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繋がるカタチ

相手が何をしているかも分からない状態で電話を掛け、相手の時間を奪ってしまいながら話をする電話を掛けるという行動はハードルが高いと思うから苦手。
それでも電話を掛けるのは、御堂筋くんの声が聞きたいからだと思う。
僕は恋をした事がない。
だから、これが恋というものなのかは分からない。
特定の人の声を聞きたい。
同じ時間を共有して繋がっていたい。
そう思う事が恋というならば、これは恋なのかもしれない。
御堂筋くんの時間を奪ったり、電話が迷惑だと思われてるのも知ってるのに気が付かない振りをしたり、恋って想像より自分勝手な物なんだなと思う。
せめて、もっと楽しんでもらえる会話が出来たらいいのだけど、僕にそんなスキルは備わっていなくて、ただ時間を引き延ばすだけのアニメの話しか出来なかった。
「今日、秋葉原に行ったんだけど、欲しいガシャポンが売り切れてて…また次行った時の楽しみにしようって思ったんだ」
御堂筋くんは僕が話をしている最中は電話を切ることはない。
だから僕が話を続けてさえいれば、電話は続く。
けど、そんな事を毎日の様にしていたら、さすがに話は尽きてしまって、僕は続ける言葉を見失ってしまった。
一瞬の間が空くと、御堂筋くんの呼吸まで聞こえるんじゃないかというほど静かで、今にも電話を切られてしまうんじゃないかと僕は焦る。
話を続けなくてはと焦れば焦る程なにも思い浮かばず、無言の時間が重なっていった。
「キミ…毎日の様に何が楽しくて電話してきてるん?」
話がないなら切ると言われると思っていたところの突然の質問。
真っ白になった頭で答えたのは、正直すぎる理由だった。
「あ…えっと…御堂筋くんの声が聞きたくて…」
「ボクの声?いつもキミが喋ってばかりで、ボクは殆んど喋っとらんよ」
「そ…そうだよね…」
指摘され、また黙り込んでしまいそうになる。
黙ってしまったら、この電話は切れてしまうのに。
「本当は御堂筋くんの声がもっと聞きたいんだけど、僕の話が上手くないばかりにいつも僕ばっかり喋っちゃって…で、でも繋がってたくて…迷惑なのも本当は知ってるんだ…自分勝手だなって分かってる…僕、御堂筋くんが好きなんだ…あー!えっと、キモイだよね、ごめんなさい」
真っ白な頭のまま紡いだ言葉は要領を得ない。
その上、言うつもりのない事をツラツラと垂れ流してしまう。
引かれる…と、思った。
現に御堂筋くんは、黙り込んでしまっている。
僕の方も、これ以上余計な事を言ってしまうのが怖くて、黙り込んでしまう。
「ボクもキミの事は好きやよ」
沈黙を破ったのは、御堂筋くんの意外な言葉だった。
僕は御堂筋くんの事が好きで、御堂筋くんは僕の事が好き。
それはつまり、両思いなんじゃないかと思った。
でも、そう思ったのを見越したかの様に御堂筋くんが言う。
「ただ、ボクとキミは両思いやないね。ボクの“好き”はキミの口やケツにボクのモノを突っ込みたいで、キミの“好き”とは違うみたいやから」
情報量が多すぎて、僕の処理能力が追い付かない。
「待って…僕、男だし」
「キモイとか言うん?キミも男のボクの声が聞きたいとか言ってるやろ?キモさは一緒や」
「そうじゃなくて…男同士で…そういうことが出来るのかなって…」
男女の性行為すら授業で習った程度でイマイチ理解出来てないというのに、男同士となったら更に分からない。
「僕も、御堂筋くんと同じ様に思ったら両思いになれるのかな?」
「同じ様には…違うやろ」
御堂筋くんは呆れた様に言ったまま、黙ってしまった。
でも僕は沈黙恐怖症。
「僕、御堂筋くんと両思いになりたいんだ」
そう宣言した。
自分の思いが恋かどうかすら分からないくらいで御堂筋くんと両思いになりたいなんて考えた事すらなかったけど、両思いになれるゴールラインを引かれたら、そこに行ってみたいと思ってしまう。
それは、まるでゴールスプリントの様。
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