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ふわりと柔らかな風が怜奈の頬を掠める。
ゆっくりと瞳を開ければ、白が視界を埋め尽くす。
独特のアルコールの匂い。
真っ白な部屋。
棚の上の大量のお菓子や花
横目に見える窓からは優しい光が照らしている。
ここは、病室だろうか?と怜奈が状態を確認しようと体を捻れば、左手に温もりを感じる。
大きくて少しだけ薄い手。…この手を怜奈は知っている。いつも自分を優しく撫でてくれる手…。
温もりの先へと視線をずらせば、思った通りの人物が自分の左手を掴み、うつらうつらと船を漕いでいるのが視界に入った。
「パー、パ………………」
掠れた声で彼を呼べば、オールマイトはぴくりと反応したあと、ゆっくりとした動作で彼女を視界に入れた。
そしてその青い瞳に目を覚ました怜奈が映されると、脳に一気に情報が伝達され衝動のままに彼女の身体を思いきり抱きしめる。
「むっ……」
その勢いの良さに思わず声が出るが、オールマイトは構わず小さな体を抱きしめ続けた。
「っ、良かった!!本当にっ、生きててくれてっ…!」
「パーパ…」
「本当に、心配したんだよ…!!君が脳無に襲われた時も、敵に攫われそうになった時も…っ私の腕の中で、意識がなくなった時なんて…怜奈がこのまま…消えてしまうかもと思った…!!
本当に、恐ろしかった…!」
「…………っ泣かないで、パーパ…」
オールマイトはその時の情景を思い出してか震えながらぼろぼろと涙をこぼす。
怜奈は力の入りきらない体を動かして、オールマイトをゆっくりと抱きしめ返す。包帯が巻かれた白く細い腕が力なく回されたのに、オールマイトはさらにきつくその身を抱きしめた。
あの時の恐怖は、今までのどんな戦いよりも大きく彼にのしかかった。
怜奈の胸元は彼女から出た血により紅く染まり、腕など所々傷だらけで死体のように意識を失くした愛娘に、まるで世界の終わりかのようにオールマイトの頭は真っ白になった
こんなにも小さい彼女を守ることができなかった、傷つけられてしまったと、オールマイトはその日自己嫌悪と怒りとで眠ることなんてできなかった。
とんとんとオールマイトの背を叩く彼女の手に生きていると改めて実感したオールマイトは少し冷静さを取り戻して怜奈を見つめながら今の状況を説明する。
事件は昨日のことで今は午前9時、昨日の事件により今日は臨時休校であること
怜奈は個性の使いすぎと疲労により今までずっと眠っていて、緑谷を除くほかの生徒達は目立った外傷もなく過ごし、また緑谷もリカバリーガールによって既に完治済みだということ
「元はと言えば、私が……」
説明し終えた所で俯きながら痛いくらいに拳を握りそこまで言いかけたオールマイトの唇に、怜奈の人差し指が触れた。
それに思わず顔をあげれば、虹色が己を捉えながら綿菓子のような優しい甘さを含んだ声が音を紡いだ。
「人を助けたことを、パーパに後悔して欲しくない。」
「!!」
「助けを求める声を、あなたが見捨てられるわけなんてないもん…だから、自分があの時その声を無視すればよかったなんて思わないで…?」
怜奈がふわりと微笑みながら言えば、オールマイトはまた怜奈を抱きしめる。
彼女はいつだって、自分にとって欲しい言葉をくれる。
再び一筋の涙がオールマイトの頬を濡らしたがその表情はこれ以上ないほどに穏やかで、怜奈も安心しきった様子でその身をオールマイトの胸に預けた
が、彼女はハッとして顔を上げる。
「怜奈?どうし…」
「消太お兄ちゃんは?!亜南さんも…!!私、治療してたのに、途中で気を失って…!!どうしようっ…」
「待って怜奈、落ち着いて…!」
突然取り乱し泣きながらいやいやと首をふる怜奈にオールマイトは慌てて相澤に連絡を入れる。彼らは昨日同じ病院で検査をして念の為1日入院しているのだ。
オールマイトからの連絡に相澤はすぐに行きますと言ってから電話を切る。
ぽろぽろと涙をこぼす怜奈をオールマイトが宥めていると、数分もしないうちにバタバタという足音が聞こえ、病室のドアが少々乱暴に開かれた。
そして彼女の姿を見つけると、相澤と13号は真っ先にそこまで駆けつけた。
「怜奈!!目が覚めたんですね!!!」
「よかっ………待て怜奈、なんで泣いてるんだ?もしかしてどこか痛いのか?それとも泣かされたのか?ちょっとオールマイトさん、どういうことですか。」
「怖い怖い!!ノンストップで言いきったし目が怖いよ相澤くん!13号はわかんないけど雰囲気が怖い!!!!」
それに怜奈が泣いてるのは君たちのせいだよ!とオールマイトが伝えれば怒りの視線をオールマイトに送っていた彼らはバッと彼女を視界に入れたが、それよりも先に怜奈が2人に飛びついた。
慌てて支える彼らに、怜奈はさらにしゃくりあげる。
「なん、」
「私!っ……2人が傷つけられているの見て凄く、怖かった……!!」
「「「!!!!」」」
「治療している時も、2人が、死んだらどうしようってッ………!目の前が、真っ暗になって……!!しかも私、途中で気を失って…!治療が途中で終わっちゃって、…!!」
生きててくれて、よかった……!!!
2人の服を握りしめながら震える小さな体に、支えている彼らの目頭が熱くなっていく
怜奈は敵と戦ったことよりも、2人を失うかもしれない。そう思うと怖くてたまらなかったのだと涙ながらに訴える。
自分達を安心させようと笑ってくれていた彼女は不安に飲み込まれそうになりながらも、こんなにも小さな体で己を犠牲にして自分達を守ってくれたのだ。
涙が止まらない怜奈の顔を相澤はゆっくりと自分の胸に押し付けた。
「ッ…お兄、ちゃん………?」
「…俺はお前の泣き顔には弱いんだよ…だから、このままで聞け。っとに…そこは普通敵と戦って怖かった。だろう?けど、不安にさせて悪かった。」
「あの時怜奈が僕たちを治療してくれなければ、手遅れだったと言われました。」
「!!」
「怜奈は俺たちを助けてくれた。お前のおかげで、俺たちは後遺症を負うこともなくヒーローとしての生命が絶たれることはなかった。それは全て怜奈がいてくれたからだ。」
「だからありがとう、怜奈。」
君が目を覚ましてくれて、よかった。
怜奈が涙目のまま相澤の胸から顔を上げて2人を見れば、柔らかい表情で自分を見ていた。オールマイトも隣で笑いながらうんうんとうなづいているのに和やかな空気が流れ出したその時
バァンッ!!!!
「怜奈ちゃん!お見舞いに…てっおぉ?!目が覚めてる!?!怜奈ちゃーーーん!!!!」
けたたましい音とともに扉が開け放たれ、プレゼントマイクが花束とともに現れる。
部屋に入ってくるやいなやマイクは起き上がっている怜奈の姿を見つけ一目散に駆け寄ってくる姿にどうやら完全に怜奈しか視界に入っていないらしい。
「マイクお兄ちゃ…」
「本当にマジで心配してたんだぜ?!あぁ可哀想にこんなに目が腫れちまって……!!」
シュバっという効果音とともに病み上がりの怜奈の体を抱き上げて抱きしめるマイクに周りがハッと覚醒しそして怒る。
「てめぇマイク…!!怜奈は重体で今起きたばかりなんだぞ!!!そんな風にいきなり抱き上げるな!!」
「怜奈の体調のことを考えてあげてください!!」
「そんなに私と1戦交えたいのかいマイク…!!!!」
「Noーーーーーーー!!!!」
案の定マイクは相澤に縛り上げられ吊るされ、オールマイトと13号は今にも飛びかかりそうだ。
プラプラと揺れながら弁論を述べるマイクと、怒るオールマイト達を見てあぁと怜奈はいつもの光景に安心したように頬を緩めた。
「ふふっ…」
「「「「!」」」」
「もう…喧嘩しちゃダメだよ、みんな」
ふにゃりと笑顔を浮かべながら言った彼女に、彼らはぽかんとしたあとすぐに顔を明るくした。
「Year!!やっぱり怜奈ちゃんの笑顔は最高にキュートごハァ!!?」
「やっと笑ったか…」
「イレイザーてめぇ!!いきなり手ぇ離すなよ!!そして解け!!」
「怜奈はやっぱり笑顔じゃないと!」
「あ、怜奈喉渇いただろう?何か飲み物を出そうか?」
「ありがとうパーパ」
その後うるさすぎて(主にマイクが)5分後に看護師さんに怒られるのはまた別の話