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雄英体育祭
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ミッドナイトの鞭がしなり
トーナメント参加の生徒たちの視線を特大パネルとくじの箱へと向ける。
これからくじ引き……となった所で、くじ引きをする前に尾白とB組の人が辞退を申し出た。
ミッドナイトが理由を聞くと、騎馬戦の最中、ほぼ意識を保っていなかったことが辞退の動機らしい。それに対してせっかくのチャンスなのに…!と声をかけるも、彼らはそれを分かっていながらも頑なとして譲らなかった。
そしてその姿勢にミッドナイトも辞退の申し出を許可した。
「っ尾白くん………尾白くんが出ないなら私も…」
「それはダメだ!!……神風さんは出てくれっ…君には意思があった…俺の分までって言ったらあれだけど頑張ってほしいんだ!」
「けど、私だけなんて……」
あの時自分は洗脳はされておらず、きちんと自我があった。
怜奈は心操に彼らの洗脳も解いたらどうかと一度は言ったが、こちらの方がスムーズにことが運ぶと言われ、あくまで騎手である彼に従うのは仕方がなかったのは尾白自身知っていたので彼女に出て欲しいと訴える
それでも怜奈が思わず俯き唇を噛み締めていれば後ろから背中を押される。
振り向けば、クラスメイト達が優しく微笑んでいた。
その表情から言わんとしていることを感じ取り深くうなづいた。
彼の思いも背負って自分が参加しなければ、それこそ勇気ある決断をした彼に失礼だ。
「……尾白くん、私…頑張るね」
彼をまっすぐ見ながら頷けば、尾白はありがとう。と薄く微笑んだ。
彼の思いを抱き、気合いを入れなおしたその後のレクリエーションでは、持ち前の運動神経と個性を駆使し、アメリカのチームとも混ざり怜奈はしっかりとチアをやりきったのだが、
クラスメイトをはじめ何人もの観客達がその姿に固まったり倒れたりしたのだった。
「怜奈」
「焦ちゃん!焦ちゃんも頑張れ!」
ポンポンを振りながら応援すれば周りは胸を抑え蹲る。
「ん"ん"あ"あ"………今のもっかい頼む…!!」
「ビデオ撮ってんじゃねぇぞ半分野郎!!!……怜奈、こっち向け」(シャリリリリリリリリリッ)
「お前も連写してんじゃん。」
放送席では怜奈のチア姿に相澤とマイクが力なく突っ伏していた。
「やばい…………めっちゃ天使……可愛い……無理…………………」
「あんな格好して………攫われたらどうすんだよ………可愛い…」
「ほんとそれな…可愛い…」
とりあえず後で写真もらおうと心に決めた2人であった。
「グッ……うちの娘が可愛い……」
オールマイトは物陰から隠れて撮影してたという
────────
──────────
《一回戦!!成績の割に何だその顔、ヒーロー科、緑谷出久!!VS ごめん、まだ目立つ活躍なし!普通科、心操人使!!》
レクリエーションも終了し、いよいよ始まった初戦、名前を呼ばれた両者がアナウンスと共に競技台に上る。
「……」
怜奈は何も言わないが、不安そうに両手を握りながら、視線を競技台のほうに移す。
緑谷は大切な幼馴染…でも心操も尊敬すべき人だ。
どちらか1人だけを応援するわけにもいかずただただ2人を見守るしかない。
「心操だっけか?確か神風はあいつと騎馬戦一緒だったよな?」
「あ、切島くん…」
隣に座ってきた切島の問に反応が少し遅れながら肯定する。
「怜奈はこの試合をどう見る 」
「えと、私…私、は……………」
障子の問いかけに答えられずに思わずうつ向けば鳴り響く歓声。
ハッと顔を上げ視線を戻せばそこには完全停止してしまった緑谷の姿が
「──みっちゃん………!!」
立ち上がり、手すりに手をかけ前のめりに観戦する
時計を見れば開始して時間は全くと言っていいほど経っていない。
まだ触れてもいないのに緑谷の完全停止状態に、実況するプレゼントマイクの言葉にも動揺がはしる。
ついで聞こえるのは入試のシステムについての相澤の言葉。
つくづく合理的ではない。
その言葉が頭の中でこだまする
あの入試では彼本来の能力はいかせない。
多くの場合は攻撃型タイプの者達しか成績のあげることができない内容に、彼はいつも眉間にシワを寄せていた。
心操の少し自嘲するような、諦めたような表情は、入試から躓いてしまう自身の個性に対してだったのだろう。
彼の悲しそうな顔を思い出し、ぎゅっと手すりを掴む手に力がこもる。
「振り向いてそのまま場外まで歩いて行け」
心操のその言葉のまま緑谷は場外に向かって足を進める。
淀みのない足取りで競技台に引かれたラインまであと一歩というところまで進んでいく
聞こえるかはわからない
気づいてもらえるかわからない
「───っ、みっちゃん!!心操くん!!!」
どちらにも負けて欲しくない。
でもそれは無理だと、わかっているから。
「最後まで、諦めないで!!!!!」
けどそれだけは、本当に思っているから。
たくさんの歓声の中、怜奈の澄んだ声がざわめきを引き裂いた
その思いに、2人と視線が合わさった気がした。
途端に風が舞い上がり
緑谷の身体が動き
洗脳が解ける
「指動かすだけでそんな威力か、羨ましいよ」
それは彼の本心
「俺はこんな"個性"のおかげでスタートから遅れちまったよ、恵まれた人間にはわかんないだろ」
彼の心の中の叫び
「あつらえ向きの"個性"に生まれて望む場所へ行ける奴らにはよ!!」
彼はずっと、苦しんで、悩んでいたのだろう。
オールマイト達のようなヒーローらしい個性に何度も憧れたのだろう。
それでも諦めきれなくて、何度も何度も足掻いた
「…だけど俺もっ言ってもらったんだ!俺と一緒に戦ってくれって!!」
────────君がヒーローになるの、見たいなあ
「───っあいつが俺を!!認めてくれたんだ!!!」
それでも彼は出会えた
自分を認め、向き合ってくれる人を
自分の力を必要としてくれた
その期待を、裏切りたくないのだと
緑谷はそれが誰なのか気づいていた
自分も彼女の言葉に救われたうちの1人だったから
お互いの背負っているものはどちらも決して軽くはない。
心操と緑谷が掴みあい、緑谷が体勢を崩したところに心操が張り手を食らわせるが、
普通科とヒーロー科。どちらが優勢かは目に見えていた。
案の定、心操は腕をとられ緑谷による綺麗な背負い投げが決まった。
「心操くん場外!! 緑谷くん二回戦進出!!」
「っ……」
「あ、怜奈ちゃんっ?」
ミッドナイトの判定が会場にこだまするのを聞き怜奈は麗日の声を背に手摺から手を離し駆け出していく。
走っていった先は退場のゲートから少し離れた場所。そしてそこから見えるのは幼馴染ではなく…
心操人使
緑谷のほうもできることなら行ってあげたい…でも今は、彼に伝えたいことがあった。
今は話したくないかもしれない。
だが、それでも伝えたかったのだ。
歩いてきた心操は視界に映る怜奈に目を見開いたが、ゆっくりとこちらに足を進めてくる。
「心操くん……」
「…慰めに来たの…?」
なんて、皮肉げに彼は言ったが、目元には確かに悔しさが滲んでいた。
静かに自分からも歩み寄り対面したところで、まっすぐと彼を見つめ柔らかく微笑んだ。
「お疲れ様、心操くん」
「…っ……」
他意のないその言葉に、心操は唇を噛み締める。
暖かな表情と言葉が悔しさとともにじわじわと心のうちに広がっていく。
「聞こえる?心操くん…」
あなたは、ほんとにすごい人だ
聞こえてくるのは、自分を賞賛してくれる声。退場の時にも言われたクラスメイト達の声とも合わさり、目の前の虹色が滲んでいく。
それを見られたくなくて、思わず下を向くが、それによって雫がぽたぽたと床に水たまりを作る。
「俺、ずっとっ…悔しかったんだ…この個性持ってるだけで、遠ざけられたりして…どうしても、あいつらみたいな…怜奈の個性が羨ましかった………」
「………うん」
心の蓋が外れ、溢れ出す言葉に怜奈が優しく心操の震える手を握る。
握られる手に、心操は自分からも力を込める。
「それでも諦めきれなくて……そんな時、怜奈に会ったんだ………」
彼女と出会って、はじめて光が見えた気がした
自分の目指すべきものの姿が、朧気ながらも感じれた。
そして、ここまで来た。
「必ず、…なってみせるっ……」
──────ヒーローに
顔を上げた心操は強い光を宿していた。彼は今、スタートしたのだ。自分のヒーローへの道を。
「きっと…なれるよ。だから頑張ろう。ここで」
「…っ……ありが、とう……」
競技場からのアナウンスが聞こえてくるが、再び声を震えさせる心操に寄り添った。
二試合目、三試合目と続いたが、薄く歓声が響き渡る中怜奈は時間の許す限り、心操のそばにいるのだった。
(それにね、消太先生は心操くんのこときっと興味持ってくれたと思う!)
(え、ほんとに…?)
(うん!)