社会人と高校生


「よしっできた」

今日は天ちゃんとデート
平日天ちゃんは学校とバイト
麗奈も仕事だから会うのはいつも土日

天ちゃんと付き合う前は仕事の疲れを取るためにダラダラ過ごすだけだったけど、今は土日が楽しみで仕方ない

ピンポーン

インターホンが鳴った

玄関を開けると大好きな人

「麗奈〜!」
天ちゃんは大きく手を広げて私を抱きしめた
「天ちゃ〜ん」
私も抱きしめ返したらゆらゆら横に揺らされた
じゃれてきて可愛い

「すぐ準備できるからほんのちょっとだけ待ってて」
「はーい」

すぐに準備を終えて玄関に戻ると、靴を履いてリュックを背負ったまま猫背で玄関の端にちょこんと座っている天ちゃん

「お待たせ。中で待ってて良かったのに」
「確かに!早く行きたくて」
「ふふ、行こっか」
「しゅっぱーつ!」
「おー!」

目的地は近所の大きな公園
今日はピクニックをして麗奈の家にお泊まりの予定だ
手を繋ぎながらしばらく歩くと公園に到着
ちょうど良さそうな芝生にレジャーシートを広げる

「麗奈、ご飯買いに行こっか」
「ふっふっふ、その必要はないです。山﨑天さん」
「な、なぜですか」
「麗奈が作ってきましたー」

そう言って今朝早起きして作ったお弁当を鞄から出す

「え…まじ?」
「うん、えっ、なんかダメだったかな…」

「ううん…めっっっっっちゃ嬉しい!!早く食べたい!食べていい?」
「もちろん、召し上がれ♡」
「か、可愛すぎる…あ!ちょっと待って!」

そう言って天ちゃんはリュックから一眼レフを取り出した

「麗奈のお弁当記念日なんで写真撮っていいすか?」
「いいけど、そんな立派なカメラで撮るようなものじゃないよ〜」
「なんで?こんなにおいしそうなのに?うおお、早く食べたいいい」

天ちゃんはそう言いながら麗奈が作ったお弁当にカメラを向けて何枚か写真を撮った

そんな天ちゃんの様子を微笑ましく見ていると
「麗奈、こっち向いて」
ふいに名前を呼ばれて目線を上げると
一眼レフを覗いた天ちゃん

カシャ

「うん、かわい」

撮った写真を確認している真剣な眼差しと、少し口角の上がった表情
普段の太陽みたいな明るい表情とのギャップで、少し心拍数が上がってしまった

「食べる!ん?なんか顔赤いよ?」
「今日天気いいからかも」
「そっか!暑かったら言ってね、避難しよう」
「うん」

顔が赤い原因は天気のせいじゃないけど、天ちゃんの優しい気遣いは付き合う前から変わってない

「いただきます!」
「どうぞ〜」

メニューはホットサンド
おかずに玉子焼きとタコさんウインナーとプチトマトを入れた
割と可愛くできた自信作

天ちゃんはホットサンドを美味しそうに頬張ってくれた

「うんま!麗奈、天才?」
「おいしくできて良かったよー」
「もうお嫁さんにしたい」
「天ちゃんのお嫁さんになっちゃおっかなー」
「言ったな?」

ふざけ合いながらランチを済ませる
そのあとはポカポカの公園でゆっくり過ごした

麗奈はレジャーシートに座って天ちゃんが持ってきてくれたシャボン玉をしながらひなたぼっこ

天ちゃんはカメラをもって広場をふらふらしながら時折シャッターを切ってる

あ、子どもと一緒に遊び始めた

天ちゃんのコミュ力は本当にすごい

あったかい気温と心地良い風と恋人が子どもと遊んでる平和な光景が気持ちよくてうとうとしていると

「麗奈」

肩を優しく揺らされた
目の前にはとっても優しい表情の天ちゃん

「気持ちよくて眠たくなっちゃった」
「ふふ、あったかいもんね
なんかね、夕方から雨降るらしいからそろそろ帰る準備しよっか。小学生が教えてくれた」
「そうなの?小学生にありがとうだ」

2人で後片付けをして、公園の出口に向かって歩き始めると

「おねーちゃんバイバーイ!」
さっき天ちゃんと遊んでた小学生達が天ちゃんに大きく手を振る
バイバーイ!と負けじと天ちゃんが振り返すと
「お姉ちゃんのお姫様もバイバーイ!」

お姫様?

「こらー!内緒って言ったじゃん!」
アハハと笑いながら小学生達は駆けて行ってしまった

「…」
顔を赤くした天ちゃんを見ても目を合わせてくれない

「天ちゃん」
「…ちょっと今恥ずかしすぎて目合わせられません」
「山﨑さん」
「も〜!山﨑さんはやめてよ!
麗奈のこと指してお姉ちゃんのお友達?って言うからお姉ちゃんのお姫様だよって言ったの!恥ずかしいなぁもう!」

麗奈は天ちゃんのお姫様か

「ふ〜ん、今日はハンバーグにしちゃおっかな」
「あれ!?なんかご機嫌になった!ラッキー!」

そのあとはスーパーに寄って食材を買い出し、麗奈の家に向かう
天ちゃんは絶対に重い方の袋を持ってくれるんだ

家に着いて、少し休んでから一緒に夕飯の支度をした
麗奈が作ったハンバーグをおいしいおいしいと食べてくれた

「麗奈が料理してくれたから食器洗う!天ちゃんに任せなさ〜い」

元気に宣言した天ちゃんの食器を洗う姿をソファからぼーっと眺める


あぁ、好きだなぁ


なんか心がきゅーっとしてしまったから
天ちゃんのところに行って後ろからそっと抱きついた

「んぇえ!?どした?寂しくなっちゃった?あぁもう!今すぐ抱きしめたいのに!食器がぁ!麗奈ちゃん?もうちょっとそのままでいてもらえます?もう終わるから!」

急いで食器をすすぐ天ちゃんが面白くて意地悪したくなっちゃったから、抱きつくのをやめてソファに戻った

「麗奈!?れなぁ、いじわるだぁ」

可愛い

食器を洗い終わったみたいで、天ちゃんは不服そうな顔で戻ってきた
ちょっと拗ねてる
そんな姿も愛おしい

「てーんちゃん」
「なにさぁ」
「洗い物ありがと、一緒にお風呂入ろっか」
「…入るぅ」

お風呂から上がる頃には天ちゃんは機嫌を直してくれた

先に髪の毛を乾かし終わった天ちゃんが床に体育座りしてる

「何しよっか」
「千と千尋録画したよ、天ちゃんバイトで見れてないと思って」
「まっっじ?」
「まじ」
「麗奈、大好き」
「ありがとー」

そう言ってソファに腰掛け、リモコンをいじろうとするとパジャマの裾をちょんちょんと引っ張られる

「麗奈、こっち、ここ」

天ちゃんは自分の脚の間を指差す
ソファから立ち上がり移動すると「んふふ」と満足そう
麗奈のお腹に腕を回してくれた

それから2人で千と千尋の鑑賞会
天ちゃんがあまりにも真剣に見てるもんだから、たまにどんな表情してるか確認してしまう
口をぽっかり開けてたり、目をまんまるにした驚いてたり、痛そうな描写では顔を歪めてたり、本当に表情豊か
見ていて飽きない

鑑賞会も終わり、そろそろ寝る時間
同じベッドに入る

「ねえ天ちゃん」
「はい」
「いつも反対向かれるの寂しいなぁ」
「…緊張するんだもん」
「もう何回も泊まってるのに?」
「ううう」

眉毛をハの字にした天ちゃんが麗奈の方を向いてくれた
嬉しいな

「ぎゅーしていい?」
「はい」
「可愛い」

天ちゃんを抱きしめると、なんだかあったかい
1日遊んで疲れて眠たいのか体があったかくなってる

「今日本当に楽しかったなぁ」
「私も、麗奈のお弁当おいしかった」
「ありがと」
「…大人になったらもっと麗奈と一緒にいれる?」
「今よりはそうなのかな?」
「そっか…」

天ちゃんは眠いのか今にも瞼がくっつきそう
普段は頼りになってかっこいいけど、こういうあどけない表情を見ると年相応でなんだか安心するな

抱きしめた腕を解いての頭を撫でると天ちゃんは気持ちよさそうに目を瞑る

「…早く大人になりたい…そしたら麗奈ともっと一緒にいれるから…」

「大人なんてすぐなれるよ。
だから今は友達と、学校と、バイトと、家族を大事にして。麗奈はゆっくり待ってるから」

天ちゃんは麗奈の空いてる手をぎゅっと握った

「んふふ、はあい…れな、おやすみのちゅー」
「ふふ、はいはい」

唇にキスをすると、天ちゃんは満足そうに寝息をたてた


明日も大好きな人と1日が始まる
今が人生で1番幸せだ

ゆっくり大人になってね
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