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雄英体育祭
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《続いては……侮れぬ身体能力と個性の持ち主だが今回はまだ発揮しきれていないか!ヒーロー科、芦戸三奈!! VS その姿はまさに生きる宝石! 空前の美しき魔法少女! 同じくヒーロー科、神風怜奈!! 》
競技台に立ちプレゼントマイクの説明を聞いていたが、紹介のされ方で思わず苦笑をこぼす。
あんな紹介して、嘘言わなくたっていいのに…
と思っているが、周りはそうは思ってないのが現実であった。
戦闘訓練では行わなかった友人との初の対戦。さっきのマイクの紹介からも聞いたように、彼女の運動神経はまだ計り知れていない部分がある。
そう考えていると切られるスタート。
「ガンガン行くよ!!」
「"
スタートと同時に彼女から飛ばされる酸を盾で防ぎながら今の状況を分析する。
芦戸の強みは優れた身体能力と酸での攻撃による近・中距離戦闘法。
隙を見せれば避けられるかもしくは酸を食らってしまう。
だが、酸が届く距離には限界がある。ならばその間合いに入らせずに遠距離からの攻撃が今のベスト
「戒めの鎖となれ!"
「え…うわぁ!!」
ふわりと芦戸の身体に風が纏われ上空へと浮かび上がる。浮き上がった身体に芦戸が驚きの声をあげるがそのまま競技場から身体がはみ出したところを狙い再び唱える
「かの者を捕らえよ"
すると怜奈の背後に木の精霊を連想させる女性が現れ、両手を横に広げる。と芦戸が浮いている真下の地面から蔓が伸び芦戸の身体に絡みつく。
「なにこれ?!」
《おおっとォ?!!風で身体が浮かび上がった芦戸に、さらに妖精が動きを封じたァ!!!》
《…芦戸の酸は攻撃範囲が限られているからな。風で浮かせて間合いに入らせず、かつ酸が出せないように蔓で手を拘束…無駄がないな》
蔓は芦戸に絡みついたまま、シュルシュルと音を立てながら勢いよく長く伸びていた蔓を短くしていき最後には芦戸の足をゆっくりと地面へとつかせた
「芦戸さん場外!!神風さん 二回戦進出!!」
ミッドナイトの判定が下り、怜奈の勝利を響かせる。
《まさにファンタジー!!芦戸、手も足も出ずに終了!!!雄英初のスカウト枠は伊達じゃねぇ!!》
実況を聞きながら芦戸に絡みついていた蔓を外すと芦戸は悔しそうにこちらに走りよってくる。
「く〜〜!!やっぱり強いね怜奈ちゃん!悔しい!!」
「ありがとう、三奈ちゃん」
「次は負けないよ!!」
「私も負けない!」
負けても明るく話しかけてくる芦戸に同じように笑いかけると、ミッドナイトに促され退場し観戦席に戻る。
その時にちょうど常闇と八百万の試合が終わっていた。
常闇の余裕のある勝利に怜奈は次の対戦相手か…と表情を引き締めた。
「怜奈」
「あ、勝己くん」
「ん」
後ろの通路に立っていると、通路側に座っていた爆豪が自身の隣の席をとんとんと叩く、座ってもいいということかと理解し移動して座る。
座ると同時に優しく頭を撫でる爆豪に彼なりの労いだろうと怜奈は大人しくそれを受け取り、ありがとうとこぼした。
すると後ろから声がかかり視線を向ければ上鳴と瀬呂がいた。
「上鳴くん、瀬呂くん!お疲れさま」
「怜奈ちゃんもおつかれ!」
「怜奈ちゃ〜ん!俺を慰めて!!」
瀬呂が片手をあげながら同様に労いの言葉をかけるが、上鳴はズサァと怜奈の隣に滑り込むように腰を下ろすと慰めてくれと擦り寄る。
「ふざっけんなこのアホ面!!離れろ!!!」
「てか上鳴、お前何ナチュラルに隣に座ってんだよ!!」
「お前らに同情と言う文字はないのか!!」
すかさず爆豪が怒鳴り瀬呂もブーイングを飛ばすが上鳴はギャーギャーと騒ぎ懇願するように怜奈を見つめるので、自分で思う慰め方を実践してみる。
「うん、よく頑張りました!次はもっと力が出せるといいね、上鳴くん」
微笑みながら上鳴の頭に手を乗せ、優しく撫でて言葉をかけると上鳴は鼻血をたらりとこぼしながら天使……と呟き膝から崩れ落ちた。
「俺も一回戦敗退なんで頭撫でてください!!」
「?よしよし、お疲れ様だね」
崩れ落ちた上鳴を退かし今度は瀬呂が光の速さの如く頭を差し出すので、上鳴が崩れ落ちたのに疑問符を浮かべながらも同じように彼を撫でると上鳴と同じく天使……と呟きながら胸を抑え崩れ落ちた。
2人を見てどうしたのかと保健室に連れていった方が…と思ったが、爆豪がほっとけ。と呟きながら怜奈
の肩を抱くので見上げれば、その顔は不機嫌そうに顔が歪められている。
「どうしたの?勝己くん」
「……………俺は……」
まるで仲間はずれにされて拗ねているような物言いに、思わず目をぱちぱちとさせるがすぐに言わんとしていることがわかりふふっと小さく笑みがこぼれる。
「勝己くんは、頑張ってだね」
「………俺だけ見てろよ」
「私はみんなを応援するよ」
爆豪のツンツンに見えるが柔らかい髪を撫でれば、浮かんでいた眉間のシワが消えていく。
次いで言われた言葉をやんわりと返すと爆豪は少しだけ不満そうに小さく舌打ちをするも、撫でられる手が心地いいのかその顔は穏やかにも見える。
「もうすぐ出番だよ、勝己くん。頑張れ」
「…ちゃんと見とけよ」
「もちろん」
時間を見て頭を撫でていた手を離し、控え室への移動を促すと爆豪は競技台での切島と鉄哲のクロスカウンターを視界に入れてから立ち上がり控え室へと歩を進める。
爆豪と入れ替わりで常闇、緑谷、飯田が戻ってくるので声をかける。
「3人ともお疲れ様!」
「ありがとう怜奈ちゃん!」
「お疲れ!神風くんの試合、モニターで見ていたぞ!見事だった!」
「…そこの2人はどうした?」
「さっきいきなり寝ちゃって…疲れちゃったのかな…?」
いまだに幸せそうに椅子に寄りかかっている上鳴と瀬呂に戻ってきた3人に事情を説明すると、ああと理解したように苦笑してうなづいた。
「「「(羨ましい…………)」」」
「?」
とりあえずこのままにしておこうと2人を席に寝かせ、緑谷が誘うので隣に座らせてもらう。飯田もその横に座り常闇も緑谷の隣へと席につく。
落ち着いたところで一回戦最後の試合のアナウンスが流れる。
《中学からちょっとした有名人!! 堅気の顔じゃねぇ、ヒーロー科、爆豪勝己!! VS 俺こっち応援したい!! ヒーロー科、麗日お茶子!》
私情がだだ漏れのアナウンスに思わず笑いが零れる。
だがその後の試合はまるで爆豪が悪役だと言わんばかりの空気に包まれた。
数人のプロヒーローから野次が飛ぶのに顔を歪めていると、自分の声を代弁するかのように相澤の声が響く。
《今遊んでるっつたのプロか? 何年目だ? シラフで言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ》
クラスメイト達を見れば、皆真剣に2人の姿を目に映していた
その瞳には同情や嫌悪などは一切宿していない
《ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろう、本気で勝とうとしてるからこそ手加減も油断も出きねぇんだろが》
それはちゃんと、わかっているから。
爆豪と麗日は決して悪役とその被害者などではない。
爆豪は本気で麗日を警戒して、また麗日も反撃の隙を伺っているのだ。
それを証明するかのように浮かび上がるは、大量の礫。
「勝ぁァアァつ!!」
一斉に降り注ぐ礫が爆豪を襲ったが、彼の方が上手だった。
一撃
凄まじい規模の大爆撃が降り注ぐ流星群を粉砕してみせた。
「麗日さん……行動不能、二回戦進出、爆豪くん!」
ミッドナイトの判定が下り、退場していく爆豪、担架で運ばれていく麗日に隣にいる緑谷の服をきゅっと握った。
爆豪は流石というか、やはり相手が誰であろうと本気で挑む人だ。それは己の力を過信しすぎず常に全方位から捩じ伏せようとする、恐ろしいほどの向上心とストイックさだ。
また麗日自身の最大限が発揮されたこの試合に、彼女がヒーローになる理由を思い出しこの先更に強くなって行くであろう麗日の姿を思い描き、静かに詰めていた息を吐き出した。