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雄英体育祭
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《さァいよいよラスト!!雄英一年の頂点がここで決まる!!決勝戦!! 轟 VS 神風!!今!!》
最高潮に熱狂された会場
見つめ合う両者
切られたスタートに轟は先手必勝とばかりに競技台の半分を覆うほど巨大な氷壁を作り出し、怜奈の姿を覆い隠した。
それに対し怜奈は何をするでもなくただ見ているだけだった。
《先手必勝!!!轟の大氷壁ィ!!!怜奈ちゃんの姿を覆い隠したァ!!》
「(いや、まだだ…!!)」
が、轟は怜奈の実力を痛いほど知っている。これぐらいでは彼女の足枷にもならないと警戒し構えていると
ピキッピキピキピキッッ………
氷の表面に亀裂が走ったと思った瞬間
──────パキィイイィインッッ!!!
その亀裂はみるみるうちに広がっていき、全体に行き届くと氷は跡形もなく砕け散った。
それらは小さな粒子となり光を浴び辺り一面にキラキラと輝く
────────────ヒュッ
そしてその中から出てくるのは"剣"で出現させたレイピアを持つ怜奈
レイピアについた氷を振り払うかのように一振動かした後、静かに光の中を歩く彼女の持つ虹色が氷と一体となり、幻想的な美しさを生み出しているのにここが競技台だということを忘れそうになる。
《It’s ダイヤモンドダスト!!怜奈ちゃん、轟の氷壁を真っ向から打ち破ったァ!!》
《氷が自身を覆い尽くす瞬間、剣を召喚してそれを防ぎまたフィールドを氷で埋め尽くさないために砕いたんだろう》
《凄すぎかよ!!ほんともうずるいな!!》
「────よそ見はダメだよ」
「っ!!!」
その光景から轟の意識が現実へと引き伸ばされると、怜奈の体は目の前まで迫ってきていた。
それに再び氷壁で応戦するが今度は蹴りで容易く打ち砕かれる。
ならばと刃の形をした氷を地面から生やすがそんなのは関係ないとでも言うかのような動きでトンっと軽やかにそれらを足場にしている。
「…そんなのじゃ、止められないよ」
「っ!!」
《轟!氷でさらに攻撃を仕掛けるも尽く攻略されてる!!》
《轟も動きはいいんだが、攻撃が単純だ。緑谷戦以どこか調子が崩れてるなァ》
表情の見えない怜奈の淡々とした言葉に、再びザワつく胸と頭に血の昇った轟は瀬呂との試合で見せた特大の氷壁を放出させた
《今度は瀬呂戦で見せた特大氷壁!!!これは………ってあれ?怜奈ちゃんどこいって……》
が、先程まで目の前にいた怜奈の姿はない。
姿を探そうと視線を動かしふと上を向けば、彼女は氷壁の頂点に立っていた。
「"
小さく呟いた怜奈の頭上から1枚の布がはらりと舞う。
布がふわりと氷に触れた途端、特大の氷壁は一瞬にして
姿を消した
《せ、瀬呂戦での特大氷壁が……一瞬で消え去ったァ!!?》
スタジアムを埋め尽くすほどのあの氷壁を一瞬で消してみせた怜奈に目を見開き唖然と佇む轟と観衆達。
愕然とする轟の姿を映しながら怜奈は"
「…焦ちゃんは、どこを見てるの?」
「!!!」
先程の特大氷壁で冷えきった空気の中、前髪で表情が隠れた怜奈の白い吐息とともに吐き出された言葉は、直接轟の脳に語りかけるような澄んだ声だった。
「あなたの目指しているものは、何?」
悲しいほどに美しい声に、心臓が大きく跳ねた
右側に張り付く霜
震える身体
引き結んだ唇
「…………っなんでだよ…何で緑谷も、怜奈もっ……!!そんな風に俺の中に入ってくるんだ!!!」
───どうして、彼らは己の中にある1番深い部分に触れる?
────どうしてこんなにも…心が叫んでいる?
────どうしたら、ここから抜け出せる
「わかってんだ……!俺だって、俺、は…」
「──なら、周りを見なさい轟焦凍!!」
今まで俯いていた顔を上げた怜奈の瞳から、瞳と同じくダイヤモンドの雫がこぼれ落ちる。
その表情は今までに見た事がないほどとても苦しそうで、切なそうで…
轟はなぜ彼女がそんな顔をしているのかわからず、ただただ目を見開く。
その美しい光景から、言葉は音にならずはくはくと唇が震えて終わる。
「あなたは1人じゃない…私たちは…同じ志を持つ仲間でしょう…?!仲間の理想の"ヒーロー"が見失いかかってるのを見て…ッ何もせずにただ黙って見ていられるわけないでしょう!!!」
切実なその叫びに、轟の目が限界まで見開かれ、会場も今は静かにその光景を見守る
いつだってそうだった
彼女の言葉に嘘なんて、ひとつだってなかった
いつだって自分を、認めてくれた
「全部、全部背負いこむ必要なんてないよ…焦ちゃんが苦しいのなら、ッ痛いのなら……その痛みも、辛さも、弱さも…分けて欲しいよ…!」
エンデヴァーの息子でも、オールマイトの代わりでもない。
────ただの"轟焦凍"として、誰よりも自分を、理解してくれた
怜奈は、彼が何に苦しんで悩んでいたのかも全て知っていた。
知った上で彼女は、仲間である彼に伝わるまで何度でも言う
「例え望まれてなくたって…私は!焦ちゃんを、一人にしたくない…!
誰かの代わりなんて…っそんなの、そんなの…あるわけないよ…!!
─────ッあなたの代わりなんて、世界のどこにもいないの!」
その言葉と同時に轟の中で過去の父親の姿が、硝子のように弾け飛び己の体の中をすり抜けていく。
母親の優しい記憶が胸の中に零れていく。
彼女の言葉が己を満たしていく。
今まで怜奈の言葉にかけていたフィルターが緑谷戦の時よりも完全に剥がれ落ちるのに伴って、その大きさに改めて気づく
「…お前はいつだって、俺のためにそばにいてくれたんだな…」
「焦、ちゃん…」
「それが俺には……見えていなかった…」
自分は何もわかっていなかった。
過去にばかり囚われて、恨みと憎しみで前が見えなくて…こんなにも必死になってくれていた彼女の姿を、見失っていた。
──────いや、きっと心の奥底では気づいていた。だからきっと、壊れずにここまで来れた。
「俺だって、なりてぇ…
"誰の代わりでもない"…最高のヒーローに…!!」
本当は忘れていただけ。
こんなに胸が高揚しているのも、全身の血が沸騰したように熱くなるのも全部…もう、取り戻せないと思ってた。
轟の左側に熱が走り、体の霜をとかしていく。
「…ありがとう、怜奈…こっからは………全力だっ…!!」
「─っうん!!」
お互いの口元には笑が浮かび、それが合図かのように轟が炎を走らせる。
"
《再び炎を纏わせた轟ィ!!氷結と交互に攻めていくぞ!!》
《怜奈の言葉で、何かを掴んだ見てぇだな》
アナウンスと歓声が響く中怜奈がそれを足で叩き割って考えるのは、どのようにして彼に対抗するか。
氷結と炎…まだ炎の扱いにはおそらくムラがあるだろうがそれでも強力な個性であることは変わらない。
自身の魔法の個性を使おうにもそれがどんな化学変化をもたらすかもわからない。周りに被害が出てしまっては元も子もない。
考えている間も轟は交互に個性を使って攻めてくる。
轟も轟で攻撃をしているというのにするりと避けてしまう怜奈に少しの焦りが見えてくる。
「くそっ…全然あたんねぇ…!」
《向かってくる炎も氷結もひらりと身を翻して避ける姿は天使か妖精か!!轟があしらわれてるな!!》
《恐らく反撃するにあたってどうすべきか考えている…って感じだな。だがあの攻撃を避けながらってのはそうできるもんじゃない》
すると何を思ったか、今までひらひらと軽やかな動きをしていた体がピタリと地面に足をつけたまま停止する。
「(今だ!!)」
一瞬停止状態になった怜奈に轟はすぐ様一直線に炎を走らせると炎は怜奈の周りを円を作るかのようにぐるりと囲み、前の氷壁と同じように怜奈の姿を覆い隠した。
《突如動きを停止した怜奈ちゃんの一瞬の隙を轟すかさず炎で取り囲んだァ!!やべぇだろこれは!!!》
じわじわと温度を奪う氷結とは違い炎の威力は瞬間的に相手にダメージを与える。燃え盛る炎にマイクの声にも焦りが走る。
だが対して轟の頭の中では、不思議な警報音が鳴っていた。
底知れない何かが、近づいてくるぞと、本能が叫んでいる。
「な、んだ……?」
瞬間
ゴゥッッ!!!
怜奈の周りを取り囲んでいた炎がまるで道を開けるかのように形を変えた。
突如形を変えた炎に全員の視線が釘付けになると、その中から姿を現したのは
《炎に包まれていたはずの怜奈ちゃん!その姿が…またもや変わっているぅ?!》
ゆっくりとした足取りで姿を見せた怜奈の髪と瞳は緑に輝き、髪は頭の後ろで二つの輪に結って垂らされている。
その姿に驚くと同時に周りをさらに驚かせたのが、彼女の状態だった。
《今までずっと炎の中にいたはずなのに…火傷はおろか汗1つかいていねぇ?!》
普通であればまずあの状態になれば火傷は免れない。それなのに無傷で出てきたことに対しざわめきが会場に谺響する
「 従え "
徐に片手を上にあげた怜奈のその言葉に、未だに燃え盛っていた轟の炎が集まっていく。それに轟が目を見開くが、炎は徐々に集まっていき最後には鳥の姿となり怜奈の腕にとまる。
《フェニックスゥウウゥウ?!》
「何で………」
「"
自分の魔法により化学変化が起きてしまうのならば、起こさなければいい。同じ炎を使えばその問題は解決されるし、尚且つ彼の持つ炎も操ることが出来る。
彼女によって鳥へと姿を変えた炎はくるくると怜奈の周りを守るかのように旋回する。それを見ながら轟の口から漏れた二重の疑問のもう一方にも返答を返す。
「そしてこれはジェード…"翡翠"って言えばわかりやすいかな?"翡翠"は宝石の中でも強力な硬度と靱性を持っている。名をつけるとしたら…堅牢。
つまり、どんな攻撃でも耐性できる」
あの時動きが停止したのは翡翠に変幻するためだったのだ。思わず握った轟の拳からギリリッと音が鳴る。
「じゃあ…反撃開始だ!!」
「!!」
バサりと鳥が飛び上がった時、怜奈が"
パァアァアァアン!!!!
瞬間、拳から出た風圧が強力な空気砲となり轟を襲った。それらは轟の背後にいた観客達にも襲いかかりあまりの強さに椅子に貼り付けられビリビリとした余韻が残る。
瞬時に氷壁を出したが、それでも残ったのはほんの僅かな氷のみ。その他の氷は風圧のたった一撃でほとんど砕かれてしまった。
「まじかよ…あんなん…」
「オールマイト並だ…!!」
轟も負けじと炎を纏わせ放つが、先程の鳥が彼女の目の前に現れたかと思うと自身の放った炎が吸い込まれていく。
「なっ!!」
「がら空き!!!」
"
《BODYーーーー!!!!轟、腹にもろ喰らったァ!!》
《先程のよりも加減はされているだろうが…それでもあれはキツいぞ》
轟は息の詰まった状態で何とか氷結を出し自身の体と地面をつなぎとめるとそれを炎で溶かしドサリと地面に足をつけ場外を免れた。
「ゲホッゴホッ!!(骨は、無事か…!)」
「焦ちゃん…」
「ゲホッ……あぁ…」
骨は折れてはいないが、先程叩き込まれた拳と慣れない炎で轟の体はほぼ限界に近い。それを怜奈が悟ると轟も静かにうなづきを返す。
次で、最後だと
どちらともなく手を振りかざすと轟の氷と怜奈の炎がぶつかり合い、その場を爆風と真っ白な煙が立ち込めた。
両者の姿は見えず、どうなっているのか分からない。
会場中が固唾を飲んで見守っていると、次第に霧が晴れ競技台の上を映し出す。
霧が晴れたそこには、瞳を瞑って倒れている轟と、轟の頭を膝に乗せ優しくその頭を撫で微笑む怜奈の姿があった。
ミッドナイトが2人に近づき、轟が完全に気絶していることを確認すると片手を振り上げる
「─轟くん、意識不能!! よって──……神風さんの勝利!!!」
《以上ですべての競技が終了!!
今年度、雄英体育祭一年、優勝は
───A組、神風 怜奈!!!!》
割れんばかりの大歓声
競技場が揺れる歓声の渦の中心で怜奈は轟を優しく揺する。
「焦ちゃん、起きれる…?」
「……ん、怜奈…?」
何度か叩いたあとゆっくりと目を開けた轟は周りの歓声を聞き、あぁ、負けたのかと理解するが、彼の口許は弧を描いている。
「炎、出せたね…すごいね、焦ちゃん」
「っ怜奈…ありがとう…ほんとに、俺………」
どこまでも優しさで作られた声と言葉に、轟は上手く言葉に出来なくて、ただ単語だけがこぼれるのに怜奈は再び彼の頭を撫でる。
その掌の温かさに、零れ落ちそうな何かをぐっと堪えてから心地良さに身を預けた
《おい………お前もだ轟ィ!!!さっさと離れろこの野郎!!青春してんじゃねぇぞ変われぇ!!》
《早くどけ》
《って肘ーーー!!まさかの八つ当たり!!なんで俺だよ!俺も誰かにぶつけてぇよ!!!》
それにすかさずマイクの野次が飛ぶのに軽く顔をあげればA組の面々もこちらに向かって叫んでいる。
それにクスクスと笑い声をあげる怜奈にぽかんとしていると彼女は優しく轟の体を起こした。
「立てる?焦ちゃん」
「………あぁ、問題ねぇ」
頭に感じていた柔らかさが離れるのに名残惜しさを感じたがそのまま立ち上がり怜奈の手を取って退場する。
こうして今年の体育祭のすべてが終了したのだった。
(おいコラこんの舐めプ野郎がァ!!手ェ離せやクソが!!!)
(イケメン滅びろーーーー!!!)
(ぼっ僕だってして欲しい…!!)
(私の怜奈さんにベタベタしないで下さいまし!!)
(だからヤオモモのじゃないでしょ?!)
(ずーるーいーーー!!!)
(…何か騒がしいな)
(ほんとだね?)