「麗奈ね。占いできるんだよ
あなたは今良くない恋愛をしています」


「なんで？」


土曜日のお昼
カフェでまりのんとランチ
久しぶりに会えるから楽しみにしてたのに
違和感に気づいてしまった


「なんかやつれた気がするし、目の下の隈も濃くなってる。あとは首のキスマークでしょ、袖から見えてる歯型でしょー、あとさっきから全く止まないスマホのバイブ音が決め手！」


「はは……」


まりのんは袖を伸ばして手首を隠した


「大園玲ちゃんだっけ、そんな感じの子には見えなかったんだけどな」


何ヶ月か前、まりのんに彼女ができたっていうから3人で会わせてもらった
その時は清楚で余裕のある大人なお姉さんって印象だった
まりのんもすごく幸せそうだったし
まりのんが、席を外した時に大園玲ちゃんに、ちゃんとまりのんのことを大切にできるか問い詰めてみたけどお手本のような答えが返ってきて、それも本心で言ってるって分かったから
ああ、幸せになって欲しいなって認めたのに

ある時を境に土日に全くまりのんと連絡が取れなくなった



「大丈夫？麗奈には今のまりのんが幸せなようには見えないんだけど」

「そんなことないで？まりのは幸せやもん」

「ふーん…そう…。電話いいの？」

「うん、出たら帰らんとあかんくなる。まりのまだ麗奈ちゃんといたいもん」

「大丈夫なの？」

「うん！平気」



その後はまりのんから大園玲ちゃんのことを色々教えてもらった
白色が好き、お好み焼きとチーズが好き、笑顔が猫みたい、感受性が豊か過ぎて泣き虫、友達が全くいない、自分に自信がない、寂しがりや、あと、まりのんが初めてできた恋人って事も

話を聞けば聞くほど合点がいっちゃうんだけど


「どこが好きなの？」

「のろけみたいで恥ずかしいんやけど」

「今さら何言ってるの。教えて」

「なんやろ、めっちゃ色々あんねんけど一緒におると安心するし、何よりもまりののことが好きすぎるところかな」


普通の人は彼女が友達と出かけてる時に電話かけまくらないと思うんだけど


「玲ちゃんはちょっと人より繊細なだけなんよ」

「ちょっとじゃないと思うけどね。はっきり言うけどメンヘラだよ。まりのん」

「もー、まりのも分かっとるもん。言わんでよ」

「麗奈は心配なの。今はそれくらいで済んでるかもしれないけど、いつか暴力とかされるかもしれないし」

「大丈夫やって。もしされたら麗奈ちゃんが守って」


そんな楽しそうにさ


「私はまりのんのことそんなふうにしないけどな」

「ん？」

「試しに麗奈と付き合ってみない？楽しいよ〜？」

「あはは、それはそれで面白そうやんな。
でもまあ、玲ちゃんがおるから遠慮しとく。良いところも沢山あるんよ？こんなにまりののこと好きでいてくれる人他におらんと思うから」

「つまんなーい」

「あれ、なんかスマホの音止まった」

「ほんとだ」

「はぁ…帰るね…メンヘラが首吊ってるかもしれんからな」

「1番いじってるじゃん…」



まりのんは荷物を片付けて帰って行った



麗奈わかった

これが共依存ってやつかぁ








「玲ちゃーん、来たよ」

合鍵で玄関の扉を開けて、中に声をかけるけど返事はなし

「おおぞのれいー」

広めのワンルーム、廊下から奥に進んでいくとカーテンが閉まってる

「もー、カーテン開けんと暗い気持ちになるって言うとるやん」

カーテンを開けて、ベッドに向かって話しかける

「ほら、ベッドの中もおんなじやで」


無理やり掛け布団を剥ぐと、大好きな恋人の顔が涙でぐしゃぐしゃだった


「まーた泣いとる。目ぱんぱんやん。せっかくの可愛い顔が台無しやで」

「…」

「ねー無視しやんで」



返ってくるのは嗚咽

ベッドの側に膝立ちになり、玲ちゃんに顔を近づける



「…っく、あ、あの子は…嫌だって、言った、のに」


あー、麗奈ちゃんのことね


「1ヶ月も前から言うとったやろ？ご飯いくって」

「行って、いいなんて…言ってない」

「誰かと遊ぶの許してくれたことないやん」

「っ！ちが！あの子は嫌なの！あの子だけは！」

「あの子やない、麗奈ちゃん、まりのの幼馴染、なんもない」


そう言って玲ちゃんの頬を流れる涙を舐めとった


「しょっぱ。まあ今日付き合おうって言われたけどな」

「っ！ねえほら！やっぱり！だから嫌だって言ったのに！！あの子絶対まりちゃんの事好きだもん！！」

「ないない、からかわれてるだけやって」

「……っ、ぅ…まりちゃん…取られちゃう、私のなのに…見えるところに跡付けたんだけどな…」

「なにボソボソ言うとんの？もう泣かんでよ。ほら、えっちする？」

「…えっちなことしとけばいいと思ってるでしょ」

「しやんの？ならまりの寝るからさー起きるまでぎゅーしてー」

「…やだ、する」

「結局するんやん、めんどいなー」



カーテンを閉めて、玲ちゃんを起こす

キスして欲しそうな顔してるけどしてやんない
麗奈ちゃんとのご飯早く帰らされた事まだ根に持ってんねんで？

ボタンを外して上を脱がす



「だいぶ薄くなってきたな」



無数のキスマークと歯型
全部まりのがつけた


まりのは見えるところに付けたりはせんけど


「うん…こことここ、ここも、またつけて…」


一生懸命薄くなってるところを探して教えてくる姿が滑稽で、思わず口角が上がってしまった


「年下に必死にお願いしてさぁ、プライドとかないん？付き合いたての時の頼りになるお姉さんはどこいったんかなぁ？」

「…ごめんなさ、い〝っ！」

「痛いのに気持ちいん？ほんまキモいな。ドM？まりのそういう性癖ない」


お望みの通り肩におもいっきり歯型を付けてあげた


「えへへ……私に愛情表現の仕方教えてくれたのまりちゃんだよ。まりちゃんがくれるもの、全部嬉しい」


玲ちゃんは嬉しそうに笑った


まりのが玲ちゃんをこんなんにした
依存させるように
まりのがいないと生きていかれへんように
やってもし、玲ちゃんが他の子好きになっちゃったら寂しいやろ？
寂しいのは嫌やからな


玲ちゃん

まりのの事だけ考えとけばええねん

ずっと一緒にいような？