3月14日
京都伏見高校の校門の前をウロウロとしている中学生にも見える坂道は下校する生徒の中で目立っていた。
「小野田くん?」
その悪目立ちした坂道に声を掛けたのは京都伏見の学ランを羽織った石垣。
完全アウェイの中では一応知っている石垣の姿にホッとする反面、二週間ほど前に金城や田所の卒業式で号泣した記憶が今も新しい坂道は、金城達と同学年であるはずの石垣が学ランを来て学校に居ることに違和感を覚え、混乱していた。
留年という文字が頭を過り、それを聞いてもいいものかを思案する。
「小野田くーん!言っておくけど、留年やないよ?」
目を皿の様にしたり、眉間にシワを寄せたり、表情を忙しく変える坂道の思考は分かりやすく、石垣は先に伝えておく。
最後の大会とあれだけ懸命に走った結果、留年というのは余りにも不名誉すぎて、さすがの石垣もガマンして流してはいけないと思ったらしい。
「あ、いやいやいや!そんな留年なんて…石垣さんと来年も一緒に走れるのかな?って思っただけです!」
「うん…せやからそれが留年やろ?」
坂道の墓穴を掘った発言に、石垣の的確なツッコミ。
坂道は真っ青になって謝罪するが、誤解さえ解ければと石垣は笑って済ませていた。
「御堂筋に会いに来たんやろ?」
そう指摘されれば今度は真っ赤になる坂道に、石垣は表情のよく変わる子だなと思う。
御堂筋とは違って…と思ったが、インハイが終わってからの御堂筋はたまに練習後に携帯を見ては微かに頬を赤らめる事があって、石垣はこの子から感染ったのかなと思った。
「春休み暇やから俺は練習見に来ただけなんや。もう部活は終わっとるけど、御堂筋はいつも閉門するまで自主練しとるからまだ部室におるよ…あの校舎伝いに進んだら部室あるから行ってみぃや」
「いやいやいや!ここで待ちます…他所の高校ですし」
ブンブンと音が鳴りそうな勢いで腕を振る坂道はチラリと下校していく生徒達を見てからそのアウェイ加減にまた無理とばかりに後退る。
「それ言うたら卒業した俺も他所の高校や…実はせやから卒業したのに学ラン着とるんよ。これ貸したるから行ってやり?今日御堂筋めちゃくちゃ機嫌悪いから直したってくれるか?あのままやと明日の練習ノルマ倍にしそうで、他の部員が可哀想なんやわ」
石垣は、恐縮する坂道に半ば無理矢理自分の学ランを着せ、校門の中へと押しやった。
「俺の学ラン、部室に置いておいてくれたらいいから」
「ええ!?あの!えっと…じゃあ、これお借りするお礼に!!」
坂道は持っていた小さな紙袋を石垣に押し付ける様に渡してから、ペコリと頭を下げて校舎沿いを走って行く。
サイズの合わない学ランに下はチノパンという坂道は逆に目立っている気もしたが、あぁでもしないと真っ暗になるまで出てこない御堂筋をいつまでも待ちそうだし…と石垣は一人苦笑いした。
「小野田くん?」
その悪目立ちした坂道に声を掛けたのは京都伏見の学ランを羽織った石垣。
完全アウェイの中では一応知っている石垣の姿にホッとする反面、二週間ほど前に金城や田所の卒業式で号泣した記憶が今も新しい坂道は、金城達と同学年であるはずの石垣が学ランを来て学校に居ることに違和感を覚え、混乱していた。
留年という文字が頭を過り、それを聞いてもいいものかを思案する。
「小野田くーん!言っておくけど、留年やないよ?」
目を皿の様にしたり、眉間にシワを寄せたり、表情を忙しく変える坂道の思考は分かりやすく、石垣は先に伝えておく。
最後の大会とあれだけ懸命に走った結果、留年というのは余りにも不名誉すぎて、さすがの石垣もガマンして流してはいけないと思ったらしい。
「あ、いやいやいや!そんな留年なんて…石垣さんと来年も一緒に走れるのかな?って思っただけです!」
「うん…せやからそれが留年やろ?」
坂道の墓穴を掘った発言に、石垣の的確なツッコミ。
坂道は真っ青になって謝罪するが、誤解さえ解ければと石垣は笑って済ませていた。
「御堂筋に会いに来たんやろ?」
そう指摘されれば今度は真っ赤になる坂道に、石垣は表情のよく変わる子だなと思う。
御堂筋とは違って…と思ったが、インハイが終わってからの御堂筋はたまに練習後に携帯を見ては微かに頬を赤らめる事があって、石垣はこの子から感染ったのかなと思った。
「春休み暇やから俺は練習見に来ただけなんや。もう部活は終わっとるけど、御堂筋はいつも閉門するまで自主練しとるからまだ部室におるよ…あの校舎伝いに進んだら部室あるから行ってみぃや」
「いやいやいや!ここで待ちます…他所の高校ですし」
ブンブンと音が鳴りそうな勢いで腕を振る坂道はチラリと下校していく生徒達を見てからそのアウェイ加減にまた無理とばかりに後退る。
「それ言うたら卒業した俺も他所の高校や…実はせやから卒業したのに学ラン着とるんよ。これ貸したるから行ってやり?今日御堂筋めちゃくちゃ機嫌悪いから直したってくれるか?あのままやと明日の練習ノルマ倍にしそうで、他の部員が可哀想なんやわ」
石垣は、恐縮する坂道に半ば無理矢理自分の学ランを着せ、校門の中へと押しやった。
「俺の学ラン、部室に置いておいてくれたらいいから」
「ええ!?あの!えっと…じゃあ、これお借りするお礼に!!」
坂道は持っていた小さな紙袋を石垣に押し付ける様に渡してから、ペコリと頭を下げて校舎沿いを走って行く。
サイズの合わない学ランに下はチノパンという坂道は逆に目立っている気もしたが、あぁでもしないと真っ暗になるまで出てこない御堂筋をいつまでも待ちそうだし…と石垣は一人苦笑いした。
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