MHA中心
雄英体育祭
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…怜奈…」
「…勝己くん」
競技台の上で向かい合い、お互いの名前を復唱する。
一方は渋い顔で、一方は苦しげな顔で見つめ合う。
《 この戦いで!次の決勝戦が決まる!!両者ここまでの試合では圧倒的戦闘センスを見せ勝利を勝ち取ったァ!!
またもやド派手に決めるか!爆豪勝己!! VS 唯一の女子三回戦進出者 勝利の女神!神風怜奈!!》
「…俺は、お前を超える」
「勝己くん…」
「お前の隣に立つためにも…これは絶対ェ譲れねぇ!!」
開始の合図が出てから力強く言われたその言葉に、ハッと視界と頭がクリアになる。
たしかに、大切な彼と戦いなどはしたくない。だがそこで逃げては何も生み出されないし変わらない。何より、ここまで本気で勝つために進んできた彼に対してそんな思いを抱いていいはずがない。
目の前で体制をとる彼に、ふっと肩の力が抜けた。
「私も…本気で行く!」
そう言った瞬間に爆豪は両手で爆破を繰り出しこちらに向かってくる。
目の前まで爆豪の手が迫ったところでBoon!!と爆発音が鳴り響く。
《爆豪容赦なしの攻撃!!怜奈ちゃんもろ至近距離決まったかァ!!?》
至近距離の爆破攻撃を受けた怜奈に会場中にどよめきがはしるが、爆豪はバッと爆発による煙から抜け出しモヤの中を警戒する。
すると、ブォンっという音とともに煙が一気に晴れる。
《あっあれは…………》
「だしたかっ…………!」
煙を一掃したであろう大剣を携え
足首まである漆黒に輝く髪を揺らし、同色の瞳で爆豪を射貫くその姿は、USJの時と同じ彼女の宝石の真骨頂。
《またもや姿が変わった怜奈ちゃん!!至近距離からの攻撃を食らったのにも関わらず、その体には傷一つついてねぇ!!
漆黒に輝く姿はまさにCOOLBeauty!!》
《あいつの個性の宝石…その個性の真骨頂は宝石の種類と特性によって姿を変えて術者に纏い、力を発揮する》
同じく漆黒の大剣を構え、爆豪を射貫くその姿はまさに宝石の騎士。
「いくよ、勝己くん」
「ったりめぇだ!!!」
不敵な笑みを浮かべ再び爆豪が爆破を喰らわせようと仕掛けるが、身を翻した怜奈は漆黒の髪でガードする。
普通なら燃えてしまうが、今の彼女は生きる宝石なのだ。
「効かないよ!!」
「くそっ………!!」
爆破を受けた漆黒はキィンッと高い音を響かせるも傷一つ付けられていないのを見て爆豪は顔を顰める。
今度はこちらの番だと怜奈はぐるんっと身体を捻らせその反動を利用して大剣をすべらせる。
すると大剣から出された風圧だけで爆豪の体はいとも容易く空中へと投げ出される。
「ッ……爆速ターボ!!」
《風圧で投げ出された爆豪!!自身の爆風で何とか場外を防いだァ!!》
《宝石本来の力が引き出されている今、怜奈の力は相当なもののはずだ》
空中へと投げ出された爆豪は両の手のひらで爆破を起こし爆風により場外を免れた。
そこから軌道に乗り突っ込んでくる爆豪を上に飛び上がり回避するとすかさず大剣を振り上げる。
それに爆豪は爆発のタイミングを細かく調節し横にずれる
…と大剣が競技台を言葉通り、真っ二つに切り裂いた。
真っ直ぐに入った切れ目にその威力がどれほどのものかと理解し、見ていたものの背筋を瞬時に凍りつかせた。
《一振で何つゥ威力だ!くらったら一溜りもねぇぞ!!》
爆豪の爆破を大剣でしのぎ、また振りかざせば爆豪もそれを避ける。
爆豪が今度は地面を爆破し瓦礫を飛ばしてくる
それを上に飛び上がり空中の瓦礫を逆に足場にしてトンっトンっと上がっていけば爆豪はそれより何倍もの大きさの瓦礫を飛ばしてくる
それらを怜奈は大剣でまるでクッキーを割るかのように、いとも容易く目で追えないほどの速さで小石ほどの大きさに切り刻むとその礫を"風"で操り爆豪の周りへと向かわせれば、断続的に爆撃を繰り返し爆豪もそれらを粉砕する。
激しい攻防戦とその戦闘センスの高さに会場は思わず固唾を飲んで見守っていたが、気づけば競技台は最早原型を止めていない。
「そろそろかな……」
「あ…?」
ぼろぼろになり足場がほとんどない場に怜奈が静かに目を細めると爆豪は警戒しながらも怪訝そうにうかがう。
爆豪が言葉の意味を理解する前に、怜奈は大剣をザンっと瓦礫に突き刺した。
「その身の牙を剥け"
ガアアアアアアアアアアア!!!!!
瓦礫の隙間からぶわりと砂が湧き上がり怜奈の背後へと集まっていく。
それらはまるで一頭の虎のように形が変化していき4mを優に超える程の大きさになり天に向かって雄叫びをあげる。
《今度は猛獣ウウゥウウ?!!何でもありかよ!!》
《あれは……砂か………!》
「 行け!! 」
怜奈が大剣を握ったまま命令を下せば、虎はガルルルっと喉を鳴らしながら爆豪に飛びかかる。
それに爆豪が飛びかかってくる虎を避けようとすると、ずぶりと足が地面に埋まる。
何事だと足元を見れば、いつの間にか地面は一面砂で覆われており足場を悪くしている。
《猛獣に気を取られている隙に足場が砂に!!》
《砂は動きを制限される。それにその下にはぼろぼろになった瓦礫があるからな、更に足場は悪くなる…恐らくそれを狙ってたんだろう》
《オイオイオイ!まじかよ?!!》
「つまり、全ては計算…!?」
「相手の攻撃を誘導してたってことか?」
「流石初のスカウト入学者だな…」
攻撃を与えながら状況を一気に変えてしまった怜奈の行動に、会場では戦闘中の彼女の能力の高さがあらゆる所で評価されている。
ガアアアアアア!!!
「オラァっ!!!」
そんな中、爆豪は足元を爆破させ何とか砂の中から脱出し虎に爆破を食らわせるも通常のものではびくともしない。
加えて元が砂なので爆破したとしてもすぐに再生してしまう。
《爆豪まさに万事休すかァ!?》
それでも虎の体を登り左右の爆破を調節し小さな爆撃を何度も起こしながら正面を目掛け攻撃する、虎の目元を潰したと確かめた後、手のひらに滲ませたニトロを爆破させそのまま後頭部へも攻撃を決める。
《猛追ーーーーー!!!!爆豪、まだ諦めてねぇ!しぶといな!!》
《爆豪も攻撃する中で研究してる…双方戦う度にセンスが光ってくな》
爆豪はマイクと相澤の実況を聞きながらまだ再生しきれていない虎を視界に捉えて爆風で一気に空中へと飛び上がる。
「
空中に飛んでから落下と同時に加速した爆豪は、爆風により回転を付加して突っ込んで行く。
するとその猛スピードのまま最大威力の爆風を虎目掛けて放つ。
ズドオオオオオン!!!!!
あまりの爆風に虎は跡形もなく粉砕し辺り一面には残骸である砂が吹き荒れた。
《撃破ぁぁぁあああ!!!爆豪、跡形もなく巨大な砂の猛獣を粉砕したァ!!》
一撃で倒してみせた爆豪に会場にもその威力にどよめきが走っているが、技を壊された本人である怜奈には一切の動揺が見られない。
それどころかまるで分かっていたという雰囲気まで漂っているようにも思える。
「(なんでだ……まさか!!)」
「信じてたよ、勝己くん。あなたなら超えてくるって。」
でも、と怜奈は続けるとズッ…と大剣を瓦礫から抜き取り切っ先を爆豪へと向けた。
「────────だから、待ってた」
自身を射貫くどこまでも続く瞳の中の闇。射貫かれる際にぞわりと背中に流れ落ちるそれに爆豪がハッと改めて周りを視界に入れると、辺りの空中にはいくつもの水の塊が浮いていた。
つまり、初めのあれは囮。標的が大きければ大きいほどそれに目線を奪われ周りが見えなくなる。それを彼女は利用し、また必ず爆豪が破壊すると信じていた。
「かの者を捕らえよ"
カチリと怜奈が大剣を鍵穴に指すように回せばズアッと水でできた鳥のようなものが翼を広げ、周りの水を爆豪へと一直線に向かわせる。
爆豪もそれを交わそうとニトロを滲ませるが足元に違和感を感じ、見遣れば先程の虎の砂で足全体が絡め取られ拘束されている。
彼が油断した一瞬の隙を、怜奈は見逃さなかったのだ。
身動きの取れないまま爆豪の身体は水へと飲み込まれた。
爆破して脱出しようにもニトロは流され、また泳いで抜け出そうにも球体の中で両手足が拘束されているためそれも叶わない。
《水の球体へと閉じ込められた爆豪!!何で抜け出せねぇんだ?!》
《…おそらく中の水で拘束されているな。服とか見る限り中には流れも作られてる。ニトロが洗い流されては反撃もできない。…完全に退路を絶たれている》
怜奈は球体の中の爆豪を視界に捉えるとぎゅっと下唇をかみ顔を伏せ大剣を横へと一気にスライドさせる。
パアアアァアアン!!!
すると爆豪を呑み込んだ水は球体のまま、グンッと場外へと吹っ飛び大きな破裂音をたて弾け飛びると、その場に爆豪がドサリと崩れ落ちた。
一瞬シンッ…………と静まり返った後
「─爆豪くん場外!! よって神風さん 決勝進出!!」
《─決勝戦への最後の切符を手にしたのは!勝利の女神!神風怜奈だあああ!!! 》
マイクのアナウンスとともに地面が揺れた。
怜奈はボルツを解き一直線に拘束を解いた爆豪に走りよるが爆豪はゆっくりと立ち上がるも、その場に立ち尽くし顔を伏せていた。
爆豪に目立った外傷がないことを確認すると、なんとも言えない感情がこみ上げてくる。
が、グイッとその腕が引かれ爆豪の胸元に引き寄せられる。
爆豪の濡れた髪からぽたぽたと雫が零れ自身の髪を濡らしていく。
「お前は俺に勝った。俺は本気でぶつかった…それよりも怜奈のほうが強かった、それだけだ。
だから、そんな顔すんな」
「!!」
「次は負けねぇ。だから首洗って待っとけ」
爆豪は優しく怜奈の頭を撫で誰にも見えないよう小さく微笑んだ。
本当は負けが誰よりも嫌なはずなのに…
それなのに優しさをくれる爆豪に目元が潤んだが、ぎこちないながらも笑ってみせ、風で爆豪の濡れた体を乾かした。
「…ありがとう、勝己くん
もちろん受けて立つよ!」
「ハッ、言ってろ」
コツンと軽めにおでこを叩かれるのに笑い声をあげれば爆豪は照れくさそうに視線を外した
全力で戦ってくれた彼に瞳を緩め爆豪を見上げると、彼もまた再びその頭を撫でた。
《あの〜…お二人さん。ここ競技場だよ??
何てゆーか……………
爆豪さっさと離れろこの野郎!!!羨ましすぎんだろ何それ!!?》
《うるせぇマイク。爆豪はよ離れろ》
《だからお前も同じこと言ってんじゃん!?》
抱き合っている体勢と甘酸っぱい雰囲気に思いっきり八つ当たりをするマイクのアナウンスにハッと怜奈は意識を戻らせる。
たしかにこの体勢を大勢の人に見られるのは爆豪が嫌だろうと体を離そうとするが、彼は満足気にきょとんとする彼女を更に抱き込み、ブーイングを飛ばす周りをフンっと鼻で笑い返しこれ以上ないほどのドヤ顔を向ける。
「(ドヤサッ)」
《NOーーーーーーー!!!!》
「爆豪離れろよォーーーー!!」
「ずるいよかっちゃん!!!」
「早く離れろ」
まさに阿鼻叫喚
離れろややめろという言葉もなんのその。爆豪は疑問符を浮かべる怜奈を軽々と抱きかかえ後ろを振り返りまたもやドヤ顔を決め彼らを煽ったのだった。
(勝己くん、私怪我してないよ?)
(いいから次のために体力温存しろ)
(でもやっぱり自分で…)
(ダメだ)
──────────
──────
爆豪と別れ1人廊下を歩いていると炎を纏わせ腕を組み壁に背を預けている知り合いの姿が見えた。
なぜここにいるのかと首を傾げていれば、こちらに気づいた知り合いであるエンデヴァーはずんずんとこちらに向かってきた。
「怜奈!!」
「エンデヴァーおじさん、何でここにいるの?」
「それよりやはり怜奈の闘いぶりは見事だな。まったく、あんな奴の所ではなく早くうちに来ればいいものを……」
目の前まで迫ってきたエンデヴァーを見上げれば、彼はよしよしと頭を撫で賞賛し、同時に不満をこぼす。
彼は怜奈を引き取ろうとしていたうちの一人だったが、怜奈の父親であった誠の遺言によりオールマイトが里親になったことを未だに納得しておらず隙あらば家に……と諦めてはいない
それに苦笑を漏らせば彼は途端に真剣な表情で言った。
「…お前は本当に強い」
「…エンデヴァーおじさん…」
「だからこそ、焦凍とぶつかってくれ。」
この人は、いい意味でも悪い意味でも、ただただ真っ直ぐな人だ。それ故に、引き起こしてしまったこともある。
でも息子を思うこの人の気持ちは、誰よりも深いと知っていた。
それが彼に届いていなくとも…
「もちろん、全力を出すよ。だけど焦ちゃんが負けても泣いちゃダメだよ!」
「ムッ……」
笑顔で悪戯に答えれば彼は一瞬固まった後そう一筋縄にはいかんぞ!と言いながら怜奈の頭を高速で撫でた。(はげるかと思った…)