ピーマン
ピーマンは苦手。
何故なら苦い。
僕はナポリタンに入ったピーマンを苦々しく眺めていた。
ピーマンだけに。
ナポリタンは嫌いじゃない。
むしろ好きな部類。
だけど、ピーマンだけがダメなんだ。
「好き嫌いするなよ?」
今泉くんがピーマンと睨み会う僕に言う。
「好き嫌いしてると背ぇ伸びへんで」
横から鳴子くんが言うと、すかさず「お前に言われてもな」と今泉くんが答えていたけど、僕はピーマンを食べたら背が伸びるのか…と、ある人の事を思い浮かべた。
御堂筋くん。
御堂筋くんはピーマン食べられるのかな?
そんな疑問に、思い浮かんだのは何故か生のピーマンを野性的に貪り食べる御堂筋くんの姿で、僕は思わずふふっと笑ってしまった。
「小野田くん、今笑ったやろ?」
ムッとする鳴子くんに慌てて否定。
でも、何で笑ったのかは言わなかった。
僕が御堂筋くんの事ばかり考えてしまってるなんて、なんだか言えない。
秘め事の様な感覚だった。
ただ友達の事を考えるなんて隠すような事じゃないのに、なんでだろう?
まぁ、今泉くんや鳴子くんは御堂筋くんにあまりいいイメージはないだろうし…と、僕はその違和感を適当な理由を付けて片付けた。
僕だって100%いいイメージを御堂筋くんに持ってる訳ではない。
レースの時なんかは震えてしまうし、言葉だってキツイ。
キツイんだけど…ふと無性に聞きたくなるんだ、その声が。
キュっと胸が苦しくなる。
おかしいな。
僕は、片付けたはずの違和感が再び溢れだしてくるのを感じて、他の事を考えようと目の前のピーマンに目をやった。
苦いピーマン。
なんだか、御堂筋くんみたいだな。
苦いけど、食べたら背が伸びる…かは分からないけど、栄養にはなるでしょ?
御堂筋くんはキツイけど、なんだか声を聞くと元気になるんだ。
おかしいな。
おかしいけど、声が聞きたいな。
電話番号は知ってる。
けど、迷惑そうな声を出させてしまうから、あまり掛けたことはない。
もちろん御堂筋くんからも掛かっては来ない。
ピーマン食べられたら、電話も掛けられるかな?
僕は何故だか突拍子もない事を考えて、少しずつ食べたらいいのに、ナポリタンの中から集めてフォークに刺してしまったピーマンを口に放り込んだ。
口いっぱいに広がる苦味。
だけど、不思議と嫌じゃない。
だって、ピーマン食べたら御堂筋くんの声が聞けるもんね。
僕は、残りのナポリタンも口いっぱいに流し込んでから、パンと両手を合わせた。
「電話しよ!」
「誰に?」
「そこ、ごちそーさまでしたやないんか?」
という、今泉くんや鳴子くんの声を背に僕は学食を飛び出した。
迷惑そうな声を聞くために。
何故なら苦い。
僕はナポリタンに入ったピーマンを苦々しく眺めていた。
ピーマンだけに。
ナポリタンは嫌いじゃない。
むしろ好きな部類。
だけど、ピーマンだけがダメなんだ。
「好き嫌いするなよ?」
今泉くんがピーマンと睨み会う僕に言う。
「好き嫌いしてると背ぇ伸びへんで」
横から鳴子くんが言うと、すかさず「お前に言われてもな」と今泉くんが答えていたけど、僕はピーマンを食べたら背が伸びるのか…と、ある人の事を思い浮かべた。
御堂筋くん。
御堂筋くんはピーマン食べられるのかな?
そんな疑問に、思い浮かんだのは何故か生のピーマンを野性的に貪り食べる御堂筋くんの姿で、僕は思わずふふっと笑ってしまった。
「小野田くん、今笑ったやろ?」
ムッとする鳴子くんに慌てて否定。
でも、何で笑ったのかは言わなかった。
僕が御堂筋くんの事ばかり考えてしまってるなんて、なんだか言えない。
秘め事の様な感覚だった。
ただ友達の事を考えるなんて隠すような事じゃないのに、なんでだろう?
まぁ、今泉くんや鳴子くんは御堂筋くんにあまりいいイメージはないだろうし…と、僕はその違和感を適当な理由を付けて片付けた。
僕だって100%いいイメージを御堂筋くんに持ってる訳ではない。
レースの時なんかは震えてしまうし、言葉だってキツイ。
キツイんだけど…ふと無性に聞きたくなるんだ、その声が。
キュっと胸が苦しくなる。
おかしいな。
僕は、片付けたはずの違和感が再び溢れだしてくるのを感じて、他の事を考えようと目の前のピーマンに目をやった。
苦いピーマン。
なんだか、御堂筋くんみたいだな。
苦いけど、食べたら背が伸びる…かは分からないけど、栄養にはなるでしょ?
御堂筋くんはキツイけど、なんだか声を聞くと元気になるんだ。
おかしいな。
おかしいけど、声が聞きたいな。
電話番号は知ってる。
けど、迷惑そうな声を出させてしまうから、あまり掛けたことはない。
もちろん御堂筋くんからも掛かっては来ない。
ピーマン食べられたら、電話も掛けられるかな?
僕は何故だか突拍子もない事を考えて、少しずつ食べたらいいのに、ナポリタンの中から集めてフォークに刺してしまったピーマンを口に放り込んだ。
口いっぱいに広がる苦味。
だけど、不思議と嫌じゃない。
だって、ピーマン食べたら御堂筋くんの声が聞けるもんね。
僕は、残りのナポリタンも口いっぱいに流し込んでから、パンと両手を合わせた。
「電話しよ!」
「誰に?」
「そこ、ごちそーさまでしたやないんか?」
という、今泉くんや鳴子くんの声を背に僕は学食を飛び出した。
迷惑そうな声を聞くために。
1/3ページ