社会人と高校生


3月

長かったようで短かったような高校生活が幕を閉じる。

「返事の大きさ選手権、優勝は私ですね」

「はぁ?私でしょ?」

「2人ともほんまに声デカすぎて笑い起こっとったで?気づいてた?卒業式やで?本番やで?」

無事、3人とも進路が決まった。
私は専門学校。
綺良と茉里乃は同じ大学、しかも同じ学科。
きらまりは仲が良すぎる。
それを言うと本人たちは向こうが真似をするんだって喧嘩し出すけど。

ひと通りクラスメイト達と写真を撮り、最後の挨拶を交わす。

「じゃあ、行こっか」

麗奈が高校生最後の制服姿を見たいからって、3人で麗奈のところに遊びに行くことになっている。

「天ちゃんの彼女さん、初めて会うなぁ。緊張するなぁ」
「幸阪、決まってからずーっと緊張してるんですよ」
「麗奈は可愛いよぉ〜」
「惚気うざっ」

櫻が咲いてるところで写真を撮りたかったから、いつも麗奈とよく来る大きな公園を集合場所にしている。

「あ!守屋さんじゃないですか?」
「ほんとだ!麗奈〜!」

私は大きく手を振り、櫻の木の下に佇む麗奈に3人で駆け寄った。

「わぁ〜、みんな〜!」

麗奈も手を振りかえしてくれる。

全く人見知りをしないコミュ力お化けがさっそく麗奈に詰め寄る。

「守屋麗奈さんですね!天さんからお話はすんごく、すんごーーく聞いてます!本当にお美しい方ですね!初めてコンビニで見た時から綺麗な人だと思ってたんです。ああ、すみません、自己紹介がまだでした!増本綺良です!遠慮なさらずに綺良とお呼びください!ほら、幸阪も挨拶しなさい!」

綺良と違って茉里乃はすんごく人見知り。

「綺良ちゃんがずっと喋っとるからやろ…幸阪茉里乃です…」

「わぁ!本物の綺良ちゃんと茉里乃ちゃんだぁ!ずっと会ってみたかったの!」

麗奈はそう言って2人のことをペタペタ触ってる。
そんな珍しい生き物みたいな…
そんな変なこと麗奈に言ったっけな。
まあいっか。

「ねえ!写真撮ろ!カメラ持ってきた」

「あ、待って。麗奈も3人の制服姿撮っていい?」

「もちろんです。綺麗に可愛く撮ってくださいね?」

「任せて!茉里乃ちゃんも並んで!」

「は、はい」

もう馴染んでるよ

そのあと櫻の木の下で色々な組み合わせで何枚か写真を撮った。

「なぁ、4人で撮りたい…」

茉里乃がぼそっと俯きながら言った。

「…天ちゃん、麗奈キュンとしちゃったよ」
「わかる?私も同じ気持ち」
「私は分かりません。4人で撮るなら誰かに頼みましょう!ナンパしてきます!」

綺良は大きな声で宣言して走って行ってしまった。

しばらく3人でこの後の事を話していると

「お待たせしましたー!」

綺良が女の人を手を引いて戻ってきた。

「すみません突然、お時間大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
「暇そうに本読んでたんでナンパしました」
「おい!!馬鹿失礼すぎや!!」

女の人に私の一眼レフを渡して、シャッターの場所を教える。

「いきまーす、はいチーズ…はーいもう一枚いきますよー」

何枚か写真を撮ってもらい、お礼を言ってお別れした。

「綺良ちゃんありがとね。なんか不思議な雰囲気の人だったね〜」
「そうですかね?読書に集中してる感じじゃなかっなんで声かけちゃいました」
「コミュ力どうなっとんねん」

写真を撮り終え、一旦別れて今度は麗奈の家に集合することになっている。
麗奈の家で具材を持ち寄ってたこ焼きパーティーをするんだ。

たこ焼きパーティーはすっごく盛り上がった。
ご近所からのクレームが怖いと後で麗奈が言っていた。

麗奈は茉里乃が気に入ったみたいで隣に座らせたがるし
でも茉里乃は私の隣から離れなくて2人の攻防がおもしろかった。
綺良と茉里乃は中に入れる具材の比率でケンカをしていたし、麗奈はこっそりチョコを入れていた。
すんごいカオスだったな。

あっという間に深夜
綺良と茉里乃は疲れたのかソファで眠ってしまった。

私は食器を洗い、麗奈は2人に毛布をかけてあげる。

「天ちゃん、食器ありがと」
「ううん!部屋使わせてくれて本当にありがとね?お部屋油くさくなっちゃったよね、ごめんね」
「2人に会いたかったし、なんだか学生に戻ったみたいに楽しかったから全然平気」

麗奈が隣に来てくれて、洗った食器を拭いてくれてる。

「天ちゃん、卒業おめでとう」
「麗奈ありがと〜、明日から天ちゃん高校生じゃないんだよ」
「うん、そうだね」
「だからもう大人なんです」
「うん?」
「だからえっちも」
「そういうことは20歳になったらって約束したでしょ。山﨑さん」
「はあい…」

やっぱり麗奈には敵わないんだよなぁ
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