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繋がるカタチ

サカミチが言ったアレは告白なんて意思のあるものではなく、ただ口が滑っただけの様に思える。
その告白を非難出来ないのは、自分のした告白がサカミチ以上に最低だから。
要は『やりたい』という最低な告白。
百歩譲って最低だと思われるのはいいとしても、サカミチはその告白を真っ直ぐ受け取ってしまったから複雑化する。
毎日の様にしていた電話はサカミチから掛かってきていて、ボクから掛けた事はない。
その日はサカミチからの電話が掛かってこない予感がして、多少の緊張をしながら、こちらからその番号に電話を掛けた。
「ハイ!あー!もすもす!」
サカミチは、明らかな動揺。
それは、ボクから電話が掛かってきた事からなる動揺だけじゃないであろう事がわかる。
普段なら、一瞬の合間を埋めるように喋り倒すサカミチは今日は静かだった。
「キミ、何か調べたん?」
「あ…えっと…男の人同士の…その…」
答えは案の定すぎた。
そもそも役割がハッキリしている男女と違うボクらは同じ気持ちになっても仕方ないのも分からず、両思いになる為、ボクと同じ気持ちになる為、調べたんだろう。
で、完全に引いている。
正直言えば、ボク自身も調べて引いた。
自分が、こんな感情をサカミチに抱いていると分かった時は、サカミチの声を聞くのが怖かったこともある。
けど、ある朝、夢精をしたボクの見ていた夢はサカミチの夢で…諦めた。
その感情を本人に伝えようとはつゆ程思っていなかったのに、伝えてしまったのはサカミチにあんな事を言われて舞い上がったのかもしれない。
「僕、御堂筋くんとは同じ“好き”になれないかもしれない」
「ならんでえぇやろ」
どこまで理解してるんだろうか。
サカミチは意外性の固まりすぎて、掴めない。
「でも、僕が御堂筋くんを受け入れる事なら出来るかな?って思ったから、それが出来たら両思いなのかな?」
正しいと言える答えを出してきたけど、ボクは真っ赤になって答える。
「もうええから…ボク、キミのいつもの話聞きたいから、そっちの話にしてくれん?」
「えっ?アニメの話したいの!?」
「キミがボクの“好き”を理解したら両思いなら、ボクがキミの“好き”を理解しても両思いやろ?」
「…うん?それ、アニメと両思いになってない?」
「ふぁ?」
ボクは訳が分からなくなっていた。
血が上った頭で、サカミチがこれ以上ボクに余計な事を言わせないようにと言葉を紡ぐ。
「アニメの話をしてるサカミチの声を聞いてたいんよ」
結局、それが平和。
そう思った。
「嬉しい」
サカミチの呟きは、アニメの話を出来るからか、両思いになったからかは分からない。
ただボクは、その後に続いたアニメの話を聞いていた。
平和で、どこかあたたかい気持ちになる。
多分、これがサカミチの言う“好き”なんだろうと思った。
今までもサカミチの話が尽きるまで電話を切ることはしなかったのはサカミチの言う“好き”であって、だとするならばとっくにボクらは両思いだったんだと思う。
だから、今日は両思いになった日ではなくて、両思いだと気が付いた日。


END
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