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雄英体育祭
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決勝戦までもうそろそろだと競技場へと繋がるゲートの少し後ろで、無意識に高鳴る心臓に深呼吸をして落ち着かせていると、後ろから声をかけられる。
「パーパ!」
「やぁ!」
声をかけたオールマイトが口許に微笑みを携えながら片手をあげこちらに歩いてくるのに怜奈は嬉しそうに笑い彼に飛びつく。
それにオールマイトはいつものように笑い声を上げながら優しく受け止め、彼女が飛びついてきた反動を利用してくるりと一回回ると、足でブレーキをかけ小さな背中をぽんぽんと叩く。
「次は、決勝戦だね」
「うん…すごいドキドキしてる…」
彼の腰から手を離し、片手を胸の上に当て正直に今の心境を伝えればオールマイトは柔らかく微笑みいつものように怜奈の頭を撫でる
「本当ならば私は、教師として贔屓などするべきではないんだが…今は親として、大切な愛娘である君を応援するよ。」
頑張って来なさい。
親指をたてなから言われたその言葉が、今まで以上に怜奈の胸に響き渡り、瞳を輝かせた。
「うん…!」
────────
笑顔で駆けていく愛娘を見つめながら、先程の緑谷との会話を思い出す。
「オールマイト、これはほんとにただ単に気になったことなんですけど…」
「ん?」
後継者のことについて自身も無個性だったと語り、改めて緑谷を諭した後
緑谷はさっきの話とは別で、気になったことがあるんですが、とオールマイトを見上げた。
「後継者って……怜奈ちゃんは候補に上がらなかったんですか?」
「!」
その言葉に、オールマイトはぴくりと反応を示す。
緑谷はオールマイトが普段から彼女を実の娘のように心から愛し、可愛がっていることを知っている。
彼女の個性と人物像はワンフォーオールを受け継ぐにあたって申し分ないものだし、何よりワンフォーオールを知っているということは、彼女自身オールマイトから話を聞いているはずだ。
それならば何故、怜奈はそれを受け継いでいないのか…緑谷は疑問を抱いたのだ。
緑谷の疑問にオールマイトは自身の下にあるビー玉のような瞳を視界に映すとポリポリと頭をかいて眉を下げながら苦笑した。
「HAHAHA……これ言っちゃうとさっき言ったことと矛盾しそうなんだけど…実を言えば、私は怜奈を後継者にするつもりでいた」
「!!」
オールマイトの言葉に、緑谷は目を見開かせた。
なら…と不思議で仕方がなかった。なぜ今彼女はその個性を受け継いでいないのか、と
彼の表情に言わんとしていることがオールマイトにも伝わり、緑谷が何かを言う前にでもね、と言葉を続ける。
「怜奈は、それを拒否したんだよ。それを授かるべきは、私じゃないってね。」
「えぇっ?!そっ、そんな……!」
緑谷が思わずガーン!!と驚くのも無理はないだろう。それもそのはず、実際緑谷はその話を聞かされた時無個性だったということもあるかもしれないが真っ先になる!!と答えたぐらいだ。
平和の象徴からの直々の指名、しかもマンツーマンの指導付きとなればヒーローを志すなら首を横に振る者の方が少ない。
さらに聞けば怜奈にその話を持ちかけたのは中学に上がる前だったという。それなら尚更…と緑谷が言ったところでオールマイトは遠くを見て呟いた。
「"私は、両親の個性でみんなを救いたい"」
「!!!」
「"あの人達から受け継いだものが、私にはあるから。"…と言ったんだよ」
怜奈が言った台詞を言えば、緑谷はハッと息をのみ唇を噛み締めた。
彼女は、両親が死んだその日からきっとそう決めていたに違いない。彼らの意志と、自身の想いを個性で証明するために
「そして、その後言われたのが"自分よりも受け継ぐに値する人がきっと現れる"って」
「え………」
「"彼はきっと、ヒーローになれる子だから"ってね!それって…君のことだったんだな」
その言葉に、緑谷は目をこれ以上ないくらいに見開かせた後、彼の言わんとしていることに気づきじわりと光の膜がその目を覆う。
彼女はいつだって、自分のことを信じていてくれたのだ。
見つかるかどうかもわからないのに、オールマイトが緑谷を見つけそれを受け継ぐことを…彼女は予想していたのだろうか。
けど今は…怜奈が自分を誰よりもヒーローになるべきだと信じていてくれたことが嬉しくて、緑谷の胸をこれ以上ないほどの何かで溢れさせたのだった。
ほんとに彼は泣き虫だな……と緑谷の泣き顔を思い出しながらオールマイトは軽く笑った後、怜奈の後ろ姿を過去の彼女と重ねた。
─────彼女はもう、何も出来ないただの悲劇の少女なんかじゃない。
誰よりも心の強い、自慢の娘だ
「…ほんとに、強い子だよ………」
今は亡き親友を思い浮かべて呟かれた言葉は、歓声と共に静かに空に溶けていった。
(けど…怜奈にそんなに想われてるなんて、緑谷少年はずるいなぁ…)
(えっ?そ、そそそそそれは…!)
(でも私が一番だからね!!)
(そ、それは譲れないです…!!)
(まさかの応戦?!負けないからね?!!)