社会人と高校生



今日はバイトがないから綺良と茉里乃と隣町のイオンのフードコート

「天さん、最近は麗奈さんとどうなんです?」

綺良は恋愛話が大好きだからほぼ毎日のように麗奈との進捗を聞かれる。

「最近?普通だよ、普通にめっちゃラブラブ」

「ケンカとかもうしました?」
「けんか?なんで絶対する前提なのさ、したことないよ」

答えると綺良はつまんなそうな顔をした

「普通カップルはケンカをして衝突し合いながら障害を乗り越え、より関係を深めるはずなんですけどね…天さんイケメンイケメン言われてますが50%の割合でクソガキですからね。守屋さん大人だから我慢してくれてるんですかね?」

「く、クソガキ!?あたしそう思われてんの!?麗奈にも思われてるのかなぁ」

「守屋さんが天さんをどう思ってるかは知りませんが、クソガキよりも頼りになる方がいいと思います」

「急に正論言うなよ」

「どうですか?嫉妬とかされます?」

嫉妬

考えたこともなかった
嫉妬ってやきもち?ってことだよね?
普段はどちらかといえば私が構ってほしくて麗奈に相手してもらってるから、麗奈から甘えてくれることは滅多にないし…
それってガキだから相手にされてないってこと!?
それは…悲しいかも

「されたことないと思う…」

「ないんですか!?おかしいですね、私の参考書には必ず嫉妬回があるのですが」

「それ漫画だろ」

「天さん。漫画を舐めてはいけません。漫画は人の経験、経験からの理想、妄想を詰め込んだものなのです!そんな集大成をたったの550円で読めるんです!ああ、すみません、話が逸れましたね。そう、嫉妬回は必ずあるんですよ、どんな少女漫画にも。だって嫉妬ってその人のことが好きじゃないと出てこない感情でしょう、マイナスな感情だと捉えられがちですが、その裏には相手を失いたくない、自分に自信がないっていう感情の裏返しなのです!つまり嫉妬は愛なんですよ!愛の証拠です!」

綺良は一息で喋る

「綺良、息しな」

「死ぬかと思いました、幸阪まだですかね」

茉里乃はじゃんけんに負けてマックを買いに行ってくれてる。
混んでるみたいでまだ戻ってくる気配はない。

「天さんも守屋さんが嫉妬してくれたら嬉しくないですか?」

「うーん」

いつも可愛くて大人で、たまーに怒らせちゃうけどすごく優しくて、でもたしかに嫉妬する麗奈は見たことないから見てみたいかも

「まぁ」

「でしょう?させましょう!嫉妬!」

「どうやって?」

綺良と喋っていると、茉里乃がヘロヘロになりながら帰ってきた。

「お待たせー…ハッピーセットごときで混みすぎやろ、なんなんまじで、こんなんハッピーやないわ…」

「茉里乃ありがと」

お店がすごく混んでたみたいで茉里乃はぶつぶつ文句を言いながらお願いしたポテトと飲み物を買ってきてくれた。

「まずこの子と至近距離ツーショットを撮りましょう」

茉里乃がは?っていう顔で綺良にガン飛ばす

「まあまあ、友達の証です」

頭にハテナが浮かんでる茉里乃と一緒に写真を撮った。
ほっぺた同士をくっつけて。

「あとは、そうですね、作戦は考えておきますので、デートの日程を教えなさい」

「えー?」

渋々綺良に日にちを教える

「ありがとうございます!増本綺良に任せなさい!」

何を企んでるか想像もつかない…
変なことにならないといいけど


デート当日
今日は麗奈とアウトレットで買い物の予定だ。
お仕事帰りのかっこいいスーツの麗奈も好きだけど、普段の私服も大人っぽくて可愛い。
…本当に可愛い

「麗奈ぁ、手繋ぎたい」
ダメ元で麗奈に言ってみる

「だーめ♡」

こういう所だと麗奈は絶対に手を繋いでくれない
もし学校の子に会っちゃったら私が損しちゃうかもしれないから
って麗奈は言う。
なにが損?になるのかはまだ分かんないけど
でも麗奈が言うなら仕方ない。
麗奈んちで思いっきり甘えることとする。

「天ちゃんどこから見よっか」
「お店調べる」

スマホを取り出して、ブラウザの画面を開くと

「んなっ、なんだこれ!」

ブラウザの背景画面がこの前撮らされた茉里乃との超至近距離ツーショットだった。

「んー?どうしたの?」

麗奈が覗き込む

「あっ!ちょ」

「天ちゃんと女の子だ」

「ちがくて!」

大焦りで麗奈からスマホを見れないようにする。

「ん?なんで隠すの?」

「いや、なんとなく…」

麗奈は全く動じずいつも通りの麗奈だ

「天ちゃんのお友達?」

「うん」

「おめめがおっきくて可愛い子だね!」

そっかそっか〜天ちゃんのお友達か〜
なんてご機嫌になりながら先に歩いて行ってしまったので小走りで追いかける。

全然嫉妬なんてしてなくない?
綺良にラインで連絡する

『なにあれ!!勝手に設定したでしょ!!😡』
『よく撮れてたでしょ?守屋さんに何か言われましたか?』
『全くなにもない…』
『oh…🫨まだまだ始まったばかりです!』

まだあるの…

そのあとは綺良の指示で茉里乃と綺良と遊んだ時のことをたくさん話してみたけど、嬉しそうに学校の様子を聞いてくれて全く嫉妬なんてする様子はない。

麗奈とお店を回りながら、定期的に綺良からくる連絡を返していると

「天ちゃん今日はスマホばっかだね」
「ふぇ」

お?嫉妬チャンスか?

「他に何か用事あった感じかな?大丈夫?」
「優しい…何もないよぉ。スマホばっかいじっててごめん〜」

私が間違ってた
せっかくの麗奈とのデートなんだもん
麗奈に集中しなきゃ

「麗奈、大好き」
「急にどうしたの、麗奈も大好きだよ〜」


綺良にはごめんだけど、今日のデートを全力で楽しませてもらいます!
そんな覚悟をした矢先

「お、山﨑ー」

家族とやってきたであろう、妹をおんぶした同級生の森田ひかるが声をかけてきた。

「森田じゃん!どうしたん」
「家族でね。妹が寝ちゃって最悪だよ」

森田は麗奈にペコっとお辞儀をした。
麗奈もニコっと笑顔で返す。

「ちゃんとお兄ちゃんやってんじゃん。ちびすけなのに」
「うるせぇよ」

私は森田の肩をグーで殴ると、森田は脚で蹴り返すフリをしてきた。

「天ちゃん」
「ん?」

麗奈が私の服の裾をちょんと引っ張り

「お手洗い行ってくるね」
「わかった」

麗奈は行ってしまった。

「山﨑はあの人と来たのか?」
「そうだよ」
「めちゃくちゃ美人だなぁ」
「はぁ?森田に言われなくとも麗奈は美人です〜」
「なに怒りだよwやべ、行かなきゃ、じゃあな」
「じゃーな!宿題やれよ!」
「お前もな!」

軽口を叩き合い、森田と別れる。

麗奈を探さなきゃ

小走りでお手洗いまで向かうと、お手洗いの前のベンチに麗奈が座っていた。

「麗奈!」
「天ちゃん、お友達大丈夫?」
「うん!ごめんね待たせちゃって」
「ううん、行こ」

麗奈は立ち上がり、私の小指をきゅっと握った。

「えっ麗奈?」

麗奈は何も言わない。
小指を握られたまま、しばらくアウトレット内を無言で歩いた。

「…さっきの彼、イケメン君だったね」

突然、麗奈が話し出す

「森田?そうかな?」

「そうだよ
…天ちゃんとよく似合ってたよ」

「え…」

「ごめん!何でもない!いこ!」

その後の麗奈は心なしか口数が少なかった気がする。
それでも私の小指を離さなかった。

帰り道、何となくいつもと違う空気感で最寄駅に着いた。
私と麗奈の住んでる最寄り駅には同じ高校の子は少ないからここからなら手を繋いでもいいんだって。

私が麗奈の手を握ると、麗奈は無言で恋人繋ぎに握り直した。
麗奈の表情からは考えてることが何も分からない。

無言で麗奈の家まで歩く。
いつも家まで私が送ってるから。

普段はあっという間に感じるのに、今日は駅から麗奈の家までがやけに長く感じた。

「天ちゃん、うちよってく?」

麗奈からのいつもの言葉で家に着いたことに気づいた。

「うん」

このままバイバイするのは絶対に嫌だったんだ。

家に入れてもらって、リビングのテーブル前の床に座る。
ソファはあるけど、何となくそんな気分じゃなかった。
お茶を持ってきてくれた麗奈は私の横の床に座った。
麗奈は何も言ってくれない。
…もう耐えられなくなった。

「麗奈ぁ、なんであんなこと言ったのぉ」

言葉にしたら勝手に目から涙が出てきて止まらない。
私、悲しかったんだ。

「天ちゃん!?」

麗奈はすごく驚いてた。
涙が止まらないから勝手に麗奈の肩を借りることにする。
麗奈は私の頭を撫でてくれた。

「天ちゃん、何がやだったの?」
「うぐ…森田と、てんちゃんが似合ってるってゆったぁ」
「ごめんね、ちがうの、違うんだよ、そんなつもりなかったの…」

傷つけちゃってごめんなさい

耳元で聞こえる麗奈の声はなんだか震えてた。

「ううう…てんちゃんは、麗奈だけなのにぃ…」

私が落ち着くまで背中をトントンしてくれた。
その間も麗奈は抱きしめるだけで、何も言わない。
なんか言ってよ。

「…れな」
沈黙に耐えきれなくなって顔を上げようとしたら、麗奈にぎゅっと力を入れられて抱き止められる。

そして麗奈はポツポツと話し始めた。

「麗奈ね、ずっと自信なかったの。麗奈といて天ちゃんはほんとに幸せになれるのかなって。もし麗奈に会ってなければ、天ちゃんはさっきのイケメン君みたいな男の子と恋して、普通の幸せな未来があったのかなとか。たまに思っちゃうの。」

だから今日はあんなこと言っちゃって本当にごめんなさい。と麗奈は続けた。

「でもね、天ちゃんの幸せを願うなら天ちゃんの前からいなくなればいいのに、それはできないの。麗奈、天ちゃんの事が大好きすぎるから手放したくないみたい。ずるいでしょ」

麗奈に抱きしめられたままだから、どんな表情なのかわかんない。
自分ばっかり言いたいこと言って。

「麗奈!」

そういって麗奈の腕を優しく解いた。
麗奈の両肩に手を置いて、目を真っ直ぐに見る。

麗奈も泣いていた。

「あのね、私の幸せは私が決めるの!私は麗奈がいいの!麗奈しかいないの!麗奈じゃなきゃだめなの!麗奈と幸せになりたいの!
…大好きなんだよぉ」

途中から自分が言ってることが恥ずかしくなって最後のは手で顔を隠してしまったけど、言いたいことは言えた。

「天ちゃん、麗奈のことそんなに好きなんだ」

返ってきた言葉がちょっとだけいたずらっぽくて、少し安心した。

「そうですぅ、麗奈だって私のこと大好きじゃん!」
「そうみたい、天ちゃんは?」
「だから大好きだって!」
「麗奈はね、愛してる」

そう言うと麗奈は私の唇にキスをした。

「天ちゃん、愛してる」

初めてあんなに深いキスをした。
驚きすぎて最後に記憶に残ってるのは麗奈の愛の言葉と、唇と舌の感触だけだった。

めっちゃエロかったんだけど


キスの後、改めて麗奈と仲直りした。
喧嘩した訳じゃないけど。

「麗奈〜帰りたくない〜」
「妹ちゃんの誕生日でしょー、今日は帰りなさい」
「はあーい。明日また来ていい?」
「いいよー」
「やったぁ!」

麗奈は私を家まで送るって言ってくれたけど断った。
夜道を1人で歩かせたくないから。
マンションの出口まで送ってくれるみたい。

「天ちゃんさ」
「ん?」
「今日麗奈のこと嫉妬させようとしてたでしょ?」
「え!?ば、バレてた!?」
「あれは流石の麗奈でも分かるよ〜」
「どうだった!?した!?」
「ん〜

内緒♡」
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