
「その時は、私に治させてほしい。新しいあなたに、生まれ変われるように」
「!!」
「何て、私でよければなんだけど…」
最後にそう言って頬を掻きながら照れたように笑う怜奈に緑谷は目を見開く
「やっぱり私じゃダメかな…?」
「そっそんなことないよ!!」
眉を下げながら言った怜奈に思わず手を握り返し力強くいえば怜奈はぽかんとした後再び笑みを咲かせた。
「じゃあ、約束ね!」
「うん!ありがとう怜奈ちゃん!!」
その後緑谷は勢いで近づいてしまった距離と握った手に顔を真っ赤にさせながら慌てたのだった。
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「今日はお互いお疲れ様だね」
「そうだな」
怜奈と轟は荷物を持って校舎の裏にあるベンチに座っていた。
轟は帰りながら話そうとも思ったが、怜奈がせっかくならゆっくり話そうとこの場に誘ったのだ。
この場には相澤と共に餌を与えている猫が何匹かいて、今もそのうちの1匹の白い猫が気持ちよさそうに怜奈の膝の上で丸まって眠っている。
その猫を撫でながら轟に話したいことって?と優しく内容を促せば、轟は猫の耳を優しく撫でていた手をとめ、視線をしたに向ける。
怜奈はそれに何も言うことなく、ただ彼の言葉を待つ。
すると彼女の優しく柔らかい雰囲気に、轟はぽつぽつと言葉を繋げていく。
それらはところどころ朧気で、まとまっていない部分も正直あったが、怜奈は1回1回丁寧に相槌を打ち轟の言葉をするすると引き出す。
今まで自分は父親の憎しみで視野が狭かったこと
父親の存在を完全否定するために今まで左側を使うのを拒んでいたこと
怜奈の言葉に何度も救われていたこと
一つ一つ確認するかのように言う轟は、小さな子供のようだった。
「今は、すげぇ体が軽いっていうか、今までとは違うんだ。」
「…そっか」
「これも全部、怜奈と緑谷がごちゃごちゃを全部ぶっ壊したからなんだよな…」
「あはは、それは否めないかなあ」
「…ありがとな」
「焦ちゃん…」
「怜奈がいなかったら、俺はどうなってたか分からねぇ
お前がいてくれたから、俺はここまで来れたんだと思った。」
彼女の存在と言葉がなければ、自分はもしかしたら危ない道にいたかもしれない。感謝してもしきれないとあらためて言葉にして伝えれば怜奈はふわりと轟の頭を撫でる。
これをやられると、どうしてか言いようのない感情がこみ上げてくるからいけない。切ないような、安心するような…だがそれが、とてつもなく心地がいいのだ。
「…焦ちゃんは今まで、憎しみという私情に蝕まれて、理想のヒーローを見失っていた。」
「っ…」
その言葉に情けなくなって思わず俯くがでも、と言葉を繋げた怜奈にゆっくりと目線をダイヤモンドに向ける。
「頭が間違うことがあっても、心は間違わないんだよ」
「ッ!!」
「あなたの心は、間違ってなんかいなかった…だから今、この場にいるんだよ。」
轟はおもむろに自分を撫でていた怜奈の手を掴むと、そのまま体を引き寄せて怜奈の肩口に額を押し付けた。
「っ怜奈…ありがとう……………」
「うん」
自分の肩が温かく濡れていくのに、怜奈は優しく彼の頭を撫で続けた。
それから暫くそうしていたのだが、膝の上にいた猫が無理やり間に入り、轟の頬に猫パンチを食らわせたことによってその場は強制的に終了させられたのだった。
(しょっ焦ちゃん大丈夫?!)
(…………………痛てぇ……)
(ニャアアアアッ)
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轟の頬を治療している際に彼が母さんのお見舞いに行くという話を聞く。
それにそっかと言い頑張ってねと応援すれば、轟が今度一緒に行こうと誘ってくれるので笑顔で頷く。
自分はこれから少し用事があると言って轟と別れて向かうのは職員室前。
コンコンとノックをして承諾をもらい中に入れば彼らの机にはそれぞれ大量の紙が山積みになっている。
恐らくこれがスカウトのまとめ用紙だろう。
それらに驚いていると軽く紙に埋もれてしまっている相澤がどうしたと心なしか疲れている顔で言ってくるのに、心配しながらも皆に渡したいものがあると伝える。
「渡したいもの…?」
「私たちにかい?」
相澤とオールマイトが首をかしげながら言ったのに周りの職員達も首を傾げると、怜奈は一旦職員室からでてかごを押して再び中に入ってくる。
それを見た彼らがさらに首を傾げるのに怜奈ははいっ!と言いながらその中身を見せる。
「なんだ?…………!」
「こっ、これは……」
「えっとね、お弁当!」
そこにあったのは、プラスチックの容器に入った怜奈特製の弁当だった。数を見る限り恐らく全員分ある。
それに職員達は目を見開くが怜奈はにこにこと笑顔で言う。
「いつも大変だって言ってたから、ご飯食べられないんじゃないかと思って作ってきたの。よかったら食べてほしいな」
この時期になる度に忙しくて飯が買いに行けないとボヤくマイクなどの言葉に入学したら作ってあげたいとずっと思っていたのだという。1度"
迷惑じゃなければ…と遠慮がちに言う怜奈に彼らはとんでもない!と迷惑じゃないと全力で否定する。
「あ!じゃあ朝早起きしてたのって…」
「えへへ、そうなの!」
オールマイトがハッと手を叩けば照れたように頷く。
「わざわざ早起きして…」
「みんなにはちゃんとご飯食べてほしいもん。それにみんなに食べてもらえるなら早起きも全然平気だよ!」
そう言って最後にお仕事頑張ってねと言いながら早々に退出した怜奈に彼らはありがとう!!と言葉を投げかけ手を振ったが、怜奈が扉を閉めた瞬間にだぱっと涙が吹き出した。
何人かは床に崩れ落ちダァンと拳を打ち付けている。
「も"お"本当に天使なのぉ"?!!天使だよなぁ"?!!!」
「こんな、こんなことってぇぇぇぇ」
そのうちの1人であるマイクが叫び、鼻をチーんっとかみながら言うミッドナイトは感動で胸がいっぱいになってしまっている。
「わっわ"た"し"の"、生"ま"れ"て"あ"あ"うん"っっっ」
オールマイトは感動しすぎて最早言っている言葉がわからない。
阿鼻叫喚の今の事態に同じく涙で瞳をうるませ鼻を赤くしている相澤がダァンと机を叩き声を上げた。
「頑張ってくれた怜奈の為に、一刻も早くこれを終わらせるぞ!!!!」
「「「おおおおぉぉぉ!!!!」」」
何としてでも早く終わらせて、体育祭で1位をとった怜奈のお祝いをしてあげなければと、彼らは過去最高の速度で目の前の仕事に取り掛かったのだった。
(うめええぇぇぇえ)
(涙が止まらないいいいい)
(ああああああああぁぁ)
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