なんもない休日

「まりちゃん、起きて」


息が多めの落ち着く声がぼんやりと聞こえてきた。


んん…寝ちゃってたみたい
いま何時やろ
外はもう真っ暗だ


「んん…何時…」

「20時」


今日はお休みだからゆっくり起きて各々好きなことをしてた。

茉里乃はドラマ見て
玲ちゃんは本読んで
本読むのに飽きた玲ちゃんにくっつかれて
くっつくのにも飽きた玲ちゃんはお昼寝してた。
茉里乃も気づいたら寝てた。



「あかん寝過ぎた。玲ちゃん起きとった?」
「ううん、私もさっき起きた。さすがに外出ようか」
「うん…んんー!」
「痛い痛い」

大きく伸びをしてわざと玲ちゃんの顔に手を当てる。

ダラダラしすぎた罪悪感から夕飯を外で食べることにした。


ギリギリ外に出られる格好に着替える。


「外冷えるからこれ着て」


玲ちゃんに上着を渡される。


「まりのの取ってくんで?玲ちゃんが着ーや」
「ちっちっち、分かってないですねぇ茉里乃さん。自分の服を彼女が着てるのがいいんですよ」

「そうなん?」

「そ、所有欲?お守り?まりちゃんは私のものですよーって、しるし?マーキング?」

「ふーん」

「え、冷たい」


行き先はいつものファミレス

玲ちゃんは優柔不断すぎるから、道中でメニューを見て決めてもらうのが恒例だ。

前にメニューが決められなくて、30分待たされてケンカしたもんな。

「玲ちゃん、手」
「…うん」

スマホに集中しすぎて一回派手に転んでから、外食に行く時は手を繋いで茉里乃がフォローするのとになってる。

頭良いのにほんまにアホやと思う。


「これにする、絶対にこれ」
「お、今日は早いやん」
「ほめて」
「えらいえらい」
「ねーーえ」
「着いたで」
「冷たい!」


茉里乃はオムライス
玲ちゃんはパスタ

一口くれるって言うから自分のフォークで取ろうとしたら、あーんじゃないとだめやって。
恥ずかしいのに。


「まりちゃんおいしい?」
「うん!んまい!」


優しい笑顔で微笑む玲ちゃん。
茉里乃が分けてもらったのに何故か玲ちゃんが満足そう。
変なの。

ご飯を食べ終わり、帰り道、暗い夜道を手を繋ぎながらフラフラ散歩する。


「あ!見てまりちゃん!ねこ」
「あ、ほんまや可愛い」



真っ黒な猫がトコトコと近寄ってきて茉里乃の脚に擦り寄ってきた。

「めっちゃかわええ…」
「まりちゃんを選ぶなんて、なかなかセンスある猫ちゃんだねぇ…」

2人でしゃがんで猫を撫でる

「…玲ちゃんって優柔不断やん。茉里乃と付き合う時も迷ったの?」
「どうしたの急に」
「なんとなく気になって」
「即決。ビビッときた。まりちゃん以外考えられません」
「………ふーん」

優柔不断のくせに、こういう時はかっこいいんやな。

「照れてる」
「照れてへん」
「耳赤い」
「うるさ」
「こっち向いて」
「やだ」
「ねー」
「もうなに、」

振り向いた瞬間にキスされた。


「あっ!猫逃げてもうたやんか、玲ちゃんのせい」
「えへへ」

玲ちゃんはいたずらっ子の笑顔で笑ってる。

「まりちゃんをこんな長時間占領するのがいけないの」
「はぁ…」

玲ちゃんは立ち上がり、茉里乃に手を差し伸べる。

「好きだよ」

「…そうですか」

差し伸べられた手を取り、立ち上がる。

「まりちゃんは?」
「………き」
「ん?聞こえない」
「すき!!」
「よく言えました」

玲ちゃんはにやにや楽しそうに握られたままだった手を恋人繋ぎにする。

「帰ろっか」
「うん、玲ちゃんアイス食べたい」
「コンビニ寄る?」
「うん、買って」
「しょうがないですねぇ〜」


性格悪いし、愛が重いけど
この人を手放したくない
そう思ってしまった
この人から離れられない
1/1ページ
    スキ