魔法にかけられて
ぼんやりと目を覚ました坂道は薄暗くなった部屋のベッドからこっそりと抜け出す。
追うようにタオルケットの中から延びてきた手が坂道を探している様だったが、坂道がその手を撫でると大人しくなった。
坂道が手探りで見つけたTシャツに袖を通したら、それは自分の物ではないことに気がついたが、まだこのTシャツの持ち主は目を覚ましていないから借りていても大丈夫だろう。
ローテーブルの上で冷めきってしまったシチューをキッチンまで運ぶと、鍋に戻して弱火にかける。
結局自分では作ってないけれど、Tシャツの持ち主が目を覚めたら温かいシチューを用意しよう。
そんな事を考えていたら、鍋をかき混ぜる坂道の手に背後から御堂筋の手が重ねられた。
「Tシャツ泥棒やね」
ズルズルとタオルケットごと起きてきた御堂筋は坂道が体を冷やさないようにと体を密着させ、坂道の腰にもタオルケットを巻き付ける。
「ゆっくりやよ…」
焦ってお玉をグルグルと回していた坂道の頭の上から聞こえてくる御堂筋の声。
坂道はふと先程までの行為を思い出して顔を赤らめた。
坂道の手から取ったお玉にクツクツと小さく気泡を上げ始めるシチューを少し掬った御堂筋は味見しながら坂道の様子を見て、わざとらしく言う。
「ほんま美味しくなったわ…時間置いたし」
そして坂道にも味見をさせるように舌を差し入れてキスをすると、軽く唇を重ねながら御堂筋は「ほんま、いいお嫁さんやね」と呟く。
シチューは自分が作ってないのに。
坂道は、自分が遊ばれてるな…と気がついて「魔法使えるからね」と少しむくれるけど、あやすように落とされる口付けと「ほんまやねぇ」と響く流れるような京都弁に絆されてしまう。
自ら薄く唇を開けば、長い舌が入り込んで歯列を滑る。
ゆっくりと舌を絡み捉えられると、ふと体の奥に冷めたはずの熱を感じた。
「あのね!」と坂道が一旦逃れる様に体を離すと、残念とばかりに舌を出し体を屈ませていた御堂筋の耳元に内緒話をするよう伝えた。
「シチュー、一晩置いた方が美味しくなるってお母さんが言ってたよ」
一瞬目を見開いた御堂筋はクスクス笑いながら、弱く点いたコンロの火を止めた。
「お母さん、料理上手なんやね…参考になるわ」
どうやら、またシチューはお預け。
END
追うようにタオルケットの中から延びてきた手が坂道を探している様だったが、坂道がその手を撫でると大人しくなった。
坂道が手探りで見つけたTシャツに袖を通したら、それは自分の物ではないことに気がついたが、まだこのTシャツの持ち主は目を覚ましていないから借りていても大丈夫だろう。
ローテーブルの上で冷めきってしまったシチューをキッチンまで運ぶと、鍋に戻して弱火にかける。
結局自分では作ってないけれど、Tシャツの持ち主が目を覚めたら温かいシチューを用意しよう。
そんな事を考えていたら、鍋をかき混ぜる坂道の手に背後から御堂筋の手が重ねられた。
「Tシャツ泥棒やね」
ズルズルとタオルケットごと起きてきた御堂筋は坂道が体を冷やさないようにと体を密着させ、坂道の腰にもタオルケットを巻き付ける。
「ゆっくりやよ…」
焦ってお玉をグルグルと回していた坂道の頭の上から聞こえてくる御堂筋の声。
坂道はふと先程までの行為を思い出して顔を赤らめた。
坂道の手から取ったお玉にクツクツと小さく気泡を上げ始めるシチューを少し掬った御堂筋は味見しながら坂道の様子を見て、わざとらしく言う。
「ほんま美味しくなったわ…時間置いたし」
そして坂道にも味見をさせるように舌を差し入れてキスをすると、軽く唇を重ねながら御堂筋は「ほんま、いいお嫁さんやね」と呟く。
シチューは自分が作ってないのに。
坂道は、自分が遊ばれてるな…と気がついて「魔法使えるからね」と少しむくれるけど、あやすように落とされる口付けと「ほんまやねぇ」と響く流れるような京都弁に絆されてしまう。
自ら薄く唇を開けば、長い舌が入り込んで歯列を滑る。
ゆっくりと舌を絡み捉えられると、ふと体の奥に冷めたはずの熱を感じた。
「あのね!」と坂道が一旦逃れる様に体を離すと、残念とばかりに舌を出し体を屈ませていた御堂筋の耳元に内緒話をするよう伝えた。
「シチュー、一晩置いた方が美味しくなるってお母さんが言ってたよ」
一瞬目を見開いた御堂筋はクスクス笑いながら、弱く点いたコンロの火を止めた。
「お母さん、料理上手なんやね…参考になるわ」
どうやら、またシチューはお預け。
END