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事件後USJ前
「両足重症の彼、怜奈ちゃんを除いて…ほぼ全員無事か。」
警察官塚内警部が、周りを見渡してそう呟く。
この場にいる生徒達は擦り傷や服が汚れていたりしているが、病院へと搬送されるほどの傷は負ってはいない。
すぐに事情聴取もあるから、とりあえず教室に戻ってくれと言った塚内に、蛙吹と峰田が歩み寄る。
「刑事さん、相澤先生や怜奈ちゃん達は…?」
その質問に確認を取るために塚内は病院へと電話を繋ぎ担当医から話を聞いてその内容を伝えるのに、蛙吹や他の生徒達も不安気にそれらを聞く。
「それぞれの状態だが、まずイレイザーヘッドは顔に傷は出来たが、ずっと神風さんの個性が治療をしてくれていたおかげで、内部に損傷はなし。右腕もまだ少し治療がいるがすぐに済むそうだ。
13号も同じくずっと治療をされていた為、背中の傷は塞がっている。双方とも今は意識がないが後遺症などは残らないだろう。2人とも同じ病院で休んでいるよ」
オールマイトと緑谷も命に別条なし、二人はリカバリーガールの治癒で十分だと学校の保健室に運ばれたという。
「怜奈ちゃんは…?」
「神風は…」
食い気味に言った台詞と泣きそうな表情は、蛙吹達が死柄木に襲われた時に真っ先に駆けつけその身を呈して守ってくれた怜奈の姿が未だ鮮明に脳裏に宿っていた。
「…肋骨が何本か折れて呼吸器官に影響を受け、腕にも傷があったらしい…けど、命に別状はない。
ただ個性の使いすぎによって今は意識がないらしい。彼女は生徒の中でも特に主格の敵と交戦をしていたからね…精神的にも大きな打撃を与えたのかもしれない。彼女も、イレイザーヘッド達と同じ病院で休んでいるよ」
「そ、んな……」
相澤達と並ぶほどの大怪我に対して生徒達がギリッと拳を握りしめ、女子は口元に手を当てている。
特に蛙吹と峰田は俯き、言葉をなくす。
緑谷を含むこの3人は怜奈によって窮地を脱出し、逃げることが出来た。
自分達が恐怖で固まりまるで動けなかった相手に、彼女は何度も何度も立ち向かって行ったのを、クラスの誰よりも近くで蛙吹達は見ていた。
爆豪や切島なども、初めの自分たちの軽率な行動で彼女が目をつけられ中心地に飛ばされたことを思い出してか、その顔は苦い。さらに爆豪と轟は彼女に助けられている。
「クッソ………………!!」
「ッ………………」
轟は初めの黒い靄から、爆豪は脳無から。
目の前にいたのに、手は届かなかった。結果彼女はボロボロになるまで自分達を守り抜いた。そんな彼女を見ていることしか出来なかった。
守ると…誓ったはずなのに。
それが彼らの心に深い影を落とす。
戦闘服から制服に着替え、教室に移動して来た 1-A の雰囲気はどことなく沈んでいた。
このあとは事情聴取、今はそれぞれが呼ばれるのを待つ時間だ。
そんな中で峰田がポツリとこぼした。
「神風、大丈夫かな…」
「ケロ、怜奈ちゃんは強いもの、きっと大丈夫よ。」
それに蛙吹が間髪おかず彼を励ますように答える。
「…私達も、怜奈ちゃんが戦っとったの…遠くからだけど、見てたんよ。」
麗日が視線をしたに向け、スカートを握りしめる。
「怜奈ちゃんがすぐに駆けつけてきてくれて…先生達の治療してくれてた時、私、不安で不安で…泣いてもうて…。けど怜奈ちゃんは笑ってくれたんよ…。」
─大丈夫だよ。お茶子ちゃん─
「私が泣いてる時も敵に立ち向かっていく時も、怜奈ちゃんはきっとこれ以上私らが不安にならないように、安心できるように…笑ってくれた…なのに、私は…………!!」
泣くことしか、ただその場にいることしかできなかった自分自身に、なんて無力なのだろうと思った。彼女が殴られた時なんて、心臓が止まるかと思った。
怜奈の笑顔を思い出してぽろぽろと涙をこぼす麗日に同じくその場にいた芦戸や葉隠が背中をさする。
「私も、何も出来なかった…なのに怜奈ちゃんはあの気持ち悪いのに剣を振り下ろして、地面にめり込ませてたの!」
「、私もっ!水難ゾーンで怜奈ちゃんが龍出して敵を飲み込んでたの見た!」
2人が眉を顰めながらも興奮したように言えば、クラスメイト達は少しだけ明るくなった
「それに怜奈ちゃんが初めに指示を出した時もかっこよかったよな!!」
「あの指示がなければ、俺たちは恐らく1人ずつ散り散りにされていただろう。」
上鳴がその時の彼女を思い出してか同じく興奮したように話し、常闇も腕を組み瞳を閉じながら述べる。
「怜奈さんが指示したとおりにしていなければ…私たちはもっと酷い怪我を被っていたはずですわ。」
「…怜奈が奴らを食い止め、オールマイトを庇ってくれていなかったら、俺たちは全滅していた。」
八百万もそういったあと下を向きながらきゅっと唇を引き結んだ。障子は痛いくらいに拳を握り、何も出来なかった自分を思い出してまだまだ自分は未熟者だと痛感していた。
「あの場にいた誰よりも怜奈はすっげえ漢だったぜ!!」
「それはなんかちげーよ」
切島に瀬呂がつっこめば、彼らは笑いながらそうだよなと言った。
「ケロ…だから彼女はきっと大丈夫よ。怜奈ちゃんが戻ってきても安心出来るように、私たちは彼女をいつも通りに待ちましょう?」
もちろん緑谷ちゃんもね、と言った時には、全員の表情がいつも通りになっていた。
それから事情聴取を終え、生徒が全員帰る頃には日はだいぶ傾いていた。